暴れん坊藩主#3−1――ジャパン・箱根

■シリーズシナリオ


担当:三ノ字俊介

対応レベル:5〜9lv

難易度:やや難

成功報酬:3 G 95 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:02月16日〜02月23日

リプレイ公開日:2005年02月24日

●オープニング

■サブタイトル
『名物菓子が悪を斬る! 箱根湯元湯もち騒動 1』

【湯もち】
 白玉粉と蜜を使った柔らかな餅に、刻んだようかんを散らしたもの。箱根の名物菓子の一つ。一つ一つ竹の皮に包まれていて、一口食べれば口の中にユズの香りが広がる。美味です。マジで。

●当世ジャパン冒険者模様
 ジ・アースの世界は、結構物騒である。
 比較的治安の取れたジャパンでも、その傾向は強い。人間が何かするよりも、ゴブリンやコボルド、オーガと言った鬼種による事件が、後を絶たないからだ。
 それに対し、君主達は一応の警戒網を敷いている。しかし機能しているとは言いがたく、今日もそれら鬼種を含めた、様々な化け物による事件が減ることは無い。
 そんな君主たちが歯噛みしている所で、出番になるのが『冒険者』である。雇われ者で無頼の輩。政道にまつろわぬ彼らは、金で様々な問題を解決する。汚れ仕事も進んで引き受け、様々な揉め事も解決してくれる。縦割り社会構造を持つ役人には出来ない、事態に即応した対処が可能な遊撃部隊ということだ。
 それを束ねるのが、『冒険者ギルド』という組織である。
 冒険者ギルドの役目は、仕事引き受けの窓口、仕事の斡旋、報酬の支払い、報告書の開示などが主に挙げられる。大きな仕事や疑わしい仕事は独自の諜報機関を用いて裏を取り、怪しい仕事は撥(は)ねるのだ。
 基本的に、咎を受けるような仕事は引き受けない。仇討ちの助勢を行うことはあるが、暗殺などの依頼は原則として受けないのが不文律である。報酬の支払いは確実なので、冒険者としても安心して仕事を受けられるというものだ。

「というわけで、今日も『仕事』が入ってるわよん☆」
 と、明るい口調で言いキセルをくゆらせたのは、冒険者ギルドの女番頭、“緋牡丹お京”こと、烏丸京子(からすま・きょうこ)である。漆を流したような黒髪が艶やかしい妙齢の女性で、背中には二つ名の由来となる牡丹の彫り物があるという話だ。
 京子がキセルを吸いつけ、ひと息吐いた。紫煙が空気に溶けてゆく。
「依頼人は、大野進之助(おおの・しんのすけ)っていうお侍さん。立場は貧乏旗本の四男坊っていうから、暇人には違いないんだけど、何にでも首を突っ込むのよね」
 やれやれ、と、お京が苦笑いした。
「依頼内容は、千本(ちもと)屋っていう菓子屋さんの交渉代行。白玉粉を仕入れてほしいんだけど、何か問題があるみたい。具体的には、白玉粉が品不足って話しらしいわ。でも秋の実りの後に品不足っていうのも、妙な話よね」
 京子が、キセルを吸い付けた。
「まあ、値を吊り上げたりとかはあるかもしれないけど、白玉粉の仕入れにわざわざ冒険者を雇うってのも大事よね。きっと荒事とかあるんじゃないかと思うわ。ま、うまく立ち回ってちょうだいな。以上、よろし?」
 京子が言った。

●今回の参加者

 ea0563 久遠院 雪夜(28歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea3667 白銀 剣次郎(65歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea4141 鷹波 穂狼(36歳・♀・志士・ジャイアント・ジャパン)
 ea5979 大宗院 真莉(41歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea5980 大宗院 謙(44歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea6177 ゲレイ・メージ(31歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

暴れん坊藩主#3−1――ジャパン・箱根

■サブタイトル
『名物菓子が悪を斬る! 箱根湯元湯もち騒動 1』

【湯もち】
 白玉粉と蜜を使った柔らかな餅に、刻んだようかんを散らしたもの。箱根の名物菓子の一つ。一つ一つ竹の皮に包まれていて、一口食べれば口の中にユズの香りが広がる。美味です。マジで。

●食べられません勝つまでは
「うう‥‥湯もち食べたいよう」
 久遠院雪夜(ea0563)が、涙目で饅頭をぱくついている。先行して偵察を行ったが、なにやら無頼漢に邪魔されてなんともならなかったのである。
「白玉粉が品不足? 買い占めでもされたのか?」
 イギリス生まれのウィザード、ゲレイ・メージ(ea6177)が、考え深い顔をして言った。依頼書に目を通し、それを傍らに置く。
「普通の買い付けと、どう事情が違うのか、調べる必要がありそうだ」
「まあ、そうなんだけどねぇ」
 そう返したのは、ギルドの番頭、緋牡丹お京こと烏丸京子である。
「まあ、早い話。ごろつきがなんかやっている気配はあるんだけどね」
 と、お京。
「茨城三十郎や猿三についての情報は?」
 と、ゲレイがお京に聞いた。
「冒険者ギルドにも、『裏』があってね」
 京子が、もったいつけるように言う。
「まあ、汚れ仕事ばかり請け負う裏のスジってのがあるのさ。今はあまり言えないけどね。多分そこの人間だと思うわ。今回出張っているかどうかは分からないわよ」
 タン。お京が、火箱を叩いた。それ以上は興味ないようなそぶりで、どこかあさってを向いている。
「千本屋さんに並ぶ菓子屋ってないでしょうか、美しいれでぃごはあっ!!」
 お京の手を取りながら、前歯が第一宇宙速度で成層圏を突破するほど浮いた台詞を真顔でお京に言ったのは、大宗院謙(ea5980)である。後半は第二宇宙速度の鬼っ早なツッコミを入れた大宗院真莉(ea5979)によるものだ。ちなみに謙は、ギルドの壁にめり込んでいる。
「実は、千本屋さん以外の菓子屋さんも粉不足でね。みんな並んで、一生懸命粉を買っているのよ」
 まるでシャブか何かの取引のような会話である。まあ、どっちも白い粉だが。
「その粉屋は?」
 白銀剣次郎(ea3667)が、お京に問うた。
「『松井屋』っていう粉問屋。ただし、ここは悪どいことをやっているワケじゃないわよ。粉は定価。店の周りをごろつきに囲まれて、粉を売れなくされているのよ」
 お京が言う。
「つまり何かい? そのごろつきどもなんとかして粉を仕入れてくれってことかい?」
「あ゛――――――――――っ!!」
 鷹波穂狼(ea4141)が、雪夜の食べている饅頭を横取りして言った。あがったのは雪夜の悲鳴だ。
「ま、そういうこと。よろしくね」

●粉を買いにいきます
「題名だけ見るとぁゃιぃ集団だな。我々は」
 白銀剣次郎が、ぼやくように言った。事態は、彼らが予想したよりもはるかに複雑のようだ。
 千本屋の店主は、貫禄のある男で清平と言った。甘い物が好きそうで、本人は菓子職人である。
 一同は湯もちを振舞われ、舌鼓を打った。剣次郎や鷹波穂狼が、久遠院雪夜に対してセクハラな発言を行ったが、これは記録しないでおく。
 そこで聞いた事情をまとめると、次のようになる。
 ここ2ヶ月ほど、『前橋一家』『倉敷組』『山田組』といった地回りたちが共闘して、粉屋を脅し始めたという。もっとも粉問屋自体はそんなに多くはないから、手回りは行き届いていた。
 目的は、『誰か』による粉の買占めと思われる。地回りたちは粉屋の周囲を固め、粉を売れなくしているのだった。
 もちろん粉を買い付けに来た者は、その暴力で追い払われる。千本屋も手持ちの粉を使いきったときに買いに行ったが、もちろん退けられた。
 それで冒険者に話を持ち込んだ、というわけだ。
「陰謀のにおいがするな‥‥」
 ゲレイ・メージが言う。
「まあ簡単に言えば、そのバカどもをぶっちめて粉を買えばいいんだろ?」
 穂狼が、腕に力こぶを作って言った。まあ、そのとおりなのだが。
「でも、問題の根本的な解決にはなりませんね」
 大宗院真莉が、たおやかに言った。その向こうでは、ボコボコになっている大宗院謙が荷車に横たわっていた。箱根の女の子をナンパして真莉に(後略)。

 やがて粉屋のひとつ、『志津屋』の看板が見えてきた。この状態でいまだに粉を売り続けている、健気な店である。裏城戸を使ったり夜中に売ったり見てくれをごまかしたりと、一生懸命な売りっぷりだったそうだ。だがそれも、限界に来ているらしい。
「なんだ手前ら」
 『いかにもこわもてです』と顔に書いてあるいかつい男たちが、どこから湧いて出たのかとう感じで出てきた。
「出たよ。アブラムシ」
 雪夜が言う。彼女は先刻、追い払われたばかりである。
「にゃにおう〜〜〜〜?」
 端役の悪役のように顔を捻じ曲げて、男の一人が言った。
「《アイスブリザード》」
 ごっふあっ!
 白い暴風が、男達を襲った。真莉が放った、精霊魔法だった。問答無用とはこのことだろう。
「てっ、手前っ! やっちまえ!」


(派手な喧嘩が行われています。しばらくお待ち下さい)

「お、覚えてろぉ〜〜〜〜〜〜」
 顔に青あざをたくさん作って、チンピラたちは逃げていった。
「あー、一人ぐらい捕まえておくんだったかなー」
 穂狼が言った。まあ、過ぎたことは言ってもしょうがない。
「助かりました。ありがとうございます」
 志津屋の旦那が、冒険者たちに礼を言う。
「さっそくだが、粉を分けてもらえんかな」
 剣次郎が言った。
「それはもちろん。出来れば他のお店の方も呼んで下さい」
「時に店主、最近買占めとかの動きは無いか?」
 ゲレイが聞いた。
「実は‥‥元箱根の黒田さまが今回の営業妨害をなんとかしてくださると申してまして、品物の仲買いを申し出ておりました。君主様ならば確かに、地回りなどは相手に出来ません。ですが、黒田様は‥‥」
「言ってみな。力になるぜ」
 謙が、先を促す。
「はい。黒田様は、潤沢な財政状況ではないと聞いています。今回の事件も、どうも仕組まれたような気がして‥‥」

●ぁゃιぃ君主
「つまり、黒田が黒幕らしいのか?」
 依頼人の大野進之助が、おみやげの湯もちを食べながら言った。
「ああ、どうもそんな感じなんだ。もっとも証拠は無い。だけど、無視もできない」
 穂狼が言う。
「で、ちょっと調べてみたけど、黒田って君主は確かに金に困っているみたい。逆を言えば、粉を買うことも出来ないのよ」
 雪夜が言う。
「つまりもう一枚、悪い歯車が噛んでいると考えるべきだな」
 ゲレイが言った。
「うーむ、どうやらもう一仕事頼むことになりそうだな」
 進之助が言う。
「とりあえずご苦労だった。温泉につかってゆっくりしていってくれ」

【つづく】

――――――――――――――――――――――――――――【次回予告】――――――――――――――――――――――――――――
 さてさて、名物菓子の騒動を突付いたら、出てきました色々と。はてさてどんな悪巧みが行われているのか? 次回第2回オープニングは、3月上旬公開予定! お楽しみに!