【魔狩競い】前編
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■シリーズシナリオ担当：BW 対応レベル：6〜10ｌｖ 難易度：難しい 成功報酬：4 G 32 C 参加人数：6人 サポート参加人数：-人 冒険期間：09月11日〜09月18日 リプレイ公開日：2007年09月20日 |
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●オープニング
キエフ冒険者ギルド。様々な問題を抱えた人々が、冒険者達の力を借りるべく集まってくる場所。
開拓のすすむロシアにあって、それは主に魔物や蛮族との争いに関するものが主であるが、時には少し違った依頼も舞い込む。
その日、冒険者ギルドに張り出されたのは新たな依頼書‥‥というより、広告に近い部類のものだった。
「魔物を狩り、互いの腕を競う大会を開く‥‥我こそはという者は、集うべし‥‥って、何だこれは？」
「どこぞの貴族の暇つぶしか？」
「いや、一応は開拓事業に関連した形のものらしい。まあ、競技会の形をとっているのは見世物にするためかもしれんがな」
依頼書を興味深そうに読み込む者もいれば、自分には合わないと判断し早々に離れる者、友人達と意見を交わし始める者など、それぞれに反応を見せる。
大会の規則は次のようになっている。
◆期間は三日間。その間に参加者は指定地域で魔物を狩り、その成果を競う。
◆魔物には個別の点数をつけるものとし、倒した魔物が強いほど高い得点を得られる。
◆参加は個人でも、複数人で組んだ形でも良い。ただし、三人で組めば得られる点は三分の一というように、得点は人数に応じて割られたものになる。なお、連れているペットも人数に数えるものとする。
◆他の参加者に対しての攻撃・妨害行為となるものは原則として禁止。例外として、特定条件において狂化したハーフエルフの仲間を鎮めるために魔法で眠らせるなどの処置は可とする。
◆指定地域に他者より先行しての事前調査、情報収集などは禁止とする。
◆今大会は競技を二度行い、その得点の合計によって優劣を決定する。二回目の競技の際、競技地域は変更となり、その場所と競技期間については、一回目の競技の終了後、一週間以内に通知する。
◆一回目と二回目の競技ごとに、参加者は組む相手を変更してもよい。
◆得点のカウントは、運営側に雇われた監視役のシフール達が行ってくれる。
◆競技中における死亡はその場で棄権扱いとなるが、それまでに獲得した点数は次回に引き継がれる。他の理由で自主的に途中棄権した場合も同様。遺体の回収は運営側で行うが、蘇生費用は各自の負担。
◆優勝者には賞品と賞金が与えられる。該当者が複数の場合は、その人数に応じた内容になる。
第一回目の競技地域は、広い森林とその周辺の山岳地域。
森にはオークやコボルトを始めとしたオーガ種が多く、少数ではあるが、再生能力を持つトロルのような強敵もいる。少し山を登ればホワイトイーグルやグリフォンといった大物に出くわす可能性もあるらしい。
こういった競技は一般的に余り好まれるものではないかもしれないが、冒険者達にとっては多くの者と知恵や技術を競える機会であり、様々な魔物を相手に新たな戦術や連携を模索する良い機会でもある。
果たして、どのような冒険者達が集まるのだろうか。
●今回の参加者
eb0516 ケイト・フォーミル（35歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・イギリス王国）eb5288 アシュレイ・クルースニク（32歳・♂・神聖騎士・ハーフエルフ・ロシア王国）
eb7699 奥羽 晶（32歳・♀・浪人・パラ・ジャパン）
ec0843 雀尾 嵐淡（39歳・♂・僧侶・人間・ジャパン）
ec0854 ルイーザ・ベルディーニ（32歳・♀・ファイター・ハーフエルフ・ビザンチン帝国）
ec2055 イオタ・ファーレンハイト（33歳・♂・ナイト・人間・ロシア王国）
●リプレイ本文
ざわめきが森を包み、木々を揺らす。その地に潜む魔を屠るは、狩人となりし冒険者。
薄闇に包まれた深い森の中。三人の冒険者が、コボルトの群れと相対していた。
「なかなかの数だな。十分に気をつけてかかるぞ」
「ああ。とはいえ、これくらいの数がいてくれた方が訓練には丁度良い」
魔者達に囲まれながら、臆することなく剣を構えるのは黒の法衣を羽織った二人の騎士、ケイト・フォーミル（eb0516）とイオタ・ファーレンハイト（ec2055）。そして二人の傍に、もう一人。
「またまた、イオ太ってば強がっちゃってー。まあ、仲間だからにゃー。危なくなったら『うわ〜ん、助けてルイーザ様〜』とでも言えば助けてあげるから安心するにゃー」
「絶対に言わないからな！！」
「ムキになっちゃってー。でも、それだけ元気なら大丈夫そうだにゃー」
そう言って、イオタをからかって笑うのは、ルイーザ・ベルディーニ（ec0854）。この状況の中で冗談を言う余裕があるのも大したものだが、実際、彼女はそれだけの力の持ち主でもある。
笑うルイーザを見て、隙ありとばかりにニ匹のコボルトが同時に彼女へと攻撃をしかけた。だが、ルイーザは軽く身体を捻ると、そのコボルト達の剣を容易くかわしてみせる。
「遅い、遅い。そんなんじゃ、あたしには通用しないにゃー」
言葉の次に振るわれるのは、二つの剣。強い魔力を秘めた名剣クルテインと、天をも凍えさせると思えるほど冷たい輝きを持つ小太刀。斬撃と共に、青の外套が風のように魔物達の脇を抜ければ、暗き森に咲くのは鮮血の華。
「こちらも負けてはいられないな」
先のルイーザの動きを真似るかのように、ケイトも目の前のコボルトの一撃を紙一重で避け、すかさず反撃を繰り出す。動きの軽やかさではルイーザに劣るも、一撃の鋭さであればケイトはその一段上をいく。その剣技にコボルト達は全く対応できず、次々と地に倒れていく。
「くっ、俺だって」
対峙するコボルトの剣を盾で受け、イオタは着実に一匹ずつ仕留めていく。ルイーザ達のような機敏な体捌きはできないが、その剣の腕はけして彼女達に劣るものではない。その手で受け止めた敵の攻撃の一つ一つが、新たな自分の糧となる。今の彼には、それで十分だった。
――ズンッ！！
ホブゴブリンの体が宙を舞い、激しく大地へと叩きつけられる。
「さあ、次に俺に投げ飛ばされたい奴は誰だ？」
周囲の魔物達を挑発するように、おいでおいでと手招きする女の名は、奥羽晶（eb7699）。その小さく細いパラの身体で、一回りも大きな魔物達を投げ飛ばす様は実に見事であった。
たった一人で戦うことを選んだ彼女の用いた戦術は、森の中に張り巡らせた多数の罠。彼女の誘いを受けた魔物達は、次々に縄や落とし穴に引っかかり、そこで埋まれた隙を晶は見逃さず、ある者は急所を突かれて気を失い、またある者は延ばされた手に掴まれ、豪快に放り投げられていく。目印となる布を巻いたその場所に魔物を誘き寄せ、攻撃と逃走を何度も繰り返しながら、一匹ずつ魔物を仕留めていった。
「修行のためとは言え、徒党を組まずに一人で戦う俺‥‥カッコイイ」
流れる汗を拭い、周囲に転がる魔物達を見下ろして、晶は自分の技に少し酔いしれつつ、確かな手応えを感じていた。
魔法の発動を示す一瞬の輝き。その光が消えた時、オーガ戦士は一瞬にしてその命を絶たれていた。
「神よ、その御助力に感謝致します」
「魔物とは言え、せめて、その魂には神の救いがあらんことを‥‥」
白と黒。相反する二つの性質を持つ神聖魔法の使い手同士でありながら、共に手を組んで今回の大会に参加したのは、アシュレイ・クルースニク（eb5288）と雀尾嵐淡（ec0843）。
生まれた国さえも違う二人がその力を合わせているのは、それが互いに大きな利益をもたらすことに繋がったからだ。
森の中を探し回って見つけた新たな大物はオーク戦士。
「アシュレイさん、お願いします」
「ええ、任せて下さい」
見つけた獲物を狩るべく、槌を手にアシュレイへと迫る魔物。だが、魔物は気付かない。今、獲物となっているのは自分の方だということに。
槌の振り下ろされようとした、その時。発動するのは白き神の呪縛、コアギュレイト。
「かかりました。後はお任せします」
「はい！」
身動きを封じられたオーク戦士を今度は嵐淡の魔法が襲う。それは、本来であれば傷を癒し、命を救う魔法。だが、今この場においては絶望への誘いとなる魔法、メタボリズム。
「これで、終わりです」
そして、メタボリズムの魔法によって、全ての魔力を奪われた魔物へと告げられるのは、死の宣告、デス。
『――！？』
断末魔の声を上げることもなく、今、アシュレイを攻撃しようとした、そのままの姿で、オーク戦士は完全にその命を終えていた。
これが二人の戦術。複数の魔法を組み合わせることにより、どのような強い力を持つ魔物も容易く葬る、死神の連鎖。その効果は絶大で、大物を次々と狩る二人の成果は他を圧倒するものだった。
日が暮れるのは、あっと言う間だ。
そんな初日の夜の一幕。
「ほらほら、なに恥ずかしがってるにゃー。遠慮なくあたしのテントに入ればいいにゃー。ケイトちんもグッスリ眠ってるし、三人で一緒に仲良くするにゃー」
「いや、俺は見張りをだな‥‥って、引っ張るな！？ いや、未婚の女性と寝所を共にするのは‥‥うあっ！？ ちょ‥‥やめ‥‥！？」
その後、青年がゆっくりと眠れたのかどうかは、皆さんの想像にお任せすることにしよう。
こうした出来事を見ていると、この多くの魔物を相手にした競技大会は、冒険者にとって簡単なもののように思えるかもしれない。だが、現実はそう甘くはない。それは、二日目に起こった。
「‥‥こ‥‥んな‥‥ところで‥‥」
二日目の昼頃のこと。瀕死状態となった晶は、それ以上の競技参加は無理と判断し、途中棄権した。そのまま彼女は大会運営側の手を借り、怪我の治療のため、急ぎ近隣の教会へと運ばれて行った。
彼女がこの事態を招いた原因は主に二つ。一つは自身の怪我の回復手段が皆無であったこと。一人で複数の魔物を相手にする以上、それが格下相手であろうと、多かれ少なかれ傷を負わされることはある。小さな傷が積み重なった結果、少しずつ動きは鈍り、さらに大きな怪我を負うことになった。
そして、もう一つの原因は、夜にあった。それは、十分な休息‥‥睡眠の問題。晶は今回、未開拓地域の中で野宿となるにも関わらず、寝袋やテントといった野営のための道具を持ってきておらず、それが原因で体力の低下を招き、本来の実力を発揮できない状態に陥っていた。
こうした結果を招いた点を見れば、彼女にとっての最大の敵は魔物ではなく、冒険者としての基礎を疎かにした、彼女自身であったと言えるかもしれない。
途中棄権者が出ると言う残念な事態が起こったものの、その後、他の冒険者達は順調に魔物達との戦いを重ね、成果を伸ばしていった。
そして三日目の夜が過ぎ、一回目の競技が終了となった時点での中間成績が知らされることになる。
晴れて中間成績一位となったのは、ケイト、ルイーザ、イオタの三名。
「うむ。頑張ったかいがあったな」
「上手くいったみたいだにゃー。次もこの調子で行くにゃー」
「取りあえずは何とかなったか‥‥」
コボルトやオークの群れなどとの集団戦闘はもちろん、トロルのような厄介な魔物にも三人の力を合わせ、その再生能力を上回るダメージを与えることで見事に撃破していた。広く様々な魔物に対応し、地道に成果を上げていった結果である。点数は各自二十九点。
なお点数の基準だが、一部を上げておくと、コボルトが一点、オークが三点、オーガ戦士が八点、トロルが十点といった風になっている。
次いで中間成績が高かったのは、意外にも途中棄権した晶であった。
「くっ‥‥この次こそは‥‥」
点数は二十点。初日にコボルトやホブゴブリンの群れを個人で撃破したことでかなり点数を稼いでおり、また、参加できなかった三日目の競技に関しては、それまでの狩りで魔物の数が減っていたこともあり、他の参加者に思ったほど大きな点差をつけられずに済んでいる。
そして、残念ながら中間成績で最下位となってしまったのはアシュレイと嵐淡。
「力及ばずでしたか‥‥」
「これも、神の与えた試練なのでしょうか‥‥」
点数は各自十九点。最終日まで安定した狩りを続けた二人が、何故、それほど点数が伸びていないのかというと、人数の問題である。今回の競技では、冒険者自身の他、同伴しているペットも人数に数えられ、その人数に応じて、獲得点数は割られることになっている。嵐淡が駿馬と妖精を連れて来ていたことで、その分の点数が少なくなっている。それぞれ荷物持ちや偵察として役に立ってはいたが、戦闘面での助けが無く、それを補うほど点数を伸ばすのは難しかったのが実際のところである。
ともあれ、一回目の競技が終了した時点での点差には、まだ大物の魔物一匹で順位が入れ替わる余地がある。
果たして、二回目の競技の後、優勝を飾るのは誰であろうか。
