『メイドインジャパン 放蕩娘の冒険記2』

■シリーズシナリオ


担当:

対応レベル:1〜5lv

難易度:難しい

成功報酬:2 G 2 C

参加人数:10人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月01日〜11月11日

リプレイ公開日:2004年11月10日

●オープニング

■メイドインジャパン
 江戸から北東へ4日ほど進んだ山奥の小さな村に西洋風の大きなお屋敷が有りました。
 お屋敷の主人の名前はアルフォンス。当年取って125才のドワーフの元騎士です。
 若い頃に数々の武勲を重ね、今では喰うに困らない程度の蓄えを持ち、この東の国ジャパンの片田舎で、老後の余生を静かに送る為に引っ越してまいりました。
 私有地にはぶどう園を作り、梨園を作り、ワインを作り、果実酒を作り、慎ましくも一人娘(養女)とメイドさん達数名と質素ながらも静かな生活を送っておりました。
「やはり平和が一番じゃ。私が戦場で冒険者として生き残って来れたのも、儂がみんなよりずっと臆病者だったから、生き延びてこれたのかもしれんのぉ。後は娘が、一人娘が元気に育ってくれれば、後は何も言う事はないんじゃがのう」
 夕日の差し込むベランダで、丸テーブルで静かにワインを嗜む初老の老人。それが彼の今の姿である。
 だが、親の心子知らずという奴か、その娘は元気に冒険者を目指していた。年の頃は数え年で15才。戦災孤児で5才の時にアルフォンスの手に引き取られてからはすくすくと元気に成長していった。いや、元気すぎるのが彼女の難点なのである。
 見た目はだけなら艶やかな髪と白い肌、絶世の美女と呼んでもおかしくない彼女。アルフォンス曰く『儂があと100才若ければ、娘ではなく妻にするんじゃがのう』と言う彼ご自慢の娘である。
 だが、闘う父親を見て育ったせいか、彼女の感覚は偏っていた。

「私は大きくなったらお父様みたいな立派なドワーフの騎士に成るの」
 それが彼女が物心ついてからの口癖である。
 今では『ドワーフの』は取り除かれてしまったが、それでも騎士に成る夢は捨てきれない様子。毎日剣の修行に励み、オーラの技の修行に励み、日々鍛錬に鍛錬を積んでいるおてんば娘に成ってしまったのだ。
 アルフォンスの胸の内は旗本の冷や飯食いの婿養子でももらって、静かに平穏な生活を送ってもらいたいと言うのが願いでは有るのだが。

「さて、今度こそコボルトを倒して立派な冒険者として初陣するの」
 そう言って一人娘のソレイユはいそいそと冒険の準備をしていた。
バックパックに詰められる寝袋、保存食、竹の水筒、小太刀、そして無理矢理交換してもらった明王彫の剣、換えの下着の六尺褌、それに何処で手に入れたのか鉄扇を腰のホルスターに。そしてソフトレザーのビキニアーマーで身を包んだ。(注:この世界にビキニとか水着は存在しませんが、いわゆるそれらしい物を想像してください)
 シフールの3人のメイド達は各々に彼女を止めましたが、今回の彼女は胸を張ってメイドシフール達に言いました。
「私だってバカじゃないわ、前回の事で一応学習したの。冒険は一人でする物じゃない、沢山の仲間達と親睦を深めながらするものだって、だから今回は無理をしないわ、それに私も技を一つ習得したのよ? 見ててね」
 そう言って彼女は左手にオーラの盾を構成した。それが今回の彼女の切り札だ。
 どうしても行くと言って引かない彼女。そんな彼女にアルフォンスは言いました。
「なら、身の回りの世話係としてメイドを一人連れて行くこと。それと5人以上の冒険者で行くこと、最後に無理をしないこと。良いね?」
 半ばあきらめ顔で娘を送り出す父。
 ソレイユは一番気心の知れたシフールのメイド、クレッセントを従者に選んだ。
 クレッセントはぶつくさ文句を言いながら、荷物を鞄に詰め、そして馬に詰め込んだ。

『冒険者の皆さんへ。私とコボルト(犬鬼)退治に向かってくださる方を募集致します。コボルト(犬鬼)は山に住み、夜な夜な村に降りてきては家畜の矮鶏や山羊を襲ったり、畑を荒らしたりして村の人達を困らせています。私は山へ向かい、彼らを一掃する予定です。そんな私に力を貸してくださる勇気ある冒険者の方を募集しております。一緒に冒険の旅に向かいましょう』

冒険者ギルドにそんな一文が載れされたのはそれからまもなくしてからであった。

●今回の参加者

 ea0036 リューガ・レッドヒート(42歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea2941 パフィー・オペディルム(32歳・♀・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea3597 日向 大輝(24歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea3865 虎杖 薔薇雄(35歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3874 三菱 扶桑(50歳・♂・浪人・ジャイアント・ジャパン)
 ea4518 黄 由揮(37歳・♂・ファイター・ドワーフ・華仙教大国)
 ea5428 死先 無為(32歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea5794 レディス・フォレストロード(25歳・♀・神聖騎士・シフール・ノルマン王国)
 ea7270 蒼月 荒忌(30歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea8087 楠木 麻(23歳・♀・僧兵・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●『メイドインジャパン 放蕩娘の冒険記2』

 漆黒の馬、良く訓練を受け鍛えられた3才オスの戦闘馬。それにまたがると言うよりちょこんと乗った一人のシフールの娘‥‥彼女の名はクレッセント・サンダー。アルフォンスの屋敷でやっかいに成っている護衛メイドである。彼女は元々は下級貴族の娘なのだが花嫁修業もかねてアルフォンス家にメイドとして居候している‥‥なのだが、とてもめんどくさがりほっとくと一日中猫と一緒に掘り炬燵に入って本を読んでいる。口癖は『めんどい』なのでみんなからはメンドイメイドでメドイさんと呼ばれている。
「初めまして、クレッセント・サンダーです。みんなからはメドイさんって呼ばれています。」
 防寒着に身を包んだ彼女は、特に武器らしい武器をもってなどいない。馬の付けられた鞍袋の中に有るのかも知れないが、特にそれらしい物は見あたらない。
 レディス・フォレストロード(ea5794)がクレッセントに静かに挨拶をした。紳士的に‥‥そうあくまで紳士的なご挨拶である。
「あっそうだ、これ、ソレイユさんに貸してあげてください」
 レディスがそう言って黄勾玉を手渡した。
「あっそれならお嬢様に直接渡してあげた方が‥‥受けが良いですよ」
 受けが良いという言葉をメイドが使って良いのかはなはだ疑問ではあるが、彼女はそう言ってレディスに進めた。

「こんにちはソレイユお嬢様。蒼月荒忌(そうげつ こうき)や、よろしゅう。今回が冒険者として初陣や、ソレイユはんは?」
 蒼月荒忌(ea7270)がソレイユをナンパする。ソレイユはそれに笑顔で受け答えする。
「二回目‥‥です。でも前回は一匹も倒すことが出来なかった‥‥のです。だから今回はせめて一匹‥‥ううん、2匹は倒せるようにと、必殺技を憶えてきたの‥‥です。」
 そう言ってソレイユは左手の甲を見せた。しかし、彼女が徒歩でメイドのクレッセントが馬というのもなんだか納得いかない物があるが‥‥彼女はいっこうにそれに気をとめていない。
「お嬢は格闘戦苦手らしいけど、それなら後衛で援護したらええやん? 専門レベルのオーラ使いはめっちゃ貴重やし」
 蒼月の言葉に首をかしげるソレイユ。
「苦手じゃないですよ? 格闘戦は得意分野です。前回はチョットお間抜けで失敗してしまいましたが、ちゃんと毎日素振りもしてますし、巻きワラも叩いています。クレッセントにも良く剣の稽古をつけてもらってるんですよ?」
 シフールに剣の稽古を付けてもらってる時点で不味いんじゃないかナーっと言う気がする蒼月ではあったが、彼女にその自覚が無いのでは仕方がない彼はそれ以上の追求を止めた。

「お嬢さんが『剣』の修行してるのって見たことあるか?」
 日向大輝(ea3597)がクレッセント・サンダーに質問する。クレッセントはメンドそうな声で日向の質問に答えた。
「ありますよぅ。毎日2時間、木刀で素振りをしていらっしゃいます」
 クレッセントの言葉に日向は半分納得し、半分困惑した。
「それに、私が剣の稽古を付けてあげるときもあるんですよ」
 その言葉に日向大輝以上にレディス・フォレストロードが困惑する。
「剣の稽古を付けてあげてるんですか‥‥貴方が!?」
 シフールの貴方がと言おうとしたが、自分もシフールであるため会えてそこは言葉を飲んだレディス。
「えぇ、私もお嬢様も一応に剣の修行はしています。私の方が腕は良いですが」
 さらっと言ってのけるクレッセントに焦りを感じるレディス・フォレストロード。
シフールとチャンバラをして後れを取るのはチョット不味いかも知れない‥‥。

「交換した日本刀、使わせてもらってるぜ。ありがとな」
 リューガ・レッドヒート(ea0036)の言葉にソレイユはにっこり微笑んだ。
「私の方こそ強引に交換してしまってごめんなさい。ひょっとしてコレ取り返しに来たんじゃないかと思ってドキドキしちゃいました‥‥」
 そう言って彼女は明王彫の剣を胸にギュッと抱きしめ目線を泳がせていた。
「どうやら大分その剣が気に入ってるようだな」
 リューガ・レッドヒートの言葉にチョット照れくさそうにするソレイユ。
「性能はショートソードと一緒ですが、なんて言っても福袋商品で‥‥コレ欲しかったんですよ。でも全然当たらなくて‥‥それに日本刀よりも軽くて使いやすいし、反り身の剣より直刀の方がなんか手にしっくり来るんで小太刀よりも安定感が有って‥‥それに」
 そう言って彼女は剣にオーラを纏わせた。
「こうすればほら、切れ味は日本刀と同じになるんですよ?」
 明王彫りの剣の威力は7、オーラで+4されて日本刀の11に相当する。まぁ普通はそんな無駄なオーラの使い方はしないのだが‥‥。
「この剣に成れたら、次はもっと大きな武器を使おうと思って、コッソリ練習してるんです。みんなには‥‥内緒ですよ?」
 そう言ってリューガの耳元で小声で小さくさえずった。

 森に入って数時間。本当ならもうすぐ犬鬼コボルトが生息する場所なのだが、日が傾いてきたので野営をして明日の朝一番にコボルトに向かうことになった。
 夜の戦闘は色々と人間には不便だからだ。
 たき火の明かりに夕食の準備をする。携帯食料をさっくり使ってシチューを作りながら山の寒さから身を守っていた。
「んでもさぁ、タクアンのおみそ汁ってどうよ?」
 クレッセントが作ったタクアンと納豆のおみそ汁に抗議するソレイユ。
「私は好きです。メンドくないし」
 そう言って干物でご飯を食べるクレッセント、一汁一菜が彼らの冒険中の食事らしい。
「私はたくわんはおみそ汁より直接食べた方が良いと思うな。特にべったらずけ、アレ最高」
 ものすごーーーく庶民的な会話に花開かせながら彼らの夕食はさっぱりすっぱり終了した。

「うふふ、寝袋だけではお寒いでしょう。わたくしのテントへいらっしゃいませんか?」
 パフィー・オペディルム(ea2941)がソレイユを自らのテントに誘った。ソレイユはフラフラとパフィーのテントの中へと誘われて行く。
「えと‥‥おじゃま‥‥します」
 照れ笑いを少々浮かべながらパフィーのテントの中へ寝袋を持ち込むソレイユ。

 私も二人用のテントですから、クレッセントさん一緒にどうですか?
レディス・フォレストロードの誘いを受け入れ、クレッセントがテントの中に入る。
二人用テントと言ってもシフール二人には少々大きめで寝心地が良い。
 静かな眠りは皆に安らぎと休息を与えてくれた。

●殺戮劇
 次の日の早朝。コボルト討伐の幕は切って落とされた。
「さぁ殺戮の宴の始まりだ」
 黄由揮(ea4518)がロングボウを構えてコボルトを殲滅してゆく。
「武士道とは信念に死ぬ事と見つけたり!!」
 楠木麻(ea8087)がショートボウを使ってコボルトを撃破してゆく。
 逃げるコボルトの背中に追撃の一撃を、側面に回ろうとするコボルトに足止めの一撃を、隊列から飛び出した遊撃のコボルトに殲滅の一撃を次々と放って行く。
 コボルトの数はあっと言う間に激減して行く。
「くらえ、ソニックブーム」
 死先無為(ea5428)の剣圧がコボルトを襲う。地を這う剣激に一匹また一匹とコボルトの数が減って行く。飛び道具部隊の攻撃に寄って、戦線はスムーズに整理されていった。

 リューガ・レットヒートが刀を抜いてコボルトを一刀両断にする。コボルトはレベル1の冒険者でもそこそこ苦戦しないで倒すことが出来る比較的易しいモンスターである。普通に剣を納めた冒険者なら苦戦はしないだろう。
 日向のムチがコボルトを襲う。一撃一撃と重い一撃がコボルトの身体を切り裂いて行く。
 虎杖薔薇雄(ea3865)がコボルトの攻撃を右に左にひらりひらりと避けて行く。っと同時にまるで舞うが如く日本刀を振る。コボルトの血がそれと共に何度も空中に舞う。
「ふふふっ、私に惚れては行けませんよ。ミスソレイユ」
 虎枝はそう言いながらまるで舞うが如くコボルトを殲滅してゆく。

 シフールメイドのクレッセントに一匹のコボルトが近づいてくる。パフィー・オペディルムがそれに対してマグナブローの術を唱えた。足下から上がる炎の業火にコボルトの身体が焼かれる。そしてそこへクレッセントのとどめの一撃が打ち込まれた。
「シュープリーム・サンダー!!」
 ライトニングサンダーボルトを高速詠唱で唱えコボルトに解き放つ。
 指先から解き放たれる一条の雷光はマグナブローで弱っているコボルトにとどめを刺した。

 三菱扶桑(ea3874)が一匹のコボルトと時間をかけて対峙する。相手を倒さぬように、逃がさぬようにじっくりと時間をかけて相手の体力を殺いで行く。
 そうそれはソレイユお嬢様へのお膳立ての為に
 腰からスラリと明王彫の剣を抜くとそれを右手に構え、左手にはオーラシールドを展開した。さらに右手の明王彫の剣をオーラパワーで包み込む。
 オーラパワーで武器の攻撃力を向上させ、オーラシールドで敵の攻撃を受け止めようと言う戦闘フォームである。

「良かった。オーラの発動に失敗しなかった‥‥。よーし後は攻撃を当てるのみ‥‥」
 本番に強いのか、普段ならばちょくちょく発動に失敗させているオーラであるが、今回は問題なく発動に成功させていた。
 三菱扶桑が手傷を負わせたコボルトの正面に立つ‥‥、額を落ちる汗、大きく深呼吸。やがて意を決して一気に間合いを詰めるとコボルトの同体めがけて明王彫の剣を突き刺した。
「グレイテスト、ペレストロイカー!!」
 必殺技の名前を叫びながらコボルトに攻撃を仕掛けるソレイユ。コンバットオプションなんて何もない。ただ攻撃してるだけである。
 もう一体のコボルトがソレイユに向かって攻撃してくる。ソレイユはそれをオーラシールドで受け止めた。
「やった。受け止めた!! 受け止めたよ!!」
 敵の攻撃を受け止めたことに歓喜を発するソレイユ。攻撃をしてきたコボルトに対して、オタオタしながらも、右手の明王彫の剣で攻撃を仕掛ける。
 接戦を極めた戦いに返り血を浴びながらの勝利。ソレイユはにっこり微笑んだ。

「ところでソレイユお嬢様、次の冒険はいつ頃でしょうか?」
 道中の帰り道。楠木麻がソレイユに質問する。
「そうね。半月後か一月後か‥‥、今練習中の技が有るからそれを身につけたら、次はコボルトより強いモンスターを‥‥倒してみたいな」
 そう言ってにっこり微笑むソレイユ
「犬鬼以上というと‥‥山鬼とか‥‥ですかねぇ」
 そう言って首をかしげる楠木麻。彼女は犬鬼と呼びソレイユはコボルトと呼ぶ。彼女が山鬼と呼ぶ物を、ソレイユはオーガと呼ぶだろう。生まれと育ちの違いで多少のずれはあるが、二人が指す物は共通の生き物(オーガ一族)である。

 次の冒険への旅立ちを臭わせながら、今回の旅はコレにて終了する。ソレイユもやっとコボルトを倒せるまでに成長した。それは大きな進歩なのだと信じてあげたい。