大江戸物語・四【大火の爪痕】家盗

■シリーズシナリオ


担当:松原祥一

対応レベル:フリーlv

難易度:易しい

成功報酬:0 G 52 C

参加人数:15人

サポート参加人数:1人

冒険期間:12月15日〜12月20日

リプレイ公開日:2005年12月29日

●オープニング

 神聖暦一千年十二月ジャパン江戸。

 江戸は狙われていた。

 11月上旬に起きた大火は未曾有の被害を出したが、噂によれば付け火であった、らしい。
 江戸数十万の人々を焼き殺そうとする者が確かに存在し、それは多くの傷跡を残した。
 ジャパンの武家の頂点にいた源徳家康の威信に落ち、そして江戸の人々は今も住む場所にも困っている。

 我々は江戸を守る事が出来なかったのか?
 否、今こそ江戸を守る時である。


●大江戸防衛隊(仮称)
 大火の落し物で最も懸念されているのは焼け出された人々の問題だ。10万人とも言われ、一国の人口にも相当する程の規模だ。楽観的な考えを捨てれば、人事を尽くしても半数を救えるか怪しい。源徳も救い小屋を建てたり、食糧の施しを行っているが追いつかないのが現状だ。
「住む場所を失い、凍え死にを待つばかりの人々が江戸に溢れておる」
「家も食べ物も持たぬ人々は野盗に身を落すか、この江戸を去る以外に道が無い。いや江戸を発つ者達も、他国に縁者が居らねば同じことだ」
「それもこれも家康公の失政が為! 先の大火災は神剣争奪に禍根を残した諸侯の仕業である事は明らかでは無いか」
「いや源徳の暴政を天が怒っておるのだ」
「何をほざくか! 今こそ我らは源徳様への恩を返す時だっ」
「下野の九尾が江戸に祟っているとも言うぞ。先日も江戸城を襲ったらしい」
「上州の新田がこれで勢いを増そう。源徳を良く思わぬ諸侯も黙ってはおらぬ」
 酒場の話も源徳への不満や先行きの不安が大半だ。
 鷹山正之はじっと耳を傾けていたが、無言で席を立った。そのまま冒険者ギルドの戸を叩く。

「これは鷹山様‥‥今日はどのようなご用件で?」
 手代は常と変わらぬ様子で鷹山を迎える。
 江戸を守ると大言して何も用をなさなかったこの浪人に、嫌味の一つも言わない。所詮は一人や二人の努力でどうにか出来た災いではなかったし、今は目が回るほど忙しい。
「仕事をお頼みしたい」
 二つの問題がある。どちらも無関係ではないが、冒険者にはこのうち一つの解決に助力を頼みたいと鷹山は言った。
 一つは巷で噂の被災者の住居不足である。が、これは冒険者の手に余ることゆえ多くの期待はしていない。しかし三人寄れば文殊の知恵とも言うからアイデアがあれば欲しいと言った。
 もう一つは。
「焼け出された人々が野盗に変わる話はご存知と思いますが、実は良くない話を聞きました」
 浪人者が罹災者達を率いて江戸の商家を襲う計画があるらしい。浪人達が酒場で話しているのを聞いたものだが、盗み聞きを気付かれて逃げられてしまったという。
「私に聞かれた事を警戒してやらないかもしれないが‥‥此度の火事で私腹を肥やす日本橋の米問屋か材木問屋を襲ってやると話していました。事実なら、止めなければなりません」
 浪人達は4、5人。それが数十人の町人を率いて襲撃するという話らしい。日本橋の米問屋、材木問屋と言っても何軒もあるから、守るのは容易ではない。奉行所に話す手もあるが、今の時期は奉行所も猫の手も借りたいほどの忙しさ。それに鷹山は出来るなら凶行を思い留まらせて説得したいと話した。
「それは難しい話ですなぁ」
 ふーむと手代は難しい顔で考え込む。冒険者は単純な仕事には滅法強い。人が太刀打ちできない怪物が相手でも勇猛無双の働きを見せる。だが、力でどうにか出来ない仕事は経験だけでは解決出来ない。
「暴力沙汰はご法度という事で、広く声をかけてみましょう」

 さて、どうなるか。

●今回の参加者

 ea0176 クロウ・ブラッキーノ(45歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea0282 ルーラス・エルミナス(31歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea0392 小鳥遊 美琴(29歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea0629 天城 烈閃(32歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea0639 菊川 響(30歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea1160 フレーヤ・ザドペック(31歳・♀・ファイター・人間・神聖ローマ帝国)
 ea2702 時永 貴由(33歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea6388 野乃宮 霞月(38歳・♂・僧侶・人間・ジャパン)
 ea7482 ファング・ダイモス(36歳・♂・ナイト・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 ea9784 パルシア・プリズム(27歳・♀・レンジャー・ハーフエルフ・イスパニア王国)
 eb1600 アレクサンドル・リュース(32歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)
 eb3306 万里 菊(38歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)
 eb3347 江別 阿瑚(39歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 eb3418 天内 加奈(28歳・♀・陰陽師・パラ・ジャパン)
 eb3605 磐山 岩乃丈(41歳・♂・忍者・ジャイアント・ジャパン)

●サポート参加者

キース・ヴォルク(ea4274

●リプレイ本文

「鷹山殿、お初にお目にかかる。一介の渡世人、磐山岩之丈(いわやま がんのじょう)にてござる」
 渡世人風の大男はそう名乗りをあげた。
 鷹山邸にはこの磐山岩乃丈(eb3605)の他に、いつもの面子では絵師の万里菊(eb3306)と管弦士の小鳥遊美琴(ea0392)が、磐山と同じく初顔では戦士のファング・ダイモス(ea7482)とアレクサンドル・リュース(eb1600)、それに通訳の時永貴由(ea2702)が集っていた。

「俺の事は気にしないでくれ。適当に遊ばせて貰ってるだけなんだ」
 アレクサンドルは磐山を一瞥してそう言うと、神妙な顔で家の主人にペットのトカゲを見せた。
「‥‥育て方がわからん。鷹山、あんた、この生き物見たことあるか?」
 アレクサンドルは眉間に皺を寄せていた。鷹山は答えた。
「見た通り、蜥蜴でしょう。違うのですか?」
 怪訝な顔で聞き返され、アレクサンドルは首を振る。
「いやいや、俺は、ただのトカゲでは無いと思っているんだ」
「ははぁ‥‥なるほど」
 鷹山の目に笑みが浮かぶ。どこか質の悪い商人に竜だドラゴンだと高値で蜥蜴を売られたと思ったようだ。同様の反応は見飽きていたので、アレクサンドルは溜息をつき、床の上でもがくトカゲを弄る。鷹山の妻がトカゲと遊ぶ彼に敵意に似た視線を送るが、キニシナイ。
「そういえば、強盗は角地に立つ店が襲いやすいらしい。いざって時の逃走経路が多いからな。日本橋の米問屋、材木問屋で、まだ襲撃に遭っていない角の店があれば、目をつけておいたらどうだ?」
 何気ない口調で言った。
 アレクサンドルは荒事以外に関わる気が無いので、言うだけである。
「鷹山様、出来ました。今度はどうですか?」
 時永は一枚の絵を開いた。万里が鷹山の証言を元に描いた人相書きである。
「良く描けている。‥‥うむ、この顔です」
「まあまあまあ、本当ですの? そう仰って頂けるのなら、一所懸命に描いたかいがありますわね♪」
 顔を綻ばせて喜ぶ万里。
「では、後は私達がこの者達を探します‥‥ところで鷹山様、襲撃を思い留めたいと仰いましたが、鷹山様も出向いて説得なさるのですか?」
 時永の質問に鷹山は。
「私も一緒に行きます」
 と答えたが、脇で話を聞いていた磐山が止めた。
「お待ちくだされ。人相書きが描けたは上々、我が輩も探索には参加するでござるが、その前に‥」
 被災者の住居不足問題の事も話し合いたいと磐山は言った。鷹山の体は一つ、だがどちらも彼が言い出した事だった。今ここに来ていない者も含めて沢山の冒険者が参加をした。
「仕方が無い、日本橋の件は皆さんにお任せ出来ますか?」
「承知しました。では皆に伝えます」
 時永は一礼して、その場を離れる。

「結局の所、大工が足りないと思うのでござる」
 時永が去った後、磐山は自分の考えを話した。当たり前のことではあるが、的を射た意見である。
「それで我が輩は考え申した。いなければ、呼び集めてしまえばよいのではと思ったでござる」
 磐山は上方から大工を呼び集める案を話した。
「なるほど」
 鷹山は頷く。既に役人や目聡い商人は動いているだろうが、人が足りないだろう。江戸と京都の間を頻繁に行き来する冒険者が協力できる事は少なくはあるまい。
「住宅問題は大事ですものね。それに、防犯お芝居の事も‥‥私もお手伝いさせて頂きたいと思います」
 弾いていた三味線を止めて、美琴が会話に加わる。
「そうですわ。阿瑚様の書かれた物語も秀逸なら、霞月様の芝居演説、素敵ですわぁ♪」
 万里が夢見る目で語る横で、ファングが鷹山に焼け残った冒険者長屋の一部を罹災者用施設に使えないかという話を切り出した。
「その事なら、いま江別さんが話をしに行っていますよ」
 ファングが月道チケットを売って多額の寄付を行っていた間に、江別阿瑚(eb3347)が同じ話をして交渉に行ったらしい。
「そうだったんですか。いや、考える事は皆同じですね」

「冒険者とは自分達だけ良ければそれで良いのか?」
 冒険者長屋にやってきた江別は大家と話していた。
「私はそうは思わん。問題のない場所が空いているなら貸し出せばいい。狭いかも知れぬが一所に一、二組の家族を入れていけば多くの人々が助かるぞ。それに、何せすぐ傍には冒険者様がいてくれる。治安は最高の筈だがね」
「分かりました。‥‥その、大きな声じゃ言えませんが、もう転がり込んでる者もいまして」
 冒険者長屋の大家達は複雑な表情を浮かべた。
「‥誰が?」
「焼け出された冒険者や近所の人達ですよ。まあ借り手がついた時は出て行って貰う約束ですが」
「まあ、私も焼け出された一人だからな‥‥私の家財道具はたかが知れている。身一つで助かった」
 当然ながら大火の罹災者に一般人や冒険者の区別は無い。余談だが、近頃はジャパンの冒険者も数が増えて、江戸を含む関東界隈には数千人の冒険者がいると言われる。普段はそんなに居ると感じないが、存外にはみ出し者の多い世の中だ。
「噂ですが、お城の地下洞にも家を失くした人が隠れていると申します。私どもは皆さんのおかげでこうして無事に年を越せます」
 冒険者長屋の治安が最高かは素直に頷けない所だが、彼らの活躍で冒険者長屋が守られたのは事実だ。江別が戻る途中、空き家の戸をそっとあけてみると中で数人の子供達が寄り集まって眠っていた。
「‥‥ふむ」
 募金にと用意した金の一部を玄関の端から入れて彼女は立ち去った。

「無茶はいけません。年が明けたら、運気が大きく変わります。ここは我慢が吉です」
 通行人を呼び止めて路上で占いを行うのはパラの天内加奈(eb3418)。彼女も焼け出された一人だが、日ノ神様の天啓に従い、船問屋や寺社仏閣に罹災者達の宿をたかり、夜は辻々に立っていた。
「どこか見つかりましたか?」
 天内に騎士のルーラス・エルミナス(ea0282)が声をかける。ルーラスも罹災者、とりわけ彼は身寄りを失くした子供達を受け入れてくれる所を探して市中を歩いていた。
「うー寒いのにご苦労様です。焼き芋ですけど、食べます?」
 天内は芋を割り、片方を騎士に差し出した。寺社への嘆願は、既に救いを求める人々が押しかけているので早晩に諦め、今は余裕のありそうな家々を細かく回っている。大抵は冷たくあしらわれるが、時には引き取ってくれる事もあり、その場合はお礼にルーラスが金を渡した。
「頂きます」
 ルーラスはまだ温かい芋を受け取る。一人でも多くを救おうとする行為には、時には葛藤も付き纏う。全員を助けられない事がまるで自分の罪のように重かった。
「我慢です。来年はきっと良い年になります。日ノ神様が私に教えて下さいました」
 そう云って、天内はルーラスの尻をポンポン叩いた。肩を叩きたかったが背丈が足りなかった。

 二三日が経てば冒険者が救ってくれるという話は噂になる。話を聞いて、人々がギルドにやってきた。
「ここで宿の世話をしてくれると聞きました」
「食べ物を分けてくれるという話ですな」
 手代が困っている所に、居合わせた野乃宮霞月(ea6388)が相手をする。噂の発信源の一つは彼の関わっている依頼である。
「お坊様、わしらこのままでは生きていかれません。どうか救って下され」
「このままじゃあ、野盗になるか野垂れ死にじゃ」
「皆の近情は分かるが、ここが切所だ。悪いことばかりが続きはせぬものだ」
 青年僧侶の説得にも罹災者達は暗い顔だ。既に冒険者達が今回用意できた住居などは埋まっていた。同じ境遇の者が、施しを受けた者と受けない者に分かれる。受けなかった者の気持ちは誰に向くのか。
「‥‥やっと帰りましたね」
「危うい所だったな」
 肩を落して帰る罹災者を、菊川響(ea0639)と天城烈閃(ea0629)が見送る。二人が来た時にはギルドの前で押し問答が行われ、流血沙汰の一歩手前だった。半ば脅して帰らせたが。
「まさか救いたいと思う民に弓矢を向ける真似をしようとは‥‥」
 棲家も仕事も失った難民の気持ちを思うと天城は言葉が無かった。
「俺達には、あの人達全員を救う事は出来ない。仕方が無い事とは言え、憎しみを向けられるのは辛いな」
 菊川は空を仰いだ。
 今回、冒険者達は良くやった。持ち物を売って大量の寄付をしたファングや天城、上方から大工を呼ぶ算段をした磐山、子供達の家を探したルーラス、長屋の説得に回った江別、被災者を宥めて回った野乃宮、寺社を回った天内、問屋の説得を行った万里等等、冒険者達の行動は多くの人を助けた。それが評判になればギルドに人々が押し寄せる。仮にまた救えば、更に数倍の人数が押し寄せる。きりが無い事は分かっていた。
「早く手を打たないと、怨嗟の声が江戸を殺すぞ」
「‥‥だが、彼らに罪は無いんだ」
 菊川が第二第三の悲劇を防ぐ為に江戸の治安強化を主張している事を天城は知っていた。しかし、野盗化する難民を取り締まる事にもなるそれを天城は納得できないでいた。
「分かってる。俺が倒したいのは江戸を殺そうとしてる者達だ」
 だがそこに区別はあるのか。ちなみに、菊川は小烏丸の持主をギルドで聞いた。何代か前に神皇家から平氏が賜り、今は平織虎長が持つのではないかという話だ。

「お久しブリですョ☆」
 町道場の床で寝転がっていたクロウ・ブラッキーノ(ea0176)が、老探検家の消息を聞いたのは何日か後の事だった。意外にも江戸に居ると知って、クロウは白河重庵に会いに行く。
「活躍は噂に聞いておるよ。何かあったかね?」
「ウフフ、江戸の騒動に思い当たるよな事があればお知恵を拝借デキマセンカネェ。昔の人が長生き狐に怨み買って歴史の因果関係が少なからずあるみたいなんで」
 この時、クロウは厄介な事件に首を突っ込んでいた。
「わしは何も知らんよ。お前さんの方が物知りかもしれんな」
 白河の答えは素っ気無い。
「もしかすると、人間に化ける妖怪が片っ端から自分達に都合の悪い事を消してってるんでしょうかネェ」
「妖は恐ろしいが、神仏では無い。そんなに万能ではあるまい」
「マァ、たしかに‥‥ではナゼ?」
「それが分かればわしは引退じゃ。だがわしの経験で言えば、物事を都合よく解釈するのは人間の特権だ。その才では古狐など足元にも及ばん」
 世界は自分を中心に回ってると思う阿呆度では人に勝る者は居ない。都合の悪い事を消したいと思うのも概ね人間であろう。

「ま、あの道場主は野盗と大差はねえな」
 パルシア・プリズム(ea9784)に頼まれて島田鉄之進の道場を見張っていた元岡引の千造はいかがわしい浪人や博徒が何人も出入りしていると報告した。ちなみに、道場を訪れた者の中にクロウもいた。
「何か大物はいないか?」
「‥‥そう簡単にはいかねえ。野郎は後ろめたい事があるのか、何か警戒してやがる」
 首をすくめた千造は、そういえば一度鷹山正之も姿を見せたと言った。
「何の用だったか分かるか?」
 首を振る。パルシアも首をかしげた。
「どの辺が面白いのだろう‥‥フレーヤさん?」
 調査をパルシア任せにして、フレーヤ・ザドペック(ea1160)は日々を無為に過ごしていた。
「だって‥‥めんどい」
 随分な話である。
「えっと‥‥それはさすがにまずいと思うわよ、私でも」
「そうかな。ま、忠告はした。面白いところはパルシアと旦那に任せるよ」
 だから何が面白いのだろうかとパルシアは問いたかった。

「鷹山さんは普段、何をされてるのですか?」
 小鳥遊の問いに鷹山は少し考えてから答えた。
「江戸を守るには、その考えを広く理解して貰わなくてはなりません。江別さんが物語と言った時には私も胸が躍りましたが、今の所一番の方法は多くの人と会い直接話を聞いて貰うことでしょう」
 様々な人を尋ねて江戸の平和について話していると鷹山は言う。彼を尾行した小鳥遊は怪しい町道場から学者、町人、商人、旗本、各藩邸と見境なく入っていく鷹山の姿を見た。
「‥‥」
 鷹山は学者肌の知識人で、どこで得たものか情報通である。世間にはそうした人物を重宝する者もいる。ましてや江戸を守る為と高説していれば、支援者がいても不思議は無い。所謂、運動家。今回も罹災者を一人でも救おうとした冒険者の骨折りに鷹山は適当な助言と協力をしていた。
「問題は、誰の為になる運動かだけど‥‥」
 今回の仲間に不審をもたれまいとした小鳥遊は今一歩調査に踏み込めなかった。孤独は美琴を迷わせた。


 さて、肝心の日本橋問屋襲撃の方だが‥‥。
 早くから何人もの冒険者が見回りを行い、それに情報を聞きつけた商家の方でも浪人を雇ったり、町奉行所に相談を行ったりして警戒を強めた。
 その結果。
「これはどうしたことだ?」
「何でも、近いうちに米問屋が暴漢に襲われるらしいぜ」
「ううーむ」
 浪人達は襲撃を断念したのか、日本橋の店に野盗が現れなかった。
「襲撃話はただの戯言だったかそれとも諦めたか‥‥」
 或いは、別の時別の場所が襲われるかもしれないが、それは冒険者達の知る所ではない。