【グレイト団現る】遺跡に眠る遺産
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■シリーズシナリオ
担当:緑野まりも
対応レベル:2〜6lv
難易度:難しい
成功報酬:2 G 3 C
参加人数:7人
サポート参加人数:-人
冒険期間:12月12日〜12月17日
リプレイ公開日:2005年12月20日
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●オープニング
「そうか、使用人の中にな」
「はい、賊を捕まえることができず申し訳ありません」
ルヴェンは、主人である初老の男性に頭を下げる。初老の男性は、伸ばした顎鬚を擦りながら温和な笑みを浮かべる。
「まぁよい、しかし賊の狙いはやはり遺産の方であったか‥‥ふむ」
「やつらの様子では、また懲りずに狙ってくることでしょう」
「わしとしては、静かに余生を過ごしたい所じゃが。遺産があるということだけで、困ったものじゃのう」
「次こそは必ずや賊めを捕らえてみせますのでご心配なく」
「いや、今回の賊を捕らえても、また次の賊が現れるやも知れぬ。であれば、無用な遺産など持っているだけ邪魔なだけじゃ」
「だ、旦那様?」
「うむ、遺産は王国に献上してしまおう。わしとしても、それでスッキリするしの」
「で、ですが旦那様。あの遺産は代々伝わる‥‥」
「よい、跡取りのいないわしには、もう無用の長物じゃ。それに、国も聖杯探索などというもので、財源を圧迫しておるじゃろう。あって困るものではない」
「‥‥承知いたしました。しかし、遺産が隠されている遺跡は危険な場所です。回収の手はずはいかがいたしましょう」
「この間の冒険者に頼めばよい。なかなかの働きだったと聞いておるぞ?」
「旦那様。冒険者などという得体の知れない者達に、大事な遺産を任されるおつもりですか?」
「おぬしは、相変わらず冒険者を信用しとらんようじゃの。前回も、わざわざ自分の剣を囮にして‥‥。とにかく、賊も狙っていることじゃし、早々に人を集めて遺産を回収するのじゃ」
「‥‥身分の不確かな者を信用できぬのは当然でございます。わかりました、私が同行して不審な行動がないように見張りましょう」
「ふむぅ、考え方が古いのぅ‥‥」
恭しく頭を下げるルヴェンに、初老の男性は大きくため息をついた。
「あ〜くやしい! 策を見破れて、しかも囮の剣に騙されるなんて! とんだ屈辱だよ!」
「まぁ、ミス・グラマラス。今回の件は、相手が一枚美しかったということで、しかたないじゃないですか」
「ぐらまらずさま、変装までしだのに、ざんねん」
まんまとしてやられたグレイト団。悔しそうにテーブルを叩くグラマラスに、ビューティホーとマッスルは励ますように声をかける。
「まぁ、変装といっても、ほとんど素でやってた様子でしたけどね‥‥」
「うんうん‥‥素のおじょうざまはやさじい‥‥」
「なにか言ったかい!」
「い、いえ、なにも‥‥」
「うん‥‥」
こっそり呟いた二人に、ギラッと顔を上げて睨みつけるグラマラス。
「とにかく、貴族の遺産はあたしらがいただくんだよ! とっとと、情報を集めてきな!」
「は、はい!」
「いっでぎまず〜」
グラマラスの怒鳴り声に、二人は慌てて外へと飛び出すのだった。
「まったく‥‥はやく大金手に入れて、こんな仕事終わりにしたいよ‥‥あの子達のためにも‥‥さ」
「貴族からの依頼だ。なんでも、ある遺跡に隠されている遺産の回収をお願いしたいそうだ。なんか、遺跡に入るにはその貴族の所有してる剣が必要なんだそうだぜ。貴族の従者さんが同行するが、遺跡は色々危険があるらしいから気をつけていけよ」
ギルドでの話では、遺跡の中には遺産を守るアンデットモンスターや罠が仕掛けてあるらしい。しかも、その遺産を狙うグレイト団も現れるだろうと予測される。はたして、遺産は無事に回収できるのだろうか。
●リプレイ本文
ルヴェンの案内で、森の奥にある人知れぬ遺跡へとたどり着く一行。道中は、予想されたグレイト団からの襲撃もなく、特に問題も起こらなかった。
「こんな所に遺跡があったとはな。ルヴェン殿、ここはどういった遺跡なんだ?」
「古くはケルト民族の築いた遺跡と聞き及んでおります。主人の遠い先祖には、ケルトの血が流れているとか」
「なるほど‥‥」
ローガン・カーティス(eb3087)が興味深そうにルヴェンに尋ねると、ルヴェンは淡々とした口調で遺跡についての説明をする。
「皆様方、これより遺跡の封印を解きます。なにが起きるかわかりませぬので、くれぐれもご注意ください」
そういうと、ルヴェンは遺跡の祭壇の前に立ち、大事そうに持っていた剣を鞘から引き抜く。
「へぇ、それが本物の鍵っちゅうやつかぁ。綺麗な剣やねぇ」
烈美狼(eb3563)は、感心したように呟いた。たしかに、遺跡の鍵という剣は、美しい装飾の施された黄金の柄を持ち、その柄の先には水晶の玉が埋め込まれていた。
「正確には、この剣に埋められた水晶が鍵となっております。では、封印を解きますぞ」
ルヴェンは、剣の柄から水晶を引き抜くと、祭壇にある窪みへとそれを置く。一瞬、水晶がキラリと光を放つと、ガコンと音がして石畳に地下への階段が現れるのだった。
「あらあら、大掛かりな仕掛けですね」
「このような大掛かりな方法で守らねばならない遺産とはいったいどのようなものなのでしょうか」
メイリア・インフェルノ(eb0276)が、現れた階段におっとりとした口調で驚きの声をあげ。ハイラム・スレイ(eb3219)は、真剣な眼差しで遺跡の奥を見据えた。
「みなさん、遺跡に入る前に一度休憩をして食事にしませんか?」
皆が、少なからず遺跡に対し興奮している中、メアリ・テューダー(eb2205)はマイペースに食事の提案などをした。時刻はちょうど昼時、たしかに遺跡に入る前に食事を取っておいたほうが良さそうである。
「あら‥‥食料が無いわね」
朝霧桔梗(ea1169)が他人事のようにポツリと呟いた。どうやら、行きの二日分しか食料を持ってくるのを忘れていたようだ。
「なんじゃ、しかたないのぅ。わしの分をやろうかの? その代わり、ぱ、ぱふぱふしてく‥‥」
「却下ですね。私のでよければどうぞ」
朝霧にカメノフ・セーニン(eb3349)が交換条件付きで食料を提供しようとするが、あっさりメイリアに遮られた。結局、幾人かが余分に持っていた食料を朝霧に提供することになった。
「‥‥何かいるぞ、気をつけろ」
「ふむ、スカルウォーリアーのようじゃの」
遺跡に入り通路を抜けた先の部屋。奥に蠢く何か、視力の良いローガンとカメノフがいち早く存在に気付き、皆に注意を促す。部屋には3体のガイコツが奥へと進ませまいと立ちふさがっていた。
「援護しますね。彼らに枷を与えよ、アグラベイション!」
「この者に、炎のごとき活力を、フレイムエリベイション!」
メアリの魔法で、ガイコツの動きが鈍くなる。そして、ローガンの魔法で士気を高められたハイラム達がガイコツ達に切りかかった。
「ハイ、ヤァ、タァ! これでどないや!」
「あら、当たったわ‥‥」
拳で連続攻撃を繰り出す烈は、ガイコツの盾防御を崩し渾身の一撃を叩き込む。朝霧も刀で相手を袈裟切りにするが、自分でやったことに関わらず何故か他人事のように呟いた。
「申し訳ございませんが、主の命に従い、遺産を受け取らせていただきます」
ルヴェンは、巧みな剣さばきでガイコツと切り結ぶと、数太刀をもってこれを打ち倒した。一同も、多少苦戦しつつも3体のガイコツを倒すことに成功する。
「みなさん、傷は大丈夫ですか?」
「私はたいしたことあらへんよ。それより、この残った武具は持ち帰る?」
「‥‥やめましょう、彼らは遺産を守る使命をもってこの地を守っていたのですから。彼らが、安らかに天に召されますよう」
「ほぅ‥‥冒険者にも少しはましな者がいるようですね」
戦い後、木剣と盾を外したハイラムが癒しの魔法を唱え、一同の傷を癒す。烈が、ガイコツ達が纏っていた武具を指差すが、ハイラムは首を横に振り、手を合わせて冥福を祈った。その様子に、感心したようにルヴェンが呟いた。
「これが、遺産‥‥」
ガイコツが守る部屋を抜けた先には、所狭しと財宝があるわけでもなく、ただ一つの台座の上にぽつんと像のようなものが置かれていた。女性が宝石を掲げ持っている姿を象った像は、どこか神秘的ではあるが‥‥。
「わざわざ、大掛かりな封印までするほどの物には見えんがのぅ」
「そうはいっても、ほかにそれらしいものもございません。これが遺産なのでしょう‥‥」
カメノフが顎鬚をさすって呟く。あたりを見回してみるが、他にめぼしいものはないようだった。ルヴェンも、少しがっかりした様子で頷き、像を丁寧に布で包んで回収する。
「あら?」
そのとき、メイリアの二本の短刀に意匠された鬼の目が光ったような気がした。と同時に、遺跡に地震のような振動が起こり始めた。ちなみにこの短刀は、不幸を呼ぶといわれているそうな。
「遺跡が崩れるかもしれないわね」
「いや、他人事みたいに言わないでくれ‥‥逃げるぞ!」
朝霧がポツリと呟くと、ローガンは珍しく焦りの表情を浮かべて、一同に脱出を促すのだった。
「危ないところでしたね」
「ごくろうさま。お疲れのところ悪いけれど、財宝を渡してもらうよ!」
「グレイト団!?」
遺跡からの脱出で疲れ果てていた一行を待ち構えていたのか、派手なマスクを付けた3人組グレイト団が現れる。
「やはりこのタイミングできたか‥‥ファイヤーボム!」
「ちっ、相変わらず人の口上を聞かないやつだね!」
この襲撃を予期していたローガンが、火球をグレイト団に放った。忌々しげに叫んで火球を避けるグレイト団。その隙に、一同は体勢を立て直した。
「この間はどうもです〜、貴方のお相手は私なので、ちゃっちゃとやりましょうか」
「ふん、変な面をしたって、後れは取らないよ!」
「あら、変なマスクを付けた方に言われたくありませんわ」
何故か般若の面を付けたメイリアが、ミス・グラマラスと対峙する。すでになにか別の戦いが始まっているが。
「美しい財宝は、美しい者にこそ相応しいのですよ」
「ほな、あんたにはもったいないなぁ」
ミスター・ビューティホーに対し、烈が果敢に攻めかかる。しかし、ビューティホーの素早い攻撃に近づくことができず、攻めあぐねた。
「財宝をはやぐわだず、でないどいだいめにあう」
「つ、つよい!」
「勝てるかしら?」
ハルバートを振り回すミスター・マッスル。ハイラムは木剣を構えるが、下手をすれば簡単に折られてしまう。朝霧も、攻撃を避けるので精一杯の様子だ。
「ハイラム殿‥‥、これをお使いください」
「これは‥‥いいのですか?」
「冒険者は信用できませんが、貴方ならこの剣を託せそうだ」
「わかりました‥‥はぁ!」
決定打にかけるハイラムに、ルヴェンが剣を手渡す。それは、以前に偽の鍵として使われた、古く無骨な剣だった。ハイラムは、受け取った剣を構えマッスルに切りかかる。
「たぁ!」
「うぐぁ!」
ハイラムは一気に詰め寄り、ハルバートの柄を滑るように攻撃を受けると、そのままの勢いでマッスルの肩を突き貫く。苦悶の声をあげて、マッスルが倒れた。
「マッスル!?」
「今がチャンスや! すとらいーく!」
「ぐはぁ! 私の美しい顔がぁ!」
一瞬、マッスルが倒されたことに注意を逸らしたビューティホーに、烈が渾身の一撃を叩き込む。めり込むほどの拳を顔に受けて、ビューティホーは吹き飛んだ。
「仲間は倒れたぞ! 諦めてこれ以上の悪事を働くのはやめろ!」
「くっ‥‥しかたないね、負けを認めるしかないようさね」
ローガンの降伏勧告に、ようやく諦めたようにグラマラスが武器を捨てる。一行は降参したグレイト団を縄で縛り付けた。
「キミ達は、盗みを働きいったいなにに使っている?」
「そうです、悪事を働いてまでいったいなにを?」
「‥‥‥」
「ワシは、ミラちゃんはそんな悪い子にみえんのじゃがのぅ」
「そや、なんかわけありとちゃうの?」
ローガン達が、グラマラスに事情を聞くが答えようとしない。
「彼らは賊です、今この場で処分するべきです」
「ま、まってください! ミランダお嬢様は、身寄りのない子供達を!」
「ビューティホー!」
ルヴェンが、厳しい表情で剣を抜こうとするのを、ビューティホーが止めようとするかのように声を上げる。ミランダと呼ばれたグラマラスは、キッとビューティホーを睨みつける。
「‥‥身寄りのない子供を養うために行ったとしても、悪いことは悪いことです。それに、子供達がそのようなお金を貰って嬉しいと思うでしょうか」
「わかったような口を‥‥。あたし達だって覚悟の上さ、殺すなら殺しな!」
メアリの言葉に、悔しそうに顔をしかめたミランダ。一同はグレイト団の事情に、顔を見合わせた。
「ルヴェンさん、彼らの処分はもう少し待ってもらえませんか」
「誰も彼も助けようとするのは間違いですぞ‥‥」
ハイラムが、ルヴェンに頭を下げる。ルヴェンは顔をしかめるが、剣を鞘に収めるのだった。
次の日、縄で縛っていたはずのグレイト団の姿はその場に無かった。そしてそこには、『悪事からは足を洗う。だけど捕まるわけにはいかない』と書かれた一枚の羊皮紙が残されていた。
「うむ、ごくろうさま。確かに遺産は受け取ったよ」
「本当にこれだけでよろしかったのですか?」
「もちろん、これは富を呼び寄せるといわれている像じゃ。下手な財宝よりよほど貴重なものじゃよ」
結局、グレイト団には逃げられてしまったが、遺産は無事依頼人のもとに届けることができた。その後、富の像はイギリス王国に献上されることになったらしい。