【戦士達に安らかな眠りを‥‥】隠された謎
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■シリーズシナリオ
担当:BW
対応レベル:1〜5lv
難易度:やや難
成功報酬:5
参加人数:10人
サポート参加人数:-人
冒険期間:05月08日〜05月16日
リプレイ公開日:2005年05月18日
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●オープニング
その日、ギルドに一つの依頼の報告書が届けられた。内容は、先日とある地方で噂になったズゥンビ達の乗った馬車を、冒険者達が撃退したというもの。
一人の女性係員が、内容の確認を始める。
「これは‥‥」
報告書の途中まで目を通したところで、何故か彼女は足早にギルドの奥へと引っ込み、何かを探し始める。
しばらくして戻ってきた彼女が手にしていたのは、数ヶ月前の日付が記された別の依頼の報告書だった。
――数日後。
「皆さんにお願いしたい事があります」
その係員は一つの報告書を手に、冒険者達に声をかけた。
何事だろうかと心配する冒険者達に、その報告書に記された内容が説明され始める。
ある村の教会で神父が一人殺された。また、彼の下で修行をしていた少年が一人、神父の殺された日から行方不明になっている。
村の者達は神父を殺した犯人の一刻も早い捕縛を望むと共に、行方不明となった少年の安否を心配している。
どうか、冒険者の手で調査して欲しい。
‥‥以上が、この報告書の依頼内容にあたる部分。
そして、ここから先が報告内容に関する部分。
村人達の依頼を受け、冒険者達は問題の教会にやって来た。
神父の遺体は既に村人達の手によって埋葬されていたが、その時の状況に関して話を聞く事はできた。
神父は礼拝堂の祭壇の前で殺されていたらしい。
遺体には、比較的小さい刃物で何度も体を刺されたらしい痕があったそうだ。
だが不思議な事に、神父が犯人と争ったらしい形跡はほとんどなかったとの事。
その日、誰か怪しい人影を目撃していないかを村人達に聞いてみたところ、一組の旅の親子連れが教会を訪れたらしい事が分かった。
しかしながら、その親子はあまり村に長居はせず、村に着いたその日のうちに、近くの別の村へと再び旅立っていったそうだ。
行方不明になったという少年についても調査をしてみた。
年は十二、三歳といったところの、銀色の髪と淡い碧色の瞳をした人間の少年だったらしい。
神父が村人達に話したところによると、少年は神聖魔法に関して類稀な才能があり、それでいて大変な努力家でもあったとの事。
少年と神父の師弟関係は、二年ほど前、少年が一人で村に迷い込んで、行き倒れていたところを神父が保護したのが始まりだそうだ。
彼の本当の家族や生まれた場所については、詳しい事を知る者は誰もいない。
何故か少年はその事について固く口を閉ざし、恩義のある神父にさえ、けして話そうとはしなかったそうだ。
村に着いてから数日の間、依頼を受けた冒険者達は神父を殺害した犯人と少年の行方を知るための手掛かりを必死に探したが、結局それらしい物は何も見つける事ができなかった。
依頼は失敗に終わってしまった。
「この時に行方不明になったという少年の特徴‥‥。先日の報告書にあった謎の少年の特徴と一致する点が多いとは思いませんか?」
集まった冒険者達に、係員は言う。
「この依頼は失敗に終わっており、犯人も少年もいまだに見つかっていません。また、その後も数回に渡ってギルドから調査のための冒険者を派遣しましたが進展はなく、村人達も事件の事を忘れ始め、真相は闇の中へ消えようとしています」
そこまで話したところで、係員はこう続ける。
「調べてみてはもらえませんか?」
●リプレイ本文
眠れる死者を呼び覚まし、その力をもって、幾多の命を奪った謎の少年。
彼は何故、殺戮を繰り返したのか‥‥。
彼との戦いの中で、冒険者の誰もが疑問を感じていた。
そして、闇に覆われた少年の過去を知るために、彼らは動き出す‥‥。
「本当に何の進展も無いのです‥‥」
「時間が経てば経つほど、事件の日の記憶は人々の中から消えていってしまいますからね‥‥」
キャメロットに残ったイドラ・エス・ツェペリ(ea8807)と霞遙(ea9462)の調査は、少し難航していた。
まず、二人は少年の捜索に関する資料や報告書を徹底的に調べ直す事にしたものの、最初の依頼報告書と、それ以降に出された同様の依頼の報告書の内容に大差がない事を確認しただけだった。
彼女達の傍らでは、コバルト・ランスフォールド(eb0161)が別件の依頼報告書の束を読み返している。
コバルトが調べ直しているのは、彼ら自身が今までに少年と関わってきた依頼の時の事。
「俺達が関わった一連の事件は、ほぼ同一地域に集中している‥‥。襲われる村に何か法則性があったのかもしれない‥‥」
その考えを頼りに、以前の事件で襲撃を受けた村々の位置をギルドにある地図で確かめ、それを写し取ったものに線を引いていく。
一通り線を引き終えた地図を見て、コバルトはある事に気づく。
「妙だな‥‥。基本的には、俺達がグドルと最初に戦った森から始まって、そこから近い村を順に襲っているように見える。だが‥‥」
地図に浮かんだ不自然な点。襲われた村同士の線の距離を比べてみると、わざと襲撃を避けたかのように見える村が二つあった。
一つは、少年の捜索依頼が出たという村。もう一つは、自分達が骸骨戦士と交戦した時の森に最も近い村。
何か理由があるのかもしれないと、コバルトは再度、資料を調べなおし始めた。
「やはり、報告書の内容だけでは限界がありますね‥‥」
疲れた様子の遙。ジャパンの出身であり、イギリスの言語にまだそれほど慣れていない彼女にとって、多くの文字と睨み合うこの作業は少々辛いものがあった。
「それでも、一応、今まで知らなかった事の中で分かった事もあるのです。あの少年の名前、『ディオ』というのですよ」
イドラの見つけたそれが、行方不明の少年の名前だった。
――その頃、他の冒険者達は‥‥。
「何でもいいんだ。覚えてる事があったら、教えてくれねぇか?」
「ふむ‥‥。そう言われてものぅ‥‥」
「神父が使ってた魔法とか、そういうのは分からないであるか?」
「ケガの治療なんかはしてもらった事はあるが、それ以外は知らんのぅ‥‥」
ユーネル・ランクレイド(ea3800)、リデト・ユリースト(ea5913)、セオフィラス・ディラック(ea7528)の三人は、共に神父とディオの人となりや、村人や周囲との関係などを重点的に調べていた。
「まあ、こんな村では、争い事など滅多に起こる事はなさそうだしな‥‥」
周囲の様子を見ながら、セオフィラスが呟く。
彼の目に映るのは仲良く遊び回る子供達と、農作業に精を出す大人達。中には狩りや釣りに出かけている者もいるらしいが、それにしてものどかな村だ。とても殺人だのアンデットだのと深い関りがあるような村には見えない。
「殺されたのはロデ神父。それなりに年のいった爺さんで、黒派らしく物事に厳しい面もあったが、性格は比較的温厚。村人達との付き合いもそれなりにあり、神父として周りから尊敬されこそすれ、誰かに恨まれるような事はまず無い‥‥か」
「ロデ神父とディオ少年とは非常に良い師弟関係であったようで、周囲の目から見ても、少年は神父を実の父親のように慕い、教会の仕事の手伝いも自ら進んで行っていたらしいであるな。ただ、妙に人見知りするらしく、村に来たばかりの頃は、神父の影に隠れてばかりいたそうである」
「おまけに、容姿から判断して二人とも人間だった事は、ほぼ間違いない‥‥か。まあ、魔法については仕方あるまい。癒しと恵みだけが神の奇跡ではない。破壊や死者を支配するため力を、必要なく周囲に見せるような事はするまい」
それぞれが得た情報を纏めてみるが、これといって特別な情報が得られたようには感じられない。
村の別の場所では、鳳蒼龍(ea3761)が子供達に対象を絞って聞き込みをしていた。同世代の子供達であれば、ディオとの交流もそれなりにあっただろうと考えての事だ。
だが、返ってきたのは意外な答えだった。
「分からないよ。ボク達、全然ディオと一緒に遊んだ事ないもん」
「おいおい、そりゃいったい何でだ? 何か喧嘩でもして‥‥」
「違うよ。ボク達も何度もディオを誘って遊ぼうとしたけど、ディオは勉強があるからとか、教会のお手伝いがあるからとかで、ちっとも遊んでくれなかったんだ」
「神父さんがディオに遊んできなさいって言った事もあるらしいんだけど、ディオはどうしても嫌だって言ったらしいよ。きっと、ボク達の事が嫌いだったんだ」
「何でだ?」
「知らないよ。でも、きっとそうだよ」
子供達の話を聞きながら、蒼龍には様々な疑問が浮かんでいた。
(「理由も無く避けたりするか? いや、あの生意気なガキなら、こいつらを心の中で馬鹿にして‥‥。いや、待てよ‥‥。もしかしたら‥‥」)
人が他人との接触を避ける理由として、考えられる事はいくつかある。
果たして、ディオが子供達との接触を避けた理由とは、何だったのだろうか‥‥。
さらに、その一方。
ショウゴ・クレナイ(ea8247)とヴルーロウ・ライヴェン(eb0117)の二人は、村でとある聞き込みを行っていた。
彼らが主に調査の対象としたのは、神父殺害事件のあった当日、村を訪れたという謎の親子連れについてだ。
「‥‥というわけで、ギルドからの依頼を受けて再調査をしているのですが、どなたか親子の行き先を知っている方はおられませんか?」
羽根付き帽子を深く被って何とか耳の先を隠し、普段とは別人のように丁寧な口調でヴルーロウが訊ねる。
(「不本意ではあるが、高貴且つ清廉なるハーフエルフだとわかると、下賎な者達は萎縮してしまうからな。ここは我慢してやるとしよう」)
と、彼なりに考えての事。少なくとも、この依頼の間は『今日からカタギに!』と心に誓っているらしい。
「行き先は分からないけど、一応、私はその親子が村に来た時に顔を見たよ。母親と小さな息子って感じだったねぇ」
そう教えてくれたのは、村の女性。続けてショウゴが訊ねる。
「あの、その親子に何か特徴や、変わった事はありませんでしたか?」
「変わった特徴といってもねぇ‥‥。ああ、そう言えば、顔をはっきり見てないせいか、人間だったかエルフだったかは今ひとつ分からなかったねぇ。なにせ、いい天気だってのに、フードを被ってて‥‥あ、丁度そっちの人みたいな感じだったよ」
「‥‥え?」
そう言って村の女性が指差したのは、不自然なくらい帽子を深々と被っているヴルーロウ。
(「ハーフエルフ‥‥? まさか‥‥」)
何か重大な事に近づいた気がして、ショウゴは確認のために、ある物を荷物の中から取り出した。
ギルドに頼んで分けてもらった羊皮紙に、自分が見たディオと思われる少年の似顔絵を書いたものだ。
「一応、お聞きしますが、いなくなった少年というのは、この少年に間違いないでしょうか? 人間の、この少年に」
若干、『人間の』という部分を強調した上で、ショウゴはその絵を見せる。
「ああ、間違いないよ。ディオ君だ‥‥って、何でアンタ達があの子の顔を知ってるんだい?」
「あ、いえ。お話を聞いた上で、こういう顔の少年ではないかと‥‥」
少年の安否を心配している村人達に、まさか彼が死人を操って暴れまわっているなどとは二人とも言えず、何とかブルーロウがごまかす。
(「少年は間違いなく人間‥‥。では、訪れたハーフエルフの親子はいったい‥‥?」)
ヨシュア・グリッペンベルグ(ea7850)は一人、近隣の村々の教会を中心に聞き込みを行っていた。冒険者としてではなく、聖職者として行動した方が情報を得やすいのではないかとの判断だ。
「今から二年と数ヶ月前、銀色の髪と淡い碧色の瞳をした人間の少年が一人、行方不明になったという話を聞いた事はないだろうか?」
時間の許す限りに‥‥と、幾つもの教会を訪れ、同じ質問を繰り返す。
二日目の調査の終わり‥‥キャメロットへ戻らなければいけない時間が刻一刻と迫ってくる。
この間、キャメロットではイドラと遙、例の村ではユーネル、リデト、コバルト、蒼龍のそれぞれが教会をあたり、各自の調べ方でディオに関する手掛かりを得ようとしていたが、いずれも収穫は無かった。
「知っています‥‥が、それを聞いてどうなさるおつもりですか?」
ある村の教会に辿り着いた時、そこの神父がこう答えた。
情報への期待を胸に、事情を説明し始めるヨシュア。
だが‥‥。
「‥‥申し訳ありませんが、お引取り願います」
「な‥‥!?」
話を聞こうとしたヨシュアを突き放すかのように、神父は逃げるかのように教会の門を閉じた。
これにはさすがにヨシュアも何かあると感じ、閉じられた門の外から必死に訴える。
「その少年は今、何か大変な事をしようとしているんだ。放っておくわけにはいかない。彼を止めるために、知っている事があるなら、どうか話してくれ。でなければ、また多くの罪のない命が失われる。それは、慈悲深き神の御心に背く行為ではないのか?」
言葉を連ね、神父の心が動くのを待つ。
束の間の静寂の後、閉じられた扉の向こうから、たった一言だけ、神父は言葉を返した。
「‥‥もし人間が呪われた存在であると知った時、貴方はそれを認める事ができますか?」
「何‥‥?」
「私から伝えられる事は、それだけです」
再びもたらされる静寂。
しばらくして、ヨシュアは仕方なくその場を離れ、キャメロットへと戻った。
後日。コバルトが調べていた、少年に襲われていないもう一つの村がここであった事を、彼は知る。