大江戸物語・五【江戸の騒擾】活動
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■シリーズシナリオ
担当:松原祥一
対応レベル:フリーlv
難易度:難しい
成功報酬:0 G 52 C
参加人数:12人
サポート参加人数:5人
冒険期間:02月01日〜02月06日
リプレイ公開日:2006年02月11日
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●オープニング
神聖暦一千一年一月ジャパン江戸。
江戸は狙われていた。
それは何故であろうか?
武蔵の混乱から目を上げて、周囲を見る。
昨年から続いた上州の反乱は上杉氏を倒して新田軍が勝利を手にした。しかし、それをよしとしない源徳家康が冒険者の援助をして新田氏の金山城を攻めさせたという噂もあり、今度は新田と源徳の戦になると予想する者もいる。また、富士では妖怪が天下動乱の企てをしているという。亡者の被害が拡大しているという水戸、
騒乱の種は尽きない。
この時代に生まれた事を呪うべきなのか。
「世界を守る」
「弱者、大切な者の為に」
目の色を変えて奔走する武士や冒険者達を尻目に、人々は日々の暮らしにあくせくする。ことに大火の罹災者達にとっては、江戸の住居問題、食糧問題は深刻だった。彼らにすれば天下の大乱を声高に論じるのは、まだ贅沢な悩みだ。喰う為に盗賊になるか、家族を売るか、そんな二者択一を迫られる者も少なくない。
●大江戸防衛隊(仮)
「世の中を救う前に俺を救ってくれと、袖をひく者が居たらどうしますか?」
「目の前の一人を救えぬ者に大義が備わろうか。その者を助け、更に世の中も救うのが人物であろう」
「いや、一人一人を救うには限界がある。ここは心を鬼として、世界は変える大業に邁進すべきであろう」
「一人を救う事と世の中を救う事は別物なのか?」
「深く考える事は無い。その時に余裕があったら助けて、そのあと世直しを続けたらいいじゃないか」
「気軽に助けると言うが、金も物も有限なのだぞ。助けられる者も居れば、その影に助けられぬ者も在るのだ。だから、もっと広い視野を持ってだな‥」
江戸を守ると遊説して回る浪人、鷹山正之の屋敷にはいつのまにか救世を唱える浪人や町人が集り始めた。鷹山が冒険者を通じて被災者救援に動いた事が噂になったのだろう。
心ある者が江戸の惨状を見れば何かしたいと思うのも至極当然の事だ。ただ人数が増えると食い扶持が必要となる。人数は30人を超えて、まだ増えそうな気配である。町道場の島田鉄之進も門弟数人を連れて参加している。何か食と金を得る算段を考えなければいけない。
「‥‥ふむ」
鷹山は冒険者ギルドに赴き、相談に乗ってくれる冒険者を寄こしてほしいと頼んだ。
まず事前に出た案としては、浪人など腕っ節に自信のある者が比較的多いので、昨今増えた盗賊対策の自警団を設立してはどうかという意見が出た。但し、源徳領の江戸にて無頼の自警団という物が許可される見通しは無い。自警団とするなら某かの後ろ盾と肩書きが必要だろうと鷹山は思っている。
さて、どうなるか。
●リプレイ本文
「今回も教えて日の神様、えい!(ふらふらばったり)」
パラの天内加奈(eb3418)が鷹山邸の前で何やら熱心にお祈りしている。彼女が唯一得意とする未来予知を試しているのだが、なかなか成功しない。
「いーやぁー!」
他人の家の前で散々狂態を見せて彼女が得た答えは。
江戸 崩壊
「‥‥直線的だな。予知はもっと多様な解釈が出来るものでは無いのか?」
血相をかえた加奈から話を聞いて、教師の江別阿瑚(eb3347)はつまらなそうに言った。今日は筆が捗っていたので、邪魔をされて少し機嫌が悪い。
「もっと慌てて下さい! 日の神様のお告げですよ、間違いないんですから」
「生憎と信心が薄くてね、それでいつ崩壊するのだね?」
「このままでは、いつか必ず!」
‥‥。
「当たり前だ。永遠の都は夢想の産物、皆いつかは滅ぶさ」
人心を惑わすから外で言わない方が良いと釘を刺す。まるで相手にされず加奈は不満顔だ。江別の言う諦観で割り切ってしまえば陰陽師の立つ瀬が無い。それに、予知は彼女の中では日の神様の警句である。徒や疎かに出来る道理が無かった。
「‥‥はッ、こうしてはいられません。晴明様に早くご報告しなければ!」
走り去る加奈と入れ替わりに、琵琶法師の野乃宮霞月(ea6388)が入ってくる。
「うーむ、あの連中、頭が固くていかんな」
「それなら、全員寺に入れて修行の身にしてしまうというのはどうだね」
阿瑚は創作活動を断念して、霞月にお茶を出す。いつもは鷹山の細君が淹れてくれるのだが、人数が増えて彼女も大変な様だ。三味線弾きの小鳥遊美琴(ea0392)が家事を手伝いに来ている。
「それは名案かもな。寺も最近は人手不足でなぁ」
野乃宮は法力も確かな僧侶である。経を唱えるより冒険の日々にかぶれているが、身なりは立派な仏弟子だ。野乃宮はこの屋敷に居候する者達に説教していた。
「有り余ってる体力を生かして肉体労働に勤しむのが手っ取り早いと言ってやった。そうしたら‥」
知り合いの職人を紹介するから見習い修行してはどうかと彼が言うと。
『我らの救国の志を愚弄するのか!』
『我等は天下国家の為に立ち上がったのだ。安浪人と思うて侮るな。日銭を稼ぐ事が目的ではないわ!』
烈火の如く怒ったのである。
「危うくな、弥勒の御力を借りて頭をかち割ってやろうかとさえ思ったほどさ」
懐から金色の弥勒像を取り出して苦々しく顔をしかめる霞月。
「‥‥ああいう手合いは、金を稼ぐ事を罪業と思ってたりするからな。しかし、放置すれば商人を的にかけかねん。ここらで道を示してやるのが仏の功徳というものじゃないかね?」
阿瑚は半ば本気で寺院を後ろ盾にと考えている。霞月は嫌な顔をするが、この面子で霞月は一番口が上手い。正面から自称救国の勇士達を説得するなら、彼が適役だろう。
「乗せられた気がするが‥」
「すがったんだよ」
「被災者の寄り合い団を目指すのはどうでしょう」
イギリス騎士のルーラス・エルミナス(ea0282)の提案には、浪人達は首を捻った。理解し難い様子を見て、鷹山が質問する。
「具体的には、その寄り合い団で何をするのですか?」
「実地に被災者達と話して見なければ分かりませんが、今は被災者間の連絡と、生活の知恵、護衛等を考えています」
現代風に言えば災害ボランティアだが、内実は地回りのヤクザに似ている。
「金はどうします?」
「義捐金を使います。それにお上の手助けを行って城下の平和を守るのですから、源徳公の後ろ盾が得られましょう」
ルーラスがそう言うと、クロウ・ブラッキーノ(ea0176)が目を輝かせた。
「ホウ? ギルドの義捐金を鷹ぴーとワタシ達で山分けしようというのデスネ。実に胸の躍る話デスョ」
冒険者ギルドの義捐金は三千両を超えたが、今は使い道に苦慮していた。江戸全体で使うには少なすぎ、個人的な救済に使うには多すぎる。アレに使う方が良い、いやコッチの方が急務だと意見は割れに割れていた。俺が先に言い出した、そんな使い方なら俺の金は返せ、大金を寄付した俺には発言権がある筈だと、議論は一部に不毛な様相すら見せている。
「ホント、下手な事に使えば人死にが出そうデスヨ?」
邪悪な笑みを浮かべるクロウ。
「話を戻しましょう」
源徳に掛け合えば十手はくれるだろう。だがボランティアに十分な金を出せるならこの問題自体が発生しない。実質的に寄付金のみで活動する事になる。
「難しいでしょうか?」
話を聞くうちにエルフのクリステル・シャルダン(eb3862)は不安になった。
「ルーラスさんの意見が認められたら、私は避難所を見て回って、皆さんが何を必要としているか聞いて回ろうと思うのです」
「難しくはありません。認めない人もいますが、一つの道です」
鷹山は腕を組んで考えている。
「他には何か考えはありませんか?」
「俺は魔物を利用した商売はできないかと思う」
鷹山に促されて志士の天城烈閃(ea0629)が発言した。
「今の江戸には物が無いからな。江戸を出ての活動も考えた方が良いと思う。腕に自信のある者で江戸の外に魔物狩りに出かけて、その獲物を町の人々に加工して貰い、商品とするのはどうだろう?」
魔物専門の猟師。例えば一角馬なら1頭狩るだけで大金を得る。しかし、危険な仕事であり、狩猟にはそれぞれの土地の領主に話を通す必要がある。前述の一角馬のように貴重な魔物の狩猟許可はまず貰えない。加工技術修得や商品開発に要する時間なども考えると難は多い。
「やっぱり、地道な仕事が一番だよ」
ローマ戦士のフレーヤ・ザドペック(ea1160)が提案したのは罹災者専門の口入屋。罹災者という膨大な人的資源を利用する商売。ただし口入屋としての商才に長けていなければ、自分で探すか既存の口入屋を頼った方が早いので競争は激しい。
「口入屋のノウハウか‥‥千造に頼むか」
活動費は俺が出すからと言い残して、フレーヤは席を立った。
「‥‥詰まる所、お金を稼ぐ手段を持たないと私達は罹災者達を食い物にしている事になるかしらね」
フレーヤの連れであるパルシア・プリズム(ea9784)がそんな事を口にした。パルシアの提案はフレーヤ案の続きに相当するものだ。
「罹災者達が今すぐに可能な仕事といえば、単純な力仕事でしょう」
だから鷹山に運送屋を立ち上げて貰い、働く場所を無くした罹災者達を雇用する事で彼らを救う。災害復興の第一歩は起業から。
「いい加減にしろ!」
話を聞いていた浪人達が我慢ならんとばかりに声を荒げた。
「黙って聞いておれば、まるで我らを商人にしようという話ばかり。斯様な内容であれば商人達に聞かせれば良い話、われらが為すべき事はまた別にござる!」
そうだそうだと合唱する浪人達。あわや乱闘という騒ぎになり、他の者達が必死で止める。
「確かに適材適所という物がある。我らが商人の真似をしても力の半分も発揮できるとは思えぬ。それでは返って人の迷惑となろう」
浪人の中では比較的穏健な人でも、やはり否定的な意見が多い。
「怒られそうだけど、俺の意見もいいか?」
騒ぎで発言の機会を逸していた菊川響(ea0639)が手を挙げる。
「最後まで聞きましょう」
「うん。それじゃ言うけど俺の案は、正義の屋台組合」
菊川の言葉を聞いて、騒いでいた浪人の額に青筋が浮かぶ。
「要するにさ、助ける人達におんぶに抱っこじゃいけないから食い扶持は自分達で稼がなくちゃいけないし、その上で人を守る仕事じゃないとやりたくない訳だし、今の江戸で一番必要とされるのは食だから、蕎麦屋で儲けながら夜の見廻りはどうかなと思ったんだけどな」
菊川は己の頭をかく。机上の空論である事は良く分かっていた。そんなに都合よくはいかない。しかし、夜なお暗い江戸の闇を、夜鳴き蕎麦の明かりが照らせばと理想論を考える。
さて、鷹山邸に集った人々は救国の志に目覚めた勇士である。
難しい事を日夜議論しているが、考えている事は存外に単純な人達である。しかも働き場所が無くて鬱屈している。更に不得意分野の提案が続いて辟易していた所に、正義の一字は分かりやすかった。
「正義の屋台か‥‥世の弱者を救う光‥‥」
神剣に考え始めた。
「鷹ピー‥‥私は嬉しいですョ」
議論が一段落した所で席を立った鷹山に、廊下でクロウが声をかけた。
「皆さんのおかげで有意義な時間になりました」
鷹山はクロウに頭を下げる。
「とんでもナイ。貴方こそ、この生き地獄から人々を救うには宗教で現実逃避させるしかないと、やっと分かってくれたのですネ」
「‥‥」
そんな二人の様子を隣の家の屋根から観察する黒い影があった。
謎の忍者、罰天丸‥‥。
彼は何を思うのか。
「この覆面、ちょっと前が見づらい‥‥あ、やば」
何かの気配に気付き、屋根の上で罰天丸は慌ててしゃがんだ。この数日、自分以外の誰かが鷹山邸を見張っている気がしていた。
終‥‥そして