■メイドインジャパン 放蕩娘の冒険記9
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■シリーズシナリオ
担当:凪
対応レベル:フリーlv
難易度:やや難
成功報酬:0 G 84 C
参加人数:4人
サポート参加人数:-人
冒険期間:10月10日〜10月18日
リプレイ公開日:2005年10月18日
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●オープニング
■メイドインジャパン
江戸から北東へ4日ほど進んだ山奥の小さな村に西洋風の大きなお屋敷が有りました。
お屋敷の主人の名前はアルフォンス。当年取って125才のドワーフの元騎士です。
若い頃に数々の武勲を重ね、今では喰うに困らない程度の蓄えを持ち、この東の国ジャパンの片田舎で、老後の余生を静かに送る為に引っ越してまいりました。
私有地にはぶどう園を作り、梨園を作り、ワインを作り、果実酒を作り、慎ましくも一人娘(養女)とメイドさん達数名と質素ながらも静かな生活を送っておりました。
「やはり平和が一番じゃ。私が戦場で冒険者として生き残って来れたのも、儂がみんなよりずっと臆病者だったから、生き延びてこれたのかもしれんのぉ。後は娘が、一人娘が元気に育ってくれれば、後は何も言う事はないんじゃがのう」
夕日の差し込むベランダで、丸テーブルで静かにワインを嗜む初老の老人。それが彼の今の姿である。
だが、親の心子知らずという奴か、その娘は元気に冒険者を目指していた。年の頃は数え年で15才。戦災孤児で5才の時にアルフォンスの手に引き取られてからはすくすくと元気に成長していった。いや、元気すぎるのが彼女の難点なのである。
見た目だけなら艶やかな髪と白い肌、絶世の美女と呼んでもおかしくない彼女。アルフォンス曰く『儂があと100才若ければ、娘ではなく妻にするんじゃがのう』と言う彼ご自慢の娘である。
だが、闘う父親を見て育ったせいか、彼女の感覚は偏っていた。
「私は大きくなったらお父様みたいな立派なドワーフの騎士に成るの」
それが彼女が物心ついてからの口癖である。
今では『ドワーフの』は取り除かれてしまったが、それでも騎士に成る夢は捨てきれない様子。毎日剣の修行に励み、オーラの技の修行に励み、日々鍛錬に鍛錬を積んでいるおてんば娘に成ってしまったのだ。
アルフォンスの胸の内は旗本の冷や飯食いの婿養子でももらって、静かに平穏な生活を送ってもらいたいと言うのが願いでは有るのだが。
●そうだ。京都に行こう。
冒険者として一人前(?)の腕前を付けた‥‥っと思っている一人娘のソレイユ。そしてそんな彼女をメンドイながらも影ながら見守るクレッセント・サンダー。
江戸でのコボルト退治も一段落した彼女は、いよいよ士官道を志していた。
目指すは近江38万石‥‥の場末の下っ端浪人。
何でもオーク退治をこれから積極的に行うとかで、冒険者上がりの古強者を募集しているとか。
そんな募集に飛びついたのがソレイユ。
面接に受かればそのまま近江でお勤め。悪くしても下働きでお勤めと言うことになる。
アルフォンスも仕方なく、住み慣れたこの土地を離れる決意をした。
「お嬢様。でも何でこんな半端な時期なんですか?」
世間では10月に成ったばかりのこの時期にお引っ越しとはずいぶん急な話である。
「北近江は雪が多い地域なので、なるべく雪が降る前にお引っ越しをした方が良いだろうと言う配慮らしいよ?」
そんな訳でアルフォンスご一行は近江に旅立つ事になった。
今年はここ江戸でのアルフォンス家最後の収穫祭である。
ワインやどぶろく、沢山の料理を用意して、最後の宴を楽しむことになった。
「よし、今までお世話になった冒険者さん達も呼んで、盛大にお祝いしよう!!」
そんなこんなで江戸でのささやかなお祝いが始まった。
●リプレイ本文
●メイドインジャパン 放蕩娘の冒険記9
カントリー娘と暮らしていこう。
朝は日の出と共に起きて、夜は夕暮れと共に眠りにつく
牛を飼い、馬を飼い、畑を耕して生きていく。
そんな生活が理想的である。
っとアルフォンスは静かに夢見ていた。
右手に鉄の斧を持ち
左手に力有る盾を持ち
鋼の鎧に身を包み、群がる敵をなぎ倒し
愛と正義の為に戦い続ける。
そんな勇者にいつか成ってみたい。
っとソレイユは思っていた。
毎日ゴロゴロして、美味しいお菓子を食べて
温かいお風呂に入って、温かいご飯を食べて
一日中猫と戯れていたい‥‥。
っとクレッセント・サンダーは思っていたりする。
三者三様に未来への夢は違うが、三人は江戸の郊外の小さな土地で平和に暮らしていた。
新たな新天地への移動の為の準備を、一つ一つ、前向きに進めながら。
「本日は収穫祭にお集まり頂いて、アリガトウございます。どうぞ、ごゆっくり楽しんでいってください。」
アルフォンスがそう言って、できたての果実酒を振る舞った。
梨や葡萄で作られた酒が振る舞われる。
庭に作られた特別なお祭り会場では、美味しく肉が焼かれ、焼きたてのパンやミルクも、料理も食べ放題飲み放題である。みんな飲めや歌えのどんちゃん騒ぎ状態である。
「そういえば、ソレイユと会ってから一年以上がたつんだな。あの時は‥‥ああ、今もあるぜ、交換した日本刀。運よく、壊れずに今日まで来てるよ。ちょっと汚れたかもしれないけどな。」
感傷に浸るかのようにして、リューガ・レッドヒート(ea0036)が腰に差した日本刀をぽんぽんっと叩く。
それは今を去ることひとかたの昔。ソレイユがムリヤリに彼の明王彫りの剣と交換した物である。
その時から彼は、ノルドの日本刀使いとして、ソレイユは一撃必殺を捨て、手数を中心にした攻撃へとそのスタイルを変えた。
彼らの人生を大きく左右する一歩がそこにはきざまれていた。
遠くはない昔。今とそんなに変わらない過去。
しかし、多くの想い出がこもった品である。
「お嬢様に合わせて皆さんも移動だなんて。やっぱり色々とご心配なのでしょうか?」
レディス・フォレストロード(ea5794)がクレッセントのメイド服に袖を通し、お引っ越しのお手伝いをする。
クレッセントの荷物など、それほど多くはない。コレクションの褌に、着替えがいくつかあるだけである。
彼女もクレッセントとのつきあいは長い。
宴会のテーブルに戻ると、果実酒を杯で大きく煽る。
良く焼けた鳥の丸焼きのもも肉にかぶりつき、しゃくしゃくとそれを頂いた。
クレッセントもそれに合わせるようにして酒を煽り、腸詰め肉の薫製を口に運んでいる。
「あふ‥‥なんだか少し酔ってしまったかも知れません‥‥」
いつも以上にハイペースに酒を呑むクレッセントにレディスが静かに肩を貸してやる。
「そうだ‥‥レディスさん‥‥」
クレッセントがそう言って、酔って真っ赤な顔で彼女に話しかける。
「私は‥‥お嬢様の護衛メイドとして、旦那様に雇われています。メイドには2種類が存在し、家に仕える下働きの様な仕事をする物‥‥他家のお嬢様で花嫁修業の一環として別の家にメイドとして働きに出る物‥‥。まぁそんなことはどうでも良いんですが‥‥。私は‥‥お嬢様を守ることが仕事で‥‥それが私のアイデンティティで‥‥レゾンテートルなんです‥‥、でもこうして2人で杯を傾けるのも‥‥凄く楽しくて‥‥良いと思いますよ?」
少し意味不明な事を口走るクレッセント・サンダー。
レディス・フォレストロードはそんな彼女に肩を貸してやり、部屋まで連れて行って介抱してやることにした。
「まあ、一杯どうだ? ソレイユ」
山下剣清(ea6764)がそう言ってソレイユに杯を渡す。
「私‥‥お酒は余り強くないんだけど‥‥な」
山下からそう言って杯を受け取るソレイユ。
山下が彼女の杯にどぶろくを注いでやると、彼女はそれをゆっくりだが、一気に飲み干した。
「ふぅ‥‥」
ソレイユの頬に赤みが指す
「へぇ結構な飲みっぷりじゃないか‥‥さぁもう一杯」
そう言って山下剣清がまたどぶろくを注いでやる。
ソレイユはそれもまた一気に飲み干した。
「なんだ‥‥結構行ける口じゃないか‥‥」
そう言う山下にソレイユが返杯する。
畑で取れた葡萄のワインが注がれた。
山下も負けじとそれを飲み干す。
「2人とも楽しそうですね。」
ミラ・ダイモス(eb2064)がそう言って微笑する。
彼女はここに足を運ぶのは初めてではあったが、既に皆とうち解けていた。
「ソレイユさんには、初めてお会いしますが、騎士を目指す方がいると聞き、場違いながら、宴の席に参加をさせていただく事になりました。ミラ・ダイモスと言います。宜しくお願いします。」
そう言ってミラは騎士独特の礼を持って挨拶を行った。
「ソレイユ‥‥パンダボワヌです。‥‥わざわざのご挨拶‥‥アリガトウございます」
そう言って真っ赤な顔でフラフラしながらも、ソレイユがミラに挨拶を返した。
「そうだ。私も京都に行って活躍しようと思ってるんですよ。私の憶えている技‥‥一つお見せしましょう。」
そう言って彼女は余興の一つとして木刀を一本取り出し、もう一本を山下に持たせ構えた。
彼女のオーラが木刀に宿る。
「コナン流奥義! フルバースト!」
スマッシュEX+バーストアタックで撃ち下ろしの重い一撃が山下の構えた木刀に炸裂する。
っと同時に山下の木刀が砕け散った。
「コナン流の一撃は、並の武器では受けることは出来ません。コナン流と闘うときは、オーラを流用した武器を使うといいですよ」
そう言ってミラ・ダイモスはソレイユに対して笑みを浮かべた。
ソレイユが腰を落とし両手でまるで球体を抱くような形の姿勢で構える。
「ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォー・ウィータ」
小さくつぶやきながら、腹の底から声を出す。
それと同時に彼女の中のオーラが爆発的高まりに彼女を包み込む。
エリヴェイションされたオーラに後押しされるように彼女はさらに闘気の集中を続けた。
ソレイユの左手にオーラの盾が作り上げられる。
「オーラの盾なら、どんな攻撃でも砕かれることは無いですよね?」
そう言ってソレイユはにっこり微笑んだ。
もっとも、オーラの技術はソレイユが上だが、剣の上がミラ・ダイモスとは雲泥の差である。
ソレイユが受けようとしても、彼女の攻撃を受け止めることは出来ないだろう。
「あっ‥‥酔いが‥‥一気に回って‥‥来た‥‥みたい‥‥」
一気にオーラを使うことに寄って、ソレイユはアルコールがダイブ回ってしまった様だ。
「おいおい、大丈夫か? 俺が部屋まで運んでやる‥‥山下‥‥後は頼む‥‥」
そう言って山下を尻目に、リューガ・レッドヒートはソレイユを背中に背負って部屋まで連れて行った。
山下はアルフォンスと静かに酒を交わし、娘をヨロシクと肩を叩かれる。
●次の日の朝。
レディス・フォレストロードはクレッセント・サンダーのベットの中で目を覚ました。
昨日の記憶は余り無い。
ベットの回りにはお互いの衣服が乱雑に脱ぎ捨てられている。
クレッセントはまだ深く眠っているようだ。
布団をめくって彼女の身体を確認する。
そして自らの身体に目を移す。
お互い裸で眠っていたようである。
一体何が有ったのか‥‥レディスは自らの首に付いたキスマークを撫でながら深く考えるのであった。