制覇せよ!世界最高峰2〜騎士の価値を問うな
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■シリーズシナリオ
担当:マレーア
対応レベル:8〜14lv
難易度:難しい
成功報酬:6 G 97 C
参加人数:10人
サポート参加人数:2人
冒険期間:02月15日〜02月24日
リプレイ公開日:2007年02月22日
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●オープニング
冒険者ギルドにスカラーが現れた。
「前の依頼のメンツを集めろ──いや、騎士として誓約を立てられれば、誰でも構わん」 受付嬢は笑って。
「そういえば、先日の依頼ではゴーレム機器の貸し出しをなさらなかったそうで──」
「ゴーレム機器を持っているのも器量のうちだ。TPOを弁えるのも器量の内だ」
「お客様がそういうポリシーを持っているのも含めて張り出しておきますわね♪」
受付嬢はそう言って9日間の試験依頼を再び張り出した。
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・護衛対象は、開発中の新型レース用チャリオットだ。
・護衛場所はゴーレムチャリオットレース会場だ。
・襲撃者は『おそらく』、精霊魔法を使いこなす天界人と、
カオスの者(能力の規模はどうあれ)だ。
・チャリオットが搬入されるのは、17日以降、それまでは冒険者の対策会議に
当てる事とする。
・侵入者に関しては、理由の如何を問わず抹殺。
現に前回、その様な指示を出したにもかかわらず、天界人もカオスの者も
倒せなかった為、任務の内容を徹底することだ。
・メイの国の工房、ステライド王に『口頭』で伝える以外の情報伝播は
一切認めない事を確認しておくことだ。
・ベクテル卿よりの申し入れもあるので、【メイの国からの留学生】のうち
技能保持者は、熟練度によってはテスト走行に関わる事も検討する。
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スカラーはそう言って冒険者ギルドを立ち去った。
●リプレイ本文
●ライトスタッフ?
「私には『器量』があったの!」
冥王オリエ(eb4085)は金貨1000枚をはたいて、トルク家から即納で新品のゴーレムチャリオットを入手する事に成功した。もっとも、今後ゴーレムグライダー関係の波及で国以外がゴーレム機器を使用するのが認められなく為ってしまう可能性があるが、当然、その時は適正な価格で手放さざるを得なくなるかも知れない。
一方、オラース・カノーヴァ(ea3486)は渋い顔。教会で様々な事を聞いてきて浄財を捧げたが、見えない相手に対抗するには───相手も何となくカオスの物と察したようで───ディテクトアンデッドが一番確実な手段だが、サカイヤで(仮令福袋とは言え)手に入らないこともない『石の中の蝶』の方が初級レベルの術者と比べて持続時間という事で圧倒的に優れているという事を思い知らされた。
「騎士の誓約が無ければ、クレリック達を引っぱってくるのにな───」
「私では不満でしょうか?」
と、天の道を目指す老尼僧、白銀麗(ea8147)が声をかけてくる。
彼女も勿論、誓約をしてこのゴーレムチャリオットの護衛に回る身になったが、御仏に誓約をしようとしたが、アトランティスでは仏教は未だマイナーな身。改めて騎士として誓約を立てさせられたという経緯がある。
ともあれ、神聖魔法の使い手である彼女の参入によって、いきなり倍くらいに行動の選択肢が広がったのは確実である。
シュバルツ・バルト(eb4155)は、浦幸作(eb8285)に魔法の付与されたショートボウを貸し出し、早速、幸作は練習するが、オラースが面倒を見ようとしても、どうしても上手く行かない。一朝一夕に扱えるなら苦労は要らないと言うことか。完成された戦士であるオラースも、完成された教師という訳には行かなかったようである。
●敵に備えろ
鳳レオン(eb4286)他様々な者の思惑を総合すると、相手が月影を使うのなら、月影を造らせなければいい。
その為には煌々ととかがり火を焚いて、月影を打ち消す必要がある。
しかし、スカラー立ち会いの下に、実際に空いてる二日間で、試してみたところ、完全に月光を打ち消すには競技場を炎で燃やし尽くすくらいの火力が必要と判明。とても実験の度に使い捨てるわけにはいかず、その他常識的な理由から、スカラーはいい顔をしなかった。
「キャンプファイヤー程度ですむと思ったけどな。山火事クラスか洒落にならん」
実験でコーン状に切った紙を全て燃やし尽くしたレオンとしては恨めしげに呟くのであった。わざわざホルレー男爵家から取り寄せた紙は、まだまだ高価過ぎた。それが役立たずに終わったと有れば無理もない。
尚、ゴーレムチャリオットの制御システムは通常の人型ゴーレムと同じように、水晶球を握って、それにイメージを送り込んで操作する、となる。
魔法でチャリオットと一体化しているため、取り外しは利かないし。鎖でがんじがらめにしても可動部分が無いため、劇的な効果は期待できない。
加藤瑠璃(eb4288)は出入り口に鋼鉄の扉をつけられないか? と提案しているが、そんな扉が一朝一夕には出来ず、恒久的な使用を前提としたものではない臨時の施設につける訳にはいかない、とスカラーに一蹴される。
草薙麟太郎(eb4313)は別にスカラーに賛同したわけではないが、抹殺論に傾く。
うっかり敵を捕縛してしまった場合、拘束する場所、逃亡の防止、尋問要員、奪還に備えての警備等など、色々と必要になってくる。しかし、この任務では、そのための人員も設備ないのだ。自分たちだけで全てを賄うのもほぼ不可能となる。
ならば、と言って、捕らえた敵を逃がしてしまった場合、情報保護は笊の様に。
「あと、この前の発見通り、最近はカオスの魔物が積極的に動いているようなので、カオスの魔物が化けている可能性のあるハエや小動物などにも注意しよう」
また、敵天界人が『ムーンシャドゥ』を使って侵入する場合に備え、夜間はチャリオット格納場の四隅に篝火をたいて、月による影を生み出さないよう提案をすると、スカラーがそれなら可能だ。ピンポイントで絞れば───と繋げる。
尚、地球人なら判る事だが、この方式は換気を上手くやらないと、自分たちも入れないという諸刃の刃、素人にはお勧めできない、である。
グレナム・ファルゲン(eb4322)はプロジェクトに今回直接携わる者の顔を覚えて、怪しい場合は直ちに通報&抹殺の運びにした。
彼同様に天界人とカオスが手を組んでいるのが、気にかかる華岡紅子(eb4412)であったが、会議で───。
「万一仲間、ないし試験中の鎧騎士が敵に操られたりして暴走したら、白さんの魔法で解除して貰うけど、それでも間に合わないなら攻撃してでも止めるわね。手足の一本二本取れても、神聖魔法で何とか出来る筈よね。その代わり、襲撃者を何とかして事態が収まったら教会に急いで運べるようにしておくわ」
「余裕があれば襲撃者の背後関係をリードシンキングで‥‥」
「いや、それは反対だ」
と麟太郎。自説を挙げて、仮令一時的にせよ襲撃者の身柄確保にはリスクが多すぎる点を指摘した。わざわざ生かして捕らえた後、処刑するのは残酷だろう。ならばいっそ戦いの中で殺してやるのが慈悲というもの。
「私の提案はあくまでも、カオスの魔物に憑依されてる味方の場合よ。いいわね?」
無論それには異存はなかった。
●その未熟さを買う
予定通り新型チャリオットは3日目に搬入された。
オラースの管理の下、ショートボウの魔法による補助があっても、未だに正鵠を射る事の出来ないでいる幸作の前にスカラーが現れて、一言。
「メイからの留学生。お前の出番だ」
「ところでスカラーさん。『抹殺』の対象について今一度確認───強奪の目的はテロに使う事なのと、誤射により迷い込んだ一般人を犠牲にする可能性があるのでその確認───をさせてください。
テロリストに人権はなく、誤射は不幸な事故だ! と仰って頂ければ、サー!イェッサー!で済むのですが‥‥」
「無論、テロリストに人権はなく、誤射は不幸な事故だ」
スカラーはスッカリキッパリ断言する。やっぱり、嫌なヤツである。
「という事で、発進だ」
「え、不肖浦幸作、航空機には知識がありますが、地上車はちょっと疎いのですが───原チャリどまりで」
「原チャリが何なのかは良く判らないが、未熟なパイロットが扱った場合、どうなるかのデータも欲しい。残念な事にテストパイロットは皆腕利きでな」
「そ、それはスケープゴートですか!?」
スカラーに無罪か死刑かの二択を迫られて、幸作は無罪の道を選んだ。
「まずはオーラエリベイションを唱えまして───」
浦を桃色の淡い光が包む。
「次におもむろに起動、むん」
チャリオットのふたつの水晶球を握るが魔力を吸い取られている感触はあるが、十分ではないようだ。
改めてもう一度」
後尾がフワリと浮き上がる。
「行けます、行けますよ!」
と、上手く行ったのはその展開まで。
「今、私は風になりました───」
次の瞬間、荒馬のように、後尾が跳ね上がり、唐突にマキシマムスピードへと以降。
地面に垂直に3メートル浮き上がり、時速百キロを超えるスピードでコース端の土嚢に叩きつけられる。
幸い、伴走していたオリエがおニューのチャリオットで落ちてゆく、幸作を地面すれすれに走行してキャッチして無事であった。
新型チャリオットも無事であった。最後の瞬間に精霊力が断たれたせいでショックが和らいだらしい。
「テスト感想、浦幸作。このチャリオットは通常の鎧騎士が乗りこなすには無理があります。熟練が必要であり、メイ・ウィル共にこのチャリオットを枢軸戦術として用いるには鎧騎士の底上げが必要であります。以上」
「では、3交代制の見張り番だったな。ムーンシャドゥ対策は完璧ではない、と」
確認するスカラー。
兎に角、夜のシフトに銀麗がいる事が主要課題である。
●ぶちまけろ!
事件は昼起きた。
突然に新型チャリオット(丸太付き)が暴走して、競技場の外へと脱走しようとしたのである。
「天の試練は終わり、如何なる力も紐の如く解けん!」
急ぎ起こされ、麟太郎のチャリオットにタンデムした銀麗が黒の神聖魔法を唱える───ニュートラルマジックだ。
淡い黒い光に包まれたさすがに彼女の最大出力で神聖魔法を唱えても、成功率が危ういので、一段階出力を絞っての魔法である。
「それでも止まらない!?」
オリエもチャリオットに乗り込むと、搬入口に横付けにして、市街への脱出を防ぐ。
石の中の蝶がはためいている事にチャリオットから30メートル以内にいる者は気付いた。
「銀麗───ブラックホーリーを!」
オラースが指示を出す。
「天の怒り、人の怒り‥‥」
これも最大出力ではなく、一段階絞っての攻撃である。
淡い黒い光が銀麗に収束し、鎧騎士に収束していった。
「出なければ、出るまで撃つのを止めません! カオスの者!」
───そこへっ!
「臓物をぶちまけろっ!」
とシャウトしながら、シュバルツが豊かな胸と尻とを揺らしながら、テスト鎧騎士の腕ごと、大斧『恐獣殺し』で制御用の水晶球を粉砕する。緊急時である、背に腹は代えられない。
血飛沫を上げながら、鎧騎士はのたうち回る。
その背中からトンボの羽化の様に、黒い長身の影が現れる。美しく整ったギリシャ彫刻を思わせる顔立ちに臍から肩まで大胆にカットした全身にフィットした服。そして、その脇から生えているのが見えるのは2対のトンボの羽根であった。
身長は成人男性相応といった所であろうか、決してシフールではない。
幸作が矢を射るが、華麗な動きで交わされる。
「カオスの者かっ!」
銀麗が思わず叫ぶ!
「そういう事☆ 判っているなら、僕が面白そうな事は判るよね、もっとも僕だけの意志じゃないけどね。話を混乱させるため、言ってあげると、僕の仕えている主はこの国の者じゃないよ☆って、ウわっちっ!」
銀麗がブラックホーリーを唱えて一撃された声である。
カオスの者は羽根をはためかせて(別に羽根をはためかせる必要はカオスの者にはない、このカオスの魔物なりの様式美という所だろう)、追撃をかわして、皆から見えなくなった所で、何か別の姿に変じたのか、オリエや麟太郎が追尾に出ようとしても発見できなかった。
「さて、今回は冒険者一同には敬服した。特に銀麗どの、そなたの行動には痛く感心させられた。おかげであたら、貴重な鎧騎士を失わずに済んだ礼を言おう」
スカラーが腰を屈める。
「何もかも天の試練です」
銀麗はだまってそう応えるのであった。腕を叩き斬られた鎧騎士は、紅子らの手配で教会へ直行。手配りの良さでなんとか腕も繋がった次第。
しかし、ウィル以外の国家とはフカシか? それとも冗談めかしていった本気か? 一同の意見が分かれるところであった。
尚、スカラーは大ウィルの内部説を捨てていない。