暴れん坊藩主#1−3――ジャパン・箱根

■シリーズシナリオ


担当:三ノ字俊介

対応レベル:2〜6lv

難易度:難しい

成功報酬:2 G 44 C

参加人数:10人

サポート参加人数:1人

冒険期間:11月13日〜11月20日

リプレイ公開日:2004年11月20日

●オープニング

■サブタイトル
『包丁がつないだ親子の絆! 箱根湯本御料理人騒動! 3(多分完結編)』

●ジャパンの事情
 極東の島国、ジャパン。
 表面上は神皇家の統治する封建君主国家だが、その実は超多数の封建領主が乱立し、派閥を作り互いにけん制しあっているプレ戦国時代国家である。
 ジャパンを統一するのは誰か? と問われれば、江戸の源徳、京都の平織、長崎の藤豊あたりが濃厚だろうと答えられる。それ以外の領主たちは、月道を含めた地政学上、いろいろと不利だ。奥州には大国があるが、これもぱっとしない。というより、手を出すタイミングを逸して状況を静観しているような感じである。
 この微妙な緊張をはらんだ十数年の平和の間に、個々の勢力は着実に力を付け、戦争準備を行ってきた。いまや状況は膨らみきった風船のようなもので、何かひと刺激あれば簡単に激発してしまうだろう。それが火山の噴火なのか隕石の激突なのかはわからない。ただ何かの拍子に『それ』が起きたとき、事態は風雲急を告げる、ということになるはずであった。
 とは言っても、そんなことは庶民たちにはあまり関係無い。市民たちは日々の生活に追われており、ちゃんと三度の食事を取るのも大変である。
 そして様々な揉め事は、冒険者ギルドに持ち込まれるのだ。

 箱根はその地勢学上、西国からの防衛の要衝となる。天下の嶮(けん)と呼ばれる箱根山を中心に、関所、陣、城砦が作られ、『駅』と呼ばれる飛脚や早馬を利用した情報伝達手段も確立した。現在の箱根駅伝はその名残である。
 その箱根は、小田原藩11万5千石の支配地で、東海と関東を隔てる境界にもなっている。源徳家康の被支配地の、西端というわけだ。
 藩主は、2代目大久保忠吉(おおくぼ・ただよし)。若干24歳ながらよく箱根を治める、賢主であった。

「今回の依頼は、大野進之助(おおの・しんのすけ)っていうお侍さんから来てるわ」
 そう言ってキセルをくゆらせたのは、冒険者ギルドの女番頭、“緋牡丹お京”こと、烏丸京子(からすま・きょうこ)である。漆を流したような黒髪が艶やかしい妙齢の女性で、背中には二つ名の由来となる牡丹の彫り物があるという話だ。
 京子がキセルを吸いつけ、ひと息吐いた。紫煙が空気に溶けてゆく。
「依頼内容は、さらわれた傘次郎って子供を無事に取り返すこと。傘次郎は箱根湯元の料理人で、嘉兵衛と名乗っていた板前、嘉吉の息子さんなの。西国から父親の足跡を追って、箱根まで来たけなげな子なのよね」
 そしてお京が、さらしに巻かれた一本の包丁を出した。
「これは、嘉吉さんが提供してくれた包丁の『鐡休』。名刀よ。傘次郎をさらったヤツらは、この包丁が目的みたい。詳しくは、以前の報告書を読んで」
 タン!
 京子が、キセルで火箱を叩いた。火球が、灰の中に転がる。
「今回の事件、依頼人の進さんはかなりご立腹の様子よ。自分も出張るようなことを言っていたわ。あなたたちの任務は、傘次郎を必ず無事に取り戻すこと。ついでに悪人どもを懲らしめてやって。以上、よろし?」
 京子が、言った。

●今回の参加者

 ea0563 久遠院 雪夜(28歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea1001 鬼頭 烈(32歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea1286 月 朔耶(17歳・♂・ファイター・エルフ・華仙教大国)
 ea2673 十三代目 九十九屋(31歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea3571 焔雷 紅梓朗(36歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3667 白銀 剣次郎(65歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea4141 鷹波 穂狼(36歳・♀・志士・ジャイアント・ジャパン)
 ea4352 馬籠 瑰琿(47歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea5344 永倉 平九郎(32歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea5986 キサラ・シルフィール(18歳・♀・クレリック・エルフ・ロシア王国)

●サポート参加者

御蔵 沖継(ea3223

●リプレイ本文

暴れん坊藩主#1−3――ジャパン・箱根

■サブタイトル
『包丁がつないだ親子の絆! 箱根湯本御料理人騒動! 3』

●人質の有効活用法
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ひと‐じち【人質】
1.人身を目的物とする担保。約束履行の保証として相手方に引き渡された人。大名の妻子を人質にとる、あるいは質奉公をする類。西洋でも同様の習慣は古くから行われ、18世紀頃までは国際的にも条約実施の保障とされた。
2.身代金をとるなどのために不法に監禁された人。
                                      岩波書店刊 広辞苑第5版より抜粋
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 古来から様々な形で、人質というものは使われてきた。『人質外交』という言葉があるように、それは交渉事の一つの切り札として、常に行われてきたのである。
 当然ながら、源徳家康も近隣の支配諸侯から人質をいくばくか預かっている。また婚姻はある意味重要な人質の交換であり、家の間の結束を固める重要な『政治』なのだ。

 だが、今回の事件は違う。

 徒(いたずら)に金品を接収することを目的とした、卑怯卑劣な行い。その所業に情状酌量の余地など無く、人間の風上にも置けない畜生にも劣る行為である。しかもそれは、包丁一本を目的とした行いなのだ。
 その、件の名刀『鐡休』の包丁を持っていたのは、相野屋の嘉兵衛こと嘉吉。さらわれたのは、その息子である傘次郎だ。
 事ここに至って、嘉吉は自分の命とも言える包丁を手放し、冒険者に託した。それは嘉吉にとって、包丁よりも自分の命よりも、傘次郎が大事だという親心の現われだろう。家を、息子までを捨てて生きようとした料理人の道を、自ら断ったと言っても過言ではない。
 決着は次の満月の夜。場所は箱根湯元、陸道橋。
 相手は『一人で来い』とは言わなかった。これを契機に、関係者を全員始末するつもりなのだろう。

 その、危険な人質交換に携わったのは、次の冒険者たち。

 ジャパン出身。人間のくノ一、久遠院雪夜(ea0563)。
 エキセントリックな性格の少女忍者。料理が好きで、今回は嘉吉への入門を狙っているらしい。いつもの白装束を黒装束に変え、川側の立ち木に潜伏。奇襲を狙う。
 ジャパン出身。人間の浪人、鬼頭烈(ea1001)。
 『刀折り師』として着実に名声を培っているデブ浪人。外見から侮られがちだが実力は一級。《ポイントアタック》や《カウンターアタック》を覚えるとさらに効果的だろう。今回は人質救出のための交渉役に立った。
 華仙教大国出身。エルフのファイター、月朔耶(ea1286)。
 家族の居ない孤独な戦士。親を探してきた傘次郎に心底共感し、なんとかしてやりたいと願っている。その分今回の事件には非常にご立腹のようで、細い指をバキバキ鳴らしてやる気満々である。
 ジャパン出身。人間の忍者、十三代目九十九屋(ea2673)。
 潜んで忍ぶことを信条とする忍者ぶりを発揮して、情報収集や探索に勤しんでいた当人だが、今回は相手にも忍者が居ると知って商人装束を捨て、真面目な忍者として参戦。状況のかく乱を狙う。
 ジャパン出身。人間の浪人、焔雷紅梓朗(ea3571)。
 酒好きで放埓な渡世人。基本的にアウトローでいながら、武芸者としては一級だから始末が悪い。自らの武芸である『佐々木流』を伊達と酔狂と言い放つ、ある意味武士の風上にも置けない男。喧嘩好き。
 ジャパン出身。人間の浪人、白銀剣次郎(ea3667)。
 陸奥流使いの破裏拳ぢぢい。ここのところ地味な出番しか無かったが、いざとなった現在は嬉々として戦闘準備を進めている。基本的に別働隊で、敵の背後からの奇襲を目論んでおり、橋の脇に物影を作ったりと忙しい。年寄りの冷や水にならなければ良いのだが。
 ジャパン出身。ジャイアントの女志士、鷹波穂狼(ea4141)。
 伝法な啖呵を切る勇ましい女志士。嫌味な性分はからっきし見られ無かったが、実は人を試したりするあざとい側面も見せてくれた。嘉吉親子の問題は解決しそうなので、今回は正面堂々悪人をばっさり斬るつもりのようだ。
 ジャパン出身。人間の女浪人、馬籠瑰琿(ea4352)。
 酒なら一度に五升は飲める酒の達人。剣術も達人の域に達しており、技は少ないが地力で勝負するタイプ。倒した敵の数を「一つ‥‥二つ‥‥」と数える奇癖あり。なぜか保存食を20個近く買っている。今回は御蔵沖継の、1名の支援を受けて出陣。
 ロシア王国出身。エルフの女クレリック、キサラ・シルフィール(ea5986)。
 月朔耶とは信頼関係にある、エルフの少女クレリック。人見知りするたちで色々とよそよそしいが、情に厚く優しい性格をしている。甘いお菓子に目が無く、最近ハマっているのはあんころ餅だそうである。

 以上、10名。先回の怪我が祟ったのか、1名欠員が出てしまった。ただ純粋戦闘能力としては、タフな構成になったと言えるだろう。
 一同は出来るだけの準備を行い、敵の指定した時と場所へと向かった。

●月下の戦闘
『傘次郎さんは必ずお助けします。ユエが居れば間違いありません』
 キサラ・シルフィールは出立前に、嘉吉にそう約束した。確約と言っても良い。少しでも嘉吉の心労を、和らげようというのだ。
「キサ、支援頼むな」
 月朔耶が、キサラに向かって言う。キサラは攻撃力をほとんど持っていない。どちらかと言うと、回復魔法による援護を行ったほうがパーティーに貢献できる。
 朔耶とキサラ、そして共に居るのは大野進之助と鬼頭烈、焔雷紅梓朗と鷹波穂狼そして馬籠瑰琿と御蔵沖継の7人だった。久遠院雪夜は川筋の木の上に、十三代目九十九屋は《水遁の術》で川の中に(寒そうだ)。白銀剣次郎は自前で作った物陰に隠れていた。
「人質とって脅してくるなんて、武士のやる事じゃないな‥‥今回は久しぶりに暴れさせてもらいますか。野太刀も買ったことだし‥‥」
 新品の大振りの刀を握って、烈が言う。ちょっと見ると、不安になりそうなぐらいブキミな光景だ。
「ヨォ、あんた。あんたただの侍じゃねェな?」
 焔雷紅梓朗が、進之助に向かって言った。
「なぜそう思う?」
「そりゃあ、腕の立つ奴ぁ物腰である程度わからぁな。どんなお侍さんか知らんけどヨ、命を粗末にしちゃいけねぇと思うぜ。特にカタギさんはヨ」
 紅梓朗が、まともな事を言っている。渡世人はスジにうるさい。逆を言えば、カタギに対しては非常に低姿勢である。
 それに対し、「覚えておこう」と、進之助ははにかんで笑った。
 やがて7人は、問題の陸道橋に着いた。人影は無く、冬の寒風が吹きすさんでいる。
「おかしいな。誰も居ない」
 人の気配はある。おそらく仲間のものと思われるものだ。
 が、すぐに人影は現われた。まず三人。覆面をした身なりと恰幅の良い男と、まげを結わずに髪を後ろに流した料理人、そして用心棒か側近らしい、体格の良い武士である。
「やいやいやい、幼い子供誘拐して言う事聞かせようなんてどういう了見だい! そんなヤツが料理を語るな、百年早いぜ!」
 初めに啖呵を切ったのは、鷹波穂狼だった。
「知ってるか? こんにゃく造りってのはエラく手間ヒマかかるもんなんだぜ? 包丁の持ち主の、嘉吉さんのこんにゃくをいっぺん食べてみるといいや。てめぇらには絶対造れないこんにゃくだぜ。こんにゃく一つまともに造れない料理人が『鐵休』なんて欲しがるな。包丁がが可哀想だぜ。悔しかったら料理で勝負を挑んでこいよ!」
「冒険者風情が何を分かった様な事を。貴様などに用は無い。用があるのは『鐡休』だ」
 側近らしいのが言う。
「子供が先だ」
 烈が言った。
「子供ならばあそこだ」
 料理人――聞き込んでいるところでは、名前は倉持健祐と言うそうだ――が、川の方を指さした。川縁には木が植えられていて、その一本に雪夜が潜んでいるのだが、その対岸の木に何かがぶら下がっていた。
「傘次郎!」
 烈が叫ぶ。雪夜も思わず、声を出しそうになった。
 寒風の中、一重だけの薄着で、傘次郎が吊るされていた。その下には、黒装束の男。
 ――ヤツは!
 朔耶が思う。それはあの晩、傘次郎をさらって行った忍びであった。
「悪いな。一応、雇われの身なんでな。下手な動きをしたら、ガキは地面にまっさかさまだ。悪くすれば、死ぬな」
 悪びれずに、忍びが言った。どうやら人質の使い方を、心得ているようだった。
 ――これじゃあ、手を出せないねぇ‥‥。
 馬籠瑰琿が思う。徳利の栓を抜き、口元で傾けた。中身は般若湯である。もっとも彼女に限って、酒に呑まれることは無い。
 ザッ、ザザザザザザザザザザザザザザッ。
 橋の向こう、そして通りの四方から、侍どもが現れる。その数、約三十余り。
「これぁ、なます斬りにされるな」
 やたらとさっぱりした表情で、紅梓朗が言う。だが自分だけは生き残るような、自信に満ち溢れた台詞だった。
「長岡義次――」
 進之助が、前に出た。その言葉に、覆面の男がいきなりたじろぐ。図星を刺されたようだった。
「小田原藩の御膳番を外される理由がそこもとにあるということに、まだ気づかぬか。料理は格式だけではない。心と覚悟が必要なのだ。そこもとは御膳番という役職に胡坐をかいて、精進を怠った。それをいまさら、名刀を得て何とする? 腕が無ければ、名刀もただのなまくら。いまさら浅ましいであろう!」
「き、貴様何者だ!」
「長岡義次、余の顔を見忘れたか?」
 進之助の言葉に、覆面の男の目が、驚愕に見開かれた。
「まさか――いや、そんなはずはない! ええい、者どもかかれ! 生かして返してはならん!!」
 ずらららっ。
 周囲の家臣たちが、剣を抜く。それにあわせて、冒険者たちも得物を取った。
 進之助が刀を峰に返した瞬間、乱戦が始まった。

●戦い
 いの一番に動いたのは、十三代目九十九屋だった。水面から半身を出して印を組み、忍術を発動させる。どろんといきなり、侍集団の中に巨大なガマガエルが現れた。それが猛然たる勢いで暴れ出す。
 次に動いたのは、雪夜だった。装束や装備を剥ぎ取って身を軽くし、《疾走の術》を発動させて枝の先端まで一気に駆ける。使える最大の助走距離を使って一気に川を跳び越し、そして黒装束の忍者に向かって蹴りを入れた。しかし黒装束はそれを危なげなく受け止めると、傘次郎を吊るすために結わえていた縄を、切った。
「!」
 傘次郎が落ちる。雪夜は蹴った反動を利用してほぼ垂直に跳びあがり、傘次郎を受け止めて――地面に落ちた。
 がこっ!
「あ痛っ!」
 したたかに身体を地面に打ち付けたが、大事には至っていない。しかし、スキだらけである。黒装束にしてみれば、やりたい放題だ。
「おい、そこの悪党、こっちだ!」
 その間に、白銀剣次郎が割って入った。全力疾走で体当たりをかまそうとするが、易々とかわされる。
 ばしっ!
 返す手で振り下ろされた忍者の手裏剣を、剣次郎が素手で受け止めた。《真剣白刃どり》であった。そのまま武器を奪おうとひねったところで、忍者はあっさり武器を手放した。
 ――思い切りの良いやつだ!
 すでに、忍者は逃げにかかっていた。今は逃げる敵より、仲間の大事を心配した方が良い。剣次郎は雪夜と目だけで合図を交わすと、乱戦の中に突っ込んでいった。
「奪(と)った! 手加減しなくていいぞ!」
 朔耶が守勢を、攻勢に切り替えながら言う。もちろん何を奪ったと問えば、傘次郎のことである。その際多少のダメージをこうむったが、キサラの魔法で回復された。
「俺の『黒焔舞』の錆になりてぇ奴ぁどいつだ? 来な、一人残らず殺ってやらぁ!」
 紅梓朗が、吼えた。黒焔舞とは、彼の刀の名前である。自分で付けているあたり、ちょっとお茶目だろう。
「アタシに刀を抜かせた時点で、アンタ等の負けが決まってるんだよ。ほら、四つ!」
 《ダブルアタック》で確実に敵を減らしながら、瑰琿が言った。地力がある分、その攻撃は良く当たった。
 進之助は効率よく敵をノックダウンさせていた。《スタンアタック》である。
 ――無力な商人の時間は終わり‥‥これよりは毒を秘めた影、末なる蟲毒。十三代続きし九十九の毒、誰一人として逃れれぬとお思い下さい。
 黒い笑みを浮かべながら、九十九屋が乱戦に加わった。ガマはさすがに倒されていたが、《疾走の術》を使い防戦に専念して、敵の弾数を減らす。攻め手が少ない分は、攻撃をより多くひきつける事で補おうという作戦だ。
「ば、馬鹿な‥‥」
 やがて地面には、累々たる侍の身体――あるいは屍が、横たわった。側近は烈の野太刀をもろに受け、絶命していた。忍者は逃げていた。
「終わりのようだな」
 紅梓朗が、刀を長岡に突きつけて言う。倉持健祐は穂狼の《アイスコフィン》を受けて凍り付いていた。
 へなへなと、長岡が地にひざをつく。
 決着は、完全についていた。

●その後
 その後、長岡家は閉門を言い渡され、義次は切腹。倉持は斬首に処された。御膳番には異例中の異例として、ただの町人である嘉吉が登用され、嘉吉は穂狼や朔耶の中継ぎもあって親子の縁を復縁した。
「コレで箱根とも、お別れかねぇ‥‥」
 瑰琿が、酒盃を傾けながら言う。
「それにしても、進さんって何者なんだろう?」
 雪夜が言った。
「さあ。ともあれ親子の情。目に見えぬ絆。この場に立ち会えたことで、私はまた人に近づけた気がします。何時までも仲良く安泰に、お過ごし下さることが望みです。では、私はこれにて」
 九十九屋が言った。冒険者たちが、解散してゆく。
 人生という旅は、まだ始まったばかりである。

【完結】