【戦士達に安らかな眠りを‥】呪われし運命

■シリーズシナリオ


担当:BW

対応レベル:1〜5lv

難易度:難しい

成功報酬:1 G 62 C

参加人数:10人

サポート参加人数:3人

冒険期間:06月08日〜06月15日

リプレイ公開日:2005年06月19日

●オープニング

「ねえ、お母さん。この布、取っちゃダメ?」
 僕が甘えて飛びつくと、お母さんは僕の身体を、ぎゅっと抱きしめてくれた。
「ごめんね、ディオ。でも、どうしても我慢して欲しいの。お願い」
「ほら、お父さんもお母さんも、お前と一緒だから」
 そう言って、お父さんは僕の頭を大きな手で撫でてくれた。
 僕は、生まれた時からずっと、外に出る時は耳を隠すようにさせられた。お父さんとお母さんも、いつもそうしていた。
 最初は何でそんな事をさせられるのか、全然分からなかった。
 ただ、お母さんとお父さんは、少しだけ皆と耳の形が違っていたから、それで隠しているんだって事は分かってた。その時の僕には、それがどんなに大きな問題なのか、よく分からなかったけど‥‥。

 ある日、家の外に出ると、村の子供達が僕に向かって石を投げてきた。すごく危なかった。
「やーい、ハーフ野郎」
「悔しかったら、こっちに来てみろ〜」
 僕は、いつも仲間はずれだった。
 やっぱり、これも何でか分からなかったけど。
 村の子供達からイジめられるのは辛かったけど、でも、僕にはお父さんとお母さんがいてくれたから、不思議と寂しくはなかった。
「おい、あいつの耳、見てやろうぜ」
 一人の子供が気まぐれに言った、この一言が全ての始まりだった。
「やめて! やめてよ!」
「うるさい! じっとしてろ!!」
 力づくで押さえつけられ、僕の耳を隠していた布は剥ぎ取られてしまった。
「あれ、普通じゃん?」
「何だよ、つまんねぇの。行こうぜ」
 僕はちょっとだけ安心した。やっぱり、僕には変なところなんて無いんだって、そう思ったから。
 けど、すぐに僕は知ったんだ。僕が『普通』だって事が、大きな大きな問題だったって事を‥‥。

 その日の夜。村の大人達が何人も集まって僕の家に来た。
「何の用だ?」
 お父さんが話を聞きに外に出た。
 しばらく何かを話し合っている声が聞こえたその後、
「ふざけるな!! あの子は正真正銘、俺達の子供だ!!」
 お父さんの怒鳴る声が聞こえた。僕が知る限り初めての、お父さんの本気で怒った声だった。
 村の人達が慌てて帰った後で、お父さんは僕とお母さんを呼んだ。
「すぐにこの村を出るぞ」
「え? あなた、何があったんですか?」
「ディオの事が村の連中に知られた。このままでは危険だ」
「そんな‥‥!!」
 お父さんとお母さんは急いで荷物をまとめ始めた。僕達三人は、その日のうちに村を逃げ出した。
「‥‥ねえ、どうして村を出ていかなくちゃいけなかったの?」
 その日、僕は初めて、お父さん達が僕に耳を隠すように言った訳を知った。
 何でも、お父さんとお母さんはハーフエルフと呼ばれる種族で、人間の血も流れているけど、人間じゃないエルフの血も流れているんだって。
 だけど、僕はお父さんとお母さんの間に生まれたのに、ハーフエルフじゃなくて、普通の人間なんだって。僕は普通の人間なのに、ハーフエルフの間に生まれたから、他の普通の人達から余計に嫌われちゃうんだって。
「呪われた血が交じり合い、人間を産む。それが人間達にとって、どれだけ不都合な事か‥‥」
 だから、僕はけして人間である事を知られてはいけなかったのだと、お父さんは教えてくれた。
「ねえ、お母さん。お母さん達が呪われてるって、どういう事?」
「私達はね、誰にも望まれずに生まれてきてしまったの。人にも、エルフにも、神様にも‥‥。だから皆、私達の事が嫌いなの‥‥」
 お母さんは、すごく悲しそうな顔で、僕にこう教えてくれた。
「皆じゃないよ。だって、僕は人間だけど、お父さんとお母さんの事、大好きだもん」
「ディオ‥‥」

 それからどれだけの時間が経っただろう‥‥。
「死ね!! 呪われた血族め!!」
「人間の姿をして俺達を惑わす気なんだろう、この悪魔共め!!」
 いつの間にか、僕らは色んな人から追われる身になっていた。誰かに雇われたっていう恐い人達とか‥‥。皆、すごく嫌な目で僕達を睨んだ。
 その人達は、僕が悪魔の子だと言いながら、武器を持って僕達を追いかけて来た。
 僕達はただ、必死で逃げた。
 そんな事がずっと続いたある日、お母さんがおかしくなった。
「離せ! 離せーーー!!」
「やめろ! 落ち着くんだ!」
 目を真っ赤にしたお母さんは、すごく恐かった。それは狂化っていう現象だって、お父さんは教えてくれた。お母さんは今の生活にすごく疲れて、それで、心が壊れかけているんだって‥‥。
「大丈夫だ。明日には、きっと元のお母さんに戻るから‥‥」
 お父さんは、お母さんを眠らせた後でそう言ったけど、でも、そうはならなかった。
 ――ザクッ‥‥ザクッ‥‥!
 その日の夜。妙な音がして、僕はテントの中で目を覚ました。
 その時の事は、今でもはっきりと思いだせる。目を真っ赤にしたお母さんが、笑顔を浮かべながら、寝ているお父さんの身体を何度も短刀で刺している、その光景を‥‥。
「おかあ‥‥さん?」
 呼んでみると、お母さんはこっちを向いた。
 そして、短刀を握ったまま、ゆっくりと僕に近づいてきた。
 ――ザクッ。
 ‥‥何故、こんな事になってしまったのだろう‥‥。
 気がつくと、僕は目の前にいたお母さんの胸をナイフで刺していた。護身用にと、お父さんが持たせてくれたナイフだった。
 何でそんな事をしたのか、自分でも分からなかった。
「‥‥ごめん‥‥ね‥‥ディ‥‥オ」
 最後に、お母さんはそう言って、それっきり動かなくなった。
 ‥‥暗い闇の中、僕はそれから、ずっと一人で泣いていた‥‥。

 数日後、僕はとある村で一人の神父様に命を助けられた。
 僕は、自分の事を何も話さなかったのに、それでも神父様は、色んな学問や魔法を僕にたくさん教えてくれた。神父様は僕を本当の子供のように可愛がってくれた。
 村の人達も、僕に優しくしてくれた。僕はなおさら自分の事を話せなくなった。もし、僕がハーフエルフの子供だと知られたら‥‥。そう思うと、僕は恐かった。
 だから、僕は自然と、村の人達と距離を置くようになっていた。
 それでも、僕は幸せだった。けれど、その幸せも長くは続かなかった。
 ある日、一組の親子が教会を訪れた。旅のハーフエルフの親子だった。
「お願いです。何か、何かこの子に食べ物を‥‥」
「すいませんが、お引き取り下さい」
 神父様はそう言って、親子を教会から追い出した。
「呪われた血族めが‥‥。まったく汚らわしい‥‥」
 親子が立ち去った後で、神父様は呟いた。
 その時、僕は聞こえた気がした。自分の心が壊れる音が‥‥。
 ――ザクッ‥‥ザクッ‥‥!
 僕は、大好きだった神父様をこの手で殺した。
 ‥‥あの日、お母さんがお父さんを殺したみたいに‥‥。
 そして、一つの考えが僕を支配した。
「‥‥人間もエルフも、全て滅んでしまえば、こんな事はなくなるのかな‥‥」



 ――キャメロット、冒険者ギルド。
 その日、受付嬢の焦りの表情は、誰の目から見ても明らかだった。
「ここから徒歩で3日ほど向かった先、とある村が死者の群れに襲われているとの連絡が入りました。村人達の何人かは教会に逃げ込み、そこの神父が守ってくれているそうです。ですが、どこまで持つかは‥‥」
 偶然か必然か、それは先日、死者を操る謎の少年が冒険者達によって目撃された地域の村だった。

●今回の参加者

 ea3761 鳳 蒼龍(41歳・♂・武道家・ジャイアント・華仙教大国)
 ea3800 ユーネル・ランクレイド(48歳・♂・神聖騎士・人間・フランク王国)
 ea5913 リデト・ユリースト(48歳・♂・クレリック・シフール・イギリス王国)
 ea7528 セオフィラス・ディラック(34歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea7850 ヨシュア・グリッペンベルグ(40歳・♂・クレリック・人間・イギリス王国)
 ea8247 ショウゴ・クレナイ(33歳・♂・神聖騎士・人間・フランク王国)
 ea8807 イドラ・エス・ツェペリ(22歳・♀・ファイター・ハーフエルフ・イギリス王国)
 ea9462 霞 遙(31歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 eb0117 ヴルーロウ・ライヴェン(23歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb0161 コバルト・ランスフォールド(34歳・♂・クレリック・ハーフエルフ・イギリス王国)

●サポート参加者

アルファリイ・ウィング(ea2878)/ ルース・エヴァンジェリス(ea7981)/ アディアール・アド(ea8737

●リプレイ本文

 その小さな村は、少年にとって今も大切な場所だった。
 幼き日々を‥‥、両親と過ごした日々を思い出せる場所だったから‥‥。
 たとえ、遠くから見つめる事しかできなくても、そこだけはまだ、傷つけずにいたかった。
 だが、呪われた血の宿命は、そんな少年の些細な想いさえ叶えてはくれなかった。

「これは‥‥酷いのである‥‥」
 リデト・ユリースト(ea5913)が仲間達に先んじて村に辿り着いた時、そこは既にほぼ壊滅状態にあった。
 幾多の村人の死体が転がり、辺りは血の臭いに覆われている。
 入り口付近ではズゥンビ達の姿は見えないが、おそらく教会に逃げ込んでいるという者達以外、生存者は存在しないだろう。
 しばらくすると、すぐに仲間達が追いついてきた。
「既にこれほどまで‥‥」
 目の前に広がる惨状に、セオフィラス・ディラック(ea7528)は悔しさを堪え切れない。もっと自分達が早く辿り着いていればと、そう思わずにはいられなかった。
 だが、いつまでも気にしてはいられない。彼らには、やらなければいけない事がある。
「こっちだ。急ぐぞ」
 以前この村を訪れた事のあるヨシュア・グリッペンベルグ(ea7850)の案内に従って、彼らは教会を目指した。
「‥‥見えたである!」
「はんっ、また大量に出てきやがったもんだな」
 リデトと鳳蒼龍(ea3761)の視界の先。小さな教会と、それを取り囲む十数体のズゥンビの群れ。幸い、まだ教会の扉はズゥンビ達には破られていないようだ。
「行きますよ、スレイ!」
 戦闘馬を駆り、ショウゴ・クレナイ(ea8247)が前に進む。彼の馬は怯む事なく、敵の群れの中へと飛び込んでいく。彼らの進路上にいた死者達は瞬くまに蹴散らされ、教会の扉への道が開く。
「貴方たちは‥‥」
 そこには、かなり疲労した様子の神父が一人と、肩を寄せ合って震える村の女性と子供達の姿があった。
「もう大丈夫だ。後は俺達に任せて、そこでじっとしてろ」
 ユーネル・ランクレイド(ea3800)が声をかけると、恐怖に怯える彼らの目に、小さな光が宿ったように感じられた。
「ディオ、どこにいるのです!」
「どうせその辺に隠れているのだろう! 姿を見せたらどうだ!!」
 教会の周囲を見回しながら、イドラ・エス・ツェペリ(ea8807)とヴルーロウ・ライヴェン(eb0117)は一人の少年の姿を探す。幾度となく彼らの前に姿を現した、あの少年を。
「いい加減しつこいね、君達も‥‥」
 声を発したのは、目の前の死者の群れの中にいる一体のズゥンビ。
「やはり、お前の仕業か‥‥何故こんな真似を‥‥」
 コバルト・ランスフォールド(eb0161)が訊ねると、かのズゥンビはある魔法を唱えた。その姿は、以前彼らが見た少年‥‥ディオの姿に変じる。
 その時だった。冒険者達の後ろにいた神父が口を開いたのは。
「‥‥彼は悪魔だったのです。神に呪われた者同士が生んだ、我ら人の姿をした魔物。滅ぼさねば‥‥。でなければ、いつか我ら人の中に、呪われた汚らわしき血が継がれるやも‥‥」
 目を血走らせ、半ば狂乱したかのような表情で、神父はそう言った。
「やはり、そういう事か‥‥」
 以前の調査で得た情報で、コバルトを始め冒険者達はディオがどんな存在であるかの見当をつけていた。今、その予想は、ほぼ確信に変わった。
「ですが、同情はできません‥‥。彼は、既にそれだけの事をしているのですから‥‥」
 霞遙(ea9462)の手によって、邪悪なる者の力を抑える鳴弦の弓の音色が響く。
 それが、あらためて戦いの始まりを告げる音となった。

「ディオ‥‥あなたは‥‥私達に近い存在だったのですね!!」
「‥‥だが、今や貴様はただの罪人だ。俺達は、貴様を倒す事を躊躇ったりはしない!!」
 それぞれの手に剣を携え、イドラとヴルーロウはディオへと駆け出す。
「どんな不幸な事があったにしろ、他者の幸せを奪った罪‥‥償ってもらいますよ!!」
 愛馬の背を降り、ショウゴもまた魔法の詠唱を開始する。
「俺はな、てめぇに同情して『気持ちもわかる』なんて解ったことは言わねぇ。だがな、この世に生きるには超えちゃならねえ一線ってもんがある。どんなに世界に不満を持っていたとしてもな!」
「てめえ一人が不幸だと思うなよ? おめぇくらいに不幸しょってる奴ぁゴマンといるんだ」
 迫り来るズゥンビ達と戦いながら、幾度もその攻撃を受け傷つきながら、それでも、蒼龍とユーネルの二人も、言葉を連ねた。
「どんな理由があろうと、死者を冒涜する権利なんて、誰にもないんである!」
 リデトもその神聖魔方を駆使し、彼らは一丸となって、ヴルーロウ達がディオに辿り着くための突破口を開く。
「何も分かっていないくせに‥‥知ったような事を言わないでよ!!」
 初めて見せる、怒りを露にしたディオの姿。
「本当なら、この村だけは血で汚したくなかった‥‥。けど、僕が生きてると知って、こいつらはまた‥‥。知らないだろ? ここにいるズゥンビ達は皆、そこにいる神父に雇われて、それで僕を探し出して殺そうとしてたんだよ。僕の父さんも母さんも、すごく苦しんで死んだ。もう、たくさんなんだよ、こんな事は!!」
 ズゥンビ達に守られながら、ディオは魔法を放つ。
「ヴルー!!」
「構うな! 行け、イドラ!!」
 黒き神の暗黒の魔法『ダークネス』により、ヴルーロウの視界が塞がれる。
「人もエルフも、皆、僕を殺しに来たんだよ? 僕は、何も悪い事なんてしていなかったのに‥‥、それなのに‥‥!!」
「くっ!」
 ショウゴの放った『ブラックホーリー』が、ディオの放った『ブラックホーリー』とぶつかり、相殺する。
「それなのに‥‥黙って殺されてれば良かったって、そう言うの!?」

 神父と村人達を守るため、ヨシュア、セオフィラス、コバルトの三人は、教会の入り口で彼らの盾となってズゥンビ達と戦っていた。
「この村がした事の‥‥その結果がこれだ。感情を拭う事は難しいだろうが、それでも今ある現実はこの村が招いた事だ。忘れないで欲しい。そして、知って貰いたい。ハーフエルフでありながら、人を守るために戦っている者もいるという事を‥‥」
 ヨシュアは戦う仲間達の姿を見せ、必死に訴えた。だが‥‥、
「何を言っているのですか、貴方は!? 分かっているのですか、彼らは神に望まれずに生まれて来た存在なのですよ!」
「そうよ、あんな気味の悪い連中、私達は認めないわ!」
「私達を守るですって? そうやって恩を着せて、何をしようと企んでいるか分からないじゃない!」
 ヨシュアの願いも虚しく、神父や村人から返ってきたのは、辛辣な言葉ばかり‥‥。
「‥‥いい加減にしろ。お前達のした事がどれだけの者が巻き込まれたと思っているんだ? 他者に石を投げるなら、投げ返される覚悟が必要だと知れ。これ以上何か言うようなら、俺にも考えがあるぞ」
 その身に受けた傷を癒すために、後方に下がって来たセオフィラスの言葉。有無を言わさぬ気迫に、村人達はその口を閉じた。
「大丈夫か‥‥」
「なに、俺達にしてみれば、今更な話だ」
 ヨシュアの言葉に表情を変えるでもなく、コバルトはただそう答えた。
 その視線の先には、ディオと戦う仲間達の姿がある。
「己の責は己に返る‥‥ただ、それだけの事だ‥‥」
 言い聞かせ、攻撃魔法の詠唱に入る。
 同情できる相手ではないとそう分かっていても、それでも彼は、ディオに対して何か思うところもあったのかもしれない。

「はああっ!」
「まだまだ‥‥負けないのです!」
 その全身に幾つもの傷を負いながらも、必死にディオに一撃を届かせようと剣を振るう、イドラとヴルーロウ。
「‥‥私には、あの少年の気持ちは分かりません。ですが、あの少年の行いは、見逃してはならないという事は分かります」
「ええ。だからこそ‥‥」
 遙の言葉に頷いて、ショウゴは剣を構え直す。
「だからこそ、今ここで、私達の手で決着をつけます!!」
 長く続く戦いの中、冒険者達の必死の攻撃によって、ディオを囲うズゥンビ達の包囲が崩れたその一瞬に、ショウゴは一気に駆け出した。
「な‥‥くっ!」
 すぐにディオも反応を見せるが、ショウゴの剣はすでに彼の目の前。高速詠唱が間に合うか、それとも‥‥。
「は‥‥はは‥‥」
 ――ドサッ。
 乾いた笑いを浮かべながら、その胸に刺さった剣をほんの一瞬見つめ、地に倒れたのはディオだった。
「ま‥‥けた‥‥の‥‥?」
「ええ。もう、あなたは‥‥」
 ショウゴのその言葉を最後に聞いて、彼‥‥ディオは、静かに眠りについた。

 ――その後。
「死は‥‥誰にも平等なんである。ディオ、安らかに眠ると良いんである」
 リデトが祈りを捧げるその場所に、小さな墓が立てられていた。村からは離れた、けれど、村の景色が見える小さな丘の上。
「ごめんなさい‥‥ごめんなさい‥‥ごめ‥‥」
「イドラ‥‥」
 溢れる涙を止められず、ずっと泣き続けるイドラを、ヴルーロウはその腕に、力強く抱きしめる。
「俺は‥‥俺はイドラを愛した事、愛している事を絶対に後悔しない! たとえ、これからどんな事があっても‥‥!!」
 そうして、彼らはしばらくの間、ディオの死を悼んだ。もしディオが、これほど自分を想ってくれる者達ともっと早くに出会っていれば、今回のような悲劇は防げたのであろうか‥‥。

 ――後日。冒険者ギルド。
 依頼の報告を終え、冒険者達はそれぞれに解散となった。
 ただ、蒼龍とユーネルの二人は肩を並べながら酒場へと繰り出した。どうやら、ユーネルの奢りで一杯やるらしい。
 そんな中、最後にギルドに残ったコバルトは、一つの頼みをギルドにした。
「少年の捜索依頼が出ていた村があっただろう。どうか、あの村の人々に伝えて欲しい。彼は今、遠い場所で平和に暮らしている‥‥と」
 それ以上の事は伝える必要はないとだけ言い残し、コバルトもまた、ギルドを後にした。

●ピンナップ

ヴルーロウ・ライヴェン(eb0117


PCツインピンナップ
Illusted by 水芝鈴薫