浪漫COME BACK!!【?】

■シリーズシナリオ


担当:みそか

対応レベル:4〜8lv

難易度:普通

成功報酬:3 G 60 C

参加人数:6人

サポート参加人数:1人

冒険期間:12月16日〜12月26日

リプレイ公開日:2004年12月24日

●オープニング

「クロウレイ地方、アレブカリフの吟遊詩人は余りに事実を軽視する。それは検証するまでもなく事実とかけ離れていることは明らかであり‥‥ああ、そうだとも。検証したことなどない」
(会議の席にて、とある貴族の発言)

<アレブカリフ・ライム城>
「この‥‥長く繁栄し、栄光を誇ったライムが‥‥無念じゃ‥‥」
 長く城に仕えた老騎士は粗暴な侵略者によって燃える城を瞳に、がっくりとその場に膝をつく。主が愛された古の伝承を描いた彫像、家族への愛がこもった肖像画‥‥全てが壊されていく。
「フン、この一帯を治めているって言っても所詮は田舎貴族ってわけか。野郎ども、そろそろ引き上げだ。さっさとルダーク様に献上するもの献上して、俺達は楽しもうじゃねぇか! ‥‥なあ、お姫様よ」
 蛮族の首領らしき男の血塗られた指先が、白絹のような姫の衣服へ伸びる。恐怖のあまり動けない姫君を前にして、口元を醜く歪ませる首領。
「待て、ダバ。その女に手をかけることはまかりならん。ルダーク様への大切な献上品のひとつだからな。くれぐれも丁重に扱え。‥‥俺達はこれから暫く留守にするが、帰ってくるまで決してその女に手をかけるなよ」
「ハハッ、女を落としたけりゃもう少し身だしなみを整えろってことだね」
 血塗られた指先が鞭によって弾かれ、煌びやかな装飾が施された鎧に身を包んだ二人の男が、調度品が転がる絨毯に足を乗せる。それぞれ橙と紫に塗りつぶされたマントを羽織った両者は、ダバと呼ばれた蛮族を一睨みするとそのまま城から退出していった。
「チッ‥‥いいとこの若僧どもが! おい、その女を牢にでもぶちこんどけ。俺がいいって言うまで手を出すんじゃねぇぞ!!」
 部下に腕をつかまれ、牢へと連行される少女。部屋に取り残される形となった蛮族は、床に点在する調度品の欠片を片っ端から蹴飛ばし、怒りを露にするのであった。
「冗談じゃねぇぞあいつらめ。帰ってきたら‥‥‥‥」

<アレブカリフ・某所>
「‥‥『鍵』は既に一つこちらの手の中にある。もう一つも手に入れたも同然。そして残る一つさえ入手できれば‥‥‥‥我が願いは叶うのだな」
 生気のない声が玉座の間に響く。男はやつれた顔で頬を緩ませ、横で不気味な笑顔を浮かべる魔術師へ顔を向けた。
「もちろんだともルダーク。お前の願いが叶う時は‥‥もう目の前だとも」
「そうか、そうか‥‥。みなのもの、これからもより忠勤に励むように!」
 ルダークの渇いた笑いに、彼へ跪いた六名の‥‥それぞれが特徴的な色のマントを身に纏った戦士は、微動だにせぬまま主が退出するのを見送るのであった。

<冒険者ギルド>
 クロウレイ地方のアレブカリフのライムという町で、ライム町長宅が何者かによって襲撃を受けて壊滅してしまった。町を襲った蛮族は二週間が経過した今も尚町長宅に居坐り続け、強引な搾取を繰り返している。現地に向かい、町を解放してくれ。

「‥‥町長宅なのか? まあ領主間の戦争なんてネタがほいほいくるわけもないんだが‥‥‥‥細かい事は考えないようにしよう。どっちにしろ人助けの依頼だ。急いで行ってこい」
 アレブカリフの吟遊詩人が執筆した小説‥‥あたかも領主間、国家間の戦争であるかのような物語を読んだ後に依頼内容を見たギルド職員は軽く首を捻った後冒険者達に依頼書を提示した。

●今回の参加者

 ea0385 クィー・メイフィールド(28歳・♀・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea2634 クロノ・ストール(32歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea3590 チェルシー・カイウェル(27歳・♀・バード・人間・イギリス王国)
 ea3982 レイリー・ロンド(29歳・♂・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea4665 レジーナ・オーウェン(29歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea6151 ジョウ・エル(63歳・♂・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)

●サポート参加者

鉄 劉生(ea3993

●リプレイ本文

<ライム城>
 つい先日まで静寂が威厳と同居していたこの城に、もはやそんなものは存在しない。賊は町から略奪したものを喰らい、ただ欲望を満たすのみ。
 住民は絶えず行われる略奪と暴力に恐怖し、ただこの絶望の刻が終わるのを待ち望み、応えてもくれぬ暗い空を見上げるばかり。待ち望む人はそれが近い将来到来しない事を心のどこかで理解している‥‥絶望は、もう少し続くはずであった。

「年寄を甘く見てはいかんぞ」
 一人の老人の呟きは彼の腕から巨大な炎の弾丸を創り出し、応えるはずもなかった空を深紅に染める。悲鳴と混乱、絶望だけが鬱蒼(うっそう)としていた大地はそれらをまとめて燃え上がり、短かった一つの時代の終焉を高らかに告げた。
「うむぅ、まだまだ若いものには負けられんな。特におぬし達のような輩にはの」
 酒に引火したのか、暫し大地に落下した後もパチパチと音をたてて燃える炎をかきわけて姿を現したのはジョウ・エル(ea6151)であった。生きた年月の長さを想像させる髭を蓄えた彼は、突然降りかかってきた災厄に慌てふためく賊を一瞥する。
「な、なんあんだてめぇはああ!!」
 酒のせいかろれつが回らぬまま叫び声をあげる賊。彼は震える手で剣を掴むと、よろめく足でエルへと突進していく。
「そう焦るな若者よ。勢いとは若さのなせる業じゃが、それだけに溺れては何も生み出す事はできぬぞ」
「うるせええぇぇえ!!」
 上から見下すエルの口調に激昂する賊。その声を聞きつけたのか、他の賊もそれぞれ奇声をあげながら集まっていく。
「遅うなって悪かったなー。ケガはあれへん?」
 奇声を放っていた男が悲鳴をあげて吹き飛ばされ、クィー・メイフィールド(ea0385)の独特のイントネーションがエルの耳に届く。彼女は返事の代わりに微笑を返すエルを背に、自分の背ほどもある刀身を持つクレイモアをしっかりと両手で握り締めて、目の前の敵を再度睨み付ける。
「あんたらの相手はアタシや。女の子が折角誘ってんやから、しっかりと受けてもらうでー!!」
 凡そ緊張感のない音韻とは裏腹に、クレイモアは寒風をもろともせずに突き進み、砂埃を巻き上げながら賊を一気に弾き飛ばす!
「さあ、今のうちにみんなは先を急ぎ〜〜」
 クィーは城へ突入していく仲間たちを横目で眺めながら、残る膨大な敵に飛び掛っていった。

<ライム城大広間>
「俺たちに喧嘩を売ってくるたぁいい度胸だな!」
「町を自らの快楽のために襲った下賎な賊風情が何を言うのですか!? 本来ならば無粋な方々に名乗る名など持ち合わせてはおりません。しかし、あえてこの名を刻みましょう! 私の名はレジーナ・オーウェン(ea4665)。あなた方の手からこの城を取り戻す者です」
 隆々とした賊の右腕から繰り出される攻撃を受け流すと、ダンスのようなステップから必殺の突きを浴びせかける! 腕をやられた賊はフラフラとその場に倒れこんだ。
「さあ、次の相手は‥‥!!」
「ほぅ、避けるか? どうやら少しは鍛えているようだな」
 勝利を確信したレジーナの瞳に橙色のマントがはためき、銀色に輝く剣が放つ唸り声が彼女の耳に届く! 赤色の液体がこぼれ、レジーナは脇腹を抑えながら新手と対峙する。
「これで‥‥避けたとでも‥‥名を‥‥」
「名はラブラス、ルダーク様に仕える橙の騎士。致命傷を避けただけでも見事なものだ。もっとも、次の一撃で終わるがな」
 弾かれる武器、湧き出る紅い液体‥‥そしてレジーナは朱色に染まった大地へ、ゆっくりと倒れていった。

<ライム城・地下牢>
「やつらの狙いはあの姫さんだ! 絶対にここから先に奴らを通すんじゃねぇぞ。もし取り返されるようなことがあってみろ。ルダーク様に何をされるのか‥‥」
「なるほど、そのルダークがお前達の黒幕ということか。だがどちらにしろ、暴虐、略取‥‥非道の数々で民を苦しめる。許せぬな!」
 賊の首領・ダバの前にたたずんでいたドアが蹴破られ、向こう側からクロノ・ストール(ea2634)が現れる。彼はドアに弾き飛ばされたダバを見下ろすと、怒りを込めて剣をダバの鼻先に突きつける。恐れおののき、ダバを置いて逃走を開始する賊達。
「今すぐに姫君の居所を教えるのだ! お前達の処罰はおってこの町の人々がしてくれよう!!」
「へっ‥‥まあそう熱くなるな騎士さんよ!!」
 ダバの足払いがクロノの右足を刈り、バランスを失ったクロノはそのまま倒れこむ。素早く立ち上がり、床に転がっていた斧を掴むダバ。そして彼は余裕の顔つきでクロノを見据える。
「早く立ち上がれよ。お前の言う非道の輩がどれだけ強いかを見せてやるぜ‥‥いつだって一緒だ。強い奴は弱い奴から無理矢理奪い取る権利を持ってるんだよ!」
「黙れ、邪なる魂で汚れた刃で斬れるものなどない! ‥‥我が魂の輝きを剣に!!」
 オーラを刃に宿らせる両者。同時に踏みしめる木目‥‥あげるは咆哮!!
「我が魂の輝き宿し剣の閃光に触れ散り逝かぬ者無しっ!」
「いちいち言ってる事が難しいんだよォオオォオ!!」
 距離を詰め、武器を振り上げる両者。しかし同時かに見えた、振り落とす速さの軍配はダバ! 斧はクロノの胸の肉をえぐると、部屋の壁に勢いよく突き刺さる。
「どうだぁああ! これで‥‥‥‥ぃ‥‥」
 ダバの表情が恐怖に歪む。彼の視界に映ったのは歯を食いしばり、気の遠くなりそうな痛みを堪えるクロノであった。
「言ったハズ‥‥ダ。邪なる魂‥‥‥‥斬れ‥‥ナイ!!」
「お‥‥鬼‥‥神‥‥」
 鬼の神、鬼神。‥‥ジャパンの言葉を言い換えこともできないまま、ダバはクロノの魂の一撃によって壁に叩きつけられ、動かなくなった。
「これで‥‥‥‥姫君‥‥を‥‥」
 おぼつかぬ足取りで、壁に手をつきながら地下へと続く階段を降りていくクロノ。‥‥彼の横を転がりながら一人の賊が追い抜いていったのは、階段を下りきろうとしていたときであった。
「まてよ。勝負はまだ‥‥終わっちゃあいないぜ‥‥」
「ダバ‥‥だったな。名乗ろう‥‥俺の名はクロノ・ストール。‥‥闇を滅する‥‥!!」
 立ち上がることすらやっとの両者は互いの消えることなき闘志に口元を緩ませると、武器も持たぬままの拳を相手の頬へ打ち付けたのであった。
「つえぇな‥‥‥‥あんた‥‥」
 頬にあざをつくったダバは牢の鍵を落とすと、壁に寄りかかったままの姿勢で気絶した。

<大広間>
「仲間の死に怒る気持ちはわかる。‥‥だが、感情は動かさぬことだ。必要以上の感情は相手に利用させるだけだぞ。退け」
「知らないの? 吟遊詩人ってその感情を紡ぐのが仕事なんだよ。‥‥不思議なものね。あなたはあたしと同じ匂いがする。そのせいかな‥‥‥‥嫌悪感でいっぱいなのは!」
「大切な仲間を守れなかった気持ち‥‥それすら自制する存在になど成り下がりたくはない!! 俺はレイリー・ロンド(ea3982)。『緋き獅子』の名に賭けて、お前をここで倒してみせる!」
「わからねぇな。‥‥どうしたらここで引き下がれるっていうんだ!」
 振り向いたラブラスの正面に立ったチェルシー・カイウェル(ea3590)、レイリー、鉄劉生は、怒りに身を震わせながら敵を打ち倒すべく身構える。
「あくまで死に急ぐか。身の程もわからぬ愚者よ‥‥すまないが『鍵』を取り返さねばならないのでな。お前たちと遊戯を楽しむつもりなどない!」
 圧倒的不利な状況にも余裕と威厳を損なわぬ橙の騎士は、怒りに我を忘れたようにも見える三人に溜息すら漏らすと、疾風の如き跳躍力でレイリーの側面へ回り込む!
「右!! レイリーさん!」
「‥‥ああっ!!」
 耳に届いたチェルシーの声を信じ、見失った相手へ刀を振り抜くレイリー。‥‥金属音、猛烈な衝撃!! 彼の刀は弾かれ、その向こうから橙の騎士が現れる!
「鉄‥‥決めてくれよ!!」
「もちろんだぜっ! ‥‥‥‥獅龍天翔ォオオ!!」
 レイリーの肩を踏み台にして、龍の如く速度で繰り出された劉生の蹴撃がラブラスの胸に命中する。後方へ飛びのき、一旦体勢を整えようとするラブラス。
「この月の矢からは‥‥逃げられない!」
 だが、追撃はそれでは終わらない。チェルシーから放たれた光の矢で、ついに橙の騎士はバランスを崩して片膝をつく。
「貴様ら‥‥生きてこの城から出られると思うなァ!!」
「‥‥左!?」
 初めて感情を露にし、目にも止まらぬ速さで再びレイリーの側面へ回り込むラブラス! チェルシーは敵の位置を告げるが、敵の刃は明らかにレイリーの二本の刃を凌駕している。
「これでえェエエ‥‥!」
「醜い感情を露にすれば、それに溺れてしまうのです!!」
 勝利を確信するラブラスの剣先をレイピアが捉え、刃の軌道を首筋から天井へと逸らす! 予想だにしなかった新手の襲来に驚きを禁じえないラブラス。口元を緩め、親指を立てる冒険者達。
「立ち上がりなさい。最期は一人の騎士同士、決闘で‥‥決着をつけましょう」
 視界が揺らぐ、ぼんやりとうつるはところどころ血がこびりついた木目の床。そして‥‥四重にぶれる敵。
「先程の一撃を外したのはわざとか? ‥‥面白い。その決闘受けて立つ!」
 小手を床に叩きつけ、決闘の合図を三名の観客へ宣言するラブラス。敵に命を拾われた屈辱からか先程までのように感情こそ露にはしないものの、剣を握り締める右腕は握力のせいで変色している。
「おいしいところを取られてしまったな」
「レジーナさんに賭けるだけ‥‥だね。二人が決闘をする以上、私たちがそれに関与する事は‥‥‥‥できないから」
 ジリジリと距離を取り、互いの出方を伺う二人の騎士に、レイリーとチェルシーは暫しの観戦を決める。ここで助太刀をすることはできる。だが、それでは戦いに勝利したとしてもレジーナの心が晴れることはないだろう。
「レジーーナッ! 絶対に勝てよ!!」
 声援を贈る劉生。その声が耳に届いたのか、レジーナは僅かに視線を彼のもとへ移動させる。‥‥そして、それが合図となった。
「戦いの最中によそ見をするとは‥‥愚かだな! 我が命を賭し剣の前に倒れよ!!」
 好機を見逃す道理などない。アブラスの右足が床を蹴り上げ、側面に回りこむことなく正面からレジーナの胸元目掛けて剣を突き出す!
「剣しか武器がないということは‥‥寂しいことですね。本当の武器は‥‥もっと‥‥」
 幾重にぶれながらみるみる内に接近してくる敵の姿。もうすぐ切っ先が胸元に届く‥‥不思議と全てがゆっくりに見える。これくらいなら‥‥‥‥きっと‥‥
 二人が交錯した数秒後、レジーナは再び床にまえのめりになって倒れた。

「‥‥‥‥見事だった‥‥お前に‥‥礼を言おう」
 ラブラスは壁に突き刺さった自らの剣に、自分でもいつぶりかすらわからない微笑を浮かべると、腕に突き刺さったレイピアを引き抜いて床に置く。‥‥決闘に負けた騎士に居場所などない。彼は胸についた勲章と橙のマントを外してそれに一礼をすると、部屋からゆっくりと歩み出たのであった。

 その後、冒険者達は町の人々の厚意によって教会で傷の治療を施され、一旦キャメロットへと帰還していった。

(次回予告!)
 戦いの後、僅かにその姿を垣間見せる巨悪! 果たして勇者たちはアレブカリフに渦巻く陰謀を阻止することが出来るのか!?
 ―次回― 浪漫COME BACK!! 第2話『謀略の谷』
 乞うご期待!!
(尚、予告は何の前フリもなく変更される場合がございます。悪しからずご了承ください)