美味しい夢7〜幸せの味、希望の味

■シリーズシナリオ


担当:マレーア4

対応レベル:8〜14lv

難易度:普通

成功報酬:4 G 15 C

参加人数:10人

サポート参加人数:-人

冒険期間:04月27日〜05月02日

リプレイ公開日:2006年05月02日

●オープニング

 目を閉じると思い出す。
 囚われていた間のこと。
 それは確かに恐ろしく怖かったけれども、確かにあの人はいい人では無かったと思うけれども、痛い目に合わされ、最終的には殺されたようなものだったけれども‥‥決して非情な人物では無かったような気がする。
「死なれては困る」
 と与えられた食料はどれも、生野菜や果物、素材そのままのものだけ。
 肉類でさえ火を通す以外のことはほとんどしていなかったっけ。
「あの人は他人が料理したものは食べねえんだとさ、かといって自分で料理するわけでも無いようだが‥‥」
 見張りの兵はそう言って苦い顔をしていた。自分達の分だけでもと料理を許可してもらうのにどれほど苦労したかとそんな話だ。ちなみにアルシュの留守中、兵達に料理を作ってあげたりもした。それで隙を作ればという甘い考えはアルシュの帰還後、あっさりと潰されたのだが‥‥。
「食い物など身体を動かすだけのものだ。砂を食うのと大して変わらん」
 その言葉がどうしても忘れられない。
 戻ってきてから、事情の全てを聞かされてから余計に、自分の気持ちを持て余す。
 父さんの仇だというのに、何故かあの人物に敵意が持てない。どこを探しても怨みが出てこないのだ。
 それは殺されたと言うのにある意味、悔いの無い顔をしていた父の死に顔のせいかもしれないが‥‥。
「何か、できることはないのかな‥‥」
「お兄ちゃん。お店の修理の人が呼んでるよ〜」
「解った。今行く!」
 答えが出ないまま、彼は立ち上がる。とりあえず、今、しなくてはならないことの為に。

 依頼解決から数日後、冒険者達は話があるとギルドに呼び出された。
「ご苦労だったな。いろいろ大変だったみたいだが、上手く行ってよかったよかった」
 心からの笑みで迎えてくれた係員に冒険者達の頬にも思わず笑みが浮かぶ。
「アルシュに雇われていた兵達は、その殆どが金で雇われた傭兵だったからな。あんた達の希望通り罰金処分くらいですんだよ。ヤイム伯の力添えもあったしな‥‥」
 重傷、軽傷それぞれで、無傷で済んだ者など誰もいないが、それくらいは我慢してもらわねばならない。本来だったら犯罪に加担したことで投獄、下手したら死刑になってもおかしくはなかったのだから。
「だが、アルシュの方はそうもいかないだろうな。いくらヤイム伯が許すと言っても通り魔事件のこともあるし、アレフの父親、そしておそらくは‥‥ごろつきや他に何人も殺めている。事情聴取が済んだら‥‥極刑に近いものが適用される可能性は高いだろうな」
 土の魔法使いを拘束するのは正直とても難しい。彼らがその気になれば普通の牢獄などなんの意味も持たないからだ。だが、アルシュは逃亡を図る様子も無く、黙って牢屋の中にいる。何も語らず、何もせず、殆ど何も口にせずに‥‥。
「まあ、こればっかりはどうしようもない。本人もある意味納得しているようだしな‥‥。っとあんまし暗くなるなよ。そうそう、そんなことを話すために呼んだわけじゃない。これを渡すためだ。今まで世話になった冒険者達へってアレフと、シャルロット。そして、シャロンからだ」
「えっと、何々? 『宿屋兼食堂グローリデイズ 新装開店。感謝パーティ開催のお知らせ』?」
 差し出された羊皮紙を拾い読んだ冒険者に、そうだ。と係員は頷く。
「この間、火事になったグローリーデイズの修理も終ってな。改めて新装開店するそうだ。妨害も無くなって、疑いも晴れた。新しい従業員も入って、父親が亡くなる前に負けない店にするってアレフは張り切ってるそうだぜ」
 この手紙を持ってきたシャルロットは、病み上がりの兄を心配しながらも嬉しそうに話していた。
 伯爵家での豪華な暮らしも、今の彼らにとっては魅力は何も無い。
 あの家に家族そろって帰り、店を再び開けることこそが何よりの喜びなのだろう。
「で、開店にあたり常連客や、周囲の住人に向けての感謝パーティをする。その当日は世話になった冒険者達にぜひ、来て欲しいってことだ。宿代はタダだし、もちろん食べ放題、飲み放題。料理はアレフが腕を振るうらしいぜ」
「『天界人直伝の天界料理も特別に提供』ね。なるほど。元気になってもあの子らしいや」
「看板にするのではなく、こうして客寄せにする‥‥ね。これなら純粋に楽しんでもらうこともできるだろう」
 冒険者達は苦笑しながら思い出す。
 最初は、そう、ただの料理指南の依頼だと思っていた。
 あの頃から思えばアレフも変わった。だが、料理と店への情熱は変わってはいないだろう。
「せっかくだから、行ってやったらどうだ? あいつも冒険者達におそらく誰よりも来て欲しいだろうからな。あ、っとついでにこれも頼まれてくれ」
 小さな箱を係員は差し出す。報酬も出るからアレフに届けてやってくれと差し出されたそれに、冒険者の何人かは見覚えがある。
「こいつは‥‥」
「ヤイム伯からだ。中、見てもいいって言ってたぜ」
 ほら、躊躇う冒険者の前で係員は箱を開ける。その中に入っていたのは、数枚の古ぼけた羊皮紙だった。
「‥‥これは、何かのレシピ?」
「さあてな。伯爵は、自分にはもう不要の品だ、と言っていた。冒険者とアレフになら少しは意味があるかもしれないと。だから、届けてやってくれ。その後、どうするも自由だ」
 箱の蓋を閉じ、冒険者に向けて押し出す。
 それを受取った時、ほんの少し胸の中をいろいろなものが過ぎったような気がしたのは、おそらく錯覚ではないだろう。一人だけでもないに違いない。


「二十年か‥‥。何の意味も無いと解ってはいたのだがな‥‥」
 暗い牢獄の中で彼は小さく笑う。
 彼女は自分を裏切り「傷つけたこと」を謝った。
 だが、思うまい。身体の傷の痛みなどとるに足らないものだった。
 彼が暗い情念を燃やして復讐を思い続けたのは、失ったものがあまりにも大きかったからだ。
 商人など、無論、続けられない。
「過去ばかり見てたら先には進めない。 復讐を考える者は幸せになど、生きられないか‥‥」
 自分に幸せなどないと、二十年前から解っていた。
 それを、思い知ったのは‥‥あの日だったけれども‥‥。
 ふと、目を差し入れられた食事にやる。粗末なスープやパンと一緒に干し葡萄と胡桃が添えられていた。
 手を伸ばし、口に運ぶ。
「‥‥ふっ」
 ‥‥今まで食べてきたものと同じように、それは砂の味しかしなかった。

●今回の参加者

 ea0144 カルナック・イクス(37歳・♂・ゴーレムニスト・人間・ノルマン王国)
 ea0353 パトリアンナ・ケイジ(51歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea7378 アイリス・ビントゥ(34歳・♀・ファイター・ジャイアント・インドゥーラ国)
 ea8594 ルメリア・アドミナル(38歳・♀・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)
 eb0639 ジノ・ダヴィドフ(46歳・♂・ナイト・人間・ノルマン王国)
 eb3838 ソード・エアシールド(45歳・♂・神聖騎士・人間・ビザンチン帝国)
 eb3839 イシュカ・エアシールド(45歳・♂・クレリック・人間・神聖ローマ帝国)
 eb4278 黒峰 燐(30歳・♀・天界人・人間・天界(地球))
 eb4395 エルシード・カペアドール(34歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4410 富島 香織(27歳・♀・天界人・人間・天界(地球))

●リプレイ本文

●願いと招待
 ヤイム伯家は驚くほど静かだった。ほんの少し前まで一時、この家の「主人」の数は今の3倍いた。それは決して楽しい状況を生み出すものではなかったが、それでもお客がいて、人がいて笑顔があって家は活気に満ち溢れていた。
 今は、元に戻っている。
 ただ一人ベッドにまどろむ主は
「失礼致します。伯爵様。ご加減はいかがですか?」
 来訪者の訪れに目を瞬かせた。エルシード・カペアドール(eb4395)と名乗った鎧騎士は丁寧な礼を持って頭を下げる。
「突然の訪問と言う非礼。お許しくださいませ。此度はお願いと、ご招待に参りました」
「願いと‥‥招待?」
 首を傾げる伯爵にはいとエルシードは頷いて、にっこりと微笑んだ。

●開かれた扉 再び
 その日、現在休業中の宿屋兼食堂『グローリー・デイズ』は久しぶりにお客を迎えた。 閉じられた扉に微かなデジャヴを感じながらも元気良く彼らは扉を開けた。
「よう! 元気してたか?」
「シャルロットさん。お元気そうで何よりだね」
「あ! みなさん!」
 パトリアンナ・ケイジ(ea0353)の豪快な呼び声に黒峰燐(eb4278)の明るい笑顔。それに最初の時と同じ人物の、違う眩しい笑顔が答えてくれた。
 シャルロットは顔を輝かせ立ち上がり、厨房に向けて声をかける。
「お兄ちゃ〜ん。冒険者のみなさんが来たよ!」
 厨房に声が届いた証拠にバタバタと走って来る影が見える。
「うん、よきかなよきかな。元気そうで何よりだ!」
 満足そうな声が笑う頃、影は店の若き店主アレフとなって冒険者達の前に現れた。
「来てくれてありがとう。良かった。ちゃんと来てくれるかどうか、不安だったんだ」
「随分殊勝な事を言うようになったじゃないか。身体の具合はもういいのか?」
 からかいながら気遣うジノ・ダヴィドフ(eb0639)にアレフは勿論と笑顔で頷いた。
「元々大した怪我じゃないし、すっかり治ったからね。明日は新装開店。のんびりはしてらんないよ」
「ご招待とても嬉しく思いますわ。でも、ご無理はいけませんよ。明日には常連さんたちも大勢お見えになるのでしょう? 落ち着いて準備をなされませ」
 くすと笑いながらルメリア・アドミナル(ea8594)は諌めるように言う。
「まあ、どの程度来てくれるかは解らないけど、明日はパーっとやるよ。じいさんがくれた賞金がまだ残ってるからね」
 外には
『新装開店準備の為、休業』
 そんな木の札がかかっている。
 以前のような、先の見通しのつかない休業ではない。清潔で明るい店。古いがそれ故に落ち着く場所。一度は活気無く廃業寸前に追い込まれ、一度は心無い者達に汚された店。炎も上がり、二度とこの店に笑い声が聞こえることはないのでは、とさえ思ったのにここまで輝きが戻ったとは。
 さっき、ルメリアの言葉は世辞ではない。本当に、心から嬉しかったのだ。
「その荷物なんですか?」
 重そうに抱えてきたカルナック・イクス(ea0144)とアイリス・ビントゥ(ea7378)の荷物を受取りながらシャルロットは聞く。
 テーブルの上に広げられたのは、肉や野菜。香辛料などいろいろ。いろいろ。
「いや、自腹切るつもりだったけど、伯爵が出してくれるって言うんでご好意に甘えちゃったよ。厨房の手伝いと一緒に料理させてもらいたくってね」
「あ、‥‥私も、故郷の料理‥‥作って出したいんですけど‥‥いいでしょうか?」
 笑って頷き合う二人にアレフは、えっ? と目を丸くする。
「招待のつもりだったのに‥‥」
 のんびりしてよ。そう言いかけたのだろうが、
「心配はいらないよ。あたしは思いっきり楽しませてもらうから!」
「お手伝いさせて欲しい、とこちらがお願いするのですよ。‥‥この依頼をずっと一緒にやってこられた方々が笑顔でいる事は嬉しいですが、正直一人で大勢の人と歓談するのは私には無理ですし‥‥」
「一緒に料理するのもこれが最後になるかもしれないからね。俺が知ってることはできる限り教えるし、アレフさんの知ってることをいろいろ教えてくれないかな?」
 ねっ? とカルナックはウインクする。アレフは自分を見つめる冒険者達の顔を見た。彼らは特別な事は望んではいないのだ。ならば、いつも通りにした方がいいのかも‥‥。
「よし、解った。‥‥頼むよ」
 心からの笑顔とお辞儀に、冒険者達の首は全て迷うことなく縦に動いた。

●絶望の向こう
 店の掃除は終わり、明日の仕込み、下ごしらえも準備も終った。
「これで、明日を待つだけだね。きっと楽しいパーティになるよ」
 ふうと、ため息を吐き出した燐に、シャルロットははい、と暖かいハーブティを差し出した。
 春とはいえ、夕暮れは少し肌寒くなる。暖かいお茶はありがたかった。無論、燐だけにではなく冒険者全員と兄にも配っていく。
 ふと、扉が開いて、今までいなかった冒険者二人が入ってきた。
「ただ今戻りました。お手伝いできなくて申し訳ありませんでした」
「こんばんは。やっぱり夜は少し冷えるわね。私達にもお茶貰えるかしら?」
 エルシードは少し身震いをして笑いかける。はい、と厨房に走っていくシャルロット。
「おや、お帰り。どうしたんだい?」
 陽気に手を上げるパトリアンナに小さく頭を下げると富島香織(eb4410)は少し躊躇ってから、でも‥‥はっきりと口を開いた。
「今まで、アルシュさんの面会に行って来ました。エルシードさんが許可を取ってくれたので」
 一瞬で、和やかだった場が静寂に包まれる。今回の事件の首謀者アルシュ。彼は来週にも処刑されることが決まっていた。
 魔法使いの犯罪者に投獄や労役は無い。赦すか殺すか。常人と同じ扱いでは勿体ないし、重用しないならば殺さないとどんな仇を為すか解らないからだ。
 捉えられて後、自らの罪をあっさりと認めたアルシュは、生存の可能性。つまり心を入れ替えて領主の為に働くと言う選択肢を放棄したらしい。
 彼の溜め込んでいたものを少しでも聞き出してあげられたらと思った、香織の思いをアルシュは鼻で吹き飛ばすように笑ったものだ。

『話すことなど何も無い。こうなった以上‥‥自分の不幸自慢をするつもりは無いしな』

「‥‥彼は、既に生きるということに気力や価値を失っているようです」
 香織は彼との会見を思い出して、唇を噛んだ。シャロンとジェラールに裏切られて後、彼は人を信じるという心を失った、と言う。自分の食べ物を子供の頃から作ってきた料理人が消え、物を食べることさえできなくなって‥‥

『今の俺には物の味が一切解らない。何を食べようと砂を噛んでいるのと同じだとでも言えば、満足できるのか?』

「人間は何らかのショックや傷が原因で声が出なくなったり、味覚が失われる事があるらしい。話には聞いていたがまさか‥‥な」
 黙って話を聞いていたジノは腕を組んで唸る。信じる思いと食べ物の味。この世の楽しみを失った彼は、何かに縋らなければ生きていけなかったのかもしれない。それが復讐であると言うのは、あまりにも悲しいことであるけれど。燐は呟いた。
「彼も根っから悪い人じゃないと思う。あの涙を見たからね‥‥。人の想いって、とても奥深いものなんだと実感したな‥‥」
 同情などいらないと、彼は言うだろうが‥‥
「このままでは彼が余りにも救われない。だから‥‥アレフさん。お願いがあるんです」
「お父さんの味を再現してもらえないかな。この料理を食べた筈の人に差し入れしたいのよ」
 香織とエルシードの言葉と、突然向けられた話の矛先にアレフは目を瞬かせる。
「俺に? 父さんの味を? 無理だよ! やっと、自分の味が出せるようになったばっかりなのに。誰よりも父さんの味を知ってる人に半端なものなんか出せないだろ?」
 かさ。微かな音がしてテーブルの上にそれが差し出された。
 イシュカ・エアシールド(eb3839)が預かっていたそれは幾枚かの羊皮紙だ。
「宜しかったらこのレシピを。アレフ様のお父様が残したものだそうですよ」
「父さんのレシピ?」
 アレフの目の色が変わる。羊皮紙を繰り目を走らせる。文字を読めない者が少なくないと言うアトランティスだがこの兄妹は父と母から教育を受けているのだと言う。
「これは‥‥」
「なあ、アレフ」
 レシピに魅入るアレフの肩を、ジノはポンと軽く叩いた。
「それは親父さんがアルシュに食べさせる為に残した料理だ。だが、俺は思う。お前の言葉も料理も食べさせるべきなんじゃないかってな。例え、今はまだ父親の味に及ばなくても、アルシュはお前にとって父親を越える唯一の方法だと思う。お前はアルシュに会って何かを感じなかったか?」
「俺の‥‥料理」
 その時、はっきりとした返事はアレフからは戻ってこなかった。
「あれ? お兄ちゃん?」
 だが無言で立ち上がった彼は、シャルロットとすれ違いに厨房に戻っていく。
 手にしっかりと羊皮紙を握り締めて。
 彼がどんな答えを出すかは解らない。だが、それを見届けようと冒険者達は決めていた。例えどんな結果であろうとも‥‥。

●遠い思い
 翌朝。朝から店の前には驚くほどの人が集まってきていた。開店は昼過ぎからだというのに、扉の前から道の方へとワクワク並んでいる者が見える。
「うわっ。あんなに来てる。まさかこんなに来てくれるなんて‥‥」
 通いの手伝い人に声をかけられて外を見たアレフはビックリした、と目を瞬かせた。
「お客さん、減ってたのに凄いね〜」
 シャルロットも驚きの顔だ。
「あら、誤解さえ解ければアレフさんの店と料理が素晴らしいことは解っていますもの」
 当然、という顔でルメリアは出された朝食と言葉を口にする。
 微笑む冒険者達。ルメリアがここに来る前にいろいろ動いていた事を彼らは知っている。
『もう一度、グローリー・デイズに来て頂けませんか? かの店はいつも訪れる人の幸せを願っておりますから‥‥』
 そう言ってあの事件の後、足が遠ざかった常連達の元を一人一人、一軒一軒彼女は訪ねて回ったのだ。訪問を受けた者達は誰も彼女を拒否しなかった。もとより根拠の無い中傷に踊らされた自分自身を恥じていたところもあったのだろう。無言で話を聞き、頷いてくれた。
「私は、ほんの少し力添えをしただけ。元々、アレフさんとお父様が信頼という財産を積み重ねていたのですもの」
 もし、ルメリアにそのことを問うたら、きっとそんな風に笑ったことだろう。
「ほらほら、じゃあ、もう少し準備しておいた方がいいんじゃない? 僕買出ししてくるよ」
「料理の仕上げに入っておこうか。きっといくら用意しておいても足りなくなるからね」
「‥‥あの、少しお肉‥‥貰ってもいいですか? 店の裏に‥‥子供達が待っているんです」
「では、私達は開店の準備をしましょう。シャルロットさん、お手伝いをさせて下さい」
「おーい、店の外に酒が届いてるぞ。凄いな、いくらあるんだ? これ?」
 賑やかに動き出した店をそっと抜け出す冒険者が一人、二人、三人。彼らの手には、白い布がかけられた皿が握られていた。

「あんたも馬鹿だよね〜。20年も悶々としてないで、とっとと憂さ晴らしを商売にしちまえばよかったのにさ♪」
 軽口を叩くパトリアンナを無視するようにアルシュは肩を竦めた。こんな牢屋まで嫌味を言いに来るなんて暇な奴だ、と目と、背中が言っている。
 冗談だよ、と笑うパトリアンナ。冗談であるのは事実だが同時に本気でもある。まあ、そんなに簡単に切り替えられるものであれば彼は今ここにいる筈ないのだが‥‥。
「正直、あたしはあんたに感謝さえしてるぜ。この依頼。単に料理を食らうだけのあたしはホントは役立たずだったんだ。あんたが戦をくれるまではね」
 これも冗談半分、そして本気半分だ。
「あたしは腐っちまってるから、崇高な思想もプライドも無い。ただぶっ倒すだけ、それが好きなだけ。そんなあたしが檻の外で、アルシュが中。本当、正義なんて幻想だね」 
「信じることも、正義も、夢も、希望も、そんなことは幻想だと最初から知っている‥‥」
「‥‥復讐を否定するつもりは無い。本当に復讐を決意した事のある人間にしか本当の気持ちは分からないだろうからな。あんたの苦しい思いは誰にも解らないように、怨まれる側、そして殺された側が何を思っていたかはあんたにも解らんだろうよ」
 全てを諦めたように呟くアルシュにジノは、共感するように言葉を返す。彼が寄り添っているのは、アルシュだけではなく今はいない誰かにも‥‥なのかもしれないが。
 返事を返すことなく、背を向けるアルシュにルメリアは持って来た皿を差し出した。
 食事を入れる入口からそっと中に入れる。
「アルシュさん、これ、差し入れです。ジェラルドさん、いえ、ジェラールさんが貴方の為に最後に残していった料理だそうです」 
「あいつが?」
「はい、残されたレシピでアレフさんが作ったものです。」
 この時、始めてアルシュは表情をハッキリ変えた。冒険者の方に向き直り、皿にかけられた布を外す。
「これは‥‥」
 ‥‥そこにあったのは天の腕の料理人と言われた男の全てを込めた、最高に贅沢な料理、ではなかった。これが名料理人が生涯をかけて出した答えだったのかと、知らない者が見れば落胆したかもしれない。
 しかし、冒険者達はそう思わない。
「この料理にはジェラルドさんとアレフさんの、料理で人を幸せにする事とは何かの道則が詰まっています。この料理を食べる事が、貴方とジェラルドさんの最後の勝負となるでしょう。貴方にはもう分かっている筈‥‥」
 何より、その料理を受取るべき人物は、込められた意味をちゃんと理解しているようなのだから。
 料理をじっと、睨むように見つめているアルシュの独房に、ジノは酒を一本、差し入れた。
「ゆっくり、味わってくれ。あ、これは差し入れ。同じ水でも酔える方がマシだろう。行くぞ、みんな‥‥」
 促してジノは仲間と共にその牢屋を後にした。
 安い言葉などかけられない。どんな言葉をかけようと、結局本人に届かなければ意味が無いのだから。
 だが、安い言葉と理解した上でパトリアンナは一言だけ残していく。
「悪者ってのは損な役回りなんだよ、マジで。損したな‥‥アンタ」
 遠ざかっていく足音を聞く。
 そしてアルシュは閉じた目を開いて、何かを決意するように皿に手を伸ばしたのだった。

●美味しい笑顔。美味しい夢
 チキンのタルト。野菜サラダ。ポトフ風スープに、リンゴの甘煮。そして‥‥ジンジャーブレッド。普通の食卓に並んで不思議の無いありふれた家庭料理。
「これが、ジェラルドさんの残したレシピですか。うん、美味しい」
 パーティ用に作ったアレフの料理を一足先に食べて、カルナックは頷いた。
「このチキンのタルト、ホワイトソースみたいですね。なんだか、懐かしい感じがします」
 日本で良く食べたグラタンや、シチューを思わせる優しい味は、胸の中を暖かくしてくれる。丁寧に作られたホワイトソースにはダマの一つも無く、ハーブの香りとチキンの歯ごたえと絶妙のハーモニーを奏でていた。
 他の料理も丁寧に、一つ一つ作られていて手抜きが無い。それがしっかりと味に現れていた。ありふれた料理でも作り方と材料でこれほど味が違うのかというお手本である。
「それに、このジンジャーブレッドの味‥‥。最初に食べさせてもらったあれと、同じ味してるよ。同じくらい美味しい」
 燐は目元を微かに擦った。涙が出るほど美味しい味。二度と味わえないかと思ったそれとの、再会だ。
「コツは本当に小さなことだったんだ。丁寧に一つ一つの行程を行っていくこと。そして、じっくりと時間をかけて熟成させること。そうすることで蜂蜜が、生地に染み渡り、味わいを倍化させていくんだってさ。焦ってた俺じゃ、できなかったってことだな」
 苦笑するアレフの手を、カルナックは見た。最初に出会った時よりも、傷が増え水や火で荒れてきている。でも、それこそが料理人の勲章なのだと、彼は知っている。
(「今の彼の腕ならきっと、新しい料理を教えたら教えた分だけ吸収してもっと高みに上っていく気がするな」)
 自分も負けてはいられないと思う。新しい料理、新しい思考。そして‥‥大切なことを吸収して高みへと上っていかなくては。
 彼に、負けてはいられない。
「ねえ、皆、そろそろ用意はいい? 外のお客さんたち待ちかねているよ」
 外を見ていた燐が厨房に声をかけた。いつの間にか、時間はぴったりだ。冒険者達も殆どが揃っている。
「ごめんごめん。じゃあ、始めよう!」
「OK! はい、では酒場兼宿屋、栄光の日、グローリー・デイズ新装開店です!」
 明るい声で燐は扉を開けた。ざわめく喧騒が、幸せな笑い声が、店に戻ってきたのだった。

 パーティは最初から、最後まで一時も楽しい笑顔が消えることは無かった。
「大いに飲んで、大いに喰う。この為だけに入った依頼だったんだからな。ガハハハ!」
 豪快に笑ったパトリアンナの側にはその言葉どおり、料理と酒が尽きることなく並べられた。
 一方
「クレープ追加お願いできますか?」
「もう少し、時間をくれないか? 結構手間がかかるんだ」
「分かりました。こっちの料理持っていってます!」
 用意された料理はあっと言う間にほぼ全部はけて、追加の料理がどんどん求められる。
 アレフと、カルナックはその準備に追われていた。
 アイリスの香辛料の利いたスープは好みが分かれたようだが、シンプルなパンであるナンは、どの料理にも合って次から次へと無くなって行く。
「今度、家でも作ってみようかしら」
 というある婦人に動物の耳のついたヘアバントをしたメイドが
「あ、あの、ナンでしたら、あたしがお店で焼いてます。よ、よかったら、その、来て下さい‥‥」
 そんな誘いをかけていたという。彼女が料理コンクールの入賞者で、この料理の作者だと聞いて彼女は詰め寄って作り方を熱心に聞いていた。
 一方
「いや、何か落ち着くんだよな、ウェイターやってると‥‥」
「好きでやっていることですのでお気になさらず。人付き合いはどうも苦手なんです。『仕事の手伝い』のほうがまだ気が楽ですよ」
 とこのパーティの一番の主賓であるところの冒険者達はその殆どが店の手伝いに徹していた。
「‥‥う〜ん、塩の質も鳥の質もいい。これでタレがあれば言うこと無いのに‥‥」
 竈の一つに鉄棒を並べ、木の串に差した鶏肉を焼く燐は、指に付いた塩と、鳥の油をぺろりと舐めて呟く。頭にはシャルロットから借りたハンカチの鉢巻。服の袖は捲られて、腕には汗が滲んでいる。
「これ食べちゃうとブロイラーなんて食べられないね‥‥。うん、おいし♪」
 焼きたての肉を歯で引っ張って口に運ぶ。歯ごたえと、深い肉の味わい、そして噛み締めた肉汁が口の中に広がっていく
 故郷を思い出す『焼き鳥』の味だ。
「あの、これ持ってってもいいですか? お料理もう足りなくなりそうで‥‥」
 シャルロットが躊躇いがちに声をかける。手に食べかけの串を持ったまま、少し考えて燐は笑った。
「えっ? あ‥‥いいよ。皆に食べてもらって!」
「はい。ありがとうございます」
 運ばれた料理に、食堂の方から歓声が聞こえてくる。
 アレフや、料理人達の気持ちを少しだけ体験して、燐はまた炎に向かった。
「人が自分の作ったものを、美味しいと思ってくれるって、いいもんだね」
 そう、小さく呟いて‥‥。

「見てのとおり、もう、彼らの事は心配要らないでしょう」
「そのようだな。世話をかけた‥‥」
 周囲が暗くなりかけているのに、いつまでも明るいグローリー・デイズ。それを遠巻きに見つめる人物達の中に、ソード・エアシールド(eb3838)の姿があった。
「いや、俺は最後の決戦に参加しなかったのであの中に入る資格は無いと思っている。だが‥‥あえて、こんなことをしているのはイシュカ‥‥相方がどうしても気にしていたことがあって、確かめておきたかったのですよ」
 横に立つ人物にヤイム伯と呼びかけて、ソードはその質問を発した。
「アレフ殿とシャルロット嬢、それにシャロン殿がヤイム家関連の騒動に2度と関わる事がないようにすることはできるのでしょうか? 3人共グローリー・デイズで家族揃って店を続ける事が一番の幸せのようですし。家族や血縁の絆は尊いものですが‥‥心配性の仲間が心を痛めているのは見たくないですので」
 それは、彼自身も持ち続けていた心配だった。
 ヤイム伯にはシャロン以外の子は無く、後継者もいない。遠縁のガイン卿が継ぐ予定だったのであろうが、利用されていたとはいえ義父に毒を盛るような者が貴族では、この国の将来さえも不安になるというものだ。
「‥‥心配はいらん。あの子達がそれを望まぬのなら無理強いするつもりは無いからな‥‥」
 確約したヤイム伯の言葉を聞き、ソードはそれ以上の問いを止めた。うやむやにはしたくなかったが、彼がどのような手段を執るかは今後の事、きっとアレフたちにとって悪いことにならないように、してくれるだと確信できたから。
「老は、行かれないのですか?」
 店を、その彼方にいるであろう者たちを細い目で見つめながら佇む老人に、ソードは声をかけた。エルシードから声をかけられ、アレフからもこのパーティに誘われていた筈なのに、この老人は最後まで顔を出す気は無いと言う。
「‥‥見舞いに行った辺り、シャロン殿も家族は大事だったみたいだし‥‥完全に過去を断ち切る事なんて出来やしないのは、貴方が一番良く知っているんじゃないか?」
 敬語ではなく、ふと本音が混じった言葉が口からついて出た。ヤイム伯は黙って微笑む。
「もう少し素直になって、孫の料理を楽しまれたらいいのに?」
 伯は答えなかった。ただ、その言葉に眩しそうに微笑むと、また店に目線を送る。ソードは、もうしばらくそれに付き合うことにした。

 差し出されたのは、銀のスプーン。
「これは?」
 香織はそれを受取り、差し出した人物との間の目線を何度も交差させた。
「私からの、感謝の気持ちです。受取って頂けませんか?」
 差し出した人物、シャロンは小さく笑ってそう言った。
「お礼? 私は謝りたかったのですが‥‥。あの場では適切だったと思って行動したとはいえ、非常に失礼なことに違いはありませんし、言葉で説得できずに手を出してしまうのは、カウンセラーとして失格でしたからね」
「いえ、私は‥‥甘やかされていましたから。昔も、今も、今までずっと‥‥」
 それを教えてくれた。とシャロンは香織に頭を下げた。
「私の罪は、きっと、甘やかされ、いつも守られ、辛いことから逃げてきた事なのだと思います。もし、私が最初からアルシュやお父様とちゃんと向き合い、この事を処理していればこんなことにはならなかったと思うのです。私が、アルシュとあの人の運命を狂わせ、結果として奪ってしまった。‥‥でも、もう逃げません」
 彼女は顔を上げた。
「私は、あの子達の母親ですから。今まで守られてきた。でも、これからはあの子達と、あの人が残してくれたこの店を守って見せます。約束します」
「解りました。これは、その約束に‥‥」
 香織は手の中のスプーンを握り締め頷いた。それに答え頷く二人の上に、柔らかなメロディーが静かに響いてきた。

 パトリアンナは「この酒を美味く呑める奴!」
 大きな声でリクエストをする。
 陽精霊を称える歌を、歌い終えたジノは、さて、と首を捻った。料理も一段落して、酒の席の騒ぎも落ち着き始めた頃合。何を歌おうか。と。
「ジノさん、こんな曲弾ける?」
 簡単なハミングを口ずさむ燐の唇を見つめると、なんとかなるだろうと頷いた。
「じゃあ、お願い。古い歌。思い出の向こうに、きっと光はあると‥‥」
 燐はジノのリュートの音色にそっと、自らの思いを伝える歌詞を乗せた。地球の英語で歌う。
 一時、静かな静寂が酒場に広がった。誰もが、心に母国語となって聞こえるその言葉に聞き入った。
 未来を信じる、明日を夢見る者のバラードを燐は歌う。この場にいない者達にもそれは伝わると信じて‥‥。
 音楽を肴に飲む酒は、確かに美味しかった。

「これ、昔父さんが良く作ってくれたんだ。干し葡萄と胡桃の菓子。大事な人も好きだったって、言ってさ。父さんは、きっとあんたの事忘れて無かったよ。俺も、あんたの事、嫌いじゃない」
 階段の影に隠れていたエルシードは、そんな言葉と、遠ざかっていく足音を確認して、姿を現した。暗い牢屋の中で、壁に背をつけ一人立つアルシュの姿は、以前来た時と同じ。
 だが、足元に転がる皿は中身が無い。
「アレフさんが、来てたのね? それは、彼の差し入れ? 干し葡萄と胡桃って、貴方の好物だったんだ?」
 返事は無い。だが、胸に浮かんだことがある。ずっと、思っていたこと。深く息を吸い込んでエルシードはそれを口にした。
「ねえ、殺してでも自分のものにしたかった?」
「!?」
 カンテラ一つの灯りしか無い牢屋の中で、彼の表情は見えない。だが、微かに反応した肩にエルシードは自分の考えを確信する。
 昔は、本人すらも気付いていなかったかも知れない。その感情は所謂、恋愛とは異なる所にあるのかもしれない。
 だが、おそらく‥‥
「貴方が、本当に大切に、失いたくないと思い、裏切られた事を憎んだのはジェラールさんだったのね?」
「面白い事を言う‥‥。何故、そう思う?」
「さあ? でも、どうでもいいことよね。はい、これあげるわ」
 微かに揺れる声に、答えてエルシードは数枚の羊皮紙を、そっと牢屋の前に置いた。
「アレフ君の中で今でもジェラールさんが生きてるように。貴方の中でも生かす事ができるわよ。20年で魔法の達人になれたのなら、今から別の道を究める事もできるでしょ」
 それだけ言って、返事も待たず彼女は背を向け去った。だから、それから何が起きたかは知らない。彼が、どうなったかも知らないと、彼女は言っていた。

●栄光の日々の始まり
 翌日、冒険者達はグローリー・デイズを後にした。包まれた土産の料理、振舞い酒を押し付けられて手はいっぱい。だが、それ以上に心の中に溢れた思い出もいっぱいだった。
「イギリスっぽい料理も食える軽く立ち寄れる料理屋の出現。あな嬉や♪ また寄らせてもらうからな」
「これで終わりじゃあない。アレフさん。困った事があればいつでも声を掛けてくれ、必ず手助けに駆けつけるからさ」
「ああ、本当にありがとう。また、いつでも来てくれ」
「‥‥おいでを、お待ちしています」
「泣いたらダメだよ。ウエイトレスは笑顔が一番」
 泣き出しそうな顔のシャルロットの涙を拭いて、燐は笑いかけた。
「また、いつでも会えます。みなさんが忘れない限り。私達を忘れないで下さいね」
 香織の言葉にはいと、シャルロットは頷く。小さな贈り物を握り締めて。
 一つの区切りはついた。でも、これは縁の始まり。未来の始まりなのだ。見送られる冒険者と、見送る家族達。さよならの言葉は交わさずに彼らは笑顔で、手を振り合った。

「結局天上の味、ってのは何だと思う?」
 パトリアンナがぽつり、呟いた。
「きっと、誰かが誰かの為だけに作った料理。世界に二つと同じものの無い心の篭った味なのではないでしょうか?」
「だとしたら、ジェラールさんの残したメニューも、間違いなく天上の味、だったわね。その心を受け継いだアレフさんなら、きっとこれからも大丈夫よ」
「ええ、そう私も思います」
 小さな店に明るい光が見える。朝の生まれたての光のせいだけではないだろう。きっと、あの店には栄光の日々が待っている筈だから。

 歩き出した冒険者の前に、今まで姿を見せなかった仲間が憮然とした顔で立っている。
「おや、ソード。どうしたんです?」
「皆、甘いな。信賞必罰は人が規律を守って生活する為には必要だというのに」
「? どういう意味です?」
「アルシュが逃げた。行方が知れんそうだぞ。お前らが唆したのではないのか?」
「「「「「「「「「えええっ?」」」」」」」」」」
 驚く冒険者達。その時
 ぱさり。
「えっ?」
 エルシードの顔に何か乾いたものが当たって落ちた。埃を払い、それを拾い上げる。
「これはハーブの束? あっ!」
 その時、彼女は人ごみの中に、アルシュの姿を見たような気がした。
 瞬きの間に人ごみに消えたけれどもあれは、間違いなく‥‥。
「‥‥そう」
 彼女はハーブの束を握って目を閉じた。
 自分の思いは正しいことではないかもしれない。けれども、彼がそれを選んだのなら願いたい。天上の味を体験した彼の心が変わったのなら。
 彼にもどうか栄光の日々が広がりますように、と。

 見上げる春の空は、どこまでも青い。
 冒険者と、人々の栄光の未来を、夢を信じられるほどに‥‥。