美人はいかが1
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■シリーズシナリオ
担当:マレーア
対応レベル:7〜11lv
難易度:難しい
成功報酬:5
参加人数:10人
サポート参加人数:2人
冒険期間:04月20日〜04月25日
リプレイ公開日:2005年04月28日
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●オープニング
「馬鹿者! おまえは自分の置かれている立場が判らぬのか?」
普段は物静かな老人が血相を変えて怒鳴りつける。怒りのために寒風に晒されたかのように震え、手にした杖に力が籠もる。
息子は彼の自慢であった。初老を過ぎた後に生まれた跡継ぎなので、思いもひとしお。小なりと言えども彼が武勲で増やした所領を受け継ぎ、家の誉れを増し加えてくれるはずの子であった。ジーザス教に対する信仰も堅く武芸もしっかりと身に付き、修行に出した大貴族からの覚えも良い。乱世で有ろうと平和な時代で有ろうと、必ずや家名を高めてくれるで有ろう事は、親の欲目を差し引いても確かである。
「御舘様。あたしは側女でも構いません。若様のご出世に障りがあるというならそれでも構いません」
健気にも目の前の娘はそう言うが、未だかつて親に口答えをしたこともない従順な息子が、このときばかりは真っ向から父の意に逆らう。
「父上。私は子供の時から決めていたことがあります。聖書に書かれているような素晴らしい人を娶りたいと。そして、主は彼女を私に与えてくれたのです」
騎士叙任を受けて後、旅の剣士を装った1年程修行の旅に出ていた彼は、ある日渇きを覚えてとある村に立ち寄った。丁度水汲みの帰りだった娘を見かけ水を求めた。すると、彼女は息子だけでは無く馬のために惜しげもなく水瓶の水を譲ってくれたのだ。井戸は遠くにあり、後でそのことを知った彼はさらに感心を覚えた。
「私はエサウとヤコブの母となったリベカの故事を思い出しました。彼女には本日ここに参るまで身分を明かしてはおりません。見ず知らずの風来坊ためにしてくれた親切は、微塵も打算を含まないものです。そして彼女の父に『共に教会の礼拝へ参る許し』を得、暫く逗留致しました。修行の旅の途中でなかったら、もっと早くご報告に伺っております」
既に名門との縁談も根回ししてきた父にとって、裏切りとも言える息子の言葉。そこへ助け船を出したのは糟糠の妻であった。
「あなた。シャルに理想の女性像を与えたのはあなたではありませんか。神が結びつけようとなされているものを、人の手で切り離すのはどうでしょう?」
「は、母上」
賛意を得た息子マレシャルは、父の目を期待を持って見つめる。
「勝手にするが良い。だが、名門との縁談を蹴る以上、おまえには別の方法で家名を高めて貰わねばならん。父が与えようとしている以上の物を、その手で勝ち取ってくることが条件だ」
張りつめた空気の中で、母もまた条件を付ける。
「えーと。お嬢さん。マチルドさんと言いましたね」
「はい」
「私も注文があります。あなたに領主の妻として相応しい能力があるならば、反対はしません。また、殿に取りなしもして差し上げましょう」
こうして、二人は結婚成就のための条件を与えられた。
「‥‥それでこれを渡されたんですけど、あたしにはどうして良いのか判りません」
ずっしりと重い革袋。50Gの元手と領地外れの荒れ地の地図。ここを薬草園に拓いて、姑が認める実績を創らねばならない。もちろん、貴族に相応しい礼儀作法と教養も。語学や馬術武術の嗜みも欠かせない。全ては渡された物だけで賄わねばならないのだ。
「それで助けてくれる人を捜しています。こんな大金を見たこともありませんでした。ですからどう増やして行くのか判りません。帳簿を厳重にチェックされるので皆様にはきちんと報酬を受け取ってくれないと困ります」
「ふむ。あんたの場合は世知に長けた世巧者が必要だね。良いのを見繕っておくよ。うちには、あの戦馬鹿のだめだめ領主ジャン卿を叩き直している女性紋章学者とか、某大貴族の娘の代役を何度も務めている気品高き魔法使いとか、若いながらもドレスタットの蔵書を全て把握している史書殿、なまじな女性は裸足で逃げ出す美形戦士なんかも登録している。必ずやご期待の顧問が見つかるだろうよ」
「あのう。そんな高名な方に来ていただいてもお金が‥‥」
「判った。それも考慮しておく」
かくして経験豊かな者を求める依頼が張り出された。
●リプレイ本文
●到着
回る水車の音高く、麦が風と駈け比べする村々。果樹は今花の盛り。
「‥‥ジャンさんトコに初めて行った時を思い出すなぁ」
鳳飛牙(ea1544)の口から漏れる言葉。だが、比べるのが失礼なくらい見事な荘園の姿がそこにあった。農地は綺麗に3分され、麦畑と豆や野菜の畑、そして豚や鶏の放たれている休耕地。それらは正方形の区画に区切られている。
「思ったよりも豊かそうです。一区画がさらに升目状に分かれていますね」
ベルティアナの率直な感想に
「ようこそ冒険者さん達。マチルドさんのお目付役となったタンゴよ」
出迎えの傾いた服装の女性が応えた。猫の耳のような被り物と体の線のくっきりとした服が、女性でも目を奪われるような艶めかしい雰囲気を醸し出していた。
「一区画を農民4家族に割り当ててるの。9分割のうち4つが農民の物で、4つが領主の物。残り一つが教会へ納める物なの。どれが誰の取り分かは収穫の時にくじ引きする事になっているわ」
「初めましてですぅ」
同行するレニー・アーヤル(ea2955)が握手を求めた。
(「どれが自分の物になるか判らないと、手は抜けないですねぇ」)
今まで論外な例を見てきたせいか、領主の力量を過大評価しているのかも知れない。
「それで、予定地を見せて欲しいんですけどぉ」
「うふ。あんまりいいとこじゃないわよ。参考記録はそこの馬車に積んであるわ」
受け入れ態勢は周到に準備されていた。
「それで、マレシャル殿はどちらにおいでか?」
馬を下りながらイルニアス・エルトファーム(ea1625)が尋ねる。
「若様はドレスタットでお仲間をお捜しです。志を果たさぬ限りお戻りになりません」
並の娘ならば蠱惑されるイルニアスの容姿。それを前にして心を微動だにしないタンゴの笑み。
「承知。ところで予定地は荒れ地と伺っている。多分領地の端に当たる場所であろう。悶着を起こさぬよう、地境を記した絵図を頂けまいか?」
「石ころと荊の多い荒れ地です。お狩り場の森に隣接していますし、多少のことでは問題に成らないでしょう」
(「石か‥‥。畑の垣に積んで、保温のために使えるかも知れぬな」)
「何か?」
急に黙って考え込んだイルニアスに向かって、タンゴは色っぽく覗き込んだ。
●宝の山
大きな空を飛んで行く小さな影はなんだろう。フライングブルームでメモを取るのはジェイラン・マルフィー(ea3000)。
森と小川と小さな湖。泥炭質の広い湿地。集落の影は微塵もなく、その中にぽつんと浮かぶ石と荊の大地。薬草園の予定地は、誰でも一目で痩せ地と判る場所にあった。
「じぇいらんくん!」
泣きそうな声が下から来る。獣道を拓きながら進む利賀桐まくる(ea5297)の悲鳴だ。
「まくるちゃん」
急ぎ舞い降りるジェイランの眼下に、無数の小さな蛭に襲われている恋人の姿があった。
「おいらが来たから大丈夫。さぁ、あっちまで行くじゃん」
ジェイランは横乗りのまくると共に荒れ地に降り。そして吸い付いた蛭を払い落とす。痕から滲む血を口で吸って頭を撫でると、まくるは彼の腕の中で泣いていた。
(「か、可愛いじゃん」)
その頃。テレスコープで周囲を確認していたテュール・ヘインツ(ea1683)は、どこから手を付けよう。と頭を抱えていた。湿地帯と石ころばかり多い荒れ地。ボートや筏が必要かも知れない。隣の長渡泰斗(ea1984)も深くため息。先ずやるべきはこの多すぎる水をどうにかすること。そして泥炭質の土地をどう使うのか? 普通の畑にするためには大変な土木工事が必要と見込まれた。放置されているはずである。正直、このままでは金を投下して開墾するのは割に合わない。さらに頭が痛い事実がある。依頼人の金は、今回の報酬や出費を含めて50Gに過ぎないのだ。自分達のほうが余程の金持ちである。
一同が顔を見合わせた時。
「一寸待って!」
イリア・アドミナル(ea2564)が声を上げた。
「これ、モーブ(ウスベニタチアオイ)じゃない?」
群生する草を手に取り根を裂いて調べると、粘りのある汁が流れる。
「間違いないわ‥‥」
この粘液質が喉など粘膜部位の痛みと炎症を和らげるのだ。蜂蜜や卵白と共に撹拌するとふわふわの菓子になる。これを風邪などの時口の中でゆっくりと溶けさせると、喉の痛みに良く利くのだ。さらに調べてみると、消化促進・強壮作用・発汗促進、鎮痛・酒毒緩和に益があるウォーターミントの群落を発見。リウマチの痛み・霜焼け・利尿に効能あるトクサや、痛風・関節炎・貧血に利き、食中毒予防に効果があると言われているクレソンなども見つかった。
「上手いこと整備すれば行けるでしょう」
領主の奥方が科した試練は無理難題ではなかった。問題は、いかに金を使わずに整備し、それを高く売り捌いて行くかに掛かっている。
こうして調査の日々は暮れ、日没と共に村々は眠りに就く。居酒屋も扉を堅く閉ざし、ただ、領主の舘と教会の一部の部屋から漏れる明かりだけが、人の住む土地である事を宣言していた。
その一つ、ランプの明かりに照らされるレニーが山と積まれた記録を調べている。主に地境についての公文書だ。一字一句を吟味して、後の争いを避けるべく神経をすり減らす。必要な部分は記録の日時や書簡の番号とともに書き写し、何時しか夜は更けて行く。
星は静かに降り、風が鎧戸を揺らした。
●プロジェクトはスパルタン
「『ウィザードのイリア・アドミナルと申します、宜しくお願いします』」
「『初めましてぇ、レニー・アーヤルと申しますぅ。言語関連ならぁ全てを網羅してますのでぇ、どぉ〜んと御任せですぅ☆』」
‥‥きょとんとするマチルドを見て、二人は小さくため息をついた。
ちなみに彼女達が最初に話した言葉はラテン語である。彼女達に言わせればラテン語は貴族の嗜みなのだとか。‥‥まだ貴族にもなっていない村娘のマチルドにいきなりラテン語で話し掛けても、普通は通用しないと思うのだが。聖職者になる訳じゃあるまいし、と言うシャルロッテ・フォン・クルス(ea4136)の意見もあったが、とりあえず使えないよりは使えた方がマシ、という事で。
少々困惑気味のマチルドに、イリアから数枚の羊皮紙が渡される。イリアの手書きか、何事かが記されているようだ。
「これを教本として、ラテン語の勉強をしていきたいと思います。それじゃ、まず最初の‥‥」
「‥‥あの」
授業の開始を告げようとした先生の声を、生徒がおずおずと断ち切る。
「‥‥読めません‥‥」
「えーとぉ、どこが読めないんでしょおかぁ〜? ゲルマン語の訳がついてますからぁ、とりあえず‥‥あ、あら?」
俯いてしまったマチルド、覗き込んだレニー先生。よくよく見れば生徒マチルドはほろりと涙をこぼしている。
「読めないんです。読むのも書くのも、自分の名前とあの人の名前だけ。手紙はシフールに読んで貰ってましたし、宛先とサイン以外は代筆屋に」
冒険者と一般市民の識字率を一緒にしてはいけない。世界を飛び回り言語を重視する冒険者と違い、一般市民は文字をそれほど必要としないのである。書は金持ち貴族の道楽であり、勉学は庶民にとって最大の『娯楽』なのだ。
後ろでそのやり取りを見ていたシャルロッテとフィル・ディアが大きく溜息をついた。シャルロッテが危惧した通りである。他国語の前に母国語。冒険者達の考えた『貴族のご夫人』は、マチルドにとって随分と高い所に据えられた存在のようである。
扉の向こうで声がする。
『そう、そこ‥‥もう少し強く』
『は、はい‥‥こう、ですか‥‥?』
指示を出す男の声は鳳、戸惑いながら聞いている女の声はマチルドのものだ。
『痛っ‥‥! そうじゃない、それじゃ強すぎ。もっと優しく、支える様に‥‥』
『ああ‥‥すみません‥‥』
何やら扉の前でしゃがみ込んでいる猫耳女。耳四つ分だけ良く聞こえる、という事はないだろうけれど、随分と興味津々の模様。‥‥っておいおい、なんで皆集まってきてるの?
『じゃ、俺が‥‥少しキツク縛るけど、いいかな?』
『は、はい‥‥』
興味半分、義務感半分で聞いていたまくるがここで切れた。まじまじと聞いていた仲間をかき分けて扉を勢い良く開ける。
「ふ、ふぉん君、いったい、な、何を‥‥教え‥‥え?」
‥‥皆の目に入ったものは。
頭や足、腕といった部分が包帯でぐるぐる巻きになっっている鳳と、右手首を包帯で縛られ始めたところのマチルドであった。
「何って‥‥包帯使った応急手当の方法、だけど」
一斉に脱力する扉の外の皆様。最初から全て分かった上で聞いていたらしいタンゴは何時の間にか居なくなっていた。
●小さなお茶会
「あの、これ‥‥」
マチルドは躊躇いと戸惑いの交じり合ったか弱い声をあげる。普段の生活からはとーんとかけ離れたような洋品店。自分よりも年下の娘に手を引かれて入るには少々抵抗のある店である。しかし手を引くカミーユ・ド・シェンバッハ(ea4238)にはこれでもまだ不満げ。自身の服の選定だとしたら店の品は全て判定外である。
「ドレスタットの街ならばもっと上等な服が仕入れられますのに」
まだまだ張りのある頬をぷうと膨らませながら服を物色する。教育の一環でもあるお茶会、衣装や立ち振る舞いは非常に重要なものだとカミーユは考える。教育は最初が肝心、交流会を兼ねたお茶会だとて手を抜いてはこれからに差し障る、と。
「立派なお洋服を着ることはそれに相応しい人柄と品位を持つ覚悟を持つということですの」
恐ろしく手触りの良いドレス。その布の上等さ、装飾の多さ、何より値段にマチルドは軽い眩暈さえ覚えた。楽しげに、しかし真剣な面持ちで次々と衣装をあてがっていくカミーユに、眩暈を覚えたままのマチルドは何も言う事が出来ず。
「‥‥ま、こんなものでしょうか」
ようやっと満足したカミーユ。延々人形のように服を着せ替えられたマチルドは、これだけで充分に疲労していた。衣装の金を払った貴族の少女は、にっこりと貴婦人候補に微笑むと
「次は靴屋ですわね」
更に疲労を追加予定。
「わぁ。マチルドさん、すっごいきれいー☆」
「ほんと、き、きれい‥‥」
テュールが無邪気に喜び、まくるは素直に同意する。お茶会のテーブルについたマチルドは、格好だけ見れば確かに貴婦人であった。
「まくるちゃん、駄目だよ〜? マチルドさんにはもうお相手いるんだから☆」
「‥‥? ぼ、ぼくにだって、相手は‥‥」
どうやらテュールくん。何か勘違いしてる模様。素直に引っかかって顔を真っ赤にする彼女も彼女な訳だが。
踵の高い靴は綺麗に磨かれ、普段櫛を通すだけの髪は美しいアクセサリーで飾られ、頬にはほんのり紅も入っているようだ。‥‥慣れぬ踵の高さによろけたり無意識に頭を掻いて髪の毛を引っ掛けたり、そもそも表情が着慣れぬ衣装に目一杯引きつっていたりするのだが。
今回の面倒な仕事を手伝ってくれる仲間達は既にテーブルについている。‥‥黒い猫の耳型アクセサリーをつけた妖艶な美女は、何事も無いかのようにお茶をすすっている。‥‥ま、とりあえず関係者なのだから参加資格はある訳だし。
さて、全員揃った所で改めて自己紹介である。
「フォン・フェイヤァと言います。言い難いだろうからフォンでもフェイでも‥‥」
「よ、竜巻小僧」
「‥‥誰だ今の突っ込み?!」
まあこんなやり取りもありながら、ほのぼのと進んでいく。テュールは肩から下げた小さなカバンから、さらに小さな袋と小瓶を取り出した。
「これが僕のお仕事。この間作ったんだ、香り袋と精油。薬草園って事だから、こういうのも作れるよっていう‥‥んー、なんて言うんだろ、『お手本』だとなんか偉そうだし」
言葉を選びながら差し出される小さな手。少年からのプレゼントに、マチルドの緊張も更に解された様である。まあ、長渡家の長い長い歴史の歩みをも笑顔で聞き楽しんでしまう程の彼女だ、プレッシャーさえ跳ね除けてしまえばどんな事でも楽しめる性格なのであろう。
「そう言えば」
イルニアスが顎に手を当て、思い出したように呟いた。そのまま顔をマチルドに顔を向ける。
「ご両親は‥‥マレシャル殿の素性をご存知か?」
マチルドの表情に影が走る。曰く、『騎士階級である事は知っている』との事。‥‥つまり、領主様の後継ぎである事は知らない、知らせていないというのだ。
「『領主様の一人息子』には他に縁談の話が出ています。‥‥これは村の皆が知っている話です。まさかその縁談を蹴って私と、などとは思ってもいないでしょう」
その言葉を聞いたイルニアスは、ふむ、と答えると茶を一口。この件に関しては、今はこれ以上突っ込まないことにしたようだ。
「さてさて。本日のお給金でございま〜す♪」
お茶会も終わりを迎えようとした時。不意に黒猫女が立ち上がった。手元には何やら書き込まれた布地が置かれている。立ち上がった女に対し、協力者達の意思、見る目は見事なまでに一致していた。
『‥‥てゆーか、お前、何?』
なんやかんやと書き込まれた布を見ながら、皮袋の中の金を分配していく。袋からはみ出した金貨の枚数が、それが今回の準備金である事を物語っていた。
一人一人に給金が手渡されていく。先にジェイランが提示した通り『残金の百分の一』‥‥だが。
「あの、何で私の給金はこんなに多いのですか?」
明らかに金貨の混じった報酬にカミーユが戸惑う。他にもイリアの給金が予定以上のものであったようだ。媚びるような困ったような顔を見せながら、のんびりとタンゴは話し始める。
「えーとぉ、例えばそこのボクのようなプレゼントはオッケー☆」
テュールを指すタンゴ。先程の香り袋、精油の事であろう。
「直接彼女の仕事や教育に関わるような品物はァ、彼女のお金から出さなきゃ駄目なのォ。そーゆう事になってるからァ、例えば『貴婦人になる為の衣装』も『お勉強用の参考書物』も代金を返してるだけなのネ☆ ご理解頂けたかしらぁ〜?」
・高級な礼服4G
・靴やアクセサリー1G
・羊皮紙に書かれた(今のマチルドには読めない)ラテン語とゲルマン語の教本5G
無論、教育の一環であったお茶会の代金も皮袋から出されている。‥‥やってしまった。唯一の収入は、今回道を創るための副産物の灰を売り払った1Gだけであった。
「今後何かある時は一言相談して下さいな〜。開墾するクワも荷運びの台車も、全部ここから出す事になりますので☆」
笑顔を見せるタンゴ、どうしましょうかと困った顔を見せるマチルド。
そして冒険者達は‥‥事の重大さに青ざめたのである。
残金:35G