暴れん坊藩主#3−4――ジャパン・箱根
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■シリーズシナリオ
担当:三ノ字俊介
対応レベル:6〜10lv
難易度:やや難
成功報酬:4 G 46 C
参加人数:10人
サポート参加人数:3人
冒険期間:05月12日〜05月19日
リプレイ公開日:2005年05月23日
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●オープニング
■サブタイトル
『名物菓子が悪を斬る! 箱根湯元湯もち騒動 4』
【湯もち】
白玉粉と蜜を使った柔らかな餅に、刻んだようかんを散らしたもの。箱根の名物菓子の一つ。一つ一つ竹の皮に包まれていて、一口食べれば口の中にユズの香りが広がる。美味です。マジで。
●当世ジャパン冒険者模様
ジ・アースの世界は、結構物騒である。
比較的治安の取れたジャパンでも、その傾向は強い。人間が何かするよりも、ゴブリンやコボルド、オーガと言った鬼種による事件が、後を絶たないからだ。
それに対し、君主達は一応の警戒網を敷いている。しかし機能しているとは言いがたく、今日もそれら鬼種を含めた、様々な化け物による事件が減ることは無い。
そんな君主たちが歯噛みしている所で、出番になるのが『冒険者』である。雇われ者で無頼の輩。政道にまつろわぬ彼らは、金で様々な問題を解決する。汚れ仕事も進んで引き受け、様々な揉め事も解決してくれる。縦割り社会構造を持つ役人には出来ない、事態に即応した対処が可能な遊撃部隊ということだ。
それを束ねるのが、『冒険者ギルド』という組織である。
冒険者ギルドの役目は、仕事引き受けの窓口、仕事の斡旋、報酬の支払い、報告書の開示などが主に挙げられる。大きな仕事や疑わしい仕事は独自の諜報機関を用いて裏を取り、怪しい仕事は撥(は)ねるのだ。
基本的に、咎を受けるような仕事は引き受けない。仇討ちの助勢を行うことはあるが、暗殺などの依頼は原則として受けないのが不文律である。報酬の支払いは確実なので、冒険者としても安心して仕事を受けられるというものだ。
「というわけで、今日も『仕事』が入ってるわよん☆」
と、明るい口調で言いキセルをくゆらせたのは、冒険者ギルドの女番頭、“緋牡丹お京”こと、烏丸京子(からすま・きょうこ)である。漆を流したような黒髪が艶やかしい妙齢の女性で、背中には二つ名の由来となる牡丹の彫り物があるという話だ。
京子がキセルを吸いつけ、ひと息吐いた。紫煙が空気に溶けてゆく。
「依頼人は、大野進之助(おおの・しんのすけ)っていうお侍さん。立場は貧乏旗本の四男坊っていうから、暇人には違いないんだけど、何にでも首を突っ込むのよね」
やれやれ、と、お京が苦笑いした。
「依頼内容は、依頼人である進さんの身辺警護。このところのいろんな調査が仇になって、依頼人に刺客が差し向けられたみたい。もちろんこの事件にかかわった冒険者たちもその中に入るわ」
京子が、キセルを吸い付けた。
「ただし、守ってばかりもいられないの。事件が長引けば長引くほど消耗するのは、こっちよ。みんなには護衛と自己防衛、そして事件の解決を同時に行って欲しいわけ」
京子が言った。難しいことだった。
ただし、一つだけそれを可能にする手段がある。
「そ、お察しの通り、進さんを囮に使って、相手の攻撃を迎え撃つの。危険は危険だけど、他に方法は無さそうだし、進さんもその辺は承諾しているわ。とにかく相手にとどめを刺す。この事に専心してちょうだい。以上、よろし?」
●リプレイ本文
暴れん坊藩主#3−4――ジャパン・箱根
■サブタイトル
『名物菓子が悪を斬る! 箱根湯元湯もち騒動 4』
【湯もち】
白玉粉と蜜を使った柔らかな餅に、刻んだようかんを散らしたもの。箱根の名物菓子の一つ。一つ一つ竹の皮に包まれていて、一口食べれば口の中にユズの香りが広がる。美味です。マジで。
●臭いは元から断て
『臭いは元から断て』。
これは正義の味方にも言える事だが、悪人にも言える。つまり、自分たちの黒い腹を探るやつがいるのならば、その手先を断つのではなく大元――つまり依頼人を消してしまえばいい。
これが役人となると黄金色の鼻薬あたりで解決できるのだが、冒険者の依頼人となると話は多少ややこしくなる。依頼人の目的が『暇つぶし』だったりすると、なおさらだ。金で動かない人間というのは、悪人にとっては厄介なのだ。
だから今回、悪党どもはもう一つの選択肢――つまり暴力による恫喝という手段に出た。
弱腰な一般人相手ならばこれで充分だと思えるが、今回は武家の人間が相手である。一筋縄ではいかないと踏んだ黒幕は、裏社会にその人物についてある依頼を発した。
「それがつまり、俺の暗殺か」
と、他人事のように言ったのは、依頼人の大野“暇人”進之助である。
裏社会とひとくくりで物を言うのは乱暴だが、そういうものはどこの世界にもある。冒険者ギルドにだって、表の顔と裏の顔があるのだ。
だから今回は、冒険者に相当する戦闘集団が来ると踏んでいい。その中にはもちろん、茨木三十郎や猿三と言った手練れも含まれるだろう。
もっとも、茨木三十郎については微妙である。姿を現しわざわざ警告していくというのは、利敵行為に他ならない。
「まあ、あっちの事情はしらねぇけどよぉ」
巴渓(ea0167)が、罠製作用の資材を運びながら言った。
「篭っちまえばこっちの勝ちじゃねえのかな」
渓らが来たのは、湯本郊外にある一軒の家である。周囲を竹やぶに囲まれた、なかなか風情のある家だ。
今回冒険者たちは、敵の攻め手を受け凌ぐことに腐心していた。本丸である進之助を家屋に封じ、周囲に罠を仕掛け防備をめぐらせる。地面には笹の朽ち葉が敷き詰められており、誰かが歩けば音がする。防御陣地としてはうってつけの場所だ。
「そもそも防御陣地というものは――」
ゲレイ・メージ(ea6177)が、何かうんちくを垂れている。口を動かす前に身体を動かせと、白銀剣次郎(ea3667)に突っ込まれていた。
アーウィン・ラグレス(ea0780)、鬼頭烈(ea1001)、鷹波穂狼(ea4141)、大宗院真莉(ea5979)、大宗院謙(ea5980)も、陣地の準備に余念が無い。もっとも彼らは敵が襲撃してきたときの戦闘要員なので、ここで力を振り絞るわけにはいかないが。
ほどなく『陣地』は出来上がった。最終的には、シフールのバード、シュテファーニ・ベルンシュタイン(ea2605)が上空警戒に当たるか形になって完成である。
「一見すると普通の別荘にしか見えんな」
と、殿様のように傍観を決め込んでいた進之助が言った。
「ほら、見ていないで入った入った」
やれやれという顔をして、穂狼が進之助の襟首を掴んで中へ引きずってゆく。
「あ、そこは」
とゲレイが言った瞬間、穂狼と進之助の姿が消えた。
「誰だっ! 玄関の前に落とし穴掘ったやつぁっ!」
穂狼が咆えていた。
●襲撃の夜
風が、がさがさと竹の葉を鳴らしていた。
進之助は、こう言ってはナンだが、あまりこらえ性が無い。なのでここ数日、昼間は箱根を見回り、夜は襲撃に備えるという二重生活を送っている。進之助の中の人は「帰ったら政務がたまって大変だな」とか思っているかもしれないが、冒険者諸賢はそんなことは知らないったら知らないんだもんね。
そんなこんなで、三日目の夜。
『みんな』
突然、屋根裏から声が響いた。女の声である。ここまで名前の出なかった、久遠院雪夜(ea0563)だ。彼女は秋谷屋に張り付いて、その動向を探っていたのだ。そして動きを察知し、《疾走の術》で駆けつけたのである。
「よし、迎え撃とう」
誰あろう、進之助が言った。
「よくやってくれたな。これが終わったら、湯もちをご馳走させてくれ」
『約束だよ!』
そう言うと、雪夜の気配は無くなった。
*
それから1刻ほどして。
庭に複数の気配が現れた。殺気に満ちており、あからさまにやる気満々の態である。
その中の一人が、鎧戸に手をかけた瞬間、機先を制した形で鎧戸が内側から吹き飛ばされた。白銀剣次郎の《ストライクEX》による打撃で、鎧戸がはずれたのだ。
「さて、どいつから叩きのめしてやろうかのう」
指をバキバキと鳴らしながら、不良中年白銀剣次郎が言う。巴渓も飛び出し、これは先手必勝とばかりに相手に飛び掛っていった。
「ヤツはどこだ?」
アーウィン・ラグレスが、茨木三十郎の姿を探して言う。前髪を斬られた手前、借りは返さなくてはならない。
同じ思いをしているのは鬼頭烈も同じで、ヤツの刀を折らねば気が済まぬ状態であった。
鷹波穂狼は早々に乱戦に入り込み、大宗院真莉と大宗院謙はコンビネーションを組んで戦っている。
ゲレイ・メージは状況を見ていたが、動きが膠着すると魔法による援護でそのバランスを、味方に有利になるように崩していた。
「
シュテファーニ・ベルンシュタインは上空から状況を見ていたが、特に手出しするような必要は見られなかったので静観していた。
が。
びゅんと何かが彼女のそばを通り過ぎると、彼女の自慢の羽根が片方、半分ほど切られていた。彼女はそのまま墜落する。
「きゃ――――――――――――!!」
「おっと」
それを、ゲレイが受け止めた。
「ゲレイ後ろ!」
「えっ!」
どす。
ゲレイの背中に、何か冷たい感触が滑り込んできた。そして妙な熱さ。
がっ!
ゲレイが口から血をしぶかせて倒れる。ゲレイの後ろには、猿三が居た。出血で目が回り、ゲレイは失神した。
「《アイスコフィン》!」
大宗院謙の元、大宗院真莉が魔法で相手を凍りつかせる。3人ほどを凍らせて、少々息が上がってきていた。
「ねえちゃん、後ろがお留守だぜ」
ずどん!
強烈な《スタンアタック》が真莉を襲う。息を詰まらせて、真莉は失神した。
「貴様!」
謙が振り向くと、そこには茨木三十郎が居た。そして、向かってくる殺気に思わずのけぞる。
チン。
そういう音がしたときには、謙の前髪が半分ほど持っていかれていた。もし身を引いてなければ、顔面を真っ二つにされていたかもしれない。
「茨木、俺が相手だ」
鬼頭烈が、刀を構えて言う。
「へっ、足りねぇなぁ」
烈が刀を抜こうとしたとたん、烈の刀の柄が無くなった。《ブラインドアタック》《バーストアタック》、そしておそらく《ポイントアタック》。それを組み合わせてきたのだ。烈は刀を抜く間も無く、戦闘不能にされた。
「だりゃあ――――――っ!」
そこに飛び込んできたのは白銀剣次郎である。無手流活殺術、陸奥流の彼に、武器の多寡はあまり関係ない。
しかし、それでも斬られてしまった。夜の夜中に、居合いの軌跡を見切って《真剣白刃どり》を行うのは、無理というものだ。
この場は膠着している。しかし、状況を有利に進めているのは冒険者たちのほうだ。戦局は守りの側に分があった。
「しゃあねぇな――、じゃ、俺、逃げるワ」
と言い、三十郎は逃げ出したのである。そこにドズンと響いてきたのは、シュテファーニの《シャドゥボム》だ。屋敷のほうである。
「「「!!」」」
猿三の存在を忘れていた冒険者は、急いで屋敷に戻った。ゲレイが重傷、シュテファーニが羽根を切られた以外は、特に大きな事故は無かった。
「大丈夫か、みんな」
依頼人の進之助は、やや傷ついた態で言った。猿三は難敵だったらしい。
ともあれ、死者は出なかった。進之助の取り計らいによりゲレイもシュテファーニも癒され、一応、事なきを得た。
●その後
「秋谷屋、つぶれちゃったね」
湯もちをぱくつきながらそう言ったのは、久遠院雪夜である。まあ、その原因はその雪夜なのだが。
あの騒ぎの晩、雪夜はもぬけの空になった秋谷屋で火事騒ぎを起こし、重要書類を持ち出そうとした秋谷屋を昏倒させその書類を進之助に渡したのである。
結果、今回の事件は役人の知るところになり、小田原藩より臨検が入ってめでたく秋谷屋は御用となったわけだ。共犯の地回りや用心棒も一掃され、箱根も少しはきれいになったようである。
そして雪夜は約束どおり、湯もちを進之助からご馳走になっているというわけだ。
一応、めでたしめでたしではある。
しかし冒険者の中には、猿三や三十郎との再戦の意思を見せるものも多い。
またどこかで、悪事と共に彼らはやってくるだろう。
その時が、勝負である。
【おわり】