『オークを従えし魔物 4』

■シリーズシナリオ


担当:

対応レベル:1〜5lv

難易度:難しい

成功報酬:2 G 10 C

参加人数:12人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月09日〜11月17日

リプレイ公開日:2004年11月18日

●オープニング

●オークを従えし魔物
 落ち葉が積もり、紅葉が楽しめる静かな山奥の河原で、鼻を擽る美味しいニオイが漂う。
 全身に西洋甲冑を着込んだバグベアが巨大な鉄の鍋をつついていた。その鉄鍋の直径は1mほどとても大きな鍋である。
 バグベアとは熊鬼の事である。通常は西洋甲冑など来ている者は皆無であるし、身長も2m程であるが、この熊鬼は西洋甲冑にハルバードとヘビーシールドを携え、身長も2.4m程有る。頭も普通のバグベアよりは多量は回るようだ。それでも人間にはずっと劣るが。
 そのバグベアの傍ら、シフールを肩に乗せ鍋をつついているのは女性のジャイアント。彼女も西洋甲冑に身を包みクレイモアを携えている。
 身長は兜も含めて2.1mほど、バストサイズは130cmの大柄の巨人である。
3人は鮭をぶつ切りにしてミソで煮込んだ鍋をつついている。山芋や大根、にんじん等も一緒に煮詰まってほどよい甘さと味噌の辛さで旨味を引き出している。
 そんな鍋に6匹のオーク達もご相伴にあずかっている。

 バグベアの名はリキロス。ジャイアントの名はアリサ。そしてシフールの名はララディ。
 彼らは戦の真っ最中。彼らの居る山々は豊富な山の幸、川の幸に恵まれている。
サルが縄張りの取り合いをするように、オーク(豚鬼)とゴブリン(小鬼)の縄張り争いに彼らは力を貸しているのである。そして20匹近いゴブリンを粉砕し、状況はオーク側有利な様に見えた‥‥。
「お前が熊鬼の‥‥リキロス‥‥か?(オーガ語)」
 山間に数匹のオーガが見える。その中でも一際強そうに見える風格を持ったオーガがニヤリを笑いながら見下ろすようにして彼らににらみを利かせていた。
「俺は‥‥メガノス。オーガ戦士(山鬼戦士)のメガノスだ‥‥。俺達はゴブリン側に付いた‥‥。この山もあの山も、向こうの山も‥‥我々山鬼の一族が頂く‥‥。お前達オークを踏みつぶし、人間共の温泉宿も破壊し‥‥村々を襲い‥‥全てを我が物とする‥‥。もしそれが嫌なら‥‥かかってくるが良い‥‥(オーガ語)」
 そう言って彼は長槍をずんと地面に突き刺して構え、にやりと笑った。
 そして山奥へとオーガ達を連れて消え去って行く。

 しばらくして、鍋をつつき直す面々。鮭にミソが良くしみこんでいて格別な味だ。
「また冒険者を雇おう。ゴブリンもおそらく前回よりは多いだろう。それにオーガ数匹。オーガ戦士がボスとして君臨するなら、我々だけでは圧倒的に不利だ」
 シフールのララディを通訳としてリキロスにアリサの意志が伝わる。
「また‥‥長い戦いに成りそうだ‥‥な。(バグベア訛りのオーガ語)」
 ぽつりとこぼしたその言葉がこれからの未来を物語っている。

ララディを通して冒険者ギルドに依頼が告げられる。
無論前回同様オークに関する部分はふせられているが。

『縄張りの拡大を図る山鬼とゴブリン達を撃破殲滅してください‥‥』

それが今回の依頼なのである。

注:敵の戦力:ゴブリン10〜20 ホブゴブリン5〜10 オーガ4 オーガ戦士1
こちらの戦力:リキロス1 アリサ1 オーク6(鉄弓装備) ララディ(通訳)

●今回の参加者

 ea0020 月詠 葵(21歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0264 田崎 蘭(44歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea0437 風間 悠姫(32歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea1352 礼月 匡十郎(42歳・♂・浪人・ジャイアント・ジャパン)
 ea3210 島津 影虎(32歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea3365 久世 慎之介(33歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3488 暁 峡楼(28歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea3813 黒城 鴉丸(33歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea3914 音羽 でり子(30歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea4458 七杜 風雅(29歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea6717 風月 陽炎(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea6749 天津 蒼穹(35歳・♂・侍・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●決戦前夜
 決戦前夜。深い森の中のキャンプ場で食事を取る面々。
谷底の小川で水を汲み、近くの河原にて陣を張る。テントや寝袋と言ったしゃれた物はない。1mくらいの穴を掘った中に枯れ葉を引きその中に身を沈めると、後は毛布をかぶるだけ。そんなキャンプに冒険者12名は合流し、共に静かに食事を取り、日の出を一刻一刻と待ち望んでいた。時に11月12日、オーガ戦士(山鬼戦士)との決戦を控えた前夜である。
「一日早いけど、コレお誕生日のプレゼント」
 通訳シフールのララディが月詠葵(ea0020)の頭に紅葉で作った輪を乗せる。バグベアのリキロスは良く焼けた鹿のもも肉の一番美味しい場所を葵に譲ってくれた。
 おそらく姉が漏らした情報なのだろう。
「リキロスさんってお姉ちゃんに惚れてるのですかね?」
 葵の質問をララディがリキロスに伝え、そしてリキロスからまた返事をもらう。オーガ一族は人間の言葉を話せない。っがオーガ知識が万能であれば、オーラテレパスの様に意志の伝達が可能であれば、会話は有る程度可能である。(身振り手振りが必要だが)ララディがリキロスから受け取った言葉をそのまま葵に伝えた。
「胸の大きな娘は大好きだって。彼女にその気があるなら連れ合いにしたいって」
 そう言ってララディはクスクスと笑った。バグベアと人間の結婚なんて聞いたこともない。ましてや子孫を残したなどという話も皆無である。それ故に彼女は笑い、そして微笑む。
「構わぬよ。そのまま落ち下ろしてくれて」
 アリサが田崎蘭(ea0264)に対して静かに微笑を浮かべる。
 蘭の『アリサの強さが知りたい』との一言で、蘭が本気の一撃をアリサに一刀だけ攻撃すると言う話になっている。何とも不思議な状況である。
「では!!」
 蘭が日本刀を抜いて本気の一撃をアリサに放つ。アリサはそれを予め構えていたクレイモアで受け止めた。予め防御の姿勢に有ったとは言え、熟練した蘭の一刀を簡単に受け止めてしまう彼女の剣技に蘭はますます関心を寄せるばかりであった。
「私は自分の利点を知っている。そして欠点も。私には機動性がない。そして攻撃の手数も少ない。確かに一撃は重く、そして命中精度は有る‥‥が、囲まれたら何も出来ない」
 そう言ってアリサは微笑を浮かべた。それはかつて敵だった者、今は味方の者達への照れ笑いでもあり、そして自らを見つめ直す笑みでもあった。

●決戦
 空が白み始めた頃、何の前触れも無く闘いは始まった。
 人間の合戦ならば、陣太鼓を鳴らしたり、ホラ貝を吹いたり、鏑矢を飛ばしたりするのだろうが、彼らの闘いは凄く静かなものだった。
 流石は山鬼。山に熟知しているだけあって、木々をかき分け、深く静かに先行してくる。
それに従うようにしてゴブリン。後方にはオーガ戦士とそれを取り巻くホブゴブリン。
 対するこちらの陣形は、ツーマンセルで、2人づつオーガへ。オーガ戦士にも2名+アリサ+リキロス。そしてゴブリン達のけんせいにオーク弓兵と2名。各2名ずつを割り当てた陣形である。

 マズ始めに島津影虎(ea3210)が右手を挙げる。それと同時にオーク弓兵達が弓を構える。事前の打ち合わせは簡単で、手を挙げたら構え、手を下ろしたら放てである。しかもゴブリン相手に適当にである。統率は取れていないが、そのとんでも無い威力と射程距離で十分にゴブリン達の『注意をひく』のが仕事である。故に目立った行動も必要なのだ。
 影虎が静かに手を下ろすと、一斉に6本の弓が放たれた。
 それと同時に突進してくるオーガ達。そしてそれを受け止める面々。
 七杜風雅(ea4458)がオーク弓兵達と共に遠距離攻撃をするべく手裏剣を構える‥‥っがゴブリンは朝靄の向こう側。全然全く思い切り届かない距離である。
「仕方ない。こっちで行きますか」
 背中の日本刀を抜いてじりりと構える七杜風雅。彼はオーク弓兵の近接護衛へと回った。

 暁峡楼(ea3488)がオーラパワーで自らの攻撃力を向上させる。
 ダブルアタックで二発の攻撃をたたき込む。有効打だ。さらにオーラパワーをかけてもらった音羽でり子(ea3914)が日本刀で斬りかかる。オーガは棍棒を振り回し、でり子を攻撃する。だが、でり子の回避力はオーガのそれを圧倒的に上回り、文字通り鬼を相手に鬼ごっことしゃれ込む感じで難なく敵の攻撃を回避して行く。
 二人の攻撃で徐々に徐々にオーガの戦力は削られて行く。

「チェストー!!」
 坂道を下るような速度で山道を登っていくとっても元気な天津蒼穹(ea6749)。示現流の使い手である彼は勢いよく初太刀をオーガにたたき込んだ。そしてそれに続いて田崎蘭が一刀の攻撃を入れる。
 正面に回り込み、敵の注意を引きつけながら、敵の攻撃をガードで受け止める。渋い戦術ではあるが、防具の力を利用したすばらしい戦術である。
 レザーアーマーなので余り防御力は高くないが‥‥。

 月詠葵と久世慎之介(ea3365)がゴブリンの群れの中から一匹のオーガを隔離する。
そしてそのままじりじりをすり足で山の斜面を移動する。
 不意にオーガが棍棒を振りかざして攻撃を仕掛けてくる。そしてそれを葵は待っていた。
葵のカウンターアタックがオーガの胴を薙ぐ。血しぶきが彼の顔を赤く染める。
 その隙をついて久世慎之介の刃がオーガの背中を切り裂く。オーガの悲鳴が朝靄の山の中に木霊する。

 4匹目‥‥最後のオーガに挑むのは風間悠姫(ea0437)と黒城鴉丸(ea3813)である。
「今回あなたに従います。指示通り動きますからよろしくお願いしますよ、風間殿」
 黒城鴉丸が風間悠姫に指示を仰ぐ。
 二人はオーガを挟むようにして隔離するとジリジリと本陣から引き離した。
 風間悠姫がオーガに対して重い一撃を放つ。日本刀の重量の乗った一撃だ。
 野太刀ほどの威力はないが、それでもオーガ相手には十分と言える。
 黒城鴉丸がその隙にオーガの後ろに回り込み、後ろからフェイントアタックを見舞うと、流石のオーガもジリジリとその体力と生命力を削られていった。

 いよいよ本丸、オーガ戦士とホブゴブリンの群れに礼月匡十郎(ea1352)と風月陽炎(ea6717)、アリサとリキロスが間合いを詰めていく。奴を倒せば雑魚のゴブリンやホブゴブリン共は逃走するだろう。奴さえ倒せばこの闘いに終止符が打たれるのである。無論他のオーガを各個撃破し、他に統率を取る者を無くしてつぶすのが今回の作戦でありねらいなのである。
「おまえたちは運が良い。人間の分際でこの俺様と闘うことが出来るんだからな‥‥って言ってるわ」
 ララディの通訳を交えながらオーガ戦士と対峙する面々。朝靄の中で、朝日を浴びながらオーガ戦士の朱に輝く槍が光り輝いて見える。
「雑魚は俺が蹴散らす。道は俺が作る。おまえたちは山鬼戦士を倒せや!!」
 礼月匡十郎が六角棒片手に6匹のホブゴブリン達を蹴散らし道を作る。その中央を突破してゆくのが誰であろう風月陽炎である。
「私にできると言えば‥‥。死線において全霊の一撃を放つのみ‥‥。受けとれ!『死門散華』!」
 差し違える覚悟でオーガ戦士の槍の一撃にカウンターアタックをかぶせる。そしてEXストライクの乗った一撃がオーガ戦士に放たれた。
 だが、ここに2つの欠点があった。
 カウンターアタックは敵の攻撃を受けてから反撃を与える技である。
 オーガ戦士の槍を交わすことの出来なかった陽炎はその身体に深々とオーガ戦士の槍が突き刺さっていた。一瞬視界が回転し、大量の血を吐血する。だがそれでも彼の拳はオーガ戦士の胸へ届いていた。
 そして二つ目の問題点。それはダメージランクを上げる前に全てのダメージがオーガ戦士の装甲によって相殺されていることである。これでは決定打を浴びせることは出来ない。
 ダブルアタックの左手の攻撃が無駄だと悟った彼は、とっさに両手で自らに突き刺さった槍を押さえつけた。これでオーガ戦士は槍を引き抜くことは出来ない。
「貴様、何を考えている。その手を離せ!!」
 ララディの通訳を通してオーガの言葉が聞き取れる。人間の腕力では到底叶わないオーガ戦士の腕力であるが、陽炎は必死に食らいついて離さない。

 二人の動きが止まったのを見過ごすほど甘くはなかった。

 風月陽炎の身体に刺さった槍に手を伸ばし、それをつかむアリサ。そして彼女はあろう事か。自重と利用して彼を抱きかかえるようにして坂道を転げ、槍と陽炎をオーガ戦士から引き離した。武器を失ったオーガ戦士の頭上から叩き下ろすようにしてリキロスのハルバードが振り下ろされる。
「ぐっ、ぐわっ、ぐが、ぐががが」
 武器を失い、眉間をたたき割られたオーガ戦士が、オーガ語で雄叫びを上げる。
 だがそれに呼応するはずだった4体のオーガ達は既に絶命していた。
「ぐが、がっ、ぐが!!」
 何かしら捨てぜりふを吐いて、逃げ出すオーガ戦士。その後方を呆然と見つめる。陽炎。彼の腹に深々と刺さっている朱槍をアリサが引き抜く。
「ぐはっ」
 っと同時に傷口から一気に血が噴き出し、大量の血が口からも吐き出され彼は意識を失う。
「ありがとう匡十郎。もう十分だ」
 アリサがホブゴブリン6匹を引きつけていた匡十郎を呼び戻す。
 画して闘いは、オーガ達の戦力を大きく削り落とす形で幕を閉じた。

そして‥‥

●闘い終わって
 次に風月陽炎が目を覚ましたのは夕刻だった。
 既に闘いは終わり、傷の手当ても成されている。
 胴体に深々と空いた穴はすぐに完治する物ではないが、止血され、包帯代わりのサラシが巻かれている。帰りに近くの湯治場で休めば、江戸に帰るまでには傷は癒えている事だろう。
「おつかれさまでしたー。おつかれさまー」
 暁峡楼がアリサの肩を揉みながら、戦利品のおねだりをする。
「なんか戦利品とかありました? ‥‥格闘系のアイテムのとかもらえると嬉しいんだけどなぁ♪」
 暁峡楼の言葉に赤く血に染まった朱槍を差し出すアリサ。
「格闘武器ではコレが一本だけだ」
 予想外に重く使いづらいアイテムをゲットする暁峡楼。普通なら泣いて喜ぶ武器なのだが、武道家の彼女には少々荷が重い。

 闘い終わって夕日が差して、全てが丸く収まったわけではないが、取りあえずの先勝を上げることは出来た。このままアリサ達はゴブリン追撃掃討戦に入るのだろう。
 オークに荷担して闘った事の口止め料に少々多めの謝礼を受け取った面々は勝利の美酒に一時疲れを忘れながら根城の江戸へと向かうのでありました。