蘇るマイルストーン 〜野生の呼び声9

■シリーズシナリオ


担当:マレーア

対応レベル:9〜15lv

難易度:やや難

成功報酬:4 G 50 C

参加人数:12人

サポート参加人数:5人

冒険期間:12月28日〜01月02日

リプレイ公開日:2006年01月06日

●オープニング

 ドレスタットとアレクス卿の領地を繋ぐ、新たな街道。半年に及ぶ時間と多額の資金、そして様々な人々‥‥もちろん冒険者達も少なからぬ割合いを占める‥‥の多大な労力を費やしたこの道が、遂に完成の時を迎えようとしている。工事は最終段階に入っており、人夫達の名を刻んだ碑、功労のあった冒険者の胸像設置も準備されているとか。工事に携わる者達の表情は明るく、皆、最後の仕事に精を出していた。
「どうにかアレクス卿より課せられた工期は守れる、か」
 そう語るモリス・マンサールの表情には、しかしまだ安堵の緩みは見て取れない。冒険者達の報告から、ひとつの懸念が見えて来たからだ。具体的には、暗躍していた賊と、主街道の有力者達の関係。そして、賊を打ち払った後に出現した素人同然の密偵。これが意味するものは?
「何らかの形で、一連の事件に彼らも加担していたという事でしょうか。間接的な形ではありましょうが‥‥」
 部下の言葉に、頷くモリス。その多くは真っ当に成功した商売人や役人、貴族に準じる名誉ある人々も含まれている。彼らと森に巣食う賊がどういう経緯で結びついたかは分からないが、間道の完成は主街道にも影響を与えるだろうから、動機は存在している。
「何処かの陰謀好きなお方の差し金では?」
 その勘ぐりには、苦笑しつつ首を振る。
「その様に迂闊に動いてくれる者ならば、アレクス卿も苦労はしない。あるいは、ちょっとした示唆で煽るくらいの事はしたかもしれないが‥‥いやいやいかん、止めておこうじゃないか憶測で語るのは」
 これは私の職務の範疇を越えている。何より好かん、とモリス。
「とにかく。向こうがなお明確な敵意を向けてくるので無ければ、事を荒立てる必要は無い。後々の事はアレクス卿がお考えになる事。しかし、自分の尻に火がついている事くらいは知らせておかねば」
 そこで、と彼。
「彼らを式典に招いてみようかと思う」
 は? と惚けた顔の部下。間道開通の式典は然程派手なものになる予定は無いが、近隣の有力者を招くのはごく自然な事だ。実際に来る来ないは別にして、接触の口実としては申し分無いだろう。
「卿配下の者が直接乗り込んでは相手を萎縮させよう。また冒険者達に出張ってもらうとしようか。彼らには最後まで忙しい思いをさせてしまうが‥‥」
 その中で相手の真意を探り、無謀な行動に出ぬよう釘を刺し、対立する必要など無いのだと理解させられれば良いのだが、とモリス。甘過ぎはしませんか、と少々不満げな部下に、彼は言う。
「道を造る時ならば、障害は排除し、ただひたすらに道と対峙しておればいい。だが、造り上げた道を生かすとなれば、また違った配慮も必要になる。道は何処かに繋がってこそ道なのだからな」
 いやはや、アレクス卿はいつまでたっても楽はさせてくれんな、と肩をまわす。力を試されているのは、何も冒険者達ばかりではないのだ。

「冒険者の旦那方も、杭の1本、石のひとつも運んどきな、きっといい思い出になるぞってな事を依頼書に書いてもらってくれよ」
 ギルドに向かう技師に、ドニ達が声をかける。そりゃあいい、と笑う労役の村人達。彼ら雇われ人夫と村人達は、共に苦労を分かち合った事で随分と打ち解けた様だ。しかし、この事業が終わった後は、また新たな生活を見出さなければならない人夫達だ。その試練はこれから始まると言っていい。
 警備に駆り出されている訓練途上の猟犬とシフール達。いつもは仕事熱心なポロも、今は心配事が先に立つ様で。
「本当に大丈夫なのかな長老様は‥‥それ以前に、ちゃんと分かってんのかなぁ、ああ心配だ‥‥あああっ!?」
 いきなり走り出した犬の背から落ちそうになり、慌ててしがみつく。式典の日は隠れ里のシフール達の公式デビューの日でもある。招かれた長老様は、相変わらずほっほっほ、と笑うばかりでポロをやきもきさせているのだ。心配し過ぎだよ、と笑うレクに、彼はむっとした顔。
「わかってねーな。偉い人らに一目置かれるか、そうじゃないかは大切なんだ。冒険者が言い出してくれた、駅だっけ? 道での仕事にうちの里から人出すかどうかってのも、それ次第で変わるかもしれないだろ。ただ森に住んでるだけの俺達になるか、やっぱり森と街道に必要な奴らだと認められて、意見を聞いてもらえる立場になるか‥‥あのケルピー達の言い草じゃないが、俺達の考え無視して森がどんどん好き勝手にいじくられたりしたら、お前我慢できるか?」
 首を振ったレクに、そうだろ、だったらちゃんと認めさせなきゃいけないんだよ、とポロ。シフール達の働きはそれなりに認められて来たが、ポロはもっと確かな手ごたえが欲しいと考えている様だ。
「関わる冒険者もひよっこなら、造ってた俺らもド素人。それに、この森しか知らないシフール達ときたもんだ。駆け出しの冒険のと、よくもまあ名づけたもんだよな」
 だが、見事駆け抜け切ってやったぜざまあみろ、とドニが笑う。
「式典なんて、堅っ苦しい話をお偉い人がするだけだろ? 連中が呼ばれるなら、またみんなで旨い酒でも飲もうか。おーいレク、ポロ、ちょっと来いよ!」
 それが、彼らにどんな変化をもたらすかは分からないが。
 間もなく道は開かれる。

●今回の参加者

 ea2100 アルフレッド・アーツ(16歳・♂・レンジャー・シフール・ノルマン王国)
 ea3630 アーク・ランサーンス(24歳・♂・神聖騎士・エルフ・イギリス王国)
 ea3693 カイザード・フォーリア(37歳・♂・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea6855 エスト・エストリア(21歳・♀・志士・エルフ・ノルマン王国)
 ea8650 本多 風露(32歳・♀・鎧騎士・人間・ジャパン)
 ea8928 マリーナ・アルミランテ(26歳・♀・クレリック・エルフ・イスパニア王国)
 ea9968 長里 雲水(39歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb0132 円 周(20歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb0746 アルフォンス・ニカイドウ(29歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb1158 ルディ・リトル(15歳・♂・バード・シフール・イギリス王国)
 eb2244 クーリア・デルファ(34歳・♀・神聖騎士・人間・ノルマン王国)
 eb2448 カルナックス・レイヴ(33歳・♂・クレリック・エルフ・フランク王国)

●サポート参加者

オリバー・マクラーン(ea0130)/ 陣内 風音(ea0853)/ 円 巴(ea3738)/ シヴァ・アル・アジット(ea8533)/ リュカ・エルバジェ(eb3124

●リプレイ本文

●シフール達と
 季節は真冬。寒さがますます強まる中にあっても、里のシフール達は陽気に穏やかに日々の暮らしを営んでいる。
「しふしふ〜」
「しふしふようこそ〜」
 いつもの様に冒険者を迎える声。何もかもが、変わらない。
「聞いてくれよ長老様と来たらもう‥‥」
 ポロが思わず愚痴るのも、それ故の事である。ほっほっほ、と笑いながら髭を扱くばかりの長老様に、彼はやきもきし通しだ。
「心配しすぎだと思うんだがな。あの爺さん見かけはああだが、結構しっかりしてるぜ。もう少しお前らの長老を信用しとけよ」
 長里雲水(ea9968)に笑われて、憮然とするポロ。もちろん彼にとって長老は尊敬すべき存在だ。だからこそ尚更やきもきする訳で。と、その彼のおでこを、カルナックス・レイヴ(eb2448)がペチッと弾いた。
「やる気を出し始めたのはいいと思うがな。ただ、そんなに焦る必要は無いんだぞ? もうすぐ完成する道にしても、一日二日で開かれたわけじゃない。結果はすぐにはついてこないもんだよ。それでも先を見据え、地道に努力することが大切なのさ」
 ポロ、おでこを摩りながらむう、と唸る。
「これからの事だって気負わずに、自分達の意気込みを伝えりゃ良いんだ。街道を良くしていこうって気持ちの有る奴を邪険にするほど無能じゃねぇよ、領主様はよ」
 噛んで含む様に諭す雲水。
「心配すんな。お前達なら十分やっていけるさ。俺が保障してやる」
 笑って請合うカルナックス。彼ら二人の正攻法に、さしものポロも降参だ。もう一度長老様とよく話し合ってみるよ、と言う彼に、それでいい、と頷く二人。
「じゃ、後は頑張れよ‥‥あぁ、そうだ。この服おかしくねぇか?」
 礼服姿の雲水に、変だね、無茶苦茶変だ、とポロが意趣返し。言えてるな、とそれに乗っかるカルナックス。一張羅を改めて眺めた雲水は、まあ着慣れてないからな、と苦笑した。

 クーリア・デルファ(eb2244)は到着するやすぐに鍛冶道具を持ち出して、金物の修理と武器の手入れを買って出た。ところが、普段はすぐに現れるトトが今日に限って出てこない。不在かと思いきや、彼の仕事場から槌を振る音が聞こえるではないか。
「あ、クーリアさんいつの間にっ!」
 慌てる姿に、思わず吹き出してしまう。仕事に集中していて気付かなかったとは大したものだ。何を作っていたの? と聞くと、彼は照れ臭そうに頭を掻いた。
「犬達が来たから、農作業も手伝ってもらったらどうかと思って。こう、刃を並べた道具を馬に引かせて畑を掘り返してるのを見た事があるんだけど、自分でも作れないかなーと‥‥」
「犂だね。あたいも作った事は無いけど、刃には強い力がかかるだろうから、もう少し厚めに作った方がいいかもね」
 なるほど〜、と助言に聞き入りながら、どう工夫をしようかと頭を捻る。その姿はもう、一端の職人のそれだった。
「あたいが教える事はもう無い様だね」
 彼女が荷物の中から取り出したのは、シフールの手に丁度良い大きさのハンマー。浮かせ彫りになったユニコーンの装飾が美しい。
「自分の工房で作ってきたんだ。あたいのと同じ装飾だから、奥さんが妬くかな?」
 胸元に揺れる銀のネックレスを摘んで見せる彼女に、トトは真っ赤になった。大切にしなさいよ、と微笑んで、去って行く。そのさばさばとした態度があまりに自然で、礼のひとつも言わぬまま見送ってしまったトト。はっと振り返ると、そこには奥さんが。
「べつに妬いたりなんかしません」
 つーんとそっぽを向く。トトは困った様に笑って、そして言った。
「‥‥クーリアさんは、僕にとっての世界の入り口だよ。ただ想像するしかなかったものを、あの人は見せてくれたんだ。結局、僕はそれを選ばなかったけれど‥‥それは、ちゃんと知った上での事だから。僕はここで、最高の村の鍛冶屋を目指す。きっとあの人が恥ずかしくない弟子になって見せるよ」

 エスト・エストリア(ea6855)の案内を引き受けたレクは、『良い香りの草木』を求めて里周辺の森をくまなく案内させられる羽目になった。
「うーん、他に香りがするのっていうと‥‥そうだ、この木なんてどう? 冬は特に香りが強いよ?」
 ナイフを振るい、木の皮をぺりぺりと剥がす。香るのは、心安らぐ森の匂い。
「そうですね。こういった落ち着いた香りの方が良いかもしれません」
 ようやく満足げな言葉を貰って、ほっと安堵のレクである。
「でも、これをどうするの?」
「香水を作るんですよ」
 式典の場で、香や香水として『森の中にある良い香り』から抽出した精油を使う事で、シフール達の存在意義をアピールし、その発言力を高めようという作戦なのだ。へぇ、と感心するレク。
「抽出してしっかりした容器に入れておけば、そのままで置いておくよりずっと長い間、香りを楽しむ事が出来るんです」
 里に戻り、早速作業を始めるエスト。シフール達にも手伝ってもらい、何種類かの香りの抽出に成功した。さて、この精油、そのまま使ってもいいのだが、ここは上手くブレンドして独自の香りを生み出したいところ。
「‥‥うう、マリーの染料みたいな臭いがする」
 ばたりと倒れるレク。どうにも、これがなかなか難しい。最後は嗅覚とセンスが物を言うのだが、残念ながらエストは、鼻にはあまり自信が無い。と、
「この木の香りにこっちの花の香りはがちゃんこしちゃうよ。一緒にするなら、これと‥‥これを少しづつがいいんじゃないかな」
 シフリンに言われた通りにしてみると、これが何とも良い香り。思わぬ才能発掘である。
「これ、自分でも作れるかな」
「もちろん。作業手順と機器の使い方はお教えします。私の知識を元に何かが芽吹き発展するのであれば嬉しいですし。いつか面白い技術を思いついたら、その時は教えて頂けると幸いです」
 やったー! と喜ぶシフリンを、にこやかに見守るエスト。彼女の望みは技術の発展。それにより、人々に幸せがもたらされる事。いつか錬金術研究小屋をエスト・ルミエールに作り、収益を上げて、皆が思う存分研究出来る大学を作る事‥‥
 彼女の周りにシフール達が集まって、ほほー、なかなか立派な夢ですなー、と皆で拍手。はっと我に返る彼女。どうやら野望を垂れ流しにしていた様で。恥ずかしさに身を縮める彼女である。
 一方。カイザード・フォーリア(ea3693)がシフターを尋ねたのは、是非とも叶えたい望みがあったからだ。
「前に話していた12人が舞うという踊りなのだが、是非今度の式典で披露してもらいたいのだ」
 恩義ある冒険者の頼みとあっては引き受けたいところだが、彼、ちょっと悩む。
「しふしふー。ほんとはお祭りのものなんだけど‥‥」
「式典にはたくさんご馳走が出るぞ?」
 シフターの目がきらりと光る。
「特別だよ?」
「祝いの席だからな、目出度い踊りを披露されれば気分が和む」
「そうそう。『好事しふ多し』って言うものねっ」
 じゃあ長老様に許可をもらって来るよ〜、と飛んで行く彼。もしかして悪いことをしたかと少々気に病んだが、長老からすんなりと許可が出たと聞き安堵する。それはきっと、シフール達を印象付ける役にも立つ筈だ。

●道の完成
「最後まで気を抜くんじゃないぞ!」
 おお! とドニの喝に人夫達が応える。彼らは遂に森を抜け、従来街道との接続点に達していた。働き詰めの疲労もあろうに、皆の顔は自信に溢れ、その声は喜びに弾んでいた。
「とうとう、ここまで来たんだな」
 程なく到着した石を運ぶ最後の荷馬車。飛び降りたカルナックスが道を眺め、ふう、と感嘆の息を吐く。
「長いようでいて、あっという間でしたね」
 マリーナ・アルミランテ(ea8928)の呟きに、充実した時間は凝縮されるものだよ、とモリス・マンサールが笑った。
「どうだい、あんた達もひとつ石を敷いといちゃ。いい思い出になるぞ?」
 ドニに言われ、よし、とカルナックスが進み出る。
「せっかくだから俺はこのデカイのを‥‥」
「そんなに重そうなの大丈夫なんですか!?」
 慌てるマリーナに、まあ見てろ、と特大の石に手を付けた彼。ふん! と気合を込めて何とか持ち上げ、顔を真っ赤にしてよたよた進む。その様に人夫達が無邪気に笑った。
「‥‥大丈夫? 手伝ってもらう?」
 心配げに覗き込むルディ・リトル(eb1158)に、首を振るカルナックス。手助けしようと寄って来た皆に、彼は言った。
「悪いな。お前らがやった方が早いんだろうが、これは自分で運びたいんだ」
 いつしか笑い声は、応援に変わっていた。カルナックスさんここにお願いします、と指し示された場所にようよう石を置いた時、全員から喝采が巻き起こる。
「さあ、こっちも負けてられないぞ! 冒険者の皆さんに俺達の働きぶりを見てもらおうじゃないか!」
 さすが人夫達は手馴れたもの、重そうな石を道具を使って軽々と運び、てきぱきと敷きつめて行く。一度は埋もれ忘れ去られた遺跡が、みるみる内に整えられ生まれ変わっていく様は、時を巻き戻す魔法の様でもあった。マリーナも小さめの石をひとつ、ふうふう言いながら運ぶ。それが収まるべきところに収まって、欠くべからぬ道の一部となる。そう思うと、何とも不思議な気持ちになった。
「自分の働きが、こうして目に見える形で残る喜びはまた格別なものでしょう」
 モリスの言葉に、頷いて見せる2人。
「だが、形に残らぬ働きにも同等の価値があるのですぞ。真に讃えられるべき働きは、形に残らずとも人々の記憶に残る。名を刻み、像を残し、タピスリーに織り上げて伝えるのは、あくまでそれを補うに過ぎない」
 ドニと技師達が、モリスに最後の確認をと願い出た。モリスは、出来上がったばかりの道を厳しい目で見詰めながら、ゆっくりとその脇を歩いて行く。戻って来た彼に注目する皆。その顔をたっぷりと見渡してから、
「よかろう。皆、ご苦労」
 破顔一笑、その労を労った。
「すごいねー、すごいねー、ほんとのほんとに完成したんだねー♪ たくさんの人がたくさん頑張ったからー、つらいことも大変なこともー、乗り越えてこんなに凄いことができたんだよねーっ!」
 くるくると飛び回るルディに、笑いながらも感動に目を潤ませる人夫達。
「ほんとうに‥‥素晴らしい事ですわ」
 マリーナも喜びに涙を拭う。互いを讃え合う人夫達、そして技師達。汗と土で汚れた彼らの顔は、眩しい程に輝いていた。

 アーク・ランサーンス(ea3630)は、間道完成の知らせをアレクス・バルディエ卿の屋敷で聞いた。同行を求められたポロは、いよいよとなって緊張の面持ちだ。
「道は造ったら終わりというものでは無いんです。あなた達がキノコを育てるのと同じ様に、育てて行くべき『生きもの』なんです。造ることと同じかそれ以上に大変なのが、維持管理と機能発展。駅を作るというのもハコを作るのではない。道を管理し、駅制を司る機能を作ることこそ大切なのです」
 そこであなた達の出番です、と話を振られ、頷くポロ。と、屋敷の者が現れ、主が会いますと彼らを促す。アレクス卿は彼らの姿を認めると、早速本題に入った。
「シフールによる逓送を提案していたのは君だったな。話はモリスから聞いているが、どういうものか一度直接聞きたいと思っていた。シフール便とは違うのか」
「シフール便は、一人の配達人が配達を請け負うものです。配達人の体力が配達時間短縮の限界となる。シフール駅伝制はこれと異なり、リレー式で文書を伝達します。何名かの手を経るので秘匿性は低まりますが、一人よりも時間の短縮が望めます」
 うむ、とアレクス卿が理解を示すのを見て、アークは話を進める。
「これを、伝馬による駅制と併用します。適正に応じ使い分ければ、馬を減らし調達費用と維持費を抑える事が出来るでしょう。この役目をシフール達の労役とすれば、彼らも無理なく納税の義務を果たし、末永く良き領民としてこの地に暮らす事が出来ます。僭越ながら我ら冒険者一同より、余剰となった寄付金をこれらの整備に再度寄付させて頂きたいと思います」
「心遣いに感謝する。確かに、駅制を整え維持するには莫大な費用が必要となる。機能を低めぬままこれを補えるなら喜ばしいが‥‥」
 アレクス卿に視線を向けられ、緊張するポロ。
「彼の言う事が、実際に可能だろうか?」
 ごくり、と生唾を飲み込んでから、意を決して口を開く。
「出来ます。是非やらせて下さい」
 よかろう、とアレクス卿。アークが実際の中継距離など、シフール達と共に実験した結果を元に細かな話に入る。ポロは緊張も解れたのか、自ら飛んでみた上での実感を包み隠す事なく説明し出した。興味深げに聞き入るアレクス卿の姿に、アークはよし、と小さく喝采を挙げた。

 その頃、間道では。
「うん、こんな所かな」
 円周(eb0132)は、道路整備の方法、水への対処法、魔法との併用例など粘土板に書き記したものをもう一度確認し、満足げな笑みを浮かべた。自分の知識と体験に、モリスからの知恵も加えた力作だ。
「これが将来、役立てられる事があるのかな」
 ドニ達人夫や技師達が覗き見る。どうでしょうね、と周。
「その頃にはもっと凄い技術が生み出されているかも知れませんが、それなら私達の老婆心を笑ってくれればいいんです。使われる事なく朽ちて行くなら、それはそれで何よりの事ですし」
「では、いきますよ?」
 エストはそれらを並べ、ストーンの呪文を唱える。粘土板は次第に固まり、遂には頑丈な石版となった。これならば相当の年月を耐えるだろう。皆が作ってくれたお堂の中にこれを納め、周が自ら祭祀を行う。純ジャパン風の祀りを行う周に、ジャパンノルマン折衷のお堂、人夫達の祈りはジーザス式。
「これでも神様はお守り下さるかしら」
 悩むエストに、周はもちろんです、と微笑む。
「だって、祈る気持は本物ですから」

●招きの使者
 アルミランテ間道完成の知らせが耳に届いたであろう頃を見計らって、冒険者達は本街道の有力者の元に赴いた。最初に尋ねたのは、例の密偵を遣した張本人、豪商アラミス氏。面会は、拍子抜けする程あっさりと認められた。
「これを、どうぞ」
 カチコチになりながらも招待状を手渡したのはレクだった。少しでも顔見せをしておくべきというカルナックスの判断だ。アークにポロが同行したのも、同じ理由である。
「‥‥という次第で、新たな街道が生まれた祝いの式典を催す事と致しました。皆様方にも是非ご参加頂き、もって両街道の良き関係を築きたいというのがアレクス卿のお考えです」
 堅苦しい礼服に丁寧な言い回し。大いに不慣れな雲水だが、そこは浪人とはいえ武士の端くれ。勝負の場に出ればちゃんと様になっているから不思議なものだ。
「自分達がやった事がばれてしまって‥‥アレクス卿がどんな風に考えているのか‥‥不安で仕方ないんだね‥‥」
 相手の話し振りと表情から、アルフレッド・アーツ(ea2100)はその気持ちの動きを読み取った。ある意味、彼らは森の獣達よりもずっと正直だ。決して好きにはなれそうに無かったけれども。
 アルフレッドから耳打ちされて、雲水はそうだな、と頷く。
「我々冒険者も、この道には思いいれがある。幾つもの困難に挑み、猛獣や、時には卑劣な賊と戦い、その末に完成させた道なのですから。以前の事は関係ありません。ただこれからの事、それのみです。ただ、こちらの街道筋では、当方に何かご不満がお有りとも聞いておりますが‥‥」
「いや、不満などと。ただ、アレクス卿がどの様なお考えで道を開くのか、憶測が飛び交ったのは事実です。根も葉もない事を吹聴して益を得ようとした者達がおり、残念ながらそれに揺るがされた者も僅かながらいたという、それだけの事。今のお話を伺って安堵致しました。皆に話せば、きっとつまらぬ噂も霧散してしまうでしょうな」
 はっはっは、と笑う。翻訳すれば、これ以上敵対するつもりは無いから見なかった事にしろ、といったところか。後ろに控えている本多風露(ea8650)の表情が険しくなる。屋敷の警護の者達は彼女がまだ何の挙動も見せていないにも関わらず、極度の緊張に大粒の冷や汗を流していた。
「両街道の発展は、ドレスタッド、牽いてはノルマンの発展にも大いに役立つでしょう。もしも悪意をもってこれを阻害する者あらば、無論アレクス卿は辺境を預かるものとして捨て置きはしないでしょうけれど‥‥それのみならず、森を荒らす者、商売の道理に背く者、静かに暮らす人々を騙したり害したりする者あらば、我ら冒険者が地獄の果てまで追いかけて天誅を下すことでしょうね。その時は、皆さんにも是非ご協力願いたいものです」
 穏やかな口調で語る風露に、もちろんですとも、と笑顔で答えるアラミス氏。心強いお言葉痛み入ります、と雲水が継ぐ。
「道は確かにアレクス卿が復興させた物ですが、元は先人の残したもの。近隣に住み暮らす全ての人々の物なのだと考えて頂ければ幸いです。案外先人はそうした考えに至る事が出来ず、権利関係を巡って余計な対立を起こし挙句、あの道を廃れさせてしまったのかもしれませんな。だとしても、我々はその轍を踏む事無く、末代までも両街道を栄えさせたいと思いませんか」
「いや、全くですな。式典には是非、参加させて頂きましょう」
 差し出された手を、雲水は握った。じっとりと湿った感触に、雲水がにっと笑う。僅かに引き攣ったアラミス氏の笑顔に、彼は事件の終結を確信したのだった。

●式典準備
「お疲れ様」
 使者の役目を終えて戻って来た者達は、マリーナの労いを受けてやっと息をついた。
「やれやれ、毒の中を泳いでいる様な気分だったよ」
 雲水がぼやく。冒険者でさえこれなのだからレクなどはもうくたくたで、アルフレッドに担がれて行き、今は家でばったりだ。
「うちもご一緒したいのは山々だったんですけど、なにぶん‥‥」
 もじもじする彼女に、皆が笑う。彼女の方向音痴は周知の事実。もっとも、そのおかげでマイルストーンが見つかり、危うく見失いかけた道が明らかになったのだ。幸運の迷子とでも言うべきか。
「式典の準備は滞りなく進んでいます。飲み物と料理の手配はルディさんが。会場の準備には村の人達が出てくれる事になっています」
 よし、と頷いたカイザードは、おもむろに出席者の名を記した木札を並べ始めた。それを入れ替えてみては考え込む。
「休む間を惜しんで席順決めですか」
「そう言うな。序列を何より気にかける者もいるのだ。せっかくの晴れの舞台で、ヘソでも曲げられては敵わぬからな」
 風露に言われ、カイザードは笑うしか無い。
「これ、仲間が実際の席次を調べてくれたものです」
 周が持ち込んだ資料に、何よりだ、と早速目を通すカイザード。
「でも、この方はこちらと仲がお悪いと聞いています。アラミスさんはこちらに座って頂いてエスト・ルミエールの方々とお話しが弾めば、何か新しい商いが生まれるかも」
「うむ。だが、そうするとこやつがな。彼らは違う派閥に属していて、裏では何かときな臭い話も聞くのだ。いや待て待て、ならばいっそこちらに‥‥」
 周とカイザードのパズルは、深夜まで続く。
 翌日。
「ただいまー」
 ルディとアルフォンス・ニカイドウ(eb0746)は、荷馬車に飲み物やら食材やら、大量に積んで戻って来た。
「ねえねえ、聞いて聞いてー。ギルドに相談したらー、有名店のシェフさんを紹介してもらえたんだよー」
 じゃーん、と現れた料理人達は少々頼りなさげだったが、この際目を瞑る事にする。早速準備にかかってもらわねば間に合わなくなってしまう。
「よし、片っ端から降ろして行くぞ」
 荷馬車の荷物を驚くべき早さで運んで行くアルフォンス。ルディはシェフ達に式典の流れを説明して、メニューを考えてもらう係りだ。
「うー、おいしそーっ」
 なかなか酷な役目かも知れない。

●式典
 冒険者達の骨折りに村人達の応援もあって、式典の準備は滞りなく整った。いざ当日になってみれば、次々に現れる招待客の応対に、不安など感じている暇すら無い程で。
「‥‥里のお仲間さん達のお披露目も兼ねているから‥‥できるだけ多くの人に来てもらいたかったのは確かですけど‥‥」
 その顔ぶれを見て、アルフレッドは複雑な表情だ。これから協力して行かなければならない面々なのだが、決して好ましい人達ばかりではないのは、ざっと見渡しただけでも感じ取れる。
「そう言うな。どんな敵も、時により味方となる。人との繋がりは例えどの様なものでも財産なのだぞ」
 アルフレッドは、そこにアレクス卿の姿を見て飛び上がった。ただもう、頭を下げて見送るばかりの彼である。
 身分ある人々を案内する役目は、この手に造詣の深いカイザードが務めた。一方、シフール達を迎えたのはクーリアである。
「場所は分かるね? 落ち着いて席につくんだよ」
 いつも里を訪ねる彼女とは違う、威厳に満ちた神聖騎士の姿。ただ、彼らを気遣う姿勢は変わらない。
「君達が村の仲間を愛するのと同じ気持ちで接すれば、何の問題ない。もし何かあったらあたいが助けるよ。だから思い切りやりなさい」
 励まされ、会場に入って行くシフール達。最後に現れたトト夫妻は、彼女に深々と頭を下げた。彼女はただ、頷いて見せるのみ。それでお互い、心は十分に伝わった。
「いつものあなた達の明るさがあれば大丈夫です。教えられた礼儀を守れば怖いものはありません。あなた達は森の勇者なのですから」
 彼らを誘導しながら、そう声をかけた風露。この場に自分達は孤立している訳ではなく、知る辺の支えがあるのだと理解するだけで、彼らの緊張は随分と解れた。
 やがて、式典の始まりが告げられた。壇上に上がったのはアレクス卿。
「今日、新たな道が開かれた事は、何物にも例え難い喜びである。この道を我が領内における正規の街道とし、改めてアルミランテ街道の名を与える事とする。また、この事業に大きな貢献を果たしたシフール族の村が我が庇護下にある事をこの場にて確認し、イリゼの名を与えるものである」
 イリゼ村。それが、隠れ里に与えられた新たな名だ。アルフォンスが提案した名が採用されたのである。嬉しげに、何度もその名を口にするシフール達。意味を問われ、アルフォンスが虹色の意味だと答えた。言葉の元となったのは、古代の虹の女神の名とされる。神々の伝令だったというその名が与えられたのは、何かの暗示の様でもある。彼がその名に託した通り、良き未来が導かれる事を願うばかりである。
 アルフォンスも礼服に身を包み、会場を奔走してシフール達と有力者の間を取り持った。忌まれる者たる彼のこの行動は危険なものではあったが、神はこの必死の努力を無にはしなかった。ほっほっほ、と語る長老、通訳に四苦八苦するポロ。その姿が相手を和ませている様にも見え、アルフォンスは安堵した。関係は一方的なものであってはならない。これならば大丈夫だろうと、彼は確信した。
「厳しい労働に耐え、この道を再び開く礎となった者達の栄誉を讃え、その名を刻んだ碑を設ける。また、多大なる寄付のみならず、その能力と広き人脈を用い、幾多の障害を除いて事業を完遂なさしめた冒険者一同に心よりの感謝を示すものである。その栄誉は、名を刻んだマイルストーン、特段の功労者には胸像を設け、讃え続けるものとする」
 冒険者代表、龍宮焔の代理として、周が壇上の人となる。ドニと共に、直接アレクス卿より表彰され、少々気恥ずかしい周である。
 カイザードは穏かな物腰で応対に務め、給仕のタイミングにも細やかな気を遣い、時に会話の種さえ振って客人を飽きさせなかった。
「失礼だが君は、本当に冒険者なのかね。アレクス卿の正騎士では無く?」
 その通りです、と答えた彼に、相手は溜息をついた。
「これ程の者を目の前にして迎えぬとは、あの御仁の目は節穴か?」
「いや‥‥彼程度の者ならば抱えるまでもないのだとしたら‥‥尚更恐ろしいな」
 その物言いは少々カチンと来たが、概ね彼の思惑通りだ。アレクス卿が下がった後、余り中身があるとは言えない祝辞が垂れ流される中、こちらを探る様な態度は次第に影を潜め、少しでも実の有る話をしようという態度に変わって行く。
「あら、この香りは‥‥」
 ご婦人方の興味が、会場全体に漂う心地よい芳香に移り変わる。その様子を満足げに見届けたエストは、十分に間を置いてから、その輪の中に滑り込んだ。
「ええ、あの広大な森の中、シフール達に伝わる秘伝のブレンドで生み出された香りなんです」
 少々の誇張は、この際不問として欲しいところだ。と、ルディと共に様々な楽器を手に集ったシフール達。合図と共に奏でられたのは、式典に相応しい厳かな調べだった。短い練習時間にも関わらず、呼吸もぴったり。ルディは嬉しくなってしまって、益々演奏に熱が入る。それはまるで、煮詰まった空気を洗い流す清流の様で。
 長老とドレスタットの商人が、エスト・ルミエールの町長と本街道の役人が、穏やかな表情で話し合うのを眺めながら、カルナックスはひとり杯を呷る。
「だから大丈夫だって言っただろ」
 道が開かれた以上、人も物も流れずにはいないだろう。シフール達も緩やかに世界と交わり、適応して行く筈だ。その道筋を付けたのが善意ある冒険者だった事は、彼らにとって大いなる幸いだったに違いない。

「これから、だな。全ては、これからだ」
 ドニを始め、人夫達が集まって、感慨深げに杯を空ける。マリーナは彼らの杯を再び満たしながら、大丈夫ですよ、と微笑んだ。
「今の皆さんなら、きっと乗り越えられますわ。もし上手くいかなかったり不安になったりしたらこの道に戻って、自分達のやり遂げた事を思い出して、またここから進めばいいんですよ」
 その言葉に、大の男達が揃いも揃って、じわりと目を潤ませる。
「‥‥晴の日にお説教は似合いませんわね」
 さ、神様のお恵みを無駄にしてはいけませんよ、と酒を勧め回って照れ隠し。

 マリーを呼び出したアルフレッド。
「僕はまだ、夢を追いたいと思います‥‥ジャパンに行って‥‥地図調査とかの練習をしてこようと‥‥だから暫く里には来れません。貝殻の音、聞かせに来れなくてごめんなさい‥‥そして、さようならです‥‥」
 彼の言葉に、ぺちん、と自分のオデコを叩いたマリー。
「うん、分かるよ。私も最近、織物がとっても楽しいから」
 ちょっと赤くなったオデコで、にかっと笑う。両目からぼろりと涙がこぼれた。
「ありゃー、目にこみが入っちゃったよ。あ、もう踊りに行かなきゃ! それじゃあね、頑張ってね!」
 ころころとした彼女の後姿を、アルフレッドは見送った。ふと、この風習の意味を理解する。貝殻は、忘れられない思い出の品になった。
 シフターが村の有志を集め、再現する里の舞い。しふしふ話半分としても、これら伝承に何か意味があるのだろう。カイザードらは、祭りの踊りに暫し見入る。12色の服に身を包んだシフールが、ぱっと散った。空中で独特の揺らぎをしながら、歌う歌。

♪千年生きる語り部の 歌を徒には忘れまじ
 定めの時の満ちるまで 標を歌に伝うべし
 天より下りし者達は 数えて三十有八の
 無双の勇士真の騎士
 
 雷鳴の騎士ルメニフィス、馬手に剣(つるぎ)を振りかざし
 矢叫び遮る雷鳴に 忽ち崩るる敵陣を
 笑えるものはよも居まじ

 命の戦士ケーファ有り 綺羅と輝く冠の
 奇跡の業は魂の尾の 断たれし者を忽ちに
 傷一つ無き玉の肌

 風の戦士の早業に 力の騎士の強き腕
 大地の戦士の知恵ありて 正義の騎士は赴かん
 闇より暗き地の涯へ

 青き剣は地に刺さり 正義の御名のその下に
 災いの地を封じたり 我らは護らんこの土地を
 封印解けるその日まで

 大地と水と風と火と 月と太陽そして竜
 勇士を通すその道は 邪な者甦り
 時満ちるとき開かれん♪

 残念ながら、カイザードが期待した異変は起こらなかった。やはり暦が関係するのか、とも思うが、式典の余興としてしまった以上は已む無い事だ。ただ、その神秘的な美しさを集まった人々に見せられた事には意味があったろう。
(「天に希望が 地に平穏が満ちる様‥‥」)
 彼をして、祈る気持ちにさせた程のものなのだから。式典は粛々と進められ、集まった面子からは考えられない穏やかな雰囲気のまま、終了した。幾つかの小さな商いが成立し、そして何より、シフール達の存在が印象付けられた。首尾は上々、後は彼ら次第である。
 お偉方が帰った後も、残った人々は杯を重ね、更に親睦を深め合った。そんな光景を嬉しく眺めながら、アルフォンスは会場を離れ良い気分で道を行く。と、彼はそこに己の胸像を発見し、声を上げて笑ってしまった。像もまた、虚無僧姿であったからだ。
「おい、虚無僧よ。これからもこの道をしっかりと守ってゆくのであるぞ」
 自らの分身に声をかけ、愉快げに肩を揺らす。その肩をとん、と叩いたのはマリーナだった。宴はまだ続いているが、冒険者達は皆帰り支度。名残惜しくならない内に、解散である。
「さて、うちもまたこの道から新たな出発をしましょう」
「バイバイ、みんな元気でねー」
 ルディが手を振る。彼らは胸の内で皆に別れを告げ、生まれたばかりの道に踏み出した。

 式典の翌日、アレクス卿のもとにタピスリーが届けられた。縦2m、横20mに及ぶ大作は、それ自体を道に準え、冒険者達の奮闘を描いたものだ。人々がそれを目にすれば、胸躍る物語を想像せずにはいられない、そんな逸品だという。
 もっと冒険者達を知りたければ、胸像が置かれた街道を歩けば良い。それぞれの像には妙なご利益が噂されているのだが、それは是非、行って確かめて欲しい。