【真紅の滅び】黙示録の後
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■シリーズシナリオ
担当:BW
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:13 G 57 C
参加人数:10人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月20日〜09月30日
リプレイ公開日:2009年12月04日
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●オープニング
長きに渡る戦いの果て。
魔王アラストールの消滅により、その魔力によって操られていた精霊ホルスは、その本来の心を取り戻した。
『何ということだ‥‥。我が、世界の秩序を乱すとは‥‥』
魔の呪縛より解き放たれて、最初こそ己の罪に悩む様子を見せるホルスだったが、それでも、すぐに冷静さを取り戻したようだった。
これからどうするのかと、冒険者の一人が尋ねた。
『まずは、地上に戻る。我の役目は世界を見守ること。それに、今や冒険者は、我を超える力を持つ存在となったようだ。大魔王ルシファーの前に、我の力など足元にも及ばぬだろうが、お前達であれば‥‥』
そう語り、ホルスは翼を広げる。
『我は、しばし傷ついたこの身を癒すことにしよう。冒険者よ、汝らと出会ったあの場所で‥‥』
金色の翼が消え去った後に、今度は鋼鉄の竜、グラビティードラゴンが動く。
『さて‥‥。私も地上に戻るとしよう』
冒険者達に力を貸したことで、だいぶ魔力を使い、疲労も溜まった様子だった。
『この戦いも、もう終わりが近い。覚えておけ人間達よ。魔王達の脅威が去れば、私とお前達は力を合わせる必要もなくなる。再び私の縄張りを侵すことがあれば、その時は‥‥』
――そして、およそ二カ月が過ぎた。
ロシアの大地は今も悪魔達の暗躍の陰はあるものの、先のアラストールがいた頃のような大地震や異常な嵐といった天変地異は無くなり、一時の平穏を取り戻しつつあった。
だが、全てが元通りというわけにはいかない。
チェルニゴフ公国は大公ヤコブの間にて。
「やはり、駄目か‥‥」
「はい。残念ながらかの者の思考、いまだ悪意に満ちておりますれば‥‥。これはもはや、自由にその身を解くことは危険でしかなく‥‥」
招いた魔法使い達の報告を聞いて、ヤコブの表情は重かった。
冒険者の嘆願により、その身を公国にて預かることとした悪魔契約者クラスティ。
今や彼を魔の道へと引きずり込んだイペスは消え、アラストールが握っていた魂の一部も、無事に彼自身の肉体に戻っていた。
しかし、それでも彼の心に染みついた魔の感情は‥‥。
「殺すしかないか‥‥」
ふと呟いた自分の言葉に、大公は首を振った。まだ、その結論は早い。しかし、考えなければならないのも確かだ。
そもそも、彼は元は善人であったのだろうか。各地を渡る傭兵だったと聞くし、けして良い環境に育った者では無かったろう。元からあった邪な心が、悪魔と出会ったことで表に出ただけなのでは‥‥。
すぐに命を絶つか、永遠に牢に閉じ込めるか、重い鎖に繋いだ上で、信頼のおける教会などに預け奉仕させるというのも、過去の罪を償わせるという意味では一つの手かもしれない。しかし‥‥。
「冒険者を呼べ」
悩んだ末に大公は、冒険者達の言葉を待つことを決める。
クラスティの一件以外にも悩みはあった。
実は家臣達との相談で、かの宝杖キングスエナーを一時的に冒険者ギルドに預ける話が出ている。悪魔達に場所を知られたことで、このまま公国で管理するのも危険ではという声があり、かといって特定の個人に預けるにも危険すぎる代物。多くの冒険者が集まるギルドであれば、そうそう悪魔達も手は出せないだろうし、何より、有事には冒険者達がすぐにキングスエナーを使うことも出来る。彼らの取り戻してくれた物だ。それくらいの権利は与えても良いだろうと、大公は考えていた。
さて、どうなるか‥‥。
●リプレイ本文
今年もまた、冬が来る。
けれど、降り注ぐ光は暖かく、吸い込んだ澄んだ空気は、心地よく胸を満たす。
絶望の闇をのり超え、手にした平穏の一時。
だが、するべきこと、望むことは、まだ多く‥‥。
チェルニゴフ公国。中心都市、チェルニヒフ。
王の間に、冒険者達の姿があった。
「よくぞ、来てくれた。まずは、あらためて礼を言おう。先の戦いにて魔王の手よりキングスエナーを取り戻してくれたこと、感謝する」
迎えた大公ヤコブの表情は、今まで冒険者達が見てきた大公のそれとはまるで別人であるかのように晴れやかだった。長きに渡る戦いの中で抱えていた大きな不安を拭いされたからであろう。大公だけではない。道中にみかけた民や、城の人間達も、以前から見て、明るい笑顔を取り戻したように思う。
(「けれど、まだ全てが終わったわけではない‥‥」)
胸の内に呟いて、シオン・アークライト(eb0882)は雨宮零(ea9527)は王の前へと進み出た。
「大公様。先日は、私達の結婚式にお出で頂き、本当にありがとうございました」
「シオン殿に、零殿‥‥。こちらこそ、二人の新たな門出に立ち会えたことを嬉しく思っている。貴殿らにも、本当に大きな恩が出来た」
「そう言っていただけるのであれば、私達の願いを聞いていただけませんでしょうか?」
「‥‥聞こう。貴殿らを招いたは、再び我らに知恵を貸してもらうため。だが、今や貴殿らは、この国にとって大恩ある英雄でもある。我々に出来ることであれば、助力は惜しまぬ」
その言葉を受けて、冒険者達はそれぞれに動き始める‥‥。
「よう。久しぶり。何だ、元気そうじゃねえか」
「‥‥どういうつもりかな?」
リュリス・アルフェイン(ea5640)の見る男の顔は、以前に比べてやつれたように思えた。その手を鎖に繋がれ、足に枷をはめられたまま‥‥それでもクラスティは、目の前の冒険者達にしっかりとした口調で訊ねた。
「レルさんの家まで案内していただけませんか? 彼女に関わった者として、遺品を整理したいんです。貴方なら、知っているでしょう?」
ラスティ・コンバラリア(eb2363)の問い。クラスティは首を横に振る。
「流れの傭兵稼業に、まともな家などあったと思うかい? そりゃあ、彼女はそれなりの稼ぎもあったろうね。けれど、ギルドで大金を稼ぐ君達だって、一時的に棲家を借りて生活をしている者が多いだろう? 彼女が使っていた宿の場所は分かるが、彼女が死んで結構経つし、今も部屋がそのままで残っているはずが‥‥」
「それでも、だ」
クラスティの言葉を遮って、リュリスが言い放つ。その瞳には、有無を言わさぬ強い意志があった。
「‥‥分かった。いいよ。どうせ、牢の中で退屈していたところだ。案内しよう」
同じ頃、フィーネ・オレアリス(eb3529)はチェルニヒフの各教会を歩いて回っていた。
今もなお、戦災の爪跡が各所に残る公国。その中で彼女は、今も怪我の治療を必要としている人々のために、その類稀な癒しの力を施して回った。ただ、神の使途はこの街にもいるが、失った腕や足を再生できるほどの手練れの姿は無く、何もかもが元通りにとはいかない。
それもあって、彼女は大公に次のような願いをした。
「悪魔との戦いはこれからも続くでしょう。より多くの人々が治療を受けられるような環境を公国に作るのは如何でしょうか?」
セーラを信奉する白派の、治療院を兼ねた寺院の建立。
「今のロシアでは、タロンの教えが主であるというのは理解していますが、癒しの力においては‥‥」
「検討はしよう。だが、他の多くの民がそうであるように、私もタロンの教えと共に生きてきた。宗教というものを、ただ治療の道具として扱うことにも抵抗を覚える‥‥。施設以上に、それ相応の聖職者を呼ぶのも難しかろう。もし、フィーネ殿がこの地に留まり、人々の助けとなってくれると言うのであれば‥‥」
大公の誘い。今は修行中の身ゆえ、とフィーネは返答を保留した。
時は移る。
降り積もった雪が道を阻む山の奥。
金色の翼の輝きに照らされるように、向き合う冒険者の影二つ。
『待っていたぞ。人の子らよ』
精霊ホルスに、オリガ・アルトゥール(eb5706)とラザフォード・サークレット(eb0655)は穏やかに微笑みを返す。最初の出会いでは、自分達の理解の及ばぬ超常の存在。一時は味方‥‥そして、敵となり、今は友と思える相手。
「お元気そうで何よりです。精霊に元気、というのもおかしな話ですが‥‥」
「話したいことは山ほどある。が‥‥まずは、これまでの礼と‥‥謝罪だ」
大魔王ルシファーは再び封印の鎖に縛られ、アラストールやメフィストフェレスらが滅び、長い戦いの中で、ようやくついた大きな節目。
彼らは共に、過去を振り返る。オリガの育てたスモールホルス、ダージボグの願い‥‥。最初のガルディア達との戦いや、救えなかった集落のエルフ達のこと。手練れの傭兵達との激戦。封印の鍵となっていた二体の竜と、その死によって解き放たれた魔王。
時には感謝をもって、あるいは謝罪を交えて。
「さて、大方の話が終わったところで一つ相談があるのだが‥‥如何だね? 共に、あのグラビティードラゴンに礼を言いに行かないか?」
ラザフォードの提案。かのコキュートスでの戦いの折、力を貸してくれた竜の存在。
『重力の魔術師よ。それは出来ぬ』
「何故だ? ‥‥竜の縄張りを冒すことを恐れているのか?」
『それもあるが、そもそも我は人と共に飛ぶことが出来ぬ』
「「‥‥えっ!?」」
つい、オリガも驚いてしまった。
聞けば、山ほどの巨体でありながらも、ホルスの身体は人や物を載せては安定した飛行が出来ないらしい。
そう言えば、オリガの連れているスモールホルス達も、それなりの巨体でありながら物を載せる能力は皆無。これが成体のホルスに成長すると違うのだが、自然界に存在するホルスと冒険者の手によって育てられたホルスでは、似たような姿や能力を持ちながらも幾つもの違いがある。自然界のホルスは全ての陽の魔法を使えるが、冒険者のホルスは成体となっても一部の魔法しか使えないこと。対となる呼子の存在等。
「精霊も、まだまだ奥が深いのですね‥‥」
『水の魔法使いよ。汝と共にある子らを理解し、愛せ。さすれば、汝もまた子らの愛を得て、より深く互いを知ることができよう』
その言葉を聞いてオリガの思い浮かべるのは、最初に育て、そして死なせてしまったあの翼‥‥。
「‥‥私の元に、あれから多くのスモールホルスが生まれ、今もいてくれているのはきっと彼が見守ってくれているからだと、勝手にそう思っています」
ふと、遠く山の麓を見やる。陽の光に、銀色の世界が煌めく。
「ここから見える世界はとても綺麗ですね。あなたと彼が守ろうとした世界は‥‥。きっと、これからまだまだ色々あるでしょうが、あなたには変わらず世界を見守っていただきたいです。この世界を‥‥ダージボグが生きた世界を、私は愛していますから」
『傷も癒えた今、我は再び世界を巡る。汝らとは、今日で別れだ。しかし、いつの日か、また会う日が来るかもしれぬな‥‥』
頷くホルスの、その足元。
「な‥‥なんという不覚‥‥せっかく準備万端整えてきたというのに‥‥」
がっくりと膝をついたままの、ラザフォードの姿があった。
そこに、ホルスはこう言葉を投げる。
『共には行けぬ‥‥が、これまでの礼に、汝の想いは届けよう』
そして‥‥。
「思えばこの地では、吟遊詩人として、これ以上なく得難い経験をさせてもらったわね。関わった全ての人に、お疲れ様を言いたいけれど‥‥」
深く生い茂る山の木々をかき分け、オーガ達の襲撃もくぐり抜けて、グラビティードラゴンの支配する領域へと足を踏み入れたのは、リュシエンヌ・アルビレオ(ea6320)。
「さて、この辺りまで来れば、良いかしら‥‥」
懐から取り出したのは、小さな結晶。人々の祈りが形を成したとされるそれを、竜への捧げものにしようと言うのだ。
それを、酒と共に備えて地に置く。あとは‥‥、
「竜が上手く見つけてくれれば‥‥え!?」
――ズン。
聞き覚えのある巨大な足音。震撼する大地。
その元が何か、彼女は知っている。今、まさに祈りを捧げようとしていた相手‥‥。
逃げるべきか。いや、黙示録における戦いを見ても、その気になれば竜の移動速度は馬のそれなど遥かに超える高速。それに、やはり直に会いたいという想いもあった。
『性懲りもなく、来たか人間』
「どうして、こうも早くに私の来ることが‥‥。まだ、貴方の領域のほんの入り口のはず‥‥」
『つい先刻、物好きな鳥めが、ここに来たからな‥‥』
「え‥‥それは、どういう‥‥?」
訊ねた疑問にはまともに応えず、竜はさっさと背を向けた。
『帰って仲間に伝えるが良い。人の身でよくぞ言った。千年の後、楽しみにしておいてやろう、と』
数日後にリュシエンヌがキエフに帰った後、合流したラザフォードが、いかに千年後まで生き続けるかに頭を悩ませるのは、また別の話。
場所は移って、廃墟の街。
公国軍の魔王軍の熾烈な戦いが繰り広げられた、かつてのローラン商会の屋敷跡。
「出てくるには出て来たけど、さて、どれが必要な文献なのやら‥‥」
「古代文字とかになると、僕らにはお手上げだからね。詳しいことは、公国の学者達にでも頼むしかないけど‥‥」
シオン達は大公の許可を得て、かつての敵の根城を調査していた。これからも続く悪魔達との戦いに役立つ文献は無いかと調べるためである。
結果は上々。大量の書物や文献を見つけることが出来た‥‥が、逆に、思った以上に多過ぎて、どうしたものかと頭を悩ませることに。
「こんなの一朝一夕に解読できる分量じゃないわね‥‥」
とりあえず馬に積めるだけ積んで、公国へと戻ることを決める。とはいえ公国も今は復興作業を全力で進めている最中。結果が聞けるのは、どれだけ先になるやら‥‥。
入れ違いになるように、今度はリュリス達が街を訪れる。
「‥‥無駄足だったか‥‥」
焼け崩れた建物を前に、クラスティは呟いた。
その彼の前を、ラスティは構わず進む。
「ここですか。では、始めましょう」
「え? 何を言って‥‥」
「なにしてやがる。とっとと探すぞ」
「‥‥正気かい?」
黒く焼けた瓦礫を少しずつどかしていく。無論、探し物はそう容易くは見つからない。
「馬鹿げてる。どうして、そこまでするんだ? 君達にとって、彼女は何の繋がりもない、赤の他人‥‥いや、むしろ憎むべき敵だったはずだ」
「‥‥そうですね。今でも私は、あなた達を許せない」
ひたすらに木片を払い、泥をかき分けながら、ラスティは言う。
「でも、あなた達にも大事なものがあった。それだけは分かります。だから、私はあなたのその心に賭けてみたい」
「まあ、このままお前を死なせても、悪魔の連中の思い通りみたいで、気分が悪いしな」
言葉を繋ぐように、リュリスも語り始める。
「悪徳ってのは、確かに魅力的なもんさ。それが時に必要な快楽だってことは、同じように傭兵稼業で暮らしてきた俺も、よく知ってるつもりだ。今更、真っ当な人間みたいに、愛に生きろなんて言う気もねえ。‥‥でもな、お前の中にまだ、仲間を思う気持ちが残っているんだったら、そいつらをグズグズにしやがった連中に尻尾を振り続けるような、軟弱な真似はすんじゃねぇ」
「‥‥‥‥‥‥」
彼らの言葉は、クラスティに届いたろうか。
レルの遺品を探すこと数時間。最期まで、彼女の痕跡を見つけることは出来なかった。
城へと戻ったラスティ達は、再び王の間へと招かれる。
「結論は出たか‥‥?」
「そんなもん最初から決まってる。こいつは死なせるべきじゃない」
「国の復興のために働かせて、罪を償わせるべきと思います」
二人の言葉に、ヤコブはそのように処罰を決める‥‥が。
「大変です、陛下!!」
突如、飛び込んできた兵の声。
「何事だ、騒々しい」
「囚人のクラスティが、脱走を!!」
「何っ!?」
王城に広がっていく騒ぎ。慌ただしく駆ける兵の足音。
「どういうことだ。あいつ、手も足も拘束されてたはずじゃ‥‥」
リュリス達も、大急ぎでクラスティの行方を追う。そして‥‥。
「いたぞ!!」
王城の一角。バルコニーの手すりの上にクラスティは立っていた。
「お前‥‥何のつもりだ!!」
「悪いけど‥‥俺は俺なりに、自分に決着をつけさせてもらおうと思う」
高い場所だ。強い風が吹けば、今にも遥か下に落ちそうな状態。
「人は、君達が思うほど強い生き物じゃない。生まれた憎しみは誰かが受け止めなければ消えないもの。なら、俺は自分の生んだ憎しみだけでも、受け止めたい」
「だから、死んで償うって‥‥そんなこと‥‥!!」
「‥‥ありがとう。最期に、君達に会えて良かった」
――ッ。
そして、男の姿は虚空に消える‥‥。
‥‥数時間後。
「あの野郎‥‥」
リュリスは壁に拳を打ちつけた。クラスティのいた牢の中。小さな髪飾りがあった。
「これ、まさかレルさんの‥‥」
「ちゃっかり見つけてやがったのか。この妙な曲がり方‥‥枷を外す鍵代わりに使いやがったのか。器用な真似を‥‥」
「あのバルコニーの下、街の外まで続く川が流れてるって‥‥遺体はまだ‥‥」
「出てきやしねぇよ、そんなもん。何が、最期だ。ふざけやがって」
リュリスとラスティは、共に新たな道を進みだす。
「何年かかっても構いやしねえ。必ず見つけ出して、その顔ぶん殴ってやるから待ってろよ‥‥クラスティ!!」
一つの終わり、そして始まり。
公国の街を歩く男が一人。名をミュール・マードリック(ea9285)。
大公への謁見にて、彼は一つの願いをした。
自分と同じ、不幸なハーフエルフを増やさぬように、恵まれぬ子供らのために、この国でできることを、と。
今は力及ばぬ身なれど、必ず‥‥。大公はそう応えた。
今は、それで満足だった。いつか、この国が豊かになったなら、あの王が、さもなくば血を引く者達が、きっと‥‥。
「俺はこれからも旅を続けることになるだろう。だが、それは自分自身の居場所探しではない。そこが今いるべきところなのだと思う」
後に語られる話である。
各地を渡り歩く、世に類稀なる魔剣を振るいて人々を救い、いつしか天使を意味する名を用いて、呼ばれるようになった男がいたと‥‥。
「俺の中であの歌が聞こえる限り‥‥」
後日。魔杖キングスエナーの今後について、冒険者達に連絡が届く。
当初の予定通り、杖は冒険者ギルドへと預けられる。
通常は厳重に保管され、国が危機に瀕するような有事の際にのみ、信頼のおける者への貸与を認められるとのこと。
願わくば、この力が再び世に解き放たれることの無き平和を‥‥。