月竜奇談――ジャパン・箱根

■シリーズシナリオ


担当:三ノ字俊介

対応レベル:2〜6lv

難易度:やや難

成功報酬:2 G 4 C

参加人数:9人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月30日〜12月07日

リプレイ公開日:2004年12月11日

●オープニング

●ジャパンの事情
 極東の島国、ジャパン。
 表面上は神皇家の統治する封建君主国家だが、その実は超多数の封建領主が乱立し、派閥を作り互いにけん制しあっているプレ戦国時代国家である。
 ジャパンを統一するのは誰か? と問われれば、江戸の源徳、京都の平織、長崎の藤豊あたりが濃厚だろうと答えられる。それ以外の領主たちは、月道を含めた地政学上、いろいろと不利だ。奥州には大国があるが、これもぱっとしない。というより、手を出すタイミングを逸して状況を静観しているような感じである。
 この微妙な緊張をはらんだ十数年の平和の間に、個々の勢力は着実に力を付け、戦争準備を行ってきた。いまや状況は膨らみきった風船のようなもので、何かひと刺激あれば簡単に激発してしまうだろう。それが火山の噴火なのか隕石の激突なのかはわからない。ただ何かの拍子に『それ』が起きたとき、事態は風雲急を告げる、ということになるはずであった。
 とは言っても、そんなことは庶民たちにはあまり関係無い。市民たちは日々の生活に追われており、ちゃんと三度の食事を取るのも大変である。
 そして様々な揉め事は、冒険者ギルドに持ち込まれるのだ。

 箱根はその地勢学上、西国からの防衛の要衝となる。天下の嶮(けん)と呼ばれる箱根山を中心に、関所、陣、城砦が作られ、『駅』と呼ばれる飛脚や早馬を利用した情報伝達手段も確立した。現在の箱根駅伝はその名残である。
 神聖暦980年ごろ、源徳家康によって東海道が整備されると、湯本から須雲川沿いに元箱根へいたる道が開かれ、湯坂道にかわる本道となった。最近になって小田原から8里、三島から8里の芦ノ湖岸に箱根宿が開設され、元箱根にあった箱根関が宿の東に移転。道筋には杉並木と石畳がととのえられた。箱根神社への参詣も活況をとりもどし、元箱根は門前町として発展した。
 一方、芦之湯と早川沿いの湯本、塔之沢、堂ヶ島、宮ノ下、底倉、木賀は箱根七湯の名で知られるようになり、湯治場として賑わっている。とくに湯本は、唯一東海道沿いにあるため繁栄し、一夜泊まりの客は小田原宿や箱根宿をしのぐほどである。
 その箱根は、小田原藩11万5千石の支配地で、東海と関東を隔てる境界にもなっている。源徳家康の支配地の、西端というわけだ。
 藩主は、2代目大久保忠吉(おおくぼ・ただよし)。若干24歳ながらよく箱根を治める、賢主であった。

「今回の依頼は、小田原の藩主さまから来てるわ」
 そう言ってキセルをくゆらせたのは、冒険者ギルドの女番頭、“緋牡丹お京”こと、烏丸京子(からすま・きょうこ)である。漆を流したような黒髪が艶やかしい妙齢の女性で、背中には二つ名の由来となる牡丹の彫り物があるという話だ。
 京子がキセルを吸いつけ、ひと息吐いた。紫煙が空気に溶けてゆく。
「先日、箱根山に入っていた猟師が、塔之沢の近くで紫色の大蛇を見たっていうのよ。で、ちょっと文献を調べたところ、その大蛇って月精龍(ララディ)らしいのよね」
 ララディと言えば、冒険物語が好きな放浪の翼竜である。バードたちからは信仰に近いものを受ける、一種の精霊だ。性格は温厚で人なつっこいと言われている。ただ『龍』と言われるだけあって、その力は強力である、と言われている。
「あまり精霊とは揉め事を起こしたくないのよね。それで人間側(こっち)としては、穏便にお引取り願おうというわけ。人里に降りられたら、ただじゃ済まないからねぇ」
 まあ、領主や番頭としては、順当な判断であろう。街中にそんなものが降りてきたら、状況はまさしく阿鼻叫喚の巷である。
 タン!
 京子が、キセルで火箱を叩いた。火球が、灰の中に転がる。
「依頼内容は、月精龍をどこかに追い払うこと。出来るだけ穏便にしてちょうだい。以上、よろし?」

●今回の参加者

 ea0221 エレオノール・ブラキリア(22歳・♀・バード・エルフ・ノルマン王国)
 ea0908 アイリス・フリーワークス(18歳・♀・バード・シフール・イギリス王国)
 ea2366 時雨 桜華(35歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea2614 八幡 伊佐治(35歳・♂・僧侶・人間・ジャパン)
 ea4759 零 亞璃紫阿(30歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea5428 死先 無為(32歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea7234 レテ・ルシェイメア(23歳・♀・バード・エルフ・イギリス王国)
 ea7742 ヴィヴィアン・アークエット(26歳・♀・バード・シフール・イギリス王国)
 ea8714 トマス・ウェスト(43歳・♂・僧侶・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

月竜奇談――ジャパン・箱根

●異界のものたちとのおつきあい
 異種族との溝は、意外と深い。
 西欧はまさに人種のるつぼで、人類――つまりヒューマノイドに属する人間、エルフ、パラ、ドワーフ、ジャイアント、シフールなどなど、様々な『人類』が、ジ・アースという世界には暮らしているのは、読者諸賢はすでにご存知の事だろう。このヒューマノイドというのは『話の通じる相手』という意味合いが強く、例えばモンゴルのケンタウロスやジャパンの河童なども、おおむね『人類』に含まれる。希少種族のハーフエルフや、バンパイアと混同されがちなバンパネーラも同様だ。リザードマンといったかなり風貌の違う種族も居るが、わりと友好的な関係を築いていると言っていい。
 が、業深き『人類』は国を四分五裂させて、互いに『覇』を競い合っている。おおむね『人間』主導で組まれた世の中は、刹那的な権力志向からマリアナ海溝水深10920メートルよりも深い理由で戦っている者まで、見事なぐらい戦乱に明け暮れていると言っていいだろう。断言する。人間の歴史は戦いの歴史である。
 かといって、殲滅戦を行うものは(宗教関係以外では)まず居ない。基本的に戦争は経済だ。国を豊かにするために、膨大な戦費と兵站と、そして命を消費し利益を得る。相手を滅ぼしては意味が無いのである。土地と施設(例えば港とか)を接収し、領民を確保しなければ、神聖暦999年の封建社会は成立しないのだ。
 だからといって、やたらめったらと戦って良いわけではない。
 ジ・アースにおける知的種族は、『人類』に限らないからだ。メンタリティの相違の激しい(というより人類をおいしくいただくメインディッシュと考えている)オーガ種はともかく、ドラゴンなどを怒らせたら洒落にならない。まあ、軽くて町一つ。悪ければ国一つ消滅する。『ドラゴンスレイヤー』の名は確かに誉れ高く、騎士などは確かにあこがれるものだ。が、失敗した時の報復は恐ろしい限りである。
 かといって、接触を避けられないのも事実だ。ドラゴンにせよ何にせよ、『生きて存在している』のである。人の版図が拡大の一途を辿っている以上、いつかは触れることになってしまうのは明らかだ。
 ならば、どうするのか?
 結構昔から、人類はそういう『触れ得ざるもの』に対して何らかの行動を起こしてきた。例えばいけにえを海に放り込んだり山に置き去りにしたりといった、よく聞く話である。
 それがより現実的な対処――つまり交渉という手段を取るようになったのはごく最近で、冒険者という存在が世間に認知されるようになってからだ。
 冒険者――彼らは揉め事解決のプロで、どちらかというと荒事専門の何でも屋である。パーティーという戦闘単位で行動し、その智賢と技術、そして時には武力を用いて事件を解決する。
 やがて彼らはギルド化し、様々な事柄について知識と情報を溜め込んで活用するようになってきた。彼らは荒事専門の何でも屋であると同時に、村の古老のように経験深い知識を以って事件を解決する、有能なネゴシエーター(交渉人)に成長したのである。
 ゆえに、今回の月精龍のような事件は、保守的で融通の利かない、ありていに言ってしまえば愚昧な役人が担当するより、冒険者に任せておいたほうが分が良いのだ。その辺を分かっているあたり、小田原藩藩主大久保忠義は、賢主に部類出来るであろう。武士の面子は潰してもなんとかなるが、箱根の臣民に大事があれば小田原が傾くのである。気位ばかり高い、金色のあんが入ったカステラを出入りの商人から受け取るようなバカ(失礼)とは、一味違うようであった。

 さて、そういうわけで今回月精龍との交渉に立った冒険者は、次の者たち。

 ノルマン王国出身。エルフのバード、エレオノール・ブラキリア(ea0221)。
 物静かな人物で、前向きな明るい性格の吟遊詩人。お人よしでややおせっかいだが、殺人的に寝起きが悪く、朝方は騒動が絶えない人物でもある。楽器は使わず自らの喉を生業にしており、今回も精霊に歌を披露しようと考えているようだ。
 イギリス王国出身。シフールのバード、アイリス・フリーワークス(ea0908)。
 まだ子供子供している、羽妖精の吟遊詩人。ま、実際子供なんだけど。とんでもない方向音痴で、こっちで騒動あっちで騒動といった生活を送っている。甘いものが大好きで、最近は大福もちがお気に入りのようである。
 ジャパン出身。人間の浪人、時雨桜華(ea2366)。
 一言で言えば、欧州帰りの苦みばしったいい男。悪く言えば、放浪癖のあるプータロー。腕一本を頼りに用心棒を生業としており、小粋な性格とその行動は、実力と経験に裏打ちされたものである。今回は酒の肴にララディを見に来た。
 ジャパン出身。人間の僧侶、八幡伊佐治(ea2614)。
 脊髄反射で依頼に参加した、あまり物を考えない生臭坊主。女風呂を覗くのは当たり前。女を口説いて何が悪いといった、すっかりカミングアウトしたナマグサぶりである。いっそ潔いと言っていいが、将来絶対に女で破滅するであろう(断言)。
 ジャパン出身。人間の志士、零亞璃紫阿(ea4759)。
 普段は神社で神楽舞を披露している舞師で、その実は結構発言の過激な志士。西洋人との混血のためかプロポーションは抜群に良く、身長もありどちらかというと『お姉さま』系である。怒ると何でも燃やしてしまう奇癖あり。
 ジャパン出身。人間の忍者、死先無為(ea5428)。
 能面のように無表情で、没個性化した外見の忍び。没個性もここまでゆくと立派な個性であるが、行動は興味本位で面倒くさがりやという、立派に廃人している冒険者である。今回は月精龍の冒険譚を期待して参加。
 イギリス王国出身。エルフのバード、レテ・ルシェイメア(ea7234)。
 兄を慕うたおやかなエルフ。銀髪碧眼で物腰柔らかく、いかにもエルフらしい痩身の女性。今はご当地ジャパンの楽器、三味線を愛用しているが、得意な楽器は竪琴だそうである。今回は宴を催すために参加。
 イギリス王国出身。シフールのバード、ヴィヴィアン・アークエット(ea7742)。
 シフールのバードと言えば、何かにつけフランクで色々ともめごとを起こすほうという印象があるが、彼女もあまりそれから外れてはいない。まあ、単なるお祭り大好きっ娘で『こういう』ネタには困らないタイプだから、今回は大活躍である。
 イギリス王国出身。人間のクレリック、トマス・ウェスト(ea8714)。
 薬品による死者蘇生の方法を探索する、マッド・アルケミスト。色々と暗い過去を背負っているようだが、本人の行動にはまったくそれは見て取れない。他人を見下すような態度を取る癖があり、意外と鼻持ちならない人物だが、目的に対しては真摯である。

 以上、9名。約半分がバードという、そうそうたるメンバーだ。

●うえるかむ
『Welcome! To Japan Mr.RARADI』
 墓石や卒塔婆の並ぶ一角がある敷地――ありていに言えば寺社――の目立つところに、その横断幕は掲げられていた。ネタモトはヴィヴィアン・アークエットによるものである。
 冒険者一行はまず小田原藩と折衝し、ララディを迎え入れる場所を確保した。結果、箱根山の中にある山寺『少国寺』が適当であるという結論に達し、冒険者たちはその寺を一時的に接収し、ララディを呼び込む『宴会場』にしたのである。境内は不可思議な装飾で飾り付けられ、酒、食い物、椅子とテーブル、その他様々なものが持ち込まれた。ヴィヴィアンは藩主や役人にも参加してもらうように要請したが、藩主は多忙、役人は怖気づいたのか、それは叶わなかった。
 宴会場の準備と平行して、ララディとの折衝が行われることになった。発見者である猟師、佐助の案内で山に入った冒険者一行は、予定通りの地点で予定通り、ララディに出会った。
 それは、深い紫色のうろこをもつ、幻想的な生物だった。今は折りたたまれている6枚の羽根は白色で、その本体は西洋で見られる怪獣のような『竜』の姿ではなく、蛇のような『龍』であった。
 冒険者が近寄ると、のんびりとあくびをしてララディは目を覚ました。凶悪な顔をしているが間延びした表情をしており、不思議と警戒感は起こらなかった。まあ、戦闘レベルでの話ではあるが。
「何か用かな?」
 ララディが、人語を喋った。深いバリトンの、流暢なジャパン語だった。
「はじめまして、ララディさん。私はエレオノール・ブラキリア。ノルマンの吟遊詩人です。今日は、お迎えにあがりました」
 神に語りかけるような丁寧さで、エレオノールが言った。
「はじめまして、ブラキリア。私の事はレオと呼んでください」
 淑女を扱うような丁寧な口調で、ララディ――レオは言った。
「さっそくなんだけど、レオはこれからどうするの? あ、私はアイリス・フリーワークス。イギリスのバードだよ」
 アイリスが、レオの頭の周りを飛び回りながら言う。
「あてはないんだけどね。でも話しを聞きに、人里へ降りたい気はしている」
 レオが言った。あらかじめ調べてあった、ララディの情報通りの行動だった。
「実はそれについて、お願いがあります。人里へは降りないでいただけませんでしょうか?」
 零亞璃紫阿が言う。亞璃紫阿の言うところでは、現在江戸近辺は『百鬼夜行』の影響で魔物に対する市民の反応が過敏になっており、ララディが降りるのには非常に状況がよくないとの事だった。
 事実ではある。ただ実際の話し、人々は早くも百鬼夜行の衝撃から立ち直っており、ほぼ以前と変わらぬ生活を送っているのが現状だ。だから亞璃紫阿の言葉は、詭弁かもしれない。
「最近この辺りでは化け物が出没することが多く、人々は怯えています。今あなたが人里に下りれば皆驚き、中にはあなたに危害を加える者や、恐怖のあまり死ぬ者が‥‥最悪出るかも知れません。もしその人が面白い冒険譚を知っていたら‥‥困りませんか?」
 レオに向かって、能面のように表情を隠しながら死先無為が言った。百鬼夜行の影響が無くとも、実際は竜の出現で人々が右往左往するのは確かだからである。
「はじめましてレオさん。レテ・ルシェイメアと申します。お会いできて光栄です。実は私どもで、レオさんの逗留地をご用意させていただきました。お気の済むまで語らい、楽しむことの出来る場所です。よろしければ、そちらへおいでいただけませんでしょうか? そこで些少ではありますが、宴などを催させていただきたいと思います。今、仲間の者が準備を進めております」
 レテ・ルシェイメアが、口上を垂れた。
 月精龍レオは、その申し出を快く受けた。一同はレオの背中に乗り、少国寺へと向かったのである。

●れっつ・ぱーてぃー
「それでは! 第1回ララディ・レオちゃん歓迎会第一次会を行いたいと思いまーす!! かんぱーい!!」
 ヴィヴィアンが、宴会の始まりを告げた。
 境内はララディを中心に、なかなかの盛り上がりを見せていた。集まった人数こそ少ないが、般若湯が持ち込まれ楽器が鳴り、食べ物の良いにおいがしている。ララディが何を食うかは誰も知らなかったが、酒を樽ごとぐびりとやっていた。このあたり、ヤマタノオロチ伝説で見られるように、竜とは酒好きであることを確認させてくれる。
「いやー、綺麗どころは揃っているし、酒はあるし楽しいし。来て良かった――!!」
 今回の宴会会場について、同好の士ということで少国寺の住職と交渉に当たった八幡伊佐治が、嬉しそうな声を上げる。苦労の甲斐は、確かにあった。
「酒の肴は、世にも珍し月精竜‥‥こりゃぁ良いねぇ」
 時雨桜華が、酒盃を傾けながら言う。夜気は凍てつくほどだったが、酒がそれを吹き飛ばしてくれた。
「どれ、俺も一つ、欧州での冒険譚を披露してくるか」
 そして、ララディに向かって席を立った。
 トマス・ウェストは一人、静かに飲んでいた。彼だけ別世界に居るのは、彼が今回の事件に対し興味を持っていないからである。彼の目的はただ一つ。ララディから『死者蘇生』の魔法薬の処方に役立つ情報を聞き出すこと。それだけだ。もっとも、それは後に空振りに終わる。ララディが本当に知らないのかどうかはわからないが、少なくともトマスがその代価に見合う冒険譚を持っていなかったというのが本当のところだろう。世の中、時には交渉上手でなくてはならないのである。

 数日、冒険者とララディは、面白おかしく、楽しい時間をすごした。吟遊詩人たちは充分な新しい歌のネタを仕入れ、ララディからも、噂レベルだが政治的な話しに近い現状の世界の様子も聞くことができた。これは後ほど、藩主に伝えられるといいだろう。
 そして冒険者たちは、一つの決定的な話しを聞くことになる。
「ヒヒイロカネノツルギ?」
「ああ、この東国のどこかにあるらしい。日本風に言うのなら『神剣』だな。『アメノムラクモ』や『クモノマイヒメ』といったものと同じだ。その神剣の手がかりを記す壁画のある古墳が、箱根のどこかにあるという話しだ。『水と火の交わる所。九龍の二の頭のあぎとの付け根』という場所にあるらしい」
 レオが言う。
 神剣というのは、洋風に言えば魔法の剣である。ジャパンにはあまり例が無いが、いくつかの神剣伝説は確かにあり、真面目な学者が一生懸命探しているのも確かだ。いくつかは本当に実在し、神皇家はその一つ、『クサナギノツルギ』を所持している。
 ただこれについては諸説あり、華国から輸入したただの金メッキの銅剣という噂もある。
 いずれにせよ、発見できれば『歴史的発見』であると同時に、冒険での実用にも耐えうるであろう。
 ――探してみたい。
 冒険者たちは、確かに思った。それの手がかりがこの箱根にあるというのならば、見つけてみたいと思う。それは冒険者が冒険者たる、存在意義のようなものだ。

 一週間ほど、宴は続いた。満足したララディは冒険者たちに厚く礼を言うと、またどこかへ飛び去っていった。基本的に放浪の精霊なのである。
 そして、新たな冒険が始まる。神剣ヒヒイロカネ探しである。

【つづく】