浪漫COME BACK!!【?】
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■シリーズシナリオ
担当:みそか
対応レベル:4〜8lv
難易度:普通
成功報酬:3 G 36 C
参加人数:6人
サポート参加人数:1人
冒険期間:01月03日〜01月12日
リプレイ公開日:2005年01月11日
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●オープニング
確かに私達は事実を伝承する役割を持ってる。
しかし、我らが紡ぐのはあくまで『物語』である。魅力に溢れる勇者達の活躍を、どうして平坦な文章で表現できよう? 夢を与えられず、壮大な世界も描けないで何が吟遊詩人なのだろうか? (読者からの批判に対するとある吟遊詩人の反論より)
<アレブカリフ・ライム城>
「ダバはともかく、まさか七騎士の一人であるラブラスが敗れてしまうとはな。‥‥ウェイラー、奴の消息は?」
一度は陥落したライム城を再度占領した騎士は、ラブラスのものと思われる小手とマントを視界に入れると背負った真紅のマントを曇らせながら、自分より一回り小さい紫の騎士へ質問する。
「わかってたら追ってるよラエル。たぶん集団で襲い掛かられたんだろうけど‥‥正直信じられない」
「信じたくない気持ちは俺も一緒だ。だが信じねばならぬ現実もある。奴がここにこうして置いている以上、奴は敗れてしまったのだ‥‥」
ギリリとほぞを噛む真紅の騎士・ラエル。七騎士は常に勝ち続けねばならない。それがこの領地を支える唯一の支柱なのだ。まして主があのような状況では‥‥。
「冒険者に負けるなんて、噂に聞こえし七騎士さまもたいしたことはないんだねぇ。ルダークの苦労が手にとるようにわかるよ」
「言葉は慎めバーム。貴様がルダーク様へどのように取り入ったのか追求するつもりはないが、主君を呼び捨てにされ貶められて黙っているほど‥‥真紅の騎士は冷静ではない」
気配すら察知されずに近付いたはずの魔術師の眉間に銀色の刃があてがわれ、その先端がうっすらと赤く染まる。だが、バームと呼ばれた魔術師は額から汗を流しながらも、余裕の笑みを崩そうとしない。
「その主君様からご命令だよ。こんなおんぼろな城なんてさっさと捨てて、ダームの谷に集合だってさ。‥‥きてみればそこで面白いものが見られるよ」
バームは眉間に寄せられた刃の先端に接吻をすると、二人の騎士から放たれる殺気を気にも止めずに城をあとにした。
<冒険者ギルド>
アレブカリフにあるダームの谷という場所で何やら怪しげな儀式が行われるらしい。周囲の村人は『邪神ゲンドムラルが復活する』と騒いでいる(そんな邪神の名前なんて聞いた事もないが)。
邪神が復活するかどうかは別にして、その怪しげな儀式が人々に不安を与えているのは事実である。至急ダームの谷に赴き、その儀式を中止させてほしい。
●リプレイ本文
<序幕>
それはまさに筆舌に尽くしがたき戦いであった。
ダームの谷を漆黒に覆い尽くす幾多の魔物。立ちはだかる七騎士!! それは邪神ゲンドムラル復活を直前に控えた谷に集まった絶望であった。
邪神の復活を阻止せんと集まった勇者達‥‥『雲を掴む者』クィー・メイフィールド(ea0385)、『争いを奏でる詩人』チェルシー・カイウェル(ea3590)、『誇り高き炎帝』レイリー・ロンド(ea3982)、『嵐裂く貴人』レジーナ・オーウェン(ea4665)、『全能の賢者』ジョウ・エル(ea6151)、『時を越える』淋麗、そして『蒼空の勇者』クロノ・ストール(ea2634)の七名は自らの双肩にかかったアレブカリフの‥‥否! 全世界の期待を受け止めながら、最後の希望たる存在として突き進んでいく。
雲は裂け、大地は絶叫をあげて震える。赤黒(せっこく)の血は空へ舞い上がり、屍の上に屍が降り積もる。‥‥希望の見えぬ戦い‥‥勇者たちの目の前にはそれのみが広がっている。
だが、立ち止まる暇などはないのだ! 邪神復活の儀式は今まさにクライマックスを迎えようとしている。日没までに儀式を阻止せねば世界は闇に閉ざされる! 走るのだ勇者達よ、邪悪な野望を打ち砕き、浪漫を取り戻すのだ!
<炎包む祭壇>
「第七防壁壊滅! バーム様このままでは数十分ともたずやつらがここに襲来することに‥‥」
「うろたえるな。儀式は既に最終段階にはいっておる。ゲンドムラルさえ復活すればこちらの勝利は揺るがんのだ」
たった七名に突破されるはずもない防衛線が次々と陥落しているという事実に、儀式を執り行っている者達も動揺を隠し切れない。ルダーク直属の精鋭達、栄光にうたわれし七騎士までもが敗北するなどという事態を誰も想像してはいなかったのだ。
「第八防壁壊滅! 十数分後には‥‥!!」
「グヌヌ‥‥ラブラスといい他の連中といい貴様ら七騎士は何をやっているのだ!? たった七名に敗北するとは‥‥‥‥」
日が沈むまでにはまだもう少し時間がかかる。今ここを七名の勇者達に襲撃されば‥‥計算外の速度でこの祭壇まで迫ろうとしている勇者達に、ついには儀式を執り行う主・バームまでもが語気を荒げ‥‥鼻先に突きつけられた刃に驚いて倒れこんだ。
「心配するな。邪神だろうが何だろうが、主に儀式を守れと命令されている。部下としてその任務は遂行しよう。あくまで儀式が終わるまでだがな。せいぜい急ぐのだな。奴らは‥‥‥‥もうここに着ているぞ」
七騎士最強の男、真紅の騎士ラエルが見上げた崖の上には満身創痍ながらも衰える事を知らないがんこうを持った七名の勇者が祭壇を見下ろしていた。
「邪神を復活させようという試み‥‥貴様らの野望、ここで打ち砕いてみせる!」
「野望ではない。‥‥忠誠だ。邪神など最初から信じてはない。これが終われば‥‥ラブラスや敗れた四人の騎士の汚名を晴らしたならば、このラエルが全て終わらせよう!」
互いの姿を視界に収めるや否や、言葉を交わす間もなく剣をぶつけ合うクロノとラエル。その衝撃は地面を粉砕し、浮き上がった破片は二人を取り囲む。
「ここまでたった七人でやってきたその胆力、敵ながら見事。‥‥だが、それもここまでだっ。傷ついた体でこのラエルに通用すると思うのか!」
真紅のマントが揺れ動き、豪腕が振り抜かれる。灰の騎士との熾烈な戦いの最中右足を負傷したクロノは地面を踏みしめることが適わず、剥き出しの壁面まで弾き飛ばされた。
「我が名はレイリー、緋き獅子の牙を己が体で受けて見よ!」
「お前も一緒だ。そのような傷ついた肉体で、満足に戦うことができるとでも‥‥!」
返す刀でレイリーを切り伏せんと、再び腕に力を込めるラエル。再び震える大地、舞い上がる破片!
「‥‥っ。お前の言う忠義の心の力は‥‥‥‥この程度かぁああ!!」
「馬鹿な、その傷ついた腕の‥‥どこにっ!!」
彼が破片の外に見たのは、難なく弾き飛ばすはずであったレイリーの姿であった。両腕を深紅に染めながらも瞳に炎を宿らせた勇者の姿に‥‥そして力比べで自分が押されているという事実にラエルは戦慄を覚える。
「‥‥紅き騎士よ、我らには背負うものがあるのだ。志を全うするまでは‥‥決して倒れるわけにはいかぬ!!」
「ここまで俺達を進めてくれた、仲間の想いは‥‥最強の武器となるんだ!!」
不屈の闘志で立ち上がったクロノが足の止まったラエルを弾き飛ばす。そして彼はレイリーと共に全身を光に包ませると、よろめきながら起き上がるラエルへ刃を向ける!
目を覆うばかりの光が一面を照らす中放たれるのは二人の気迫を込めた必殺技!!
『蒼獅牙ッ(蒼き獅子の牙)!!』
「がああぁああああ!!!」
全てを貫く一撃を受け、真紅の騎士は武器を構えたまま‥‥前のめりに倒れこんだ。
「おお‥‥あの一撃こそ伝説にうたわれし合体技じゃ。‥‥まさかあの二人がこの限界下で体得するとはの‥‥」
麗に支えられながら一連の戦いを目にしたジョウは本当なのかどうなのか疑わしい伝説知識を披露する。だが、重要なことは伝説云々よりも目の前で起こっている事実である。未だに砂煙収まらぬ合体技の威力に、残る勇者達も勝利を確信する。
「決まったんかな?」
「あの一撃を受けて立ち上がれたのなら‥‥‥‥!!」
クィーから投げかけられた素朴な疑問にレジーナは「立ち上がれるはずもない」と答えようと口を開きかけ‥‥真一文字に結ぶ。彼女の右腕に握られたレイピアが、誰もが考えた予想が外れたという事を宣言していた。
「負けられぬのは‥‥こちらも‥‥同じだ! このラエルにも‥‥守るものがある」
「‥‥ならば、お互い納得がいくまで戦おうではないか。私は明日の空を‥‥人々の未来を護る。それが私の騎士道!」
再び交わる三つの剣戟! 鳴り響く金属音!! レジーナとクィーもそれに加わろうと、レイピアを構えて崖を滑り降りていく。
「待ちなよ。いくらそっちが怪我をしてるっていっても、四対一はないんじゃないかな。‥‥君たちの相手はこの紫の騎士・ウェイラーが受けて立つよ!」
だが、彼女達の行く手に七騎士最後の一人、ウェイラーが立ちはだかる。外見から判断すれば年齢も彼女達と同じか若干下‥‥猛者揃いの七騎士の中では一人華奢な印象を受けるが、その太刀筋が鋭いか鈍っているかなど、構えを見た瞬間に凡その見当はつく。
「悪いけどそこどいてくれんかな? あんたらも神さま呼び出す努力を他に向けてみたらどうやー。世のため人のためとかだって感謝されるで」
「神? 違うね。僕達はただ主君のために戦う‥‥それだけだよ。こう見えても邪神復活を本気で信じるほど純粋じゃないつもりさっ!!」
クィーの提案を一蹴し、剣を突き出すウェイラー。レジーナの頬から雫がこぼれ落ち、金の糸を思わせる毛髪が数本風に舞い上がる。
「どうやら戦うしかないようですね。‥‥橙の騎士ラブラスは決闘を以ってわたくしが倒しました。最後まで騎士らしい立派な戦い振りでございましたよ」
これまでの戦いで消耗し、悲鳴をあげる右腕を気力で突き動かすレジーナ。だが、ウェイラーは驚異的な反射神経をもって武器を使うことなくその一撃を軽々と回避する。
「そうだ‥‥お前達と戦うのはその理由もあったな。ラブラスさんの仇、必ず僕がとってみせるっ!!」
‥‥決戦の合図を告げる小手が空へ投げ放たれた。
‥‥‥‥小手を照らす光は‥‥‥‥もう空にはなかった。
<祭壇>
「日よ沈みたまえ! そして‥‥我が望みを叶えるのだ!!」
祭壇に設けられた数多の松明がダームを照らす。そして炎から放たれる光は‥‥あたかも全て彼に吸収されたかのように、一斉にその灯火を終えた。
「いかんっ、このままでは邪神が復活してしまうぞ!」
祭壇の異常を察知し、ファイヤーボムを投げつけるジョウ。炎に包まれる祭壇‥‥だが、彼が放った炎ですらも一度動き始めた歯車を逆回転させることはできなかった。
邪神ゲムドラシルは‥‥今、その形を変えて復活を遂げたのである。
●終幕
「体中に力がみなぎってくる‥‥すばらしいっ! 素晴らしいぞオオォオ!!」
全身から抑えきれないほど溢れ出る力に絶叫するバーム。一見しただけでは彼の外見に何ら変化は確認できないが、きっと邪神が彼の肉体に乗り移ったのだろう。
「先ほどは炎をありがとう。これはささやかなお返しだ!!」
日没と共に暗黒に包まれた谷を包み込むような炎がジョウへと放たれる! ジョウは回避を試みる。だが‥‥彼の後ろには彼が命に代えても守るべき対象があった。
「ふ、歳甲斐もなく‥‥惚れた女を守って‥‥しまったのぅ‥‥」
両手を広げ、麗を庇うように炎の直撃を受けたジョウは‥‥微笑みながらその場に崩れ落ちた。麗の声が聞こえる。鎮魂歌だろうか? 遠くから聞こえる歌は‥‥‥‥
「邪神の力は世界を滅ぼしかねない。だけど、私達はまだ諦めるわけにはいかないんだから。さあ、歌うよ! 戦いの‥‥そして歓喜の歌を!」
チェルシーの歌声が祭壇を包み込む。やがてその歌声はダームの谷へと広がり‥‥アレブカリフへと波及し、ついには世界を包み込む。
「わしとしたことが、こんなところで諦めてしまうところじゃったな。‥‥礼を言うぞチェルシー! 皆の者、今の敵はただ邪神一人のみ!! 手をあわせ、戦おうではないかぁ!!」
胸に抱くは 不屈の闘志
瞳に宿すは 不撓の決意
「ラエルよ。貴公も騎士ならば判る筈だ、真に討つべき敵が誰か、主の為真にすべき事が何かを」
「このラエルに意見をするな。‥‥どのみち、儀式さえ終わればバームを守る理由などない」
絶望苦痛 障害恐怖 行く手を遮る 数多の敵も
信頼勇気 友情正義 心の剣で 切り裂いて行け
「知らない歌のはずですが‥‥何故だかとても‥‥懐かしい」
「ラブラスさん、少し‥‥仇を討つことが遅くなります。許してください」
Never giveup and never surrender
Dont resign and dont defeat
「戦え! あの邪神を守ることこそが主君のためだ!」
チェルシーの歌声に乗って勇者達が、七騎士が、そしてルダークの部下達が次々と威力を取り戻し、邪神へと立ち向かっていく。
言霊に突き動かされ敵味方なく押し寄せる敵の群に、全てを滅するはずの邪神の力も陰りを見せ始める。
「おのれ、オノレエエェェ!! なぜだっ! まだ不完全とはいえ、このバームは邪神の‥‥」
「邪神なんて楽しくないやん。あんたは‥‥邪神なんて存在は、この世界に必要とされてないんや!」
戦いの歌は歓喜の歌へ変貌を遂げ、ついには邪神をも包み込む!
「その手に掴むは 勝利の証‥‥」
‥‥チェルシーの歌声が最後の反響を終えた時、邪神という存在はこの谷から消失していたのであった。
<次回予告!>
襲い来る悪の首領ルダークの野望! 迷える勇者たちに新たな試練。それは光かはたまた闇か!?
次回、浪漫COME BACK!! 第3話『希望の丘』
乞うご期待!
(尚、予告は何の前フリもなく変更される可能性があります。あしからず)