『メイドインジャパン 放蕩娘の冒険記3』

■シリーズシナリオ


担当:

対応レベル:1〜5lv

難易度:やや難

成功報酬:1 G 75 C

参加人数:10人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月02日〜12月10日

リプレイ公開日:2004年12月12日

●オープニング

■メイドインジャパン
 江戸から北東へ4日ほど進んだ山奥の小さな村に西洋風の大きなお屋敷が有りました。
 お屋敷の主人の名前はアルフォンス。当年取って125才のドワーフの元騎士です。
 若い頃に数々の武勲を重ね、今では喰うに困らない程度の蓄えを持ち、この東の国ジャパンの片田舎で、老後の余生を静かに送る為に引っ越してまいりました。
 私有地にはぶどう園を作り、梨園を作り、ワインを作り、果実酒を作り、慎ましくも一人娘(養女)とメイドさん達数名と質素ながらも静かな生活を送っておりました。
「やはり平和が一番じゃ。私が戦場で冒険者として生き残って来れたのも、儂がみんなよりずっと臆病者だったから、生き延びてこれたのかもしれんのぉ。後は娘が、一人娘が元気に育ってくれれば、後は何も言う事はないんじゃがのう」
 夕日の差し込むベランダで、丸テーブルで静かにワインを嗜む初老の老人。それが彼の今の姿である。
 だが、親の心子知らずという奴か、その娘は元気に冒険者を目指していた。年の頃は数え年で15才。戦災孤児で5才の時にアルフォンスの手に引き取られてからはすくすくと元気に成長していった。いや、元気すぎるのが彼女の難点なのである。
 見た目だけなら艶やかな髪と白い肌、絶世の美女と呼んでもおかしくない彼女。アルフォンス曰く『儂があと100才若ければ、娘ではなく妻にするんじゃがのう』と言う彼ご自慢の娘である。
 だが、闘う父親を見て育ったせいか、彼女の感覚は偏っていた。

「私は大きくなったらお父様みたいな立派なドワーフの騎士に成るの」
 それが彼女が物心ついてからの口癖である。
 今では『ドワーフの』は取り除かれてしまったが、それでも騎士に成る夢は捨てきれない様子。毎日剣の修行に励み、オーラの技の修行に励み、日々鍛錬に鍛錬を積んでいるおてんば娘に成ってしまったのだ。
 アルフォンスの胸の内は旗本の冷や飯食いの婿養子でももらって、静かに平穏な生活を送ってもらいたいと言うのが願いでは有るのだが。

「アレから一ヶ月私も結構冒険を重ねて熟練冒険者の仲間入りかしら?」
 明王彫の剣で素振りをしながら、ソレイユはクレッセントに話しかけた。
クレッセントはメイド服でベンチに座りソレイユを見ながら首を横に振った。
「冒険を重ねたって‥‥お化け鼠を退治したり、野良犬や狐を追いかけて山を走り回っただけじゃないですか‥‥アレは冒険を重ねたとは言えませんよぉ〜」
 クレッセントの容赦ないツッコミにグーの根も出ないソレイユ。
「そっ、それならまた、コボルト退治に行きましょう。近くの村民からまたコボルトが家畜を襲っている被害届けも出ていたし‥‥」
 そう言うとソレイユはソフトレザーのビキニアーマーで身を包み冒険の支度を始めた。(注:この世界にビキニとか水着は存在しませんが、いわゆるそれらしい物を想像してください)
「お嬢様も懲りませんね‥‥って私もまた行くんですか!?」
 荷物の一つに彼女が上げられているのは言うまでもない。そう言うわけで渋々クレッセントも荷物を馬に積み込み始めた。

『冒険者の皆さんへ。今回もまた、私とコボルト(犬鬼)退治に向かってくださる方を募集致します。コボルト(犬鬼)は山に住み、夜な夜な村に降りてきては家畜の矮鶏や山羊を襲ったり、畑を荒らしたりして村の人達を困らせています。私は山へ向かい、彼らを一掃する予定です。そんな私に力を貸してくださる勇気ある冒険者の方を募集しております。一緒に冒険の旅に向かいましょう』

冒険者ギルドにそんな一文が載れされたのはそれからまもなくしてからであった。

●今回の参加者

 ea0036 リューガ・レッドヒート(42歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea2369 バスカ・テリオス(29歳・♂・ファイター・人間・フランク王国)
 ea2941 パフィー・オペディルム(32歳・♀・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea3597 日向 大輝(24歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea5694 高村 綺羅(29歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea6764 山下 剣清(45歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea7270 蒼月 荒忌(30歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea8087 楠木 麻(23歳・♀・僧兵・人間・ジャパン)
 ea8191 天風 誠志郎(33歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea8880 セレスティ・ネーベルレーテ(21歳・♀・神聖騎士・ハーフエルフ・イギリス王国)

●リプレイ本文

●雪中行軍山へ(いや、雪は降ってないが)
「ゆくーぞ。すすむーぞ。野を踏みこえてー」
 高らかに歌を歌いながら、山道を進むソレイユ。いつでも心に太陽をが彼女のうたい文句である。
「それはそれとして、何の歌なの? それ」
 高村綺羅(ea5694)が質問する。その質問に答えるのはソレイユではなく、お付きのシフールメイドのクレッセント・サンダー。
「でたらめですよ。お嬢様は何でもかんでも直ぐ適当に歌にしてしまうんです」
 背中の空いた黒いエプロンドレスに身を包み、戦闘馬に乗ってエッチおっちら山道を進む彼女。山では馬は不便だと分かっているが、自分の荷物と姫様の荷物を持つと飛べないと言う問題点を抱えているので、馬の鞍袋に色々詰め込んで馬を歩かせている。
 ちなみに走らせることは出来ない。一度走らせて、馬の上下運動で大変な経験をしている。
「それはそうと、お嬢ちゃん。その服装は何とか何とかならなかったのかい? まぁ人にはこだわりって物があるから、余り強くわ言わんが‥‥」
 リューガ・レッドヒート(ea0036)がソレイユのビキニアーマーを指して露出度が高いところを指摘する。無論、この時代に水着もましてやビキニなど存在はしないのだが、彼女はそんな形のソフトレザーを装備している。しかも、今回からオニューらしく、色がなめし革の茶から染められて赤に変わっている。チョット派手で色っぽさ200%UP(当社比)である。
「ん〜やっぱり動きやすい服装が一番だと思うんだ。攻撃も防御も自分の着こなせる鎧じゃないとね。特に重い鎧は攻撃の時に文字通り重荷になるからね。例えこの身が擦り傷だらけに成ろうとも、私はこの服装で行こうと思ってるのよ。チョット風邪ひきそうだけど」
 その言葉でパフィー・オペディルム(ea2941)が相づちを打つ。彼女もソレイユに負けず劣らずの薄着っぷり、露出っぷりなのである。
「擦り傷だらけ?」
 日向大輝(ea3597)が目線を送ると、彼女の腕や太ももには細かい傷がある。それもその筈でビキニの格好で茂みの中を、しかも先頭を歩いていれば当然木の枝や葉っぱで身体に傷が付くのである。
「お嬢さんが粋で鯔背(いき いなせ)なのは分かったから、そう言うことは先に言ってくれ」
 日向がそう言って先頭を変わる。日向に取って代わられ、ソレイユは二番手を進むことになる。ちなみに可愛いお尻の部分。後ろ腰にはリューガから奪い取った明王彫りの剣を相変わらず装備してる。どうやら愛用武器に収まっているようである。
「さて、マズ今日は早めに一泊して、明日の朝一番のコボルトの集落を襲撃しましょう」
 バスカ・テリオス(ea2369)がそう言って平地へと誘導する。
 ソレイユもそれには素直に従う様子である。
「えーと、コボルトの集落はココからそう遠くは無いみたいですね」
 そう言ってクレッセントがこの辺一体の山の地図を見る。被害に遭った村からの情報を総合して、大体の予想地点を地図に書き込んでいるのである。
「コボルト‥‥あぁ犬鬼か、集落と言うからにはそこそこの数がいるんだろうなぁ」
 山下剣清(ea6764)がそう言って地図を覗き込んだ。
 おわかりの通り、ソレイユ、クレッセント、リューガ、パフィー、バスカは犬鬼をコボルトと呼ぶ。既にソレイユ達の言動に慣れた物なら理解しているが、剣清は彼女たちとは初冒険の為、彼女たちが使う専門用語や西洋用語に関しての反応はやや新鮮である。

●寒い一夜
 すっかりテントも張って準備万端な寝じたくを進めている面々。パフィーがソレイユを自らのテントの中から手招きをする。ソレイユがそれに釣られてフラフラとパフィーのテントに近づくが、パフィーの顔の蝶々の様な仮面に3歩後ずさりしてクレッセントが張ったテントの中へと消えていく。仕方ないので、パフィーがクレッセントのテントへと出向く事にした。一応の口実として女の子だけで毛布にくるまって温め合うと言うことで、手近に居た高村綺羅(ea5694)を連れ込んで行く。
「今回は、初めて作戦に参加する方も多数おられます。私たちがそんな彼らをキチンと誘導してあげましょう」
 そう言ってパフィーが作戦会議らしいチョット議案を提示する。それに釣られてよそよそとみんなで顔を近づけて相談をする。取りあえず明日の作戦では、高村 綺羅が先行偵察を行い、コボルトを発見したら誘導するという案配の作戦になった。
「やっぱり奇襲が大切だよね。攻撃は最大の防御って言うしさ」
 そう言ってにこやかに笑顔を作るソレイユ。
「綺羅ちゃんには期待してるから‥‥よろしく」
 そう言って高村の肩に手を回しにへらと笑うソレイユ。そんな高村を見て、パフィーは心底羨ましいと思った。

「差し入れデース」
 干し肉と干し納豆の入った味噌スープのカップを持って、クレッセントが蒼月荒忌(ea7270)の所に足を運んでいる。彼はテントは張らず、寝袋に入って夜明かしをしようとしていた。そんな彼に対して温かい飲み物(みそ汁とはあえて呼ばないことにする)を差し入れるクレッセント。メイドとしての心配りなのだろうか。
「毎度毎度のご参加ありがとうございます。またメドイ事に成るかも知れませんが、なるべくメドくない方向で行きたいんで、サポートの方ヨロシクお願いします」
 相変わらずのめんどくさがりでメドイが口癖のクレッセントだが、最悪の面倒な方向には行かないように、コマメにお仕事はしているようだ。彼女の心配りに少し感謝の意を表す蒼月。
「ほんまならソレイユお嬢さんと親密な関係になりたかったんやけど、まぁ女性陣にとられてるんやったらしゃーないな」
 そう言ってスープを啜る蒼月。微妙に美味しいのが納得いかない飲み物である。
「それじゃ次いってきま〜す。はぁメドメド」
 そう言ってパタパタと蒼月の寝袋を後にするクレッセント。

「おじゃましまーす」
 クレッセントがおじゃましたのは、今回からの参加となる楠木麻(ea8087)の簡易テントである。もう一人の女性陣セレスティ・ネーベルレーテ(ea8880)を連れて楠木のテントにおじゃまするクレッセント
「メドイお願いなのですが、彼女テントが無いので一緒に入れてあげてくださいな」
 そう言ってセレスティ・ネーベルレーテをテントノ中に連れ込むクレッセント。小さな所にもチョットづつ気を利かせている。
「良いですよ。ヨロシクセレス。僕は麻、こう見えても一応女だから、よろしく」
 そう言ってセレスティに手をさしのべる楠木麻。彼女はその握手を怖ず怖ずと受けた。
どうやらセレスティ、対人関係は苦手なようである。
「二人には後方やら弓で援護射撃をしてもらうのでよろしく。使った分の矢はちゃんと補充しますんで、気兼ねなしに使っちゃってくださいね」
 クレッセントはそう言って、二人に連帯感を生ませようと遠回しなお願いをした。

●決戦当日
 朝日が昇るのと同時に、一同はテントをたたみ、コボルトの集落へと足を進めた。
集落と呼んでいるが、本当に集落があるのか巣があるのか全く分かっていない。単純にこの辺に生息しているだろうという場所を集落と呼んでいるに過ぎない。
 予め決めていた高村綺羅との合流地点で彼女が来るのを町ながら、各々緊張感が増していた。
「パフィーさんは私の味方だと思っていたのに、やっぱりお嬢様の方が良いんですね。がっかりです。はぁ〜、メドメド」
 突然のクレッセントの言葉に、そこにいた一同が一斉にパフィーの方へと視線を向ける。
「いや、違うのよ。アレはそう言う意味ではないの」
 パフィーがへそを曲げているクレッセントに対して取り繕う様にして言い訳をする。
 今回ソレイユに対して皆アプローチをかけているが、クレッセントにアプローチをかけている者は居ない。それで少々ご機嫌が斜めなのである。メドイ事は嫌いだが、それでもかまって欲しいのは女心なのであろうか‥‥シフールだけど。
「そうだ、お嬢ちゃん。どっちが多くの敵を倒せるか勝負しよう。ボクが負けたら福袋で手に入れた日本刀「霞刀」を差し上げますよ」
 楠木麻の言葉に目を見開くソレイユ。
「なぬー!? 霞刀!? ショートソードの様に軽く、ロングソードの様な切れ味の、あの霞刀!? それは負けられないわ」
 実際にはショートソードよりやや重いのだが、そんなことは問題ではなく。軽くて攻撃力の有る武器は彼女が喉から手が出る所なのである。
「よっ、よし、私が負けたら、ほっぺにキスしてあげる!! その代わり、勝ったら霞刀もらうからね。絶対だよ!!」
 なんだかよく分からないうちに勝負を引き受けるソレイユ。
「強気なお嬢様だな‥‥もう少し自重して欲しい所だ‥‥が」
 天風誠志郎(ea8191)がそう言って二人の駆け引きを見守る。
 今回彼は参加メンバーの中で唯一犬鬼の数に警戒している用心深い人物である。そして彼の予想は残念ながら的中した。

「居ましたよ。犬鬼が総勢‥‥20匹」
 高村綺羅の言葉に一同は言葉を失った。居ても4〜5匹くらいだろうと言うのが当面の予想であった。しかしそれを大きく上回る数の犬鬼達が徒党を組んでいるのである。
 愕然とする面々の中で一人だけ元気そうなのがいる。そうソレイユである。
「ふふふ、前回の4倍かぁ。相手に取って不足無し!! 行くぞ正義は我にあり!!」
 腰から明王彫の剣を抜き、意気揚々と高らかに声を上げるソレイユ。クレッセントはそんな場面をみて、一同同様に頭を抱えるのであった。

●戦闘 超簡略的は表現
 奇襲、一気にコボルト達の不意を突き、襲いかかる前衛陣。後方から弓2名。それに魔法使いが2名。一気に数を減らして戦力比を変えるために全力で総攻撃を行った。
 っが、雄叫びを上げつつ特攻するソレイユ。それをカバーするリューガ、中距離から槍でサポートするバスカ。日向が前衛として、肉の壁として立ちふさがり、後方の弓や魔法使い達に犬鬼達が行かないようにガードする。
 高村が疾走術を使いスピードで攪乱を計る。天風がオフシフトで敵を攪乱する。
「俺の刀にオーラパワー付与してくれ、ソレイユ!!」
 山下の言葉に左手を伸ばすソレイユ。山下の剣のつばをつかみ、一気にオーラを注ぎ込む。
 蒼月のソニックブームが中央を切り裂き、楠木とセレスティの弓が浮き足だったコボルト達に降り注ぐ。そして、パフィーのマグナブロー。
「はぁメドメド、たまには楽させて欲しいです」
 パタパタと空中からライトニングサンダーボルトを放つクレッセント・サンダー。

 死闘を極めた闘いは小一時間の闘いの末に集結した。20匹のコボルトの死体を残して。

「少しは強くなったみたいだね‥‥」
 高村綺羅の言葉も耳には届かない。ソレイユは今回1匹しかとどめを刺してない。楠木麻は2匹倒している。
「くはー、まけたー。次こそは、次こそは勝つからね」
 次の冒険を既に予約しているソレイユ。その冒険に彼女が参加する保証はないのだが。

 闘い終わって日が傾く、すっかりぐったりして座り込むクレッセント、今日ほど魔法を連射した日はないだろう。隣ではパフィーも座り込んでいる。

 最後にソレイユが楠木麻の頬に優しくキスをして幕を閉じる。次の闘いまでのわずかな休息である。