【狩人の宴】見えない敵
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■シリーズシナリオ
担当:BW
対応レベル:2〜6lv
難易度:やや難
成功報酬:1 G 87 C
参加人数:8人
サポート参加人数:2人
冒険期間:07月19日〜07月25日
リプレイ公開日:2005年07月29日
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●オープニング
――某日、キャメロット。
酒場グローリーハンドの一角に、一人の若い男がいた。右手に持ったエールを一気に飲み干すと、苛立ちを抑えつつボソリと呟く。
「畜生が‥‥。どうして俺様がこんな目に‥‥」
苛立ちのそもそもの原因は、今日、彼が冒険者ギルドを訪れた時の事だ。壁に貼り出された依頼の一つに目を止め、その依頼を引き受けたいと申し出たところ、ギルドの係員から参加を断られてしまった。
いや、依頼によっては冒険者の実力や実績を考慮し、その参加を遠慮してもらうといった例は珍しくはない。だが、彼が断られた理由はそういったものではなかった。
「あんなふざけた学校のせいで‥‥」
彼はかつて、ある学校に通っていた。『フォレストオブローズ』と呼ばれるその学校は、ケンブリッジの中でも最も規律の厳しいとされる学び舎であり、そこで騎士として相応しくないと判断された者は退学者の記録に名を刻まれ、ここイギリスにおいて、二度と騎士としての道を歩む事を許されない。
そう。彼も又、その退学者の一人だった。それが直接の原因だとギルドは語らなかったが‥‥。
「何が、今回の依頼はギルドの信頼に関わるから‥‥だ。はっ! そんなに俺様が信用ならねぇかってんだ、あぁ‥‥?」
そんな彼の肩に、後ろから一人の少年が声をかけた。
「‥‥ん?」
男は少年に見覚えは無かった。だが、ある物が少年の素性の一端を教えてくれていた。それは、少年の服装。見覚えのある、その服装は‥‥。
「どう、お兄さん? ちょっと面白い話があるんだけど、乗らない?」
そう言った少年の服は‥‥ケンブリッジ魔法学校の生徒のものだった。
――同日、キャメロット郊外のとある廃屋にて。
「おや、お仕事ですか?」
そう言って、鎧を着込んだハーフエルフの男‥‥シャグマは声をかけた。
「ああ、下手を打った連中が出やがってな。まあ、どういうわけか詰め所じゃねえ場所に連れて行かれてて、警備も少ないらしい。今回は俺一人で十分だろうってよ」
応えたのは背中に大剣を背負った男‥‥ジェイラム。
「それは良かった。では、私は私で別の仕事をさせて貰うとしましょう」
「別の仕事だぁ?」
「ええ。そろそろ例の準備を始めて欲しいと言われていましてね」
意味深な言葉を残し、シャグマはその場を去った。だが、ジェイラムにはシャグマのその言葉で意味が通じたらしい。立ち去ったシャグマの後ろ姿を見ながら、彼は笑みを浮かべ、こう言った。
「そうか。いよいよってワケだ。面白くなってきたじゃねぇか」
――その頃。キャメロット冒険者ギルド。
「前に調査を頼んだあの屋敷なんだが、どうもまだ人がいるみたいなんだ」
訪れていたのは、ついこの前、廃屋となった屋敷に逃げ込んだ怪しい男達の調査を依頼した、あの村の者達だった。
「まさか。確か自警団が一人残らず捕らえていったはずでは?」
実際には少し違う。冒険者達が捕まえた賊らしき者達を、その動きを知った自警団が横から出てきて連れて行ってしまったのだ。前に脱走したという、噂に聞いた『ケンブリッジ狩り』の者達ではないかとの意見もあったが、当の本人達の顔を知る冒険者達はいなかったため、確認はできないままだ。
「屋敷の方もすぐ立ち入り禁止になって、自警団が徹底して調査したとか?」
「そう言われても、いるものはいるんだ。こっちも気味が悪いが、もしかしたら魔物か何かかもしれないし、そう考えれば下手に中に入る事もできない。調べてみてはもらえんか?」
その後、しばらくして冒険者達に以前と同じ屋敷の再調査が依頼される事となった。
●リプレイ本文
少しずつ、彼らは着実に準備を進めていた。
平和に日々を過ごす人々に紛れ、蠢く者達。
‥‥彼らが動き出すその時は、確実に迫ってきていた‥‥。
「悪ぃ‥‥。下手を打っちまった‥‥」
冒険出発初日。キャメロットを出てしばらくすると、四方津六都(ea2639)は自分が保存食を買い忘れていた事に気づく。いや、よく見れば寝具や照明などの類も一切持ってきていないようだ。この時期なら野宿でも凌げると考えての事かもしれないが、お世辞にも誉められた事ではないのは確かだ。
「全く仕方のない‥‥受け取れ」
「はい、良かったらこれ食べて。気にしなくていいよ。私もね、前に他の人に迷惑かけちゃった事があって‥‥あ、あの時はありがとうね、紫苑」
ケヴィン・グレイヴ(ea8773)とフィアッセ・クリステラ(ea7174)の二人は、多めに用意してきた食料を六都に分けてあげた。最近、どうにもこの手の基本的な準備を忘れる者が多いせいか、二人とも非常に準備が良い。プロの冒険者とはどういうものかの良い手本だろう。
「ううん、困った時はお互い様だから〜」
お礼を言われた太郎丸紫苑(ea0616)は、屈託の無い笑顔でフィアッセに返した。
そんなやり取りの傍らでは、今回もトリア・サテッレウス(ea1716)が今までの経緯をメアリー・ブレシドバージン(ea8944)に伝えている。
「‥‥と、まあ、こんな事がありまして‥‥」
「何だか、複雑そうねぇ‥‥」
二人の交わしていた会話の内容は、普通ならあまりの面倒さに苦汁の表情の一つも浮かべるところなのだが、普段からそうであるせいか平然と笑顔で話す二人。
ちなみに依頼を受けたのは八名だが、キャメロットより出発したのはこの六名。依頼を受けた冒険者のうち、エイス・カルトヘーゲル(ea1143)はどうしても調査したい事があるとキャメロットに残った。ギルドからは、成果の内容によっては報酬を払えないとも言われたが、本人は覚悟の上らしい。もう一人、ニック・ウォルフ(ea2767)は少しギルドに残って話を聞いてから、一日遅れで村に向かうとの事だった。
――キャメロットを経って三日目。
目的の村に辿りつくと、冒険者達は早速それぞれに行動を開始した。
そして、しばらくした後に集まった情報を交換し始めた。
最初は六都。
「村の連中が館に誰かいるんじゃねぇかと思った理由だが、ある夜、館のある方角から妙な物音が村の方に聞こえてきたのが始まりで、気になった村の人間が館に少し近づいてみたところ、やっぱり館の中の方から物音が聞こえたらしい」
なお、それ以上の事は村人も気味悪がって調べておらず、そこを自分達のような冒険者に調べて欲しくて依頼を出したとの事だった。
続いてはトリア。
「私の方は、村に変わった様子がなかったかも調べてみましたが、特にありませんでした。自警団はとっくに村を離れているようですし、館の方は、物音はしても人が出入りしているという感じではないらしいです」
加えていうなら、本当に中に誰かいるなら、それは前回の事件の時からずっと館の中に閉じこもりっきりという事になるだろうとの事だった。
「やっぱりそうなのかしら? 今日はずっと館の方を監視していたのだけれど、何も見えなかったわ」
メアリーが言う。フィアッセやケヴィンも館の周辺調査と監視にあたっていたが結果は同じだった。
フィアッセが言うには、
「確かに時々変な物音は聞こえてきたんだけど、人の足音とか、そういうのは聞こえなかったの」
‥‥との事。
「やっぱり、実際に中に入って調べてみた方がいいかな〜」
「‥‥だろうな。物音はしても敵の姿が確認できないのでは、自警団の連中を呼ぶにも呼べん。何かの間違いであれば、いい笑い者だ」
紫苑の言葉に、ケヴィンは頷いて応えた。
――翌日。
「皆には悪いかもしれないけど‥‥」
そう言って、村に着いてすぐに、ニックは皆と別行動を取ったまま自警団の元へと向かった。
今までに色々とあったせいか、冒険者の中では自警団に対しては色々と考えが分かれているようで、場合によってはいっそ村に自警団が出張ってきてくれた方が都合が良いのではと考える者もいたし、関わり合いになる事自体を避けたいと考える者もいた。
さて、ニックの行動は吉と出るか、凶と出るか‥‥。
――しばらくして。
結局、ニックが来ることは無かったため、村に来ていた他の冒険者達はそのままの人数で屋敷への潜入調査を試みる事にした。
「あら? 鍵は掛かっていないのね。ちょっと無用心だけど‥‥まあ、手間が省けて良かったかも」
やや拍子抜けした様子のメアリー。
「誰もいないはずの館に何かの気配、か。暑い夏にはぴったりなホラーな話だけど‥‥どうもそう楽しいことにはならないような気がするね」
冗談まじりにフィアッセが言った。
‥‥が、口は災いの元とは良く言ったもので‥‥。
「うわあっ!? 本当にでたっーーーー!!!」
注意深く館の中の捜索を始めてみれば、ある一室で突然に姿を現して冒険者達を出迎えたのはアンデットモンスター、レイス。青白い炎の姿をしたそれは怨霊とも言われ、通常の武器は一切通じないという厄介な魔物である。銀の武器を駿馬に積んだままで持ってきていないフィアッセにしてみれば、逃げるしかない。
「物音の招待はこいつか‥‥。だが、確か前の調査の時は‥‥」
ケヴィンがある事を思い出す。そう、前回の調査の時、仲間の冒険者がアンデットを探査する魔法を使った時には何の反応もなかったはず。となれば、このレイスは‥‥。
「新しく住み着いたという事ですか‥‥」
短槍にオーラパワーを付与すると、トリアは素早く前に出る。
だが、素早く動き回るレイスに中々攻撃を届かせる事ができない。
「ボクも手を貸しますよ〜!!」
トリアのすぐ後ろから、紫苑が発動させた呪文は行動抑制の魔法、アグラベイション。
残念ながら二度ほど抵抗されてしまったが、三回目で何とかその動きを抑える事に成功する。その隙をついて、一気にトリアが距離を詰めた。
「はあっ!!」
彼の渾身の一撃を受け、一気に弱々しくなるレイスの炎。危険を悟ったのか、今度は逃げ出そうとする。
「‥‥させるか!」
素早く銀の矢を放つケヴィン。それは狙い違わずレイスを射抜き、かの霊は消滅した。
――しばらくして。
別の部屋で、六都はある物を見つける。
「おい、見つけたぜ」
「これは‥‥。誰がこんな事を‥‥」
メアリーの視線の先。そこにあったのは、腐敗の始まった若い男の死体だった。
――その頃。
ニックは一人、身を隠して自警団の詰め所を見張っていた。
彼はギルドに残った時、幾つかの確認を取っていた。
ニックは、もし地方の自警団がその立場を悪用していた場合、騎士団に動いて貰えるかどうかをギルドに訊ねていた。答えから言えば、それはイエスだが、そこまでいくには大きな問題がある。自警団が何かの罪を犯していたとして、それをハッキリと照明する証拠がなければ騎士団は動けない。
今回の場合で言えば、ニックが自身で死亡したとされているはずの賊の囚われている場所を見つけ出し、それを自警団の虚言の証拠として騎士団に伝える事が必要となる。
――数時間後。
(「‥‥あれ?」)
何とか睡魔に抗っていた状態のニックがいよいよ眠りにつきかけた時、自警団の詰め所から三人の男が出てきた。ニックは彼らの後を追った。
「やれやれ、いつまでこんな事を続けるんだ」
「全くだ。俺もさっさと殺しちまって良いと思うんだがなぁ。例の屋敷に隠れて残ってたので、もう殺しちまったのが一人いるって話だろ。何を躊躇ってるんだか」
そう語る男達の会話がニックには聞こえてきた。
(「そうか、ここなんだ‥‥」)
やっと掴んだ証拠。その場を静かに立ち去ろうとするニック。
だが‥‥。
「ぐああぁーーーーー!!!」
突如、背中から聞こえたのは先の自警団の男の悲鳴。
(「え‥‥!?」)
振り向いた視線の先に見たのは、一人の大剣を持った男が自警団の男達をあっと言う間に虐殺する姿。その姿には見覚えがあった。
(「あれは‥‥確かジェイラム‥‥!?」)
「‥‥まだ誰かいやがるのか?」
そのジェイラムの視線は、間違いなくニックの方を向いていた。
(「‥‥気づかれた!?」)
以前の戦いの際で、相手の実力は見ている。ニックは全力で森の中を駆けた。
――ガチャ‥‥。
追ってくる足音は聞こえなかった。
だが、ニックは遠く背後で、牢の破られる音を聞いた気がした。
――さらにその一方、キャメロットでは。
「くっそ、あんな学校さえ無ければ‥‥!」
愚痴を垂れながら、気の抜けたエールを啜るエイスの姿があった。
(「俺は読みを間違えたのだろうか‥‥」)
相手がケンブリッジ狩りに関わっているなら、こうして毎日人の集まる場所に顔を出していれば接触できるのではないかと睨んだのだが、これが中々上手くいかない。
そういう相手がいたとして、もしかしたら、本当にケンブリッジにいた事のある者かどうかを見分ける術を持っているのかもしれない。そうであれば、エイスがここに残ったのは無駄だったか‥‥。
「なあ、兄ちゃん。ケンブリッジに何か恨みでもあるのかい?」
声をかけて来たのは、一人の若い男。
(「‥‥かかったか?」)
内心で笑みを浮かべつつ、冷静にエイスは対処する。
「ああ。あんな学校、潰れてしまえばいいと思っている」
少し悩んだ様子だったが、男はこう続けた。
「そうかい。本当は、絶対に他人には話すなって言われてるんだけどよ、まあ、兄ちゃんには教えてやろうか」
そうして、エイスはある話をその男から聞く事になる。
「‥‥何だと」
彼は知る。自分達の知らない場所で動き出していた計画を。
‥‥ケンブリッジ襲撃計画を‥‥。