【第三次カオス戦争】エイジス砦攻防戦:後
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■シリーズシナリオ
担当:三ノ字俊介
対応レベル:8〜14lv
難易度:難しい
成功報酬:4 G 98 C
参加人数:9人
サポート参加人数:-人
冒険期間:12月27日〜01月01日
リプレイ公開日:2008年01月10日
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●オープニング
●壮大なフェイク
「カオスニアン勢力が西進した」という情報は、メイディア王宮にあわただしく伝わった。すでに各地で戦端が開かれ、個々にはかなりの規模の戦闘が行われている。なぜ「あわただしく」なのかというと、敵の攻勢はラケダイモンに行くと「大勢派」は思っていたからだ。ラケダイモンを陥落させれば、バの国から戦力を呼び込むことが出来る。そうなれば、過去のカオス戦争の再来である。強壮な大国と二正面作戦を展開せざるを得ないメイの国は、苦戦必至であった。
ゆえに宮廷の多くの者はラケダイモンの戦力強化を提唱し、そして実行された。賢王であるステライド王も、それに否を唱えなかった。
それが『アトランティス人の限界』であることは、天界人たちには自明だった。バの国+カオス勢力の連合軍はかつて、メイの国を滅亡させかけたのである。それはすでに、民族的なトラウマと言ってもいい。
しかし、冒険者たちだけが知っていた。敵の首長――もっと言うなら今回の『戦争』をコーディネイトした人物である天下太平左右衛門長上兼嗣――つまり日ノ本一之助の目的が、勝利では無いことを。
『戦争に勝つため』なら、バの国を巻き込んだほうが都合がいい。これは100パーセントの確信を持って言える。戦争はなんだかんだで『数』だからだ。
だが戦争結果に収斂するものが勝利ではない場合、その原則はは当てはまらない。つまり本戦争は、今までのアトランティスが経験したことのない『未知の戦争』をしているのである。
そしてまったく妥協も猶予も無いことに、そのイニシアチブは戦争を仕掛けた側に存在する。目的の設定を先にしたほうが、選択の幅が広いのだ。攻勢か守勢かというだけでも、攻勢側には『攻撃するorしない』という選択肢が発生する。しかし守勢側に『守らない』という選択肢は通常無い。理由は簡単だ。抵抗しなければ生活基盤が無くなるからだ。あとは『逃げる』ぐらいしか選択肢が無いが、守勢というのは通常拠点を持っている。ましてや城塞都市といった『市民』が存在するなら、逃亡は不可能である。
ゆえに、攻撃イニシアチブを取るというのは非常に重要な行為なのだが、あいにくカオス勢力はその卓抜した機動力で移動中の捕捉を困難にさせている。ゆえに後手後手に回る場合が多く、そしてその状況を打破するには『後の先を取る』以外に無い。
つまり敵が襲撃のために集結したところを、全力でたたくしか無いのである。
●エイジス砦攻防戦
メイディアゴーレム工房では、現在急ピッチでゴーレムの修復作業が行なわれていた。
エイジス砦攻防戦、第一ラウンドはバの国の圧勝に終った。
もっとも、あれは強行偵察であり、敵戦力を知るという必要な行為であったという報告が為されており、そしてそれらの報告書の中に書き記されている『金色のカオスゴーレム』については、同時期にメイディアに送られてきた『オルボート時要塞でのカオスゴーケム確認書』とも照らしあわされていたらしい。
そして工房張達は、頭を悩ませていた。
どちらのタイプのカオスゴーレムにも、共通点らしいものは『触手』のみ。
それ以外は外装も色も、サイズもすべてバラバラである。
それゆえ、今回確認された全てのカオスゴーレムは『試作機』であり、動作条件や安定性については、まだまだ実験段階であろうという推測結論が出された。
それをきっかけに、エイジスより戻ってきた部隊のゴーレム修復が急ピッチで行なわれ、いつでも追撃任務に出られるように準備は整っていた。
あとは出撃を待つばかり。
■貸与兵力
・コンゴー級フロートシップ×1
・エルタワ級輸送艦×1
・5型艦×2
・ヴァルキュリア級シルバーゴーレム×2
・オルトロス級カッパーゴーレム×4
・モナルコス級ストーンゴーレム×10(うち5騎はNPC鎧騎士が支援搭乗予定)
・鎧騎士5名(戦闘技術はせいぜい専門)
・兵士100名
・そのほかについては申請による
●リプレイ本文
●作戦決行まで
──エイジス砦前方
エイジス砦奪回作戦。
そう書けば実に恰好がよい。
実状はというと、いかにしてパの戦力を砦から引き離すか、可能な限り無傷で取り返したいところである。
メイディア・ゴーレム工房で修復の終ったゴーレム兵団を搭載し、コンゴー級フロートシップとエルタワ級輸送艦、そして2隻の5型艦は、エイジス手前の森林エリアに到着。
そこに静かに着地すると、今後の作戦について、色々と策を練っていた。
様々な作戦が考えられたなか、野戦部隊と強襲部隊による波状攻撃がもっとも得策と判断。
野戦部隊が、敵の恐獣・ゴーレム・歩兵の陸戦部隊並びに“パワーズ”を誘き出し、その間に強襲部隊が砦への攻略を開始。
その作戦により、全てを取り返す。
一行はさっそく作戦行動を開始したのだが‥‥。
──野戦部隊
森の中。
ゴーレム兵団は五型艦およびエルタワ級輸送艦から降り、最後の調整を行なっていた。
そののち、五型艦には投石用の石を搭載。
敵停船場の上空から落下させるという作戦に出るらしい。
「作戦準備OKです。あとは突撃するだけですね」
エイジス・レーヴァティン(ea9907)が、その場で待機している仲間たちにそう告げる。
「ヴァルキュリア1も準備OK。いつでも出撃できます」
「同じく。ヴァルキュリア2も準備完了だ」
シュバルツ・バルト(eb4155)とクーフス・クディグレフ(eb7992)が風信機でそう連絡を取りあう。
「こちらオルトロス1の伊藤。あと5分まってくれ‥‥」
伊藤登志樹(eb4077)が最後の調整で手間取っている為、その間に他のオルトロス隊も最後の調整を続けている。
そして全てが終った時点で、一行は全員ゴーレムに搭乗、作戦開始となった‥‥。
──ドドドドドドドドドドドドドドドドドッ
地響きが鳴り響く。
メイのゴーレム兵団が森を突き抜け、エイジス砦の正面に出る。
と、正面の扉がゆっくりと開き、内部からバグナ級ゴーレムが6機、ガナ・ベガ級ゴーレムが3機突撃してきた。
「先日の報告では内部のゴーレムは5機だった筈‥‥予測よりも機体が多い。が、なんとかするしかない!!」
そうクーフスが外に向かって叫ぶと同時に、一気に戦闘態勢をとる一同。
そしてそこで激しい白兵戦が始まった。
数の上では圧倒されている為、手数をうまく取れない。
機体による回避を巧みに取り入れつつ、シュバルツのヴァルキュリア1がまずバグナを2機撃破。
クーフスもなんとか1機を破壊し、次の的に照準を定める。
だが、伊藤のオルトロスが数で押され、仲間のオルトロスもガナ・ベガによって2機が撃破されていた。
「計算外だっ‥‥早く精霊砲の援護を頼む」
そう風信機に向かって叫ぶ伊藤だが。
「精霊砲は下方向には打てない。仰角が付けられるのは上に向かってのみだ!! 無茶をいうな!!」
そうコンゴーからの連絡が、メイ・ゴーレム兵団の風信機に入る。
それでもバリスタによる援護射撃が始まったが、それもあまり成果はでていない。
そんな戦いが激化している中、いよいよ強襲部隊の作戦が始まった‥‥。
──正面ゴーレム入り口より
「ニンニン‥‥」
バのガナ・ベガ級が出撃したのち、一瞬の隙を突いて内部に潜入した服部肝臓(eb1388)。
目標は砦内部の搭に備え付けてある精霊砲の破壊。
「第一の搭の上まで向かい、そこを破壊‥‥」
暗闇を駆け抜ける服部。
だが、その動きに素早く反応しているものも存在する。
「生憎と、潜入工作を許すほど、我々は甘くないのでね‥‥」
黒装束に黒マント。
腰に下げているアゾット、その風体は正に『バの忍者』であろう。
──スチャッ
素早く手裏剣を引抜き構える服部。
だが、バの忍者も間合を詰めて、アゾットで斬りつけてくる。
──ズバァァッ
その一撃で深手を受ける服部。
「腕が‥‥いい腕でゴザル‥‥けれど、拙者、ここで殺られる訳にはイカないでゴザルよ‥‥」
素早く物影に隠れようとする服部。
だが、その動きも、完全にトレースされていた。
「深手を追っては、自在に動く事は出来ぬだろう‥‥ここで終りにする」
「それは出来ぬっ!!」
バの忍者の言葉に、素早く身を翻す服部。
だが、それよりも敵の動きが早い。
──ズバァァァァァァッ
横一閃に胴を薙がれる。
それは致命傷。
「せめて、死ぬ前に名を覚えていけ‥‥レン・コウガ‥‥それが、貴様を地獄に送り届ける名前だ‥‥」
その言葉と同時に、服部の首が胴から千切れ飛ぶ‥‥。
●作戦失敗
──エイジス砦手前
五型艦、及びコンゴーは、服部の狼煙をじっと待っていた。
それがあがらなくては、フロートシップは飛び出せない。
エイジス砦の5機の精霊砲、あれを無力化しなくては、身動きが取れないのである‥‥。
「まだですか‥‥まだ狼煙はあがらないですか‥‥」
苛々しつつ、そう叫ぶファング・ダイモス(ea7482)。
その横では、ガルム・ダイモス(ec3467)がじっと座って、刻が来るのを待っている。
『こちらコンゴーのアルフレッドです。服部さんからの連絡はまだですか?』
置いてある風信機から、アルフレッド・ラグナーソン(eb3526)の声が聞こえてくる。
彼も又、強襲部隊の一員として、コンゴーで待機していた。
『同じく、五型艦のルークです。最悪の場合を想定する必要もあるかと‥‥』
五型艦で待機していたルーク・マクレイ(eb3527)からも伝令が入る。
「‥‥最悪の場合、撤退も考える必要がありますか。陸戦騎士達の士気がどこまで持つか‥‥」
そう呟きつつ、服部の狼煙をじっと待つ強襲部隊であった。
──一方、砦正面のゴーレム戦
それはまさに、一瞬の出来事であった。
正面からやってくると想定していたパワーズが、『頭上』から突如飛来し、仲間のオルトロスを捕まえたのである。
そのまま制御胞のハッチを両腕で破壊すると、さらに胴部に隠されていた『二つの副腕』が伸び、内部の鎧騎士を掴んだ。
「所詮、この程度か‥‥泣け、わめけよ‥‥命乞いをしてみろ‥‥」
パワーズの制御胞から、そう呟く声が外に広げられる。
報告にあったパワーズのパイロット・ディアマンテであろう。
「貴様っ。リチャードを離しなさいっ」
そう叫んで突撃してくるシュバルツ。
そしてクーフスはゆっくりと後方に回りこむ。
「それ以上動くな。まだこの鎧騎士は生きている。殺されたくなければ、後ろに下がれっ!!」
ディアマンテのその脅しに、シュバルツとクーフスはゆっくりと後方に下がる。
「た、隊長‥‥私のことは構いません‥‥こいつを‥‥パワーズを倒してください‥‥」
そうオルトロスの制御胞に備えられている風信機から声が聞こえてくる。
『リチャードさん、今助けます!! それまで‥‥』
そう叫びつつ、伊藤もパワーズの横に回りこもうとするが。それをパワーズは右手を向けて制した。
「動くなといっているだろう‥‥ああ、武器を棄ててもらおう。後ろのオルトロスもだ‥‥」
そのディアマンテの言葉に、シュバルツは静かに肯くと、その指示にしたがった‥‥。
──ドサッ‥‥ガラガラッ‥‥
次々と武装解除するメイのゴーレム。
「これでいいでしょう。早くリチャードを‥‥」
その言葉を呟くシュバルツ。
「そうですね‥‥では、その機体から降りてください。全員投降して頂きましょう‥‥」
──ゴギッ‥‥
風信機から、何かが折れる音がする。
『ウアァァァァァァァァァァァァァァァァァッ』
それと同時に、リチャードの絶叫もまた響いてくる。
「き‥‥貴様騎士だろう!! 人質を取ったりして、恥ずかしくはないのかよっ!!」
風信機に向かって、絶叫する伊藤。
「ええ、生憎と、私はオルボートに向かった『ザッフィーロ』のように、聖人君子ではない。騎士道など、戦いには必要ないと考えている‥‥」
そう呟くディアマンテに、伊藤は寒気を覚えた。
『‥‥て‥‥下さい‥‥』
小さい声で、風信機からリチャードの声が聞こえる。
『大丈夫。すぐに助けるから‥‥』
シュバルツがそう風信機に呟く。
『隊長‥‥あとは‥‥任せました‥‥これ以上‥‥メイを‥‥ふりには‥‥さようなら‥‥』
そう呟くリチャードの声。
そして、シュバルツは悟った。
──バンッ!!
瞬時に制御胞のハッチを閉め、いっきにパワーズに向かって突撃する!!
「馬鹿な。隊長っ!! リチャードか‥‥」
そう叫ぶ伊藤。
同じくクーフスも叫んだ。
「一体どうしてっ!!」
その二人の叫びに、シュバルツは一言。
『リチュードは‥‥自害した‥‥我々に迷惑をかけないように‥‥』
素早くパワーズに向かうパルキュリアだが。
──ドサッ
パワーズとヴァルキュリアの中間に投げ棄てられた死体。
それを指さしつつ、ディアマンテが静かに呟く
「先程、中をうろうろしていたネズミの死体です。とっとと持って帰って下さい‥‥それとも、まだやりますか?」
転がっているのは、服部の胴部と頭。
それを見て、さらに歩を進めようとするパルキュリア1だが。
──ガシッ
その動きを、伊藤のオルトロスが背後から制する。
「シュバルツ隊長‥‥作戦は失敗だ‥‥メイディアに戻ろう‥‥」
そう告げられて、ようやく冷静になるシュバルツ。
そのまま服部の遺体を回収すると、ゆっくりと後方に下がる。
──ガバッ!!
その制御胞が開かれ、シュバルツが吐き棄てるように叫ぶ。
「私は絶対に許さない‥‥貴方がした行為を、そして貴方のいる国の全てを‥‥」
そして、一行は後方にいる部隊と合流し、メイディアに引き返した‥‥。
●そして
──メイディア
メイディアに戻り次第、急ぎ服部の死体の甦生が始まった。
腐敗が始まっている可能性を考え、『ピュリファイ』を唱え、腐敗を停止、死体の鮮度を高める。
次に飛ばされた首を『クローニング』で接合。
そしてようやくリカバーを唱えられる。
運良く服部は生き返ったが、大抵のものはその魂は戻ってこない‥‥。
そして、一連の作戦が失敗した事をギルドに報告すると、一行はその場で解散となった。
やり切れない思い。
何かが足りない。
作戦にミスは無かったか?
一つ人をそれぞれが考えつつ、再びエイジスを奪回する作戦が組まれる事を、心から願った‥‥。
──Fin
(代筆:一乃瀬守)