制覇せよ!世界最高峰1〜極秘プロジェクト

■シリーズシナリオ


担当:マレーア

対応レベル:8〜14lv

難易度:難しい

成功報酬:6 G 97 C

参加人数:8人

サポート参加人数:1人

冒険期間:02月02日〜02月11日

リプレイ公開日:2007年02月04日

●オープニング

 チャリオットGO! GO! GO!
「諸君依頼だ」
 冒険者ギルドに訪れた男『スカラー』は隙のない身ごなしをしていた。
 てきぱきと、カウンターで依頼の確認をし、仲介料の支払いを済ませると、黒板に自分の依頼した内容が正確に綴られているのを確認すると、質問を浴びせたがる輩に手短に言葉を返す。
「依頼主? ──工房だ」
「護衛対象は? ──新型チャリオットだ」
「護衛の新型チャリオットはどんなもの? ──機密だ」
「任務場所は? ──ゴーレムチャリオットレース場だ」
「新型機のテストパイロットとかダメ? ──ダメだ」
「チャリオットが万が一奪われたら? ──破壊だ」
「情報の漏洩原因は? ──調査中だ」
「襲撃者の規模は? ──不明だ」
「襲撃者への措置は? ──抹殺だ」
「ゴーレム機器の使用は? ──TPOを弁えるのが冒険者だ」
「ペットの同伴は? 住人との協定遵守だ」
 ひたすら命令形ばかりである。肝心のゴーレムチャリオットに関してはスカラーの口からは語られることはなかった。
 改めて、黒板に書かれた内容を見ると、チャリオットの表向きの新規改良は、次期ゴーレムチャリオットレース用の新型フロートチャリオットである事が判明した。
 つまり、真実は別にあるという事だ。
 もちろん、それを探ることは許されてはいないだろう。
 唯一スカラーが命令形でなく言った言葉、それは。
「この開発に成功すれば、ウィルは戦わずして、勝利する事が出来る」
 という言葉であった。

 最後にスカラーはこう言った。
「応募者の内、他言せぬと騎士の誓いを立てる者には詳細を明らかにしよう。メイからの留学生も、帰国してアリオ陛下や工房長に報告する以外、他言無用だ」

●今回の参加者

 ea3486 オラース・カノーヴァ(31歳・♂・鎧騎士・人間・ノルマン王国)
 eb4085 冥王 オリエ(33歳・♀・天界人・人間・天界(地球))
 eb4155 シュバルツ・バルト(27歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4286 鳳 レオン(40歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4313 草薙 麟太郎(32歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4322 グレナム・ファルゲン(36歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4412 華岡 紅子(31歳・♀・天界人・人間・天界(地球))
 eb8285 浦 幸作(38歳・♂・天界人・人間・天界(地球))

●サポート参加者

アレクシアス・フェザント(ea1565

●リプレイ本文

 オラース・カノーヴァ(ea3486)曰く──。
「誓いまーす、そうすれば、近くで警護できるんだろう? あ?」
 それに答えてスカラー曰く。
「それがお前の騎士道なら貫き通すことだな、精々死ぬまで」
「誓うには誓ったんだ、解釈は好きにしな」
 ちなみにオラースが得た、マーカス商会付近の情報としては、
 商人マーカス・テクシの運営する資本。
 エーロンのしもべの一人で、公営ギャンブルや宝くじ・娼館など手広く経営し、馬鹿にならない献金を継続している。貧民に仕事を与え、治安維持や政情安定に少なからず寄与しているとも言う。人は自分の稼ぎで食えれば、暴発はしないものだ。焼け出された貧民街に対する炊き出し等も行っているから、算盤ずくといえども社会福祉となっている。
 総じて言えば、ちょっと道徳的には『?』な部分もあるが『法』に触れる程度に悪とは言えない。という程度のものであった。
 尚、マーカス商会に対する問い合わせはNGとスカラーから直言された。ちなみに娼館から出てきた所らしかった。
 スカラーの私生活とは裏腹に、オラースとは対照的に冥王オリエ(eb4085)は──‥‥。
「騎士として誓う」
 と、シンプルに答えるに留まる。
 シュバルツ・バルト(eb4155)は──。
「騎士の誇りにかけ、ここでの機密保持を誓う」
 とやや大時代気味。しかし、それがスカラーに好印象を与えたのか?
「ならば、その誇りのままに生きてみせることだ」
 船乗りの鳳レオン(eb4286)曰く。
「騎士の誓いってのもするさ。クリスチャンの俺なら、聖書に手を置いた宣誓の方が確かだが」
「聖書か? ジーザス教徒のあれか?」
「そういう事。ま、手持ちにはないけど」
 グライダーを所有している、この一同での切り札的存在、草薙麟太郎(eb4313)は、警護するべき対象が何かを知るか知らないかで差がでるという、実利的な理由から、機密の保持を誓約した。
 グレナム・ファルゲン(eb4322)は──‥‥。
「──改めて、誓約する」
 と、前置きのくだくだしい部分は省略して誓約を立てた。
 紅の爆裂淑女、華岡紅子(eb4412)
「いいわよ、護衛のついでに色々見せてね♪」
「ダメだ」
 とスカラーは一刀両断。必要も無い事を知らせる積もりは無いらしい。
 メイからの留学生、浦幸作(eb8285)は。
「きみつじこー、だそうですね。何でも少し前のジャパンで流行っていたとか、京都の方の話だそうですが」
「誓ったな?」
「はい。ところで、メイの国表に使者を立てるのも禁じられていますが、技術留学生として得たデータを送るのは義務だと思いますので、定時報告で手紙を送りたいのですが」
「手紙は奪われる危険性がある。口頭のみだ。開発が首尾良く行けば、卿は現物を土産に凱旋することも不可能では無い。それまで待て」
 スカラーはにべもなかった。
「では、会場に行くぞ」
 普段は国民が熱狂しているスタジアムも今は一台のやや大振りなチャリオットが走っているだけであった。
 幸作は目敏く、その背中に大木が背負われているのを見て取った。
「まさか、エレメンタルキャノンのシミュレート?」
「良く判ったな? 小型のエレメンタルキャノンとはいえ、定点配置ではなく、素早く移動を可能とする。これにより、互いに数を決めた装備で戦争をする正規戦にも、任意の場所に火力を集中できる様になる。場合によっては合戦の首脳部を素早く囲み、負けを認めさせることが出来るかも知れん。騎士の戦いならば、勝って後に戦いが無かったかのように相対する事が出来る。勝って後の譲歩ならば、侮られることは無い。また、カオスの輩は滅びるまで追いつめるだけだ」
 饒舌にスカラーは述べる。
「諸君は誓約した故教えるが、シグの男爵・蒼威殿の建白による装甲チォリオットやゴーレム運搬も、このチャリオットの強化と改良で達成される予定だ。但し、精霊力の奪い合いになるのでストーン以上を乗せたまま動かすと、チャリオットは擱座する。恐らくエレメンタルキャノンを撃とうとしても同様だろう」
「積載量の強化は、物資の緊急運搬にも使えるわね」
 紅子が感想を述べる。
(「つまり、装甲車や自走砲にはなるが、戦車は無理って事か‥‥」)
 レオンは予想される運用を思い浮かべる。

 一方、
「ウッドならば動かせるって事ですか?」
 反射的に言葉に出す幸作。
「流石、メイが寄越した秀才殿だな。その可能性はある。とだけ言っておこう。カオスの族(やから)に対してなら遠慮なく使える」
「なるほど‥‥(あの実験が連動しているのか)」
 先の私のエアルートでの極秘実験を思い出して頷くシュバルツ。チャリオットが強化されれば、少なくともあのパラ専用試作機は使い物になるのだ。あるいはもっと大きな機種も‥‥。実機を見ている彼女以外気が付かなかったが、つまり装甲面にこそ難のある物の、地上を高速で機動しながら攻撃できる速射パリスタが誕生する。騎士の戦いには卑怯の誹りも免れないが、そうでない戦いならば侮れない戦力となる。しかも、ウッドならば比較的経験の浅い者でも運用可能だ。
 それぞれの思惑を秘め静まり返った面々を見渡し、スカラーはすうっと息を吸い込むと、
「この技術がメイの様に技術提携している同盟国以外に漏れた場合、緒戦で得られる勝利は少なくなる。チの国辺りは欲しがる技術だろうが、あそこは上がゴーレム音痴だ」
 一同に向き直る。
「当然、従来は3000kgあった、エレメンタルキャノンも小型化されている。正確にはその試行錯誤の最中だがな。ともあれ、バランスを見るため、ああして、丸太で抵抗を図っている所だ」
「なあ、そんな物騒な物、奪われたら困りますから、ゴーレムグライダー貸してください」
 とシュバルツは頼み込むが、スカラーは首を横に振る。
「どんなゴーレム機器を持っているかも含めて、冒険者の実力だ。麟太郎殿にでも頼め」

 尚、ゴーレムは──従来のものもそうであるが──金属板で装甲されており、生中な矢では貫き通せない。ましてや火矢など水鉄砲も同然である。蒼威の装甲チャリオットとは、従来露天だったチャリオットに、搭乗者を守る天蓋や装甲を後付した物を言う。
「じゃあ、レースのライン引き用の石膏を少々拝借するのは?」
「少々はいいが、多少は駄目だ」
 スカラー、微妙な男である。
 一同がチャリオットの強奪を防ぐため、出入り口を封鎖しようとすると、当然の事であるが、肝心のチャリオットの出入りがある時にどうするつもりだ、と指摘してくる。
 スカラー、嫌な奴である。
 それを気にせず、麟太郎は──。
「まあ、地道にやりますか」
 と、体力温存。
 何しろ事実上やっている事はチャリオットが走り、時々止まる。その繰り返しである。まあ、鎧騎士は交代しているが‥‥。
 無論、比較用のゴーレムチャリオットがあるので、グレナムは注意深くの監視に入っていた。
 護衛時間が過ぎるとゴーレム・チャリオット・レースでの覚え書きを、余っていたゴーレムニスト達の羊皮紙を貰い受けて書き散らす。
 紅子はスカラーの声音を真似て『──抹殺だ』とやり、一部から快哉を浴びつつ。
「捕まえて背景情報を聞き出した方がいいんじゃない?」
──と提案。
「捕まえたスパイは情報源になる可能性もあるが、奪還の動きにこちらの戦力を分散される可能性を考えると、着実に相手の手駒を減らして、恐怖で士気を挫く。その為の問答無用の抹殺だ」
 と、スカラーは相も変わらず抹殺理論を展開。
 責任も取れないし──と紅子は案を取り下げた。
「で、あの新型で戦うのなら、ドコと?」
 正義を乱す物全てだ。国とは限らん、山賊、カオスの族(やから)──‥‥アトランティスは戦場に満ちている。現にメイの国もより強いゴーレム機器を求めている」
 そして、最初のテスト最終日、月が陽精霊の居なくなった空に降臨して照らし出す頃──。 塀の縁でレオンがオラースと組んで、最後の番をしていると、
「緑色の光?」
 鋭い視力が相手を見通す。人間サイズの様だ。
 そのまま空中まで飛んでくる。
 オラースが武器を替えようとしてくる間に、更に銀色の淡い光に包まれて、瞬時に新型チャリオットの影から姿を現す。
「賊だ! 出逢え、出逢え!」
 そうこうしている間に新型チャリオットは走り出し、止めようとした鎧騎士の頭を飛び越えていく。
 オラースが得物を持ち替える間にも、彼の指輪の中で蝶がはためいている。
「カオスの者もいるぞ、みな、銀の武器と魔法の付与を忘れるな!」
 しかし、近くにいるというだけで、具体的にどこにいるかは判らない。
 しかし、麟太郎とシュバルツがタンデムでゴーレムグライダーを起動。
 素早い操縦で、新型チャリオットの頭を押さえて、シュバルツが掴んだ、石灰を後方にまけてぶちまける。
 相手も手慣れた様子で、高速詠唱連続で、レンジ外に遁走。
 騎手を失った新型チャリオットは出口ギリギリで激突しながら止まる。頑丈な構造の為、カスリ傷止まりで終わる。
「不始末には数えん。良くやった」
 スカラーがそう言って一同を悪く評価しなかった。
「次は居ただけ、というカオスの者がどうでるか? それが鍵になるだろう。依頼料を受け取り、改めて反省点を吟味すること、以上だ」