【グレイト団現る】狙われた名剣

■シリーズシナリオ


担当:緑野まりも

対応レベル:2〜6lv

難易度:難しい

成功報酬:2 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:3人

冒険期間:11月18日〜11月26日

リプレイ公開日:2005年11月27日

●オープニング

 ある一室で、個性的な三人組がテーブルを囲んで相談していた。
「お前達! 今度の獲物はでっかくいくよ!」
「大きくとは‥‥いかに美しいのでしょうか?」
「おでは賛成。でっかいごどはいいごど」
 露出度の高いレザーの服を身に纏った美女、自称ミス・グラマラスが大きな声で宣言すると。基準が美しいか、そうでないかで物事を決める自称ミスター・ビューティホーが詳細を尋ね。物事を深く考えない自称ミスター・マッスルが、無条件で賛成する。
 彼らは、最近巷を騒がしているグレイト団という盗賊団であった。リーダーミス・グラマラスの指揮の下に、たった3人で商人の荷馬車を襲ったり、山賊のお宝を盗んだりしている。
「今回の仕事は‥‥貴族の家さ。仕入れた情報じゃ、ここには古くから伝わる剣があるらしい‥‥」
「剣ですか? 貴族の家なら、もっと美しいものがたくさんありますでしょう?」
 ビューティホーが不思議そうに聞き返すと、グラマラスは声を潜めて話を続ける。
「話は最後まで聞きな。この剣には秘密があってね‥‥ごにょごにょ‥‥というわけなのさ!」
「おお、素晴らしい! それこそ私達に相応しい、美しいお宝というわけですね!」
「でっかいおだから。すごぐいいごど!」
 話を最後まで聞くと、ビューティホーとマッスルは喝采をあげた。グラマラスは二人の態度に満足そうに頷くと、椅子から立ち上がる。
「わかったら早速準備だよ! 貴族なんてろくでもないヤツラから、しっかり奪い取ってやるんだよ!」
「さすがはお嬢様。貴族に対しては並々ならぬ闘志を‥‥痛っ!」
「ビューティホー! どうやらお仕置きされたいようだねぇ!」
「ああ! お許しをミス・グラマラス! どうか私の美しい顔だけはご勘弁を〜」
「びゅ〜でほ〜は、おでよりまぬけ‥‥」
 口を滑らしたビューティホーに、ビシバシとグラマラスの鞭が飛ぶ。ビューティホーは情けない悲鳴をあげながら狭い室内を逃げ惑う。その様子に、マッスルはこっそりと笑みを浮かべる。
「まったく、さっさと準備するんだよ!」
「ぐ〜れいと!」
 しばらくして、グラマラスの指示に二人の部下は謎の掛け声をあげて室内をあとにした。

 ある日、冒険者ギルドにある貴族の使いというものがやってきた。
「私は、さるお方に使えている者です。実は、主人のもとにこのような予告状が届いたのです」
 使いの者が取り出したのは、羊皮紙に短く書かれた予告状のような手紙であった。

『貴殿の家に伝わる名剣を頂きに参ります グレイト団』

「当家には、たしかに代々伝わる古い剣があるのですが。その剣が謎の一団に狙われているようなのです。聞けば、この一団は近頃巷を騒がしている盗賊だとか。そのような者達に、家宝の剣を奪われては主人の面目が立ちません。冒険者に剣の守りをお願いしたい」
 使いの者は、盗賊に狙われている家宝の剣の守りをギルドに依頼した。早速、ギルドは依頼の張り紙を出して冒険者を募ることとなる。
 しかし、なぜグレイト団はわざわざ予告状などというものを出したのだろうか。噂ではかなりの目立ちがり屋とのことだが‥‥。

●今回の参加者

 eb0276 メイリア・インフェルノ(31歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 eb2205 メアリ・テューダー(31歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb2257 パラーリア・ゲラー(29歳・♀・レンジャー・パラ・フランク王国)
 eb2479 シルヴィア・エインズワース(23歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb3087 ローガン・カーティス(22歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb3219 ハイラム・スレイ(29歳・♂・神聖騎士・人間・フランク王国)
 eb3349 カメノフ・セーニン(62歳・♂・ウィザード・エルフ・ロシア王国)
 eb3563 烈 美狼(26歳・♀・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)

●サポート参加者

ナツキ・グリーヴァ(ea6368)/ ジークリンデ・ケリン(eb3225)/ フィーネ・オレアリス(eb3529

●リプレイ本文

「申し遅れました。わたくし、執事のルヴェンと申します。主人より、皆様のお世話を仰せつかっております。短い間でございますが、どうぞお見知りおきを」
 一階応接間に案内された一行。ここまで一行を案内した40代の精悍な顔立ちの男性は、恭しく頭を下げて挨拶をする。
「‥‥さっそくですけれど、他の使用人の方とも会わせていただけませんか。屋敷に、どういった方がいるのか知っておきたいですので」
「承知いたしました」
 メアリ・テューダー(eb2205)の言葉に、ルヴェンは頷いてパンパンと手を叩くと、すで待機していたのであろう3人の女性が部屋に入ってきた。
「失礼致します」
 3人の使用人はそれぞれ、そばかすが目立つショートカールの女性がアメリア、一番背の高いポニーテールがミラ、綺麗だが冷たい印象の黒髪ストレートロングは静瑠と名乗った。
「キミたちには、夜間や盗賊が現れたときには、一室に固まっていてもらい。できるだけ動かないでもらう」
「あと、剣のある二階には近寄らんようにしたってな。私ら以外が剣に近づくのは、怪しい思て攻撃してしまうかもしれへんから」
 この機会にとローガン・カーティス(eb3087)と烈美狼(eb3563)が、使用人達に剣を守る際の注意をするが。
「それは、承知しかねます」
「なんやて?」
「どうやら、皆様はわたくしたちの中に賊が紛れているとお考えのようですが。正直申し上げますと、わたくしはむしろ貴方がたの中に賊が紛れている可能性があると考えております。ですので、貴方がただけが二階の家宝のそばに付くというのは承知しかねます。わたくしも、家宝の警備のために二階の客間に付かせていただきます」
 ルヴェンははっきりと一行の作戦を拒否すると、自分も二階の警備につくと一行に伝える。しかし、警備というよりも、冒険者たちの監視といったような物言いに、一行は少し反感を持つのだった。

「この剣は当家の家宝。くれぐれも粗末に扱わぬようご注意ください」
 二階客間に案内された一行。ここには、鞘に収められた古めかしい剣が壁にかけられていた。
「この剣には、なにか言い伝えなどはあるのですか?」
「それ、あたしも知りたい! グレイト団が狙う理由があるかも?」
「古くから伝わる魔法の剣と聞き及んでおります。それと、この剣を持つものに富を譲ると、先代が言い残されたそうです」
「この剣を持つものに? 変な言い方だな。それはともかく、我が家にもこのような家宝があればいいのであるが‥‥」
 ハイラム・スレイ(eb3219)とパラーリア・ゲラー(eb2257)が剣の由来を聞く。ルヴェンの説明に、シルヴィア・エインズワース(eb2479)は少し首をかしげつつも、羨ましそうに剣を眺めるのだった。

「お食事をお持ちしました」
「ん、ああ、わざわざすまない」
 警備を始めて2日目、外の警備を担当していたローガンのもとに、昼食を持って使用人のミラが現れた。ミラは、ブロンドの髪を束ねたポニーテールと、明るい笑顔が印象的な活発な雰囲気のある女性だった。
「ふふ、昨日は大変でしたね」
「ん、なにがだ?」
「ほら、ルヴェンさんと‥‥あの人、私達が雇われたときもあんな感じだったんですよ?」
「ああ、随分真面目そうな人だな。冒険者という職業を認めてないような感じが気になったが」
「やっぱり、貴族に仕えるとみんなあんな風に、身分で人を判断するようになっちゃうんですかね。私、孤児だから相性悪いんです。あ〜あ、報酬に釣られて臨時の使用人なんて仕事請けなければよかったなぁ」
「ふ‥‥」
「あ、いま笑いましたね?」
 そのまま、しばらく立ち話をするミラとローガン。成熟した女性であるにもかかわらず、どこか幼い雰囲気を残すミラに、ローガンは小さく笑みを零す。それをみて、ミラは少し不服そうにローガンを睨みつけるのだった。
「ミラちゃ〜ん、ぱふぱふしてくれんかのぅ!」
「え、きゃぁ!」
「ごふ‥‥!!」
 二人が話をしていると、突然どこからともなく現れたカメノフ・セーニン(eb3349)が、ミラに抱きつこうとする。しかし、咄嗟に悲鳴をあげながら蹴り上げたミラの足が、カメノフの急所に直撃。あわれカメノフは、一撃死するのであった‥‥。デッドエンドはどこにあるのかわからないのである。
「ミラちゃん、いい蹴りしとるのぅ‥‥」
「あ! ご、ごめんなさい!」
 蹲りながら痙攣するカメノフ。惨状に気付いて、ミラは慌てて逃げていく。
「自業自得だな、スケベジジイ‥‥」
「いま、ミラさんが走っていかれましたけど‥‥。あら‥‥どうされましたの?」
 冷ややかな視線でカメノフを見つめるローガン。様子を見に来たメイリア・インフェルノ(eb0276)が、二人の様子に首をかしげた。
「わ、わしは、ただ‥‥。ミラちゃんの身体つきを調べようと‥‥。わしの見立てでは、メイリアちゃんに負けず劣らずいい身体つきをして‥‥ガク」
「あら‥‥逝ってしまわれましたわね」
 最後の言葉を残して気絶したように身動きしなくなるカメノフ。ちなみに、止めを刺したのはメイリアだ。
「‥‥身体つき‥‥か」
 ローガンは何かを考えるように、さきほどまで話をしていたミラの姿を思い出しては、小さく呟いた。

 三日目の夜、夕食を終えた一行は、また各々の担当の警備を行っていた。
「今日もいい夜空であるな。ん? いまなにか‥‥」
 外を警備していたシルヴィアが、屋敷の周りに茂る木々の影で動くものに気付いた。確かめようと、息を潜め忍び足で近づこうとしたそのとき。
「な‥‥急に眠気が‥‥うぅ‥‥」
 突然、視界が歪むほどの急激な眠気に襲われ。抵抗する間もなく地面に倒れ伏す。
「‥‥さすがは、お嬢様。美しいほど予定通りですね」
「びゅてほ‥‥おじょうざまいっだ、おじおぎされる」
「う‥‥聞かれていなければいいんですよ‥‥」
(「お嬢様‥‥? 誰のことであろうか‥‥うぅ‥‥」)
 朦朧とする意識のなか、聞こえてくる声になんとか考えを巡らせようとするシルヴィアだったが、それもすぐに闇の中へと消えていくのであった。

「はらら‥‥瞼がお〜も〜い〜‥‥くぅ‥‥」
「パラーリアさん!? う‥‥これ‥‥は‥‥」
 廊下を警備していたパラーリアとハイラムであったが、やはり急激な眠気に襲われた。かろうじて眠気に抵抗するハイラムであったが、気を抜けばすぐに眠りに落ちてしまいそうになる。
「薬が効いても起きていられるなんて凄いわね。でも、耐え切れるものじゃないから、ゆっくりおやすみなさい」
「く‥‥あな‥‥たは‥‥」
 ハイラムの歪む視界の中に、見覚えのある人物の姿が映し出される。しかし、徐々に遠くのことのように聞こえてくる声に、意識が奪われていくことを感じつつ、ハイラムも闇へと落ちていくのであった。

「剣はこの部屋だよ。冒険者達は眠り薬で寝ているだろうが、罠が仕掛けてあるかもしれない。油断するんじゃないよ」
「ぐ〜れいと!」
 派手なマスクをつけた3人組、グレイト団が二階客間の前に立つ。リーダーのミス・グラマラスは、いつもの露出度の高いレザー服ではなく、見覚えのある使用人服を着ていた。グラマラスは二人の部下に注意して、客間のドアに手をかけると、ゆっくりとドアを開ける。
「ハイィィ!」
「!?」
 ドアが開くと同時に、気合一閃、烈の拳が空を裂く。グラマラスは、咄嗟にサイドにステップを踏み、かろうじてこれを回避した。
「お前達、起きてたのかい!?」
「薬の混入を予想して、夕食は食べなかったのですよ。ごきげんよう、グラさん、ビューさん、マッさん」
「ビューさんは、美しくありませんねぇ」
「おで、まっさん?」
 驚きの声をあげるグラマラス。客間には、烈、メアリ、メイリア、ルヴェン、そして外で警備しているはずのローガンがいた。全員、眠気に襲われることなく意識ははっきりとしている。
「あら‥‥私は危なかったのですけどね。解毒剤があってよかったですわ」
 ポツリと呟くメイリア。ほかの者達は、事前に使用人を警戒していて、眠り薬入りの夕食は食べなかったのだ。
「こうなったら、力ずくで奪い取るよ!」
「ぐ〜れいと!」
 各々の武器を構えるグレイト団。そして、冒険者達との戦いが始まった。
「これ以上やめるんだ、ミス・グラマラス。いや、ミラ!」
「気付いてたのかい。だけど、ここでやめるわけにはいかないね! 貴族の財宝はグレイト団がいただくよ!」
 ローガンの説得にも耳を貸さず戦いを始める、ミス・グラマラスこと使用人ミラ。
「財宝!?」
「‥‥やはり、当家の財宝が目当てか。どこまで秘密を知っているか知らんが、ここで成敗させてもらおう」
「ルヴェンさん!?」
 グラマラスの言葉に、成り行きを見守っていた執事のルヴェンが、家宝の名剣を取って鞘から引き抜く。突然のことに、驚く一同。
「主人の家宝を勝手に使っていいのかい?」
「残念だが、家宝の剣は別の場所に保管してある。これは、賊をおびき寄せるためのダミーよ。潔く観念せよ!」
 ルヴェンは、巧みな剣術でグレイト団を圧倒する。メイリアと烈も、ローガンの魔法で士気を向上させ、戦いを有利に進めた。
「ちっ! まんまと騙されるなんてね! しかたない、一旦引くよ!」
「ぐ、ぐれいと〜!」
「逃がすか! く!」
 剣が偽物とわかり、形勢の不利を悟ったグレイト団は、身を翻して逃げようとする。追いかける一同だが、ビューティホーのダーツに一瞬足止めされ、身軽なグレイト団を逃がしてしまうのだった。
 結果的に、家宝の剣はダミーであったが、依頼は達成したので報酬は支払われることとなった。しかし、グレイト団の真の目的である『財宝』を守り通し、彼らを捕まえなければ、真の解決には至らない。