魔術師の剣 #3

■シリーズシナリオ


担当:三ノ字俊介

対応レベル:8〜14lv

難易度:難しい

成功報酬:5 G 97 C

参加人数:12人

サポート参加人数:-人

冒険期間:05月16日〜05月23日

リプレイ公開日:2007年05月20日

●オープニング

●迷宮の謎に迫るには
 迷宮というものは、目的を持って建てられる。
 まあ中にはトラップマニアみたいなヤツがいて、自分の迷宮にハマる探索者を高見の見物している性格の悪いヤツもいるが、大抵は普通の建築物と同じく『なんらかの用途』のために作られるのが普通だ。建物というものは、芸術であり学問である。哲学も時々混じる、結構高尚なものだ。
 ゆえに、今回発見された『ロドバーの迷宮』については、その『目的』が焦点になる。それが分かれば、探索の方向性も変わってくる。
 そして前回の探索で約半分の調査を行い、一同はこの迷宮が『工房のうようなもの』であるとアタリをつけていた。つまり過去の魔法器物の製作所、である。
 ならば、という仮定の話になるが、技術のある者ならば、過去の強力な魔法の武具などを再現することが可能なのではないのか? あるいはレシピやその製作方法、道具があるならその道具など、あらゆるものが『成果』たりえる。例えばゴーレムの武器はノーマルアイテムだが、ゴーレムサイズの魔法の武器を作ることも不可能ではなくなる。
 さすがに数千年の長い伝説を持つ迷宮は、ただものではなさそうだった。

●ロドバーの迷宮
 ロドバーの迷宮は、山一つが遺跡という剛毅なコンストラクチャーである。全体の形は、どうやらピラミッドに準じているらしい。
 一応、エジプト文明との年代は合う。もっともアトランティスは時間軸について曖昧なところがあるので、『それ』と決めつけるのは危険だ。
 幸い、ヒドラの出現以降この迷宮からモンスターが出現したという報告はない。つまりこの迷宮には、『外に出るようなモンスター』はもういないらしい。
 あとは内部を探索し、阿修羅の剣の有無を確認する。そして出来れば、可能な限りの魔法の武具を確保する。
 実入りの大きそうな話ではあるが、リスクはMAXである。覚悟を決めて参加していただきたい。

 なお、以下は《バイブレーションセンサー》などの事前調査と前回の探索で判明した範囲の、内部マップである。参考にされたい。

・1マス=5メートル
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【?〜?】区画番号
【品】壁
【◎】何か独立した物体
【□■】床素材の違う区画
【??】昇降機らしい

●今回の参加者

 ea0827 シャルグ・ザーン(52歳・♂・ナイト・ジャイアント・イギリス王国)
 ea1135 アルカード・ガイスト(29歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea2449 オルステッド・ブライオン(23歳・♂・ファイター・エルフ・フランク王国)
 ea3329 陸奥 勇人(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea5021 サーシャ・クライン(29歳・♀・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea5513 アリシア・ルクレチア(22歳・♀・ウィザード・エルフ・ロシア王国)
 ea7482 ファング・ダイモス(36歳・♂・ナイト・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 ea7641 レインフォルス・フォルナード(35歳・♂・ファイター・人間・エジプト)
 ea9907 エイジス・レーヴァティン(33歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb7879 ツヴァイ・イクス(29歳・♀・ファイター・人間・メイの国)
 eb8162 シャノン・マルパス(23歳・♀・鎧騎士・エルフ・メイの国)
 eb8544 ガイアス・クレセイド(47歳・♂・鎧騎士・人間・メイの国)

●リプレイ本文

魔術師の剣 #3

●先生! 出番です!
 いきなりだが、物語は戦闘から始まる。
「くそっ! これならヤーン級を持ってくるべきだった!!」
 オルステッド・ブライオン(ea2449)が悪態をつくが、どうにもならないことがある。
 敵は国籍不明フロートシップ2隻――というより、バグナが載っているのでどう考えてもバの国のものである。
 なぜこの迷宮の事が発覚したかについては、今はよく分からない。しかし希少鉱物は奪取されるだけで痛手になるし、そもそも相手はやる気満々で奪う気も満々なのだ。2隻のフロートシップに搭載されているのは接近戦型のバグナ級2体だが、向こうは甲板に出て斬り込みする気配を見せている。ルノリス級は搭載力はあるが、戦闘艦という概念が出来る前に組まれた船のため、装備も速度も防備も――一括して言うなら『旧式』なのだ。
「シャノン! ガイアス! 右舷に寄れ! ぶつけるから一気に斬り込め! 互角にやり合う必要は無い!」
『了解だ』
『承知!』
 シャノン・マルパス(eb8162)とガイアス・クレセイド(eb8544)の乗ったモナルコスが、ルノリスの甲板に出て右舷に寄る。同時にオルステッドが叫んだ。
「魔法攻撃! 2連でいい! 詠唱後転舵! 総員衝撃に備えろ!!」
 アルカード・ガイスト(ea1135)が《ファイヤーボム》を、アリシア・ルクレチア(ea5513)《アイスブリザード》を、サーシャ・クライン(ea5021)が《ウインドスラッシュ》をそれぞれ唱えて放った。敵船の一隻に痛打を与えて、一気に肉薄する。
 ぐわっしゃーん!!
「右舷大破ァ!!」
「右バリスタ使用不能!」
「何人か落ちたぞ!!」
 被害報告の間に、シャノンとガイアスのモナルコスは飛び移っていた。
「離脱! オッサン!」
「承知である!」
 シャルグ・ザーン(ea0827)以下、陸奥勇人(ea3329)、ファング・ダイモス(ea7482)、レインフォルス・フォルナード(ea7641)、エイジス・レーヴァティン(ea9907)、ツヴァイ・イクス(eb7879)の戦士部隊が、もう一隻の船へ斬り込み準備を終えていた。オルステッドはさらに転舵し、全速で敵船にルノリスを激突させた。当然、左舷も大破した。
「十分だ。諸君、行くのである」
「「「「「応!!」」」」」
 ゴーレムバスターを装備したシャルグが、まず仕掛ける。《スマッシュ》による攻撃で、バグナのすねをむしった。
「いけええええっ!」
 勇人のボォルケイドハンマーが、うなりをあげてバグナのエレメンタルフィールドを貫通した。やはりバグナの足に命中させる。
「次!」
 ファングのギガントソードがさらに追い打ちをかけた。共に《スマッシュ》ないし《スマッシュEX》級の技が重ねられていた。ファングの場合それに《バーストアタック》が加えられ、バグナのすね甲が砕かれた。
 レインフォルスがさらに《シュライク》で追撃。おそらくではあるが、彼は多分メイの国最強のコック――もとい、酒場店員であろう。というか、なぜ酒場店員なのだろうか。
 ツヴァイは《フェイントアタック》で牽制をかけていた。威力は無いが、フットワークはある。
 とどめをくれたのは、エイジスのGパニッシャーである。伝説の対G究極兵器が、蓄積したダメージにさらに追い打ちをかけ、ついにバグナの足を砕いたのだ。対G兵器というところが、相手の同情を誘う。よりにもよってG扱いされたのである。
「最後はわしにまかせろ!」
 ゼットが、擱坐したゴーレムに組み付く。そして《ローリンググラビティー》を唱えると、空中に持ち上がりそのまま『キン○ドライバー』の体制で地面に落下していった。
 ぐしゃっ。
 ゴーレムは地面に激突した。すでに原形をとどめていない。
「つーかあんたどこに居たあああああぁぁぁぁぁぁぁ――――」
 ツヴァイが叫んだが、地面にゼットの姿はなかった。いや、多分死んでいると思うんだけど、ちょっと自信が無い。
 というか、本当に居たのだろうか? 集団幻覚でも見たのではないだろうか? なぜなら、他の者で目撃者がいなかったからである。
 うん、とりあえず生き霊ということにしておこう。そのほうが合理的だ。
 報告が勝手に自己完結したが、とりあえず敵主力は黙らせた。モナルコス隊はバグナを撃破し、こちらのフロートシップが大破損傷しただけで人的損耗も最小限ですんだのである。
 敵を尋問したところ、どうやらカオスニアンから情報を買ったということらしかった。ルノリスはおそらくこれで退役ではないかと思うが、小型ながら使えるフロートシップを2隻鹵獲したのである。収支はプラスで済みそうだった。
 さて、迷宮探索の続きである。

●タリスマンはどこ?
 さて、この迷宮を探索する上で重要なアイテムがある。使用説明書にあったタリスマンである。
 前回の探索には、そういう系統のものは存在しなかった。綺麗に整理され掃除も行き届き、閉じるべき場所はしっかり閉じられた、迷宮ですらない建築物。
 こういうのは、基本的に『設備』と言う。
 その設備を使用する鍵がタリスマンなのだが、それの発見は困難を極め――なかった。
「日常的に使用するものなら、入り口の近くとかにしまっているんじゃないかな?」
 とエイジスが発言して5分少々。鍵すらかけられていない隠し戸棚が見つかり、そこに3種類のタリスマンがあったのである(チェッ)。
 一つは水晶、もう一つはルビー、もう一つはサファイアと思われる。ジャイアントの親指ぐらいの大粒で、これだけでかなりの金額になると思われる。台座は無論ブランであった。
「価値インフレを起こしそうなのである」
 希少鉱物のブランを無造作に置いてあるのを見て、シャルグがぼやいた。
 さて、見つけたはいいが取り扱い説明書など無い。そもそもここが工房だとすると、特種な設備以外は説明書きも期待できなかった。なにせ4〜5000年保つ羊皮紙とかがあるなら、それはそれで国宝級の技術である。それに鍛冶職人などの例を挙げるまでもなく、工房の設備というのは頭ではなく身体で覚えてゆくものだ。だいたいの使用説明は口頭で行われていたに違い在るまい。
 ともあれ鍵らしいものを発見して、探索は順当に続けられることになった。

●迷宮探索
 ?部分には4個の独立物体があるが、これはどうやら鉄製の『ジ・アース型ゴーレム』のようだった。ただし魔法の付与前だったのかそれとも魔法が切れたのか、赤さびだらけで完全に朽ちていた。
「想像するに、ここは魔法の付与施設だったのでしょう」
 アルカードが、朽ちた像を調べながら言う。
 過去ジ・アースでは『魔像戦争』とか『邪竜戦争』とか、文明が滅んだ『らしい』激しい戦争があったようだが、この設備はその関連施設のようだった。それが何らかの理由で退去する必要があり、必要なものを持って脱出した。そう考えるのが順当に見える。全てを運び出すには時間が足りなかったが、主要な設備は移転した。おそらくそんなところだろう。
「ゆえに、製作途中ないし、あまり重要ではない魔法武具類が残されている可能性が、高いです」
 アルカードが、付け加えて言う。確かに理にかなっている。
 問題は、?区画の部分だ。
「?区画の蓋の下は、結局部屋で石像がたくさんあったのよね?」
「ええ、《エックスレイビジョン》で見た範囲では、中にモンスターやエレメントの像が並んでいたわ」
 サーシャとアリシアの会話である。
「それはきっと、『本物のモンスターの貯蔵庫』でしょう」
 と、これはアルカード。
「最初の事件は、ヒドラの出現と聞いています。ヒドラは石化できないので、『保存』できません。別の手段で捕獲していたと思われますが、その封印か何かが壊れた。そのためヒドラが出現した。しかしヒドラは、氷河を抜けられなかった。そして暖冬で溶けた氷河から抜けだし、現在に至る――そんなところではないでしょうか?」
 建物の構造から、地下に抜ける選択肢もあったはずだが、それが出来なかったということは、この建物の構造物は地系の魔法では抜けられない構造になっている。そう仮定すれば、大抵の謎は説明がつく。
「ヒドラはモンスターの管理をしていた――のかな?」
 サーシャの問いに、アルカードは「そこまではわかりません」と答えた。
「ただキメラの例もあるとおり、戦闘生物として『創られた』生命体も居ます。ここが『そういう研究をしていた施設』でも、驚くに値はしません」
 もっともな意見である。
 さて、おおよその説明がついたところで、今回の一番のキモである?区画である。罠があるのは重要な何かがある証拠。ほとんどの者がそう思っていた。
 そしてその通りだったのである。シャルグが、横の壁を破壊しようとした渾身の一撃を、弾き返されたのだ。壁には傷一つついていなかった。
「魔法の防御がかけられているようですね」
 ファングが言う。魔法の武具同様、魔法のアイテムは通常より強度が増す。先の探索で破壊できた素材が壊せないのは、材質以外の別の理由があるからだ。
 ゴーレムで罠の突破をガイアスが試みたが、失敗。モナルコスは制御系を焼かれガイアスも負傷した。
 その後試行錯誤の結果、ルビーのタリスマンがその制御を行っていることを突き止め、罠は解除された。調べてみなければ分からないが、この廊下には強力な《ファイヤートラップ》の魔法装置があるらしい。
 そして、?区画である。そこには、2本の石柱が並んで立っていた。台座部分から『何か』で出来ていて、本体は8角形の黒曜石のようなもの。現代人が見たら古いスパコンを想起したかもしれないが、あいにく今回の面々にはそういう人物は居ない。
 ただ、明らかに魔法装置であることは見て取れた。
 少々の調査の結果、罠の存在は感知されなかった。そこでアリシアがスクロールの《リヴィールポテンシャル》を使用してみた。

『メガリス――記憶装置』

 前者は名前、後者は用途である。
「これは、人間の頭脳とかに相当するものみたい」
 アリシアが言う。
「どうやって動かすんです?」
 エイジスが問いかけた。しばらく考えたあと、サーシャが知識の及ぶ範囲で装置の名前や『動け!』などの言葉を羅列した。
 ぎん!
 急に、メガリスに灯が点った。センシティヴなお子様なら引きつけを起こすような輝きが明滅して、女性らしい人工音声が響いてきた。
「これは古いエジプト語です!」
 それに反応したのは、意外にもレインフォルスだった。彼はエジプト人で、故郷の古い言葉に聞き覚えがあったのだ。
 ただし、解読にまでいかない。それにサーシャがすぐに装置を停止させてしまったからだ。
「どうした?」
 シャノンの問いに、サーシャは何かを振り払うように頭を振っていた。
「これ、使えないわ。いきなり情報がだーって流れてきて、意識をもってかれそうになったのよ。多分、正しく使うための手段か別の装置があると思うんだけど‥‥」
 第3層の探索は済んだ。?区の密封区画の調査ができていないが、北西の昇降装置の起動が確認できたので、下層への探索は可能になった。

 ひとまず本調査はここで打ち切り、下層の予備調査が行われる。今回のように概要のマップを製作し、あとは冒険者に託すのだ。
 下層か上層かは分からないが、まだここには何かあるだろう。

【つづく】