真田獣勇士3〜五本剣

■シリーズシナリオ


担当:マレーア4

対応レベル:8〜14lv

難易度:普通

成功報酬:4 G 15 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月16日〜08月21日

リプレイ公開日:2006年08月17日

●オープニング

「調べがついた、悠」
 一人の傭兵の男が宿屋の悠の部屋を叩く。
 悠が顔を出し、いきなりそういわれたのだ。
「早いね。もう少しかかるって思ってたんだけど」
「あれくらいの規模のゲリラ集団ならすぐだ」
「あれくらいっていうと‥‥そんなに小さかった?」
「かなり」
 男がそう言うと、悠は意外だなぁと呟いた。
 彼が元いた世界、チキュウではゲリラと言えばもっと大きい。
 人海戦術のような集団だと認識していた。
 だが、報告にきた男の話によるとその規模は小さいらしい。
「目的とかは、分かってたりする?」
「どうだろうな。カオスニアン、というわけでもなし‥‥ただ、ちょっとばかり怪しい五人組がいたな」
「怪しい五人組?」
「‥‥五本剣だったかなんだったか、そう名乗っていたがあまりにもバカらしくて相手にしてこなかった」
 きっぱりとそう言ってのける男に、悠は溜息をついた。
 大事な所なのに、相手にしなかったっていうのは痛手である。
「とにかく、その五本剣とやらが暗殺に関わってたの?」
「いや、上はまた別らしいが‥‥今回はその五本剣が街を恐怖に落としいれようとしているらしいが」
「な、なんだって!? 早くなんとかしなきゃじゃないか!」
「‥‥いや、な? ‥‥街の水に泥を混ぜたり、人の食料つまみ食いしたり、水浴びしてる人の服盗んだりしてるだけだぞ‥‥?」
「‥‥」
 長い沈黙。これは流石に呆然というか、唖然というか。
 確かに恐怖といえば恐怖。だが、此れはまた何か違う恐怖だ。

「‥‥で、其れを何とかしろっていうんじゃないだろうな?」
「何とかしろ。阿呆らしくてこっちでは相手出来ん」
「‥‥風のウィザードなんだから、魔法で何とかすればいいじゃないか、街外れで?」
「俺にそんな無駄な労力をさせるんじゃない。確かに戦場ではあるが、あんな奴等の為に魔力を使いたくはないっ」
 男の言葉に落胆する悠。そして、更なる一言が彼を襲ったのである。
「あ、其れはそうとな。ラシェル達は暫くの間領主につくそうだ。よって、お前が一人で何とかしろとの事だ」
「なっ!? なんでそれもっと早くに言わないのさ!?」
「伝言されてたのを忘れていた」
 天界人一人vs五本剣。‥‥悠にとっては怖くなかったものの、ある意味怖さを感じた。
 だって、阿呆が感染するかも知れないじゃないか。
「そんなわけでよろしく頼んだ」
「ちょっ‥‥! まてぇぇぇっ!」

 結局、悠は一人では心細いため、冒険者を頼ってしまうのだった。

●今回の参加者

 ea1587 風 烈(31歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea2564 イリア・アドミナル(21歳・♀・ゴーレムニスト・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea3063 ルイス・マリスカル(39歳・♂・ファイター・人間・イスパニア王国)
 ea4509 レン・ウィンドフェザー(13歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea7463 ヴェガ・キュアノス(29歳・♀・クレリック・エルフ・ノルマン王国)
 eb4270 ジャクリーン・ジーン・オーカー(28歳・♀・鎧騎士・エルフ・アトランティス)

●リプレイ本文

●選抜されるのは何時も彼
「と、いうわけで! 以上が此方の作戦なのじゃ。悠殿、やってくれるかの?」
 合流して、作戦をヴェガ・キュアノス(ea7463)が簡潔に悠に説明する。
 その説明を聞いて、絶句しているのは悠だけなのだった。
「‥‥お、俺が本当にそれやるの?」
「無論じゃ!」
「ゆーちゃん、がんばって『五本剣』をおびきだすのー♪」
「プ、プリンセスまで‥‥!? 冒険者っていうのは本当に天界人使いが荒い‥‥!」
「がんばれ、俺も遠くから見守っているぞ。心はいつも一緒だ」
 唯一まともだと思っていた風烈(ea1587)からもそう言われ、悠はがくりと肩を落とした。
 もうこれではやるしかないじゃないか‥‥!
「では、炊き出しの準備にかかりましょう。大きなイベントで誘きだせるかもですしね」
 ルイス・マリスカル(ea3063)の一声により、作戦は決行されるのだった。

●イベント開催、どんとこい!
「みなさーん! 炊き出しが出来ましたので、どうぞご自由に並んでくださーい!」
「‥‥ごめんなさいね、悠様。そんな格好させてしまって‥‥」
 ジャクリーン・ジーン・オーカー(eb4270)が笑いを堪えながら謝罪する。
 悠はルイスの手により、完全なマスコット人形『フェレットさん』とされていたのだった。
 しかも、誰がつけたか『抜かないでください』という看板までつけたされていた。
「これでイタズラしたくなると思うのー♪」
「そうだな、後は誘きだされるのを待つばかり、か」
「な、なんで俺ばっかこんな役周り‥‥?」
 悠がうるうると涙流すも、ヴェガや烈は見ないフリ。
 だって此れが一番効率的だから、なんて思っているわけではないと思う。
 ‥‥多分だけれど。
「そう言えば、アジトとか探すんだっけか‥‥大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃよ。追跡に適した仲間がおるでのぅ♪其れよりもほれ、パフォーマンスをせねば誰も寄ってはこんぞぇ?」
「看板抜かないでくださいとか書いてあるわけで動いたら余計抜かれそうな気もしないでもないんだけどなー!?」
「抜かれたらパフォーマンスですよ? 抜かないでって書いてあったのに‥‥みたいに言ってその人の後を追い廻して‥‥」
「其れは逆にイタズラしてる!!」
 悠の鋭いツッコミがルイスに炸裂する。
 其れがパフォーマンスとなったのか、炊き出しには行列が出来ていた。
 特に子供が多く、悠にも興味心身のようだ。
「わー、フェレットだぁ♪」
「かわいいのー♪」
「ねーっ♪」
 はしゃぐ子供達。その子供達に混じってレン・ウィンドフェザー(ea4509)もはしゃいでいる。
 領主だとバレないように、子供心爆発させてここぞとばかり悠を弄っているようにも見えなくはない。
「イタイ! イタイっての!」
「まぁまぁ‥‥ここは我慢です、悠様」
「ジャクリーン‥‥本気で死ぬほど痛いんだけど‥‥」
「子供というのはそういうものです」
「‥‥‥‥鬼」
「これも依頼の内です、お許しを」
 ジャクリーンのその言葉は笑顔とは裏腹である。
 悠も、試練だと思い仕方なく子供達の遊び道具にされる事にした。
 ‥‥結果、身も心もズタボロにされたようでした‥‥。

●五本剣参上!
 ようやく大きなイベントも昼下がりとなり休憩へ。
 五本剣は未だに現れない。
 悠一人だけ肩で息をするのだった。
「だ、大丈夫か?」
「烈のバカ‥‥! 俺、もう婿に行けない‥‥!」
「いや‥‥婿入り希望だったのか? ではなくて‥‥そんなに玩具にされたのか?」
 苦笑いの表情を浮かべる烈。悠は完全に疲れきったご様子だった。
 そんな時である。烈は何者かの気配を察知すると仲間への合図を送る。
 仲間も小さく頷いて準備を整えるのである。
「それじゃ、悠。後は頑張ってくれ」
「え?」
「また後で会おう。その時に倒れてなければだが」
 そう言い残すと、烈も自分の持ち場へと戻る為身を隠した。
 悠にとっては雲行きが怪しいも当然。何か嫌な予感さえ感じ取れてしまう。
「フェレットの耳にポンポンをつけるなり!」
「いや、額に肉でござる!」
「いっその事、手首にも肉でござるよー!」
 喚きながら出てくる五人の剣士。
 それぞれ赤、青、黄、緑、黒の五人組。
 天界人の悠には、此れは戦隊ヒーローだとしか思えないものであった。
「う、うわー!? 変な奴等が来たー!?」
「変とは失敬な! これでも我等立派な任務を持ってここにいるのだ!」
「立派な任務って何!?」
「お主に恐怖を与える事である!!」
 そう告げれば五人組は悠を捕縛しようと一斉に飛びかかる。
 もみくちゃにされながらも悠は、とりあえずメガネだけは守ろうとするのだが‥‥。

「おぬしらの悪行、しかとこの目に焼き付けたわ!」
 ヴェガの声が木霊する!
 五人組は何ヤツ!? と警戒心を露にするのだった。
 そして、ある民家の屋根を見れば冒険者達の姿が其処にあった。
「そちらが五本剣ならこちらはウィルの七英雄っ! 藁人形とゴーレム程に格が違うぞえ!」
「な、なんと!?」
「ぐぬぬ、負けてはおれぬよ!! 五本剣はアトランティス最強なのだ!!」
「己の力に溺れる者はより大きな力の持ち主の前には必ず敗れ、己が不明を悔いるはめとなる…人それを『必滅』という‥‥」
 烈からは何処かで聞いた事があるような台詞が飛び出す!
 此れには五本剣も少し感動してしまう。カッコイイ、けれどこのまま引き下がればプライドが許されない!!
「まったく。人がパスタとスープを作っている間に奇襲をするなんて、少しは考えなさいっ!」
 ルイスの怒る所が違うというツッコミ、今の悠には其れが出来ない為、すんなり通ってしまう。
「こどもこころにきずをつけよーだなんてっ! ゆーちゃんがかわいそうなのー!」
 レンも負けじと登場。そのレンのお怒り顔は、子供好きな人にとっては恐ろしいものだろうが。
「まったくです。復興も間近だと言うのに邪魔するなんて。射抜いてしまいますわよ?」
 民家の屋根の上でジャクリーンが弓を構える。
 此れでは、五本剣は射抜かれてしまう!
 そんな危機を感じたのか感じてないのか。
 それとも自分達の紹介が終わってない! と言わんばかりに五人はそれぞれ整列する。

「炎の剣、一!」
 どこぉんという爆発音。その演出も、五本剣のメンバー達が行っている。
 格好よく見えるのだが、何だか情けなくも見える。
「氷の剣、二!」
 同じく爆発の演出。どうやら、彼等は此れを繰り返すつもりのようだ。
 冒険者達は既に呆れている。
「雷の剣、三!」
 しかし、悠は少し感動しているようだ。
 天界の子供達が気に入ってるものがこんな間近で、しかもアトランティスで見られるなんて‥‥。
「風の剣、四!」
 けれども、同じようなのをじーっと眺めていられる程、気は長くはない。
 だがせめて聞いてあげようという冒険者達の情けから、そのままにされる。
「闇の剣、五!」
『我等、アトランティス最強連隊『五本剣』!!』
 最後の大きな爆発。
 其れが終わった後、ヴェガはふぅむと唸って暫し考え込んだ。
 そして、びしっ! と五本剣を指差すと指示を出したのである。
「ボコッてしまうのじゃ! 何か見るからにもきなくさいのじゃ!」
「なんの! 我等の心は何時も一つ!」
「熱き炎がお前を焦がす!」
「凍てつく刃がお前を射抜く!」
「轟くいかずち、お前を狙う!」
「怒涛の疾風、お前をさらう!」
「無限の闇が、お前を包む!」
『これぞ、最強の証なりっ!』
「もう戯言は結構ですから‥‥」
 完全に呆れかえったジャクリーンはそう言うと、矢の雨を降らせる。
 勿論、地上に降り注がれる為、悠にも被害が出る確率は高い。
 大丈夫! 彼なら避けてくれるだろう!
「ぬ、ぬぬぬぅ! 飛び道具などと不埒なものを使いよって!」
「正々堂々と勝負致せィ!」
「なんか、私も隠れているのがバカらしくなりました‥‥」
 インビジブルで隠れていたイリア・アドミナル(ea2564)が溜息一つついて姿を現した。
 そして次の瞬間、ウォーターボムが五本剣を襲うのだ。
「ぬおっ! 魔法などとそんな卑怯な‥‥!」
「ち、ちょっとまった! ‥‥君等、炎の剣とか色々言ってたけれど‥‥まさか‥‥」
「魔法なんてもの使えるわけがなかろう!」
「我等は純粋な剣士なのだぞ!?」
「魔法なんて、邪道である!」
「じゃあなんで炎とか水とか名乗ってんだー!?」
「ほら、イメージでござるよ、イメージ」
 ほんわか顔でそう説明する五人。その五人を見て、悠は頭を抱え込んでしまうのだった。
 本当にこいつ等がテロリストの集団の一味で、町を恐怖に落としいれようとしているのだろうか‥‥?
 ただのバカ集団にしか見えないのに。
 彼の苦悩は何処までも続く。

「しかし、このままでは埒があかないな」
「烈さん、貴方の拳で全員気絶させるというのはどうでしょう?」
「‥‥殴る気もしなくなってきたんだが」
 そりゃそうだ。こんな阿呆な集団に本気で拳を向けるとか‥‥
 自分もマヌケの御仲間入りになってしまう。
 シリアスなんてないんです。ネタしかないんですよ。
「では、主等に聞くのじゃ! 主等のアジトは何処じゃ? 素直に教えれば見逃さなくもないぞぇ?」
「アジト?」
「おい、そんなのあったか?」
「いや、俺達入れて貰えないしな?」
「今まで野宿が精一杯だったからなぁ‥‥」
「あるんだったら俺達も入れて欲しいぐらいだよな?」
 口々にそう言ってのける五本剣。
 どうやら彼等は本当の下っ端であり、この阿呆加減からテロリスト集団より邪魔者扱いされているようである。
 更には、アジトからも締め出されており、作戦には参加出来ないという事らしいのだが‥‥。
「そんなわけで我等はそんなアジトなんぞ知らんッ!」
「威張って言う事じゃあないな!?」
「いや、だって本当に知らないでござる」
 またもや悠のツッコミにほんわか顔で五人組はそう答える。
「しかし‥‥アジトを知らないという事は、彼等を捕まえてもどうしようもないのでは?」
 と、ルイス。しかし、レンが首を横に振る。
「なんにしても、このひとたちは街をあらすのー。だったらじけいだんいきなのー♪」
「何の! 我等とて自警団如きにつかまる程弱くはないわっ!」
「でも戦闘能力ないわけだよな?」
「いやー、最近歳でござるから無理な運動は出来ないでござるー」
 悠のツッコミに必ずついてくるほんわか顔の五人組。
 シリアスの時に出ていればもっと格好よかったのだろうなぁ‥‥とイリアは心の中で呟くのだった。
「では、質問を変えるのじゃ。主等を雇った奴は何処の誰じゃ?」
「はて、誰でござったか?」
「とぼけると痛い目に合うのは其方なのですが‥‥」
「いや、本当に覚えておらんのだ」
「‥‥アンタ等、歳幾つよ?」
「‥‥‥」
 沈黙する五人組。どうやら烈の質問はタブーだったようだ。
 この五人組は物覚えが悪いのだという事で烈の中では決着がついた。
「何も知らんのであれば成敗すべしじゃのぅ。烈殿、頼めるかぇ?」
「承知。さて‥‥ふっ飛ばすぐらいは出来るだろう」
「くっ! これはピンチだ!」
「こうなったら逃げるぞ!」
「逃げても私達は追いますが‥‥って何もされてないのに逃げるんです!?」
「ふはははは! 我等は血を好まぬのだぁ!」
 あんな怒涛の自己紹介しておいて、そんな事を言うのはこの口か。
 とかやってやりたいと思ったルイス。
 されど、その五人組の背後には巨大凧が現れた!
 五人は次々にその凧に張り付くと、凧はふわふわと空へと舞い上がって行く。

「ふはははは! さらばだ、諸君! この勝負、我等の勝ちである!」
「な、なんか気に食わないですわ‥‥! 矢で撃ち落としてもよろしいかしら?」
「いや、ジャクリーン。その必要性はないと思う」
 悠は溜息混じりに立ち上がるとジャクリーンにそう告げる。
 冒険者達は首を傾げて悠とその凧を交互に見やる。そして、何が言いたいのか分かったのだ。
「凧なんて一人乗りじゃないか。其れに五人乗るって事は、物理的にも重力がかかるわけで‥‥」
「墜落、ですか」
「うん。なんていうか、自滅に近いと思う‥‥」
「あれがアトランティス最強か‥‥」
「確かに、ある意味最強ではありましたね‥‥」
 ルイスと烈がそう言うと、他の冒険者達は苦笑い混じりの笑みを浮かべるのだった。
 本当に絶対無敵な阿呆揃いだと‥‥。

●結果良ければ全てよし
「しかし、本当に疲れたな‥‥」
「みんななんかまだいい方だ。特に俺なんかもう‥‥」
「ホホホ‥‥まぁたまにはよいではないかのぅ?」
「ヴェガ、たまになら確かにいいけど、俺はしょっちゅうなの!」
 涙がまたうるるーと流れる悠。ヴェガにとっては面白い道具のままなのである。
 炊き出しは、騒ぎの後も続けられていた。
 エプロン姿のルイスはある程度様になっており、子供達と戯れる姿は保父さんみたいなのである。
 子供達もお腹いっぱい食事を食べて、満足したら悠と遊ぶ。
 ずっと此れの繰り返しであると言ってもいいのだが‥‥。
「‥‥さて、本命の方はどうであったのかの?」
 ヴェガが様子見に来ていた傭兵である風のウィザードに尋ねる。
 あまり話せないぞ? と前もって念を押し、プリセンスでもあるレンを呼んで話を始めた。
「ラシェル達は今回、領主の看護についていたのだが‥‥一つ情報があってな。其れの準備を進めている」
「じょうほう? なにかあったなの?」
「あぁ‥‥今回、あの五本剣のような輩を纏めているのは人間の集団ではないようだ。まだ確定ではないのでそれ以上の報告は出せないのだが」
「‥‥ふむ。ゲリラ集団の中に人外がいる。そう見てよいのじゃな?」
 ヴェガが確認するかのように尋ねると、傭兵の男はコクリと頷いた。
 どうやらゲリラ集団はそれなりの規模だという事が判明し始めたという事。
 そして、そのゲリラ集団の狙いは作物が豊富に実ると言われているフォルセの土地。
 更にはそのフォルセの実権であるようだ。
 前回は領主を狙ったものではあるものの、領主は寝込んだ。
 更には其れが旧だと知り、今は新領主の行方を捜しているとの事。
「‥‥そう言うわけだ。プリンセスは特に注意してくれ。冒険者の街になんかさせてたまるかと躍起になっているからな」
「わかったなの。できるだけみぶんはかくすなのー」
「そうしてくれると助かる。ゲリラ集団の中には魔獣使いがいるらしいからな、ヘタすればそいつが出てきかねん」
 そのつわものが出てくる前に、何としてでもゲリラ集団を抑えたい。
 そういう意向なのだ、と男は言う。
「其れで、今後はどういう方針なのじゃ?」
「暫くはお前さん達と悠で何とか表目を誤魔化して欲しい。ラシェル達が動いている事が相手に悟られてしまっては、此方は討たれてしまうからな」
「ほぅほぅ。次の依頼も楽しみというわけじゃな?」
「楽しいかどうかはお前さん達次第って事だ。領主から伝えろって言われたのはこれぐらいだな」
「じじは、調子どうなのー?」
 レンが心配そうにしながら男に尋ねる。
 男は苦笑いを浮かべながらこう告げた。
「今の所は軽い心労だ。其れと、誤解があるようだから言っておくが‥‥前回お前さんにサイレンスをかけた理由な‥‥?」
「‥‥」
「もし、お前さんがあのまま狭い城内であの魔法を放っていたら、城の物という物は壊れてしまうだろう? フォルセにはもう資金と言えるべきものが幾らもないんだ。もし、そんな中で物に被害が出たら‥‥」
「そういうことだったのー‥‥」
「お前さんの魔法は確かに凶悪なものもあれば、そうでないものもある。其れは認める。だが、凶悪でないものだからと言って、城内や屋内で其れを使えば、其れは凶悪にもなりうる」
 男は淡々とレンにそう告げる。誤解されたままでもよかったのだが、それでは自分が納得出来ないと説明を施したのである。
「恨むなら悠より俺にしておけ。俺が言い出して、サイレンスをかけたんだからな」
「そんなこと‥‥ありがとうなの。せつめい、してくれたから」
「そんなに言う事でもなかったろうがね。それじゃ、後の片付けは頼んだぜ? 俺はまた少し出なきゃいけないんでね」
 そう言うと、男は風と共に消えてしまった。
 レンとヴェガは其れを見送ると、ヴェガがレンの頭を撫でながら、炊き出しへと戻るのだった。

●炊き出し終了
 夕暮れ頃になると、炊き出しにと使っていた材料もなくなり提供は終了となった。
 子供達も帰路へとつき、ルイス達は後片付けに苦労していた。
 悠は、もうがっくりと真っ白になってうな垂れている状態である。
「大丈夫か、悠? 少し、水でも飲んだほうが‥‥」
「いや‥‥いいよ、烈。今何か口にしたら、俺‥‥君等に其れ吹きかけそう‥‥」
 怨が篭った目。ネタにされ、囮にされ、玩具にされ。
 散々だった天界人の目である。
「しかし、本当にいい囮っぷりではあったぞ?」
「囮というものは、適材な人でしかなれませんからね。悠さんには素質があるんですよ」
 フォローするかの如くルイスが二人の会話に口を挟みながら片付けをしている。
 その言葉を聞いて、悠は喜んでいいのか悪いのか分からなかった。
「其れで、あの後五本剣はどうなったんだ?」
「無事自警団に引き渡されたよ。凧は‥‥どっかの気に引っかかってたらしくてね。自警団のメンツも呆れていたよ」
 悠がそう伝えると、烈は苦笑いを浮かべた。
 あれだけの阿呆っぷりを見せる者達は早々といないからだ。
 そして、其れを相手にした自分達も少し疲れというか、呆れというか、情けなくも見えるのだが。
「で、五本剣から情報は聞き出せたんですか?」
「‥‥聞きだせるわけがない、と言いたいけど。結構そうでもなかったみたいだ」
「え?」
「凧から落ちた衝撃で色々と思い出したらしくてね。あのほんわか顔でべらべらと語り出したそうだ。ハーブティー貰った恩だとかで」
 自警団に捕らえられた後、彼等は暖かい飲み物をゲットしたばかりではなく‥‥
 夜風が当たらない、壁のある部屋もゲット出来たり。
 定期的な食事もゲットできたり、虫にも刺されないで済む!
 等と喜んでいたようだ。
 そして、其れを恩とし情報を提供したのである。
 その結果分かった事はただ一つ。
「彼等、あれで傭兵団体だったらしいよ?」
『‥‥え?』
「あれだけ血を嫌っていて傭兵団体って‥‥」
「というか、傭兵の皆さんに失礼な気もします‥‥」
「いっそ、和み傭兵となるが良かったと思うのじゃ」
 ヴェガがそう言うと、悠も其れに同意する。
 彼等なら他人を和ませる事が出来るのではないか? と。

 しかし、彼等は気付いてはいない。
 自分達は彼等のペースに飲み込まれ、彼等のペースで事が運んだという事。
 此れは、ある意味の敗北。

「ま、結果オーライって事で気にしなくていいんじゃない?」

 と、後の彼は語るのだった。