英雄になりたい1
|
■シリーズシナリオ
担当:マレーア
対応レベル:1〜3lv
難易度:やや難
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:8人
サポート参加人数:1人
冒険期間:04月20日〜04月25日
リプレイ公開日:2005年04月28日
|
●オープニング
「馬鹿者! おまえは自分の置かれている立場が判らぬのか?」
普段は物静かな老人が血相を変えて怒鳴りつける。怒りのために寒風に晒されたかのように震え、手にした杖に力が籠もる。
息子は彼の自慢であった。初老を過ぎた後に生まれた跡継ぎなので、思いもひとしお。小なりと言えども彼が武勲で増やした所領を受け継ぎ、家の誉れを増し加えてくれるはずの子であった。ジーザス教に対する信仰も堅く武芸もしっかりと身に付き、修行に出した大貴族からの覚えも良い。乱世で有ろうと平和な時代で有ろうと、必ずや家名を高めてくれるで有ろう事は、親の欲目を差し引いても確かである。
「御舘様。あたしは側女でも構いません。若様のご出世に障りがあるというならそれでも構いません」
健気にも目の前の娘はそう言うが、未だかつて親に口答えをしたこともない従順な息子が、このときばかりは真っ向から父の意に逆らう。
「父上。私は子供の時から決めていたことがあります。聖書に書かれているような素晴らしい人を娶りたいと。そして、主は彼女を私に与えてくれたのです」
騎士叙任を受けて後、旅の剣士を装った1年程修行の旅に出ていた彼は、ある日渇きを覚えてとある村に立ち寄った。丁度水汲みの帰りだった娘を見かけ水を求めた。すると、彼女は息子だけでは無く馬のために惜しげもなく水瓶の水を譲ってくれたのだ。井戸は遠くにあり、後でそのことを知った彼はさらに感心を覚えた。
「私はエサウとヤコブの母となったリベカの故事を思い出しました。彼女には本日ここに参るまで身分を明かしてはおりません。見ず知らずの風来坊ためにしてくれた親切は、微塵も打算を含まないものです。そして彼女の父に『共に教会の礼拝へ参る許し』を得、暫く逗留致しました。修行の旅の途中でなかったら、もっと早くご報告に伺っております」
既に名門との縁談も根回ししてきた父にとって、裏切りとも言える息子の言葉。そこへ助け船を出したのは糟糠の妻であった。
「あなた。シャルに理想の女性像を与えたのはあなたではありませんか。神が結びつけようとなされているものを、人の手で切り離すのはどうでしょう?」
「は、母上」
賛意を得た息子マレシャルは、父の目を期待を持って見つめる。
「勝手にするが良い。だが、名門との縁談を蹴る以上、おまえには別の方法で家名を高めて貰わねばならん。父が与えようとしている以上の物を、その手で勝ち取ってくることが条件だ」
張りつめた空気の中で、母もまた条件を付ける。
「えーと。お嬢さん。マチルドさんと言いましたね」
「はい」
「私も注文があります。あなたに領主の妻として相応しい能力があるならば、反対はしません。また、殿に取りなしもして差し上げましょう」
こうして、二人は結婚成就のための条件を与えられた。
「坊ちゃん。それでお仲間をお捜しで?」
「ああ、ドレスタット付近を荒らす海賊を退治して来いと言い渡された。但し、一つ条件が付いていて、既に名の通った冒険者では駄目なんだ。駆け出しの冒険者以外では、私が家名を上げることには成らない」
「見た目にあまり強そうでない方が良いわけですよね。任せて下さい。馬よりも驢馬が似合うパラの騎士とか、見かけは愛らしいが一度切れると絶大な破壊力を発揮するハーフエルフの魔法少女とか、シフールなのにとても思慮深い教師とか、見かけに拠らぬ実力者がおりますよ」
「それは頼もしいな」
かくして駆け出しの冒険者を求める依頼が張り出された。
●リプレイ本文
●港
貝殻を耳に当てれば、海の歌が聞こえる。潮の香り漂う港街。船から上がる荷を運ぶ労働者の群。
「おっと、嬢ちゃん。ここはおチビさんの仕事はないぞ」
荷物一つ運ぶ毎に焼き印を押した木札を渡している監督が、自分の腹の辺りに顔のある女の子に向かってあっちへ行ったと追い立てる。
(「がうがう〜!」)
仕打ちに噛みつくのを我慢しながら、ミヤ・ラスカリア(ea8111)は笑いを繕ったが、
「あ〜!」
彼女の忠実なる下僕は彼女の心のままに行動していた。次の瞬間、驢馬トロンペ・キントがかぷっと噛みついていたのだ。
「判った判った! 驢馬込みで雇う。荷物一つで札一つだ。夕方に金と取り替えてやる」
成り行きで雇われるとこになったミヤ。驢馬で荷を運びながら労働者達と言葉を交わす。
「海賊ねぇ。広い意味では御領主様もそうだよ」
普段は水先案内業をやっていて、自分達の縄張りを無断で通る連中に対して、通行料の強制取立をする。表の仕事は、港で引き船となって船の出入りを助けたりしたり、荷物の積み卸し労働者を斡旋管理するのもいるのだ。
「じゃあ、狭い意味では?」
「野盗団の海版だな。大小合わせて結構いるぜ。エイリーク様のご威光で、ここらで海賊をする奴は少ないが、それでもせこい略奪を行う奴らはいる。喫水の浅い小さな船で、北の島影から急に現れるんだ」
「ふーん」
ミヤは老人と組んで、儲けを折半の約束で荷を運ぶ。大した金ではないが、それでも夕方には銀貨一枚の儲けになった。
「マスター、ミルクを二つ」
頭に布を巻いた痩せぎすの男が一人。吟遊詩人のジーク・ハーツ(ea9556)だ。昼間から酒場に入り浸っている。尤も、飲むのはミルクばかり。
「いや、昼間っから酒を浴びないのは感心だが、これで瓶一つ空けちまったぞ」
適時注文を取るので、混んできた今も余り迷惑がられないようだ。
「ところで、ここいらで有名な海賊の話を聞かせてくれないのであるかな?」
ミルクとは言え、いい加減良い儲けに成っているマスターは機嫌良い。
「有名な海賊団ねぇ? 海賊と言うよりは冒険団と言った方が正しいかも知れんが、七風海賊団と言う名は良く耳にするね。結構変わり者が多いらしい。まあ、冒険者なんてあんなものだろうが」
苦笑混じりに話す。
「おいジーク」
驢馬を外に繋いだミヤが入ってきた。
「親父さん、これでなんか食べるものを。それと外の驢馬にもなんかやって」
銀貨を一枚カウンターに置く。コップ一杯のミルクを出して、
「ほい。こんなもんかね」
黒パンを皿に、料理を乗せた物を並べる。そいつにかぶりつきながら、ジークにも勧めた。
●商人ギルド
「ふむ。あなた方が退治して下さると言われるのですか?」
「情報も商品ですが、他人のお金で海賊退治が出来る訳です。取引としては旨味があるのではありませんか?」
商人ギルドへと飛んだのは、フランカ・ライプニッツ(eb1633)とファルネーゼ・フォーリア(eb1210)である。フランシスカは道理を述べると、以降の交渉をファルネーゼに任せた。
「被害が大きい海域の地図と被害のあった場所。損害の規模を知りたいのぢゃ。それを掴まずして、海賊の害を除くなど不可能ぢゃ」
「‥‥申し訳御座いませんが、私の一存では不可ません。衆議に諮りませんと」
海図は商売上の機密である。おいそれと渡してはくれる筈がない。そう踏んでは居たが、そこは交渉。理由が理由である。吹っ掛けたところで決裂はあり得まい。
「ならば、これはどうぢゃ? わしらが格安で護衛を買って出るのは。相場の半分で良いぞ」
その場で決まらなかったが、感触は良いようだ。最後のフランシスカの問いに、意外な事実が漏らされた。
「縁談の相手はノアール・ノエル卿の養女エヴァンゼリン様です」
ノアール卿は政略結婚の手駒として多くの養女を育て嫁がせている。エヴァンゼリン嬢は農民の出だが貴婦人としての教養を身につけているという。マチルド嬢のライバルとしては手強い相手になりそうだ。
●禿島
気の荒い猟師達。だが板子一枚下は地獄の世界に生きる彼らの気風は、冒険者に通じる物がある。聞き取りに向かったレティア・エストニア(ea7348)とサミル・ランバス(eb1350)は、網の錘ですり潰したエビを平たく延ばして焼いた物を戴きながら、耳を傾けていた。
巨大なフカと格闘した話。銛で鯨を仕留めた話。そんな勇ましい自慢話を聞きながら、レティアは概念的な地図を作る。方位も距離も不正確だが、それは何処だか図面に指さして貰う。
「北の島。わしらが禿島と呼んでる岩ばかりの小島がある。そこはあちこちに岩礁があってな。潮も荒いでそこは海賊共もよう通らん。わしだけが無事に通れるんじゃ」
年嵩の親父が自慢たっぷり。その向こうに絶好の漁場があると言う。
「へえ〜。どうするの?」
サミルは親父が話したがってうずうずしているのを感じて突っ込んだ。尊敬の眼差しで。
「目印になるでかい岩がある。その周りは岩礁だらけで有名じゃ。普通の者は近寄らないのが上分別と言うものじゃ」
猟師の親父は婉曲に断った。所謂業務上の秘密と言う奴である。
●被害者
被害を受けた船の持ち主の所へ赴いたのは、京極唯(ea8274)と五十鈴桜(ea9166)。熱心に状況を聞く。島影から急に現れた海賊は、左から帆に火矢を射掛けた後、右舷から躍り込んできたと言う。小型でとても喫水の浅い船が、まるで魔法でも掛かっているかのように迫ってきたと言うのだ。
「帆を焼かれ、綱を斬られ、そうしてあのスピードだ。信じられないが、奴らは風下から風に逆らうように一直線にやって来た」
そして、積み荷の内特別高価な品物を選んで持ち去ったと言う。何人かの船員や乗客も拉致された。苦々しそうに吐き出す被害者の証言を書き留めるサミル。拉致された者は、若い娘を除くとシフールやパラやエルフばかりだと言う。この部分の証言は、不思議とどの被害者も一致していた。
●マジ戦
「まずは、対峙する相手を良く知らなければなりませんね。時間を決めて戦って頂き、私達の力量を把握していただきます。よろしいですか?」
レティア・エストニア(ea7348)は砂時計と日時計で時間を計測準備を終えて宣告する。商人ギルドに話を付けて一時借りた船の上。港の直ぐ外に過ぎないが波は荒い。
「そうですか。ならば──行きます」
揺れる船上で、マレシャルがごく自然に動き、若干長めの柄の日本刀を抜き放つ。
まるで、不動の大地の上に立っているかのように足が甲板に付いている。
「遠慮はしないぜ」
言いながらサミル・ランバス(eb1350)が背後から突っ込む。
模擬戦とはいえ、手は抜かない。
策具の上を飛び越え間合いを詰めるが、背後が目に見えているかのような刀捌きで受け止める。
「何!」
「バランスのいい流派は大概が、背後からの奇襲の策も備えています。ノルドも例外ではありません」
華国伝来の白手の技を思わせる構えのファルネーゼ・フォーリア(eb1210)もその含蓄に納得はする。
「しかし、戦場ともなれば、男女関係ないのじゃ、さあ存分に立ち向かえい」
「戦場だからこそ、婦女子に刃を向ける訳に行かないのが、騎士道というものだと思います」
一気に間合いを詰めるマレシャル。
「天晴れな騎士道じゃ。じゃが、現実はそうは行かぬのじゃ」
鋭い蹴りを浴びせるが、足が捕らえたのは影のみ。
「あなたの技に敬意を表してです。これでいくさ場で婦女子に刃を向けぬ所以が判って貰えるでしょう」
流麗なステップで攻撃を見切ったマレシャルに続けて、ファルネーゼが正拳を突き出す。
軽くスゥエーしてマレシャルは避け、軽く体を入れ替えると、その頭上へ両手持ちで浴びせかける様な斬撃を見舞う。ファルネーゼはとっさに平を払って往なそうとするが、一打は正しく変幻自在の動きを見せ、気がついた時には峰に冷たい感触が一瞬残るのみ。これが実戦なら、胴体を掠め斬られていた所である。これが両手持ちの今一つの利。梃子の原理で手元の僅かな動きが、大きく剣先を変化させるのだ。
「抜き胴とは、だが‥‥」
そのファルネーゼの動揺とは裏腹に唯は見事な短刀での入り身をマレシャルに見せる。最も鞘に入れたままで抜き身ではない。しかし、基本的な体術の差で軽く往なされた。捕らえた! と思ったのは残像であった。
「これはノルドの奥義!?」
「基本にして、最も重要な技です。この足捌きから繰り出される、動きはノルドの要です」
「ですが、これには対抗できますか? 刀で幻は斬れますまい」
延々と紡がれていた、淡い銀色の光がジーク・ハーツ(ea9556)に収束し、月の精霊の力がマレシャルを惑わす。
「む、これは?」
「もう、聞こえていないでしょうが、直接戦闘は苦手なので‥‥私はマレシャル様の心の強さを試させてもらうのであ〜る」
これは月の精霊魔法『イリュージョン』。
(「この物語、さまざまなタイプ美女達に囲まれて幸せに生活するという私の描いた物語通りの幸せな幻覚を見せて耐えられるかな?」)
「マチルド、私を導いてくれ‥‥聖なる母よ、ジーザスよ。我が心を護り給え」
(あ〜遅刻しちゃう!)
ドシン。走ってきたマレシャル(息も荒い)は見知らぬショートカットの少女と激突した。
互いに転倒するふたり。少女の口からは銜えていたパンが転がり落ちた。
(ひど〜い女の子に何をするのよ)
暗転。
修道院の薄暗い空間の中、20代後半の円熟した色気を漂わせた修道女が、マレシャルの手に己の掌を重ねて呟く。
(ほら、マレシャルくん、先生の心臓がドキドキしているの判るでしょう)
そして、そのままマレシャルの手は彼女の胸へと導かれ──。
暗転。
「我が幻影に包まれ眠るがいい」
ジークの勝利宣言を遮るかの様にマレシャルの唇が動いた。
「‥‥」
「何だ? 萌え狂って死にたいか?」
「‥‥君は本当の女性を知らないだろう」
「我がシナリオは完璧だ〜!」
言っても、マレシャルが隙のない構えを崩さないままというのが、彼の精神が幻影に耐えきった証拠であった。
「成る程、俺のサーガの登場人物にはぴったりなナイスガイだ」
そして、マレシャルがイリュージョンから解放された時には、髪の毛を逆立てて、目を真っ赤に見開いたサミルが氷漬けになって立っていた。戦いの興奮で狂化した所をレティアが、アイスコフィンで氷漬けにしたという。
「お茶会の準備が終わる頃合いには溶けます」
レティアは落ち着き払って宣言した。
「で、評価はどうです。戦闘時間は少ない時間ですけれど。私たちも隙がなくて、あなたに手を出せませんでした。幻覚にかかっているというのに、全く」
「あなた達は自分の足りないところを見事に補っている、十分見事なものだと思います。鍛錬不足を痛感しました」
マレシャルもまた、冒険者達の実力を認めたようだ。
●決起の時
酒場に集まった冒険者達は、それぞれの情報を摺り合わせ、確認しあっていた。
「ふーん随分とカッコいい名前だな」
「歌にできそうであ〜る。まあ、今はそれよりも先に作りたい歌があるのであ〜るが」
「私は、それよりも風に逆らうように襲ってきた賊、というのは気になるのだがな」
「マレシャル殿。船の準備はどうするつもりじゃ? 乗組員は?」
「ああ、それは‥‥」
そんな会話が盛り上がりかけた時、聞こえてきた足音、小さな羽音に冒険者と依頼人は顔を上げた。
「用意ができましたわ」
フランカの先導で料理や飲み物が運ばれてくる。
「手伝おう。大丈夫か?」
素早く桜は荷運びを手伝う。
レティアはお茶会と言ったがその場に紅茶は無かった。
酒場のテーブルに並び供されたエール、ワイン、ミルク。料理各種。
「紅茶は無いのか?」
少し残念そうな表情の唯とは対照的に
「みんなで食べようよ♪ 美味しそうだよ‥‥」
自分が運んできた料理にじゅるり、と舌なめずりするミヤにフランカは優しく、でも諌めるような目配せをする。
てへっ、と笑って席に付いたミヤが最後。
冒険者達が全員席に付いたのを確認して、マレシャルは‥‥立ち上がった。
「これからの戦いは‥‥おそらく簡単なものとはならないでしょう。どうか、よろしくお願いいたします」
「‥‥一つだけ聞かせて頂けますか?」
はい、と答えたマレシャルにあえて厳しく、レティアは聞いた。
「この度の海賊討伐の意義は何処にあるとお考えです?」
質問に彼は、真っ直ぐに答える。
「海賊に困っている人々を、助けることです」
「ほお、結婚の許しでは無いか?」
「はい」
即答、だった。
「私は与えられた使命に私欲は挟みません、そのような事をすれば私は愛する者をこの腕に抱く資格さえ失う。いつ、いかなる時も騎士たれ、それが私が受けてきた教えです」
(「‥‥必要は無さそうだな」)
もし彼が功を焦ろうとするのなら、止めるつもりだったが‥‥。杯を揺らしながら桜は笑う。
「決意。確かに伺いました。微力ながらお力になりましょう」
そう言ってレティアは立ち上がる。後に続くように結も‥‥
「‥‥マレシャルさんに「天」の後継者たり得る資質が有るのではないかと見ました。貴方がそれだけの人物であれば、私は最後まで力になりましょう」
「俺の持てる力は全てあんたに託す、だからあんたも頑張りなよ」
一人、また一人と‥‥立ち上がる。
「貴方の物語を、書くのであ〜る。最後まで共にいくのであ〜る。これからはリーダーと呼ばせて貰うのであ〜る」
「英雄を目指して何が悪い。わしは、貴殿が気に入ったぞ」
「だが、英雄になりたいと叫ぶ者は決して英雄にはなれない。意味は貴方ならお解りになるでしょう?」
「マレシャルは泳げる? 一緒に覚えよっか」
最後に浮かび上がったフランカは微笑みかける。ニッコリと仲間に、そしてマレシャルに‥‥。
「貴族と言うのは綺麗事だけでは済まない大変な仕事だと聞きます。でも側に素敵な方がいれば、きっと乗り切れるのでしょうね‥‥」
十六の瞳が、たった一人を見つめた。
自分達の主、そして仲間を‥‥。
(「これは‥‥私の未来への試練‥‥」)
一度だけ瞬きした後、決意の目で彼は聞いた。
「‥‥僕に、命を預けてくださいますか?」
一つとして横に動いた頭は無い。
マレシャルの手が促し、杯がそれぞれの手に握られる。
そして‥‥
「正義と、勝利と、愛を我らに!」
掲げられる。高く高く。
彼らの未来と、意志を表すかのように‥‥。