未来への縮図【最終話】

■シリーズシナリオ


担当:みそか

対応レベル:10〜16lv

難易度:難しい

成功報酬:6 G 98 C

参加人数:9人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月19日〜12月26日

リプレイ公開日:2005年12月28日

●オープニング

<ザーランド>
「‥‥お前の言いたいことはだいたいわかった。このチンケな争いで怨恨を絶ち切ろうって魂胆か?」
「ええ、それでどれだけ犠牲が払われるようなことになろうとも」
 座したまま自分より小柄なザーラル・レクアを見下ろすアグラヴェイン。腰に装着した刃がカチリと音をたて、彼の僅かな動揺を示す。見れば自らの半ばもいかぬであろう年端の少年。だが、その表情に満ち溢れる自信と確信とはなんだ!?
「結局一番チンケなのはてめぇ‥‥失礼、レクア殿だって話もあるんだぜ」
「それでもやらなければならないことなんです。つまらない争いがどれだけの非効率を発生させているかお分かりでしょう? それを解消させる義務があるんですよ」
 耳に小指を入れてほじりながら尚も少年を見下ろすアグラヴェイン。言っていることは分からないでもないが、そんな夢物語は酒場で酔っている男から聞き飽きるほど聞いてきた。
「その義務が傍迷惑だったとしたらどうする? あんたは確かに権力者だがアーサー王には劣る。そのアーサー王にもできないことをどうしてできるって‥‥‥‥このへんでやめておこうか。どうせ平行線だ。ベガンプの悪行の話は聞いた、貰うものも貰った。約束もした。あんたらに力と名前を貸してやるのもやぶさかではない」
「ありがとうございますアグラヴェイン殿。‥‥よろしければ護衛役に私の私兵である燕をお付けしましょう。この者はクロウレイでも一、二を争う‥‥‥‥どうやら必要ないようで」
 レクアの言葉を最後まで聞こうとせず、ドアを蹴破って退室するアグラヴェイン。こんな地方のことなど眼中にないというのか、彼の姿勢は常に上からのものであった。
「‥‥だが、これでようやく僕の仕事も終わる。ベガンプはザーランドの前に屈服し‥‥‥‥そして再び一つの巨大な勢力として、他の領まで捲き込んだ大きな一つの勢力として、怨恨も何もない、新たな生命体として復活することになるんだ。‥‥そうだろう、燕?」
「ええ、その通りです。レクア様の志、必ずや‥‥成就させてみせましょう」
 期待と希望に満ちた‥‥上ずった声で語りかける主君へ深々と頭を下げる燕。これから起こる数多の事件はきっとこの領に大きな混乱を起こすことだろう。
 ‥‥だが、今はそれが正しいと‥‥‥‥このザーランドの迷走すらも信じられるようになってきた。

<ザーランド北部>
「またこの村に来ることになろうとは‥‥因果なものだ」
 強くなってきた‥‥肌に刺すような冷たい風を頬に受け、クラックは大きく息を吐く。かつてベガンプと領土の境界線を巡って争った村‥‥があった場所は未だに廃墟のままであった。
 墓標は犠牲者であり英雄である者の名を刻んだまま動こうとせず、雨風に晒されてカビが発生している。大地を掘り起こせばまだ原型を留める死体を発見することもできるだろう。
「ベガンプ軍の姿、ありません。密使からの情報によりますと、近辺の砦に篭っているようです」
 かつて争い、そしていつしか放棄された場所に、敵兵の姿が見えないのは今のザーランドとベガンプの力の差を物語っていた。あれから起こった数多の戦い‥‥それは両陣営に膨大な被害をもたらしたが、そうなれば物量に勝る陣営が優位に立つことは‥‥‥‥歴史が証明している。
「恐らくはもうザーランドの土を踏むこともあるまい。我らはこの場所で援軍を待ち‥‥一気にベガンプの居城へと攻め入る!!」
 かつて拳を叩き込まれた頬をひと撫ですると、クラックは大きく白い息を吐き、兵士へと号令をかけたのであった。

<ベガンプ>
「‥‥つまるところ、既に敵を誘い込んでの作戦は避けられぬ情勢にあります。皆々様も万一に備え、覚悟を決めておいてください」
 集まった鉱山長達を‥‥一様に俯く彼らを見ながら話しかけるラミア・アーク。有能な将さえいれば、あの同盟を蹴ってさえいればと後悔する事象は幾らでもあるが、こいつらと同じようにいつまでも下を向いていたのでは滅亡を待つことしかできない。
「ならば全て私にお任せください。最悪の場合でも、私の首一つで話をつかせるつもりですから」
 自棄気味にラミアの口から出た言葉を、心の底から否定する者は‥‥既にベガンプにはいなかった。

<ラミア個室(会話)>
「対象は?」
「クラック並びにアグラヴェイン・オークニー」
「再度聞きますが本気で? クラックはともかくあと一人は円卓の騎士ですよ」
「以前は敵にまわりそうであり、今は事実として敵にまわったのだ。敵にまわったのならば、それが女子供であろうと円卓の騎士であろうと関係はない」
「なるほど。それで機会は? 成功報酬は?」
「全てをひっくり返すため、貴様らは嫌がるだろうが戦場でだ。二度機会をやる。成功報酬は‥‥ノルマンなりジャパンなり好きなところに行け。それだけの『モノ』をくれてやる」
「ははっ、お見通しとはありがたいことです。これで有意義な老後がおくれそうですよ」
「こちらも貴様と‥‥もう一つの顔をもう見なくていいと思うとせいせいするよ。勝つためには誇りも何もかも捨て、醜くとも手の限りを尽くそう。‥‥ザーランドを叩き、不安定でもこのベガンプだけは残してみせる!!」

<数日後・ザーランド北部>
「クラック様。クロウレイ全土からロムン教の狂信者どもが湧き出しています。その中心には教祖・ロムンも確認されるとのこと。聖戦を唄い、こちらに向かってきます」
 淡々とした兵士の声。驚く必要などはない。ロムン教がベガンプの援助を得ていたことなど証拠こそないもののザーランド軍関係者であれば周知の事実であり、それが一同に会すことなど予想できる。
 ‥‥そしてもっと重要なことは、敗走に敗走を重ね、各地の拠点を軒並み潰されたロムン教の烏合の衆など、最強の騎馬隊を自認する自分達の敵ではないということだ。
「侮るなよ。奴らの実力はともかく、その数は脅威だ。むざむざ殺されに来ている者たちの執念を、決して軽視することなく‥‥‥‥叩き潰せ!」
 クラックの言葉に、伝令は手刀を自らの額に当て、敬意を表した。

<冒険者ギルド>
 邪教であるロムン教の軍勢がザーランド領のとある村に展開しているクラック軍へと迫っている。諸君らはこちらが雇う二十名の傭兵を連れて、援軍としてザーランドの力になって欲しい。
 ロムン教の軍勢のスピードは極めて遅く、諸君らは奴らが攻め入る前日にはクラックと合流できることだろう。諸君らと二十名の傭兵は好きに動いてもらって構わないから、一人でも多くの敵兵を倒すべく、尽力して欲しい。
 ‥‥並びにこれは不確定な情報だが、ベガンプが雇った何者かがロムン教の一団に紛れ込んでいるとの情報もある。過度の注意は臆病を呼ぶが、決して慢心せぬように戦いに臨んでくれ。

●今回の参加者

 ea0285 サラ・ディアーナ(28歳・♀・クレリック・人間・イギリス王国)
 ea0353 パトリアンナ・ケイジ(51歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea1003 名無野 如月(38歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea1501 シュナ・アキリ(30歳・♀・レンジャー・人間・インドゥーラ国)
 ea1911 カイ・ミスト(31歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea2578 リュウガ・ダグラス(29歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea3888 リ・ル(36歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea3982 レイリー・ロンド(29歳・♂・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea5352 デュノン・ヴォルフガリオ(28歳・♂・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)

●リプレイ本文

●一幕
「始まったか‥‥」
 貸し与えられた軍馬に騎乗しながら、怒声と悲鳴とを聞くデュノン・ヴォルフガリオ(ea5352)。争いとは間違いなく非日常的なものであるが、こう何度も人と人とが殺しあう光景を眼前にしていては、その区別すらもつかなくなってくる。
「ロムン教はどのような集団なのですか?」
 デュノンと同じく護衛にあたっているレイリー・ロンド(ea3982)は、悠然と戦況を見守っているクラックに声をかける。
「さあな。邪教集団などに興味はない。ただ敵として我らに牙を剥いてくるならば、それを殲滅するだけだ」
「‥‥なるほど」
 搾り出すように返答するレイリー。強敵と戦うことは多かったが、今回の敵は逆の意味で‥‥自らの良心との戦いになる。狂信者は騙されていると言えばお人よしだの偽善者だのと声が飛んできそうな気もするが、それが現在の彼を今の世界に繋ぎとめている一つの絆でもある以上、簡単に決断を下すことなどできるはずもない。
「安心しろ。奴らなど最初から我等の敵ではない。利用できるものはどのようなものであれ利用するが、手を組むのかと聞かれればそれは別の問題だ」
「クラック殿、それは‥‥」
 風に流されそうなほど小さな声で呟いた『剣皇』の言葉とレイリーの返答は‥‥合図とともにこだました騎馬のいななきによってかき消された。

●二幕
「チェストオオォオ!」
 鮮血が飛び散り、名無野如月(ea1003)の純白の頬が紅く染まる。自分たちよりも圧倒的に多数である、鋭さはともかくとして武器を持った輩に囲まれている‥‥普段なら恨みぶしの一つでも言いたくなる状況だが、腕にはしった『確かすぎる』手応えを感じれば、そんなつもりなどなくなってくる。
「あ〜〜、こんなんでも争いなんてのは起こるんだな。‥‥震えた手で、踏み込む勇気がなくても、ちょっと騙されればこんな場所に来るのかてめぇらは!?」
 大げさに声を出し、お世辞にも力強いとは言えない足を『ドン』と踏み出すシュナ・アキリ(ea1501)。刃を振り回す必要などない。こんな些細な脅しだけで、『敵』はまともに武器を振るうことすらできなくなるのだ。
「油断はしないでくださいよ。実力はどうであれ、数は立派な武器になります」
「わかってるさ。このままだと‥‥いつかはやばくなる」
 腰砕けの状態で突き出された武器を弾き、騎馬に乗ったまま信者たちを弾き飛ばすように突き進むカイ・ミスト(ea1911)。突き伏せても突き伏せても出てくる敵を前にして、彼は大地に向けて唾を吐き出す。
 個々人からすれば相手ではないが、数が集まればどんなへっぴり腰でもそれなりの力を持つ。恐怖で刃が前に出なくとも、集団の心理はそれを打ち消す可能性もある。
 敵の中に凄腕の傭兵が紛れている情報もあれば、早く、少しでも早く! 相手の頭を叩かなければ‥‥‥‥!!
「もうじき騎馬の突撃が始まる。そうなれば敵だの味方だの言っていられはしない。‥‥どちらにしろそちらの勝利は決まっているんだ。それまで待てばどうだ?」
 教祖の羽織る白い布が見えた途端、騎馬がいななき、深く刻まれた頬の傷から鮮血が滴り落ちる。欠けた月を思い起こさせるほど歪曲した刃を携えた男は、信者の中ですら一際異彩を放つ。
「負け戦に出てきている奴の台詞ではないな。‥‥教祖を守る壁といったところか?」
 傷を拭おうともせず、言葉を紡ぎながら傭兵に指示を出す時間を稼ぐカイ。
「違うな。‥‥戦争では『勝ってはならない者』という存在がある」
「ロムン教がそれってわけか。あんたらがそうなるって可能性は考えなかったのかい?」
 男の会話に割り込むパトリアンナ・ケイジ(ea0353)。陰謀、謀略、作戦、協力、感情、愛国心‥‥まだるっこしいことがこの戦いには多すぎる。考えれば結論が出るのかもしれないが、そんなことを考えている時間など彼女にはない!
「時間がもったいないさねぇ! 一にも二にも銭の為、銭の為ー‥‥うらあっ!!?」
 パトリアンナが突き出した木剣は軽々と敵に回避される。それほど実力差があるとは思えない相手に‥‥いや、これは‥‥‥‥
「全てはロムン様のために‥‥ってことかぃ? 聖戦ごときで立ち上がれるほどあたしら『は』追い詰められちゃいない。ちょうどいい落としどころがみつかったってことさ」
 内臓の内側から刺されているような痛みを受けて、目を見開くカイとパトリアンナ。信者たちに紛れて薄笑いを浮かべていた老婆が言葉を紡げば、幽霊でも見たかのような瞳を全員が浮かべる。
「ラートマ様、それは‥‥」
「残念ながら勝ち目は薄いが、この戦いで奴らは地獄に、私達は天国に行く‥‥それだけのことさ。さぁ、私はこのアルラムと共にロムン様の言葉を聞いてくるから、あんたらはこいつを倒すんだ」
「てんめぇえええええ!!」
 背を向けるラートマとアルラム。叫ぶパトリアンナ、槍を振り上げるカイ。叫び声は信者たちの声にふさがれ、槍は立ち塞がった男を貫く。ラートマの背は嘲笑が小さくなっていくのと同調するかのようにその姿を消した。
 ‥‥‥‥彼女が、大地に倒れることによって。
「せめて生き残るものたちに‥‥未来への希望を!!」
 弓を構えたシュナが遠い空にいる誰かに向けて叫んだとき‥‥‥‥遠くから、全てを多い潰すような騎馬の足音が轟いた。

●三幕
「ディール、てめぇえええ!!!」
「おっと、どうして刃を振るわれるので? 人がせっかく賞金首から改心をして、領主さまから受けた仕事をまっとうにこなしているというのに!?」
 騎馬隊は圧倒的な圧力でロムン教の陣地に食い込み、戦場は逃げ惑う人々とロムンを捜す騎馬兵とに色分けされた。混戦の最中、幸運(?)にもディールを発見することができたリ・ル(ea3888)は、安全な場所まで逃がそうとしていた子供をサラ・ディアーナ(ea0285)に預け、鬼神の如き表情で刃を振り落とす!!
「まっとうな仕事だぁ? 何が神だ、何が聖戦だぁ! 今を前向きに生きることが一番尊いんだよっ!」
「聖戦なんかに興味はありませんよ。その証拠に‥‥ロムンは生きていない! 側近のラートマも死んだでしょう。‥‥じゃないと、いくらなんでもこんな馬鹿な戦いは起こしませ‥‥がぁっ!!」
 刃と刃が重なり合った刹那、リルの左拳がディールの頬に突き刺さる!!
「っ、怒りに身を任せて右手を捨てるとは惨めですねぇ」
「無性にお前を殴りたかった。後悔などない!!!」
 立ち上がられては勝ち目などないと、叫びながらディールとの距離を詰めるリル! 渾身の力を込めたその刃は、ディールの‥‥胸に突き刺さった!!
「‥‥ぉ!! ‥‥ハハハ!! 今のが右手の日本刀で‥‥したら勝負は決まっていましたよ。さあル‥‥ードにサシャさん、こいつを殺すんです!!」
「!!!!!」
 リルの耳に響く軍馬の音。視線を向ければそこには‥‥ザーランドの鎧を身に纏い、この場から‥‥‥‥通り過ぎる、ルードとサシャの姿があった。白き光を受けたリルは、その場に片膝をついたが‥‥‥‥目の前の男が見せる表情は、驚きは! 誰も見たことのないものであった。
「ルードオオォオオ!! どうして殺さない!! どうして私を連れて逃げない!? あんたの不手際も、情報をリークしたことも、全部‥‥ぜんぶ見逃してやったじゃないですか!? これが終われば晴れて自由の身になれるというのに!!」
「結局‥‥お前達は‥‥誰にも‥‥信用されて‥‥いなかったって‥‥ことだ!」
「それは違う! 私たちは上っ面だけではなく、本当の絆で、『利害関係』という絆で繋がっているんですよ!!」
 憔悴しきった様子で言葉を紡ぐリュウガ・ダグラス(ea2578)を突き飛ばすディール。かつて戦場で‥‥この地でまみえた、ベガンプ軍をズゥンビの姿で発見し、突き伏せた彼は突き飛ばされた衝撃に耐え切れず、その場に腰を落とす。
「こうなったら一人でも‥‥」
「終わり‥‥なんだディール。‥‥お前は‥‥ここで散るんだ」
 ディールが叫び、リュウガの喉笛に刃を突きつけたとき‥‥彼の周囲は、ザーランド軍によって完全に包囲されていた。
「元賞金首のディールだな。ザーランド本国まで御同行願おう。抵抗する場合、命はないと思え」
「ハハ‥‥ハハ‥‥‥‥バカにするなよてめぇらあぁあ!! 私が、俺が‥‥どれだけてめぇら腐った人間の、腐った依頼を受けてきたと思ってるんだぁあ!!」
 ディールの掌から伸び出した剣が騎馬兵を襲う。その刃は受け止めようとした騎馬兵のそれをすりぬけ、顔を真っ二つに斬って捨てた。
「どうですか、とっておきは最後までとっておくからとって‥‥ぉ‥‥」
「‥‥‥‥疲れただろう。お互い。‥‥なに、俺も精一杯生きた後は‥‥そっちに行くさ」
 リルのダガーがディールの背に突き刺さる。ザーランド兵は力を使い果たして大地に座り込んだリルに一礼すると、ディールを抱えて、戦場から離脱していった。
 遠方から大きな歓声が聞こえたが‥‥もはやそれほど気にはならなかった。

●終幕
「どうしてですかルードさん、どうしてディールさんを見捨てるようなことを!」
「死ぬべき存在なんだ! あいつも、琥珀も、ハーマインも、アルラムもイルザックも‥‥そして俺も! だけどお前は違う。誰からも好かれるし、誰も殺していない。昔ちょっと運が悪かっただけで、ディールさえいなくなれば、これから幾らでも、まだ取り返しが‥‥‥‥!!」
『‥‥!!』
 それは数奇としか言えない出会いだった。サラが子供達を連れて避難していた洞窟と‥‥深手を負ったルードとサシャとが逃げ込んだ洞窟が『偶然にも』一緒だったのだ。背後からも伝わる敵の感覚に、折れた剣を握り締め、覚悟を決めるルード。
「サラさん、そちらに異常はないですか?」
「こっちに賞金首が逃げてきてるんだ」
「‥‥‥‥はい。大丈夫ですよ。デュノンさんとレイリーさんも気をつけてください」
 背後の子供達を守りたいという気持ちからか‥‥あるいは別の感情からか、奥から逃げるように身振りを行うサラ。ルードは彼女に一礼をすると、洞窟の奥から身を出し‥‥‥‥全身を血と‥‥殺気とに染めた如月を眼前に捉えた。
「あんたらの命、私が奪お‥‥!!」
「行けルード! ミーは片目ではどうせでは生き残れぬ!! それならばせめて、レディーを守り、冒険者と剣皇を仕留めることで‥‥イギリスの蒼狼の名を轟かせてみせよう!!」
 如月の刃に合わせられるギルの槍! 戦いの音に気付いたのか、ザーランド兵はこちらに迫り‥‥‥‥ルードとサシャの姿は、如月の視界から消えた。
「いい男だが‥‥いまさら一つ善行とも言えない善行をしたところで、私が同情するとでも思っているのか?」
「TI、TI、TI。勘違いをしないでもらいたいところです。陽気がとりえのミーですので、レディーにかける言葉と敵にかける言葉では違いますよ!!」
「‥‥っ! ちぇすとおおぉお!!」
 如月を突き飛ばし、軍馬に飛び乗るギル。体勢を立て直した如月は背を向けた敵に‥‥深々と刀傷をつける!!!
 彼女の右腕に確かな手応えがはしり、ギルは‥‥ぐったりとしたまま、馬とともに走り去っていった。

●余幕(報告書)
 クラック様のもとへは元賞金首である琥珀とイルザック、ハーマイン、シューラらが襲来してきたが、諸君らの奮戦もあってクラック様がかなりの深手を負ったものの、なんとか敵を退けることができた。
 尚、拿捕した元賞金首であるディールは、近日中にザーランドにおいて後悔処刑に処せられるてはずとなっている。
 諸君らの協力に感謝する。