『オークを従えし魔物 5』

■シリーズシナリオ


担当:

対応レベル:2〜6lv

難易度:難しい

成功報酬:2 G 65 C

参加人数:10人

サポート参加人数:-人

冒険期間:02月02日〜02月10日

リプレイ公開日:2005年02月11日

●オープニング

●オークを従えし魔物 5

 雪、降り積もる雪。雪の積もった山間で、剣と剣との火花が散る。
 月明かりに照らされた荒野にゴブリンの血しぶきがあがる。血が雪を赤く染めて行く。
切り裂いた者は巨躯の大男。全身黒い西洋甲冑に身を包みその右手にはハルバード、その左手にはヘビーシールドを携えていた。鎧の中身はバグベア。名をリキロスと言った。

 リキロスのハルバードが薙ぐ、さらに空中にゴブリンの血が舞い上がる。彼の周りには合計6体のゴブリンの死体が転がっていた。
「やはりゴブリン共ではお前を倒す事は出来ない‥‥か」
 オーガ語で語りかけて来るのはオーガ戦士のメガノスであった。先の闘いでリキロスに寄ってその額をたたき割られた彼は復讐を誓いまた新たに闘いを挑んでいたのである。
「お前を倒す準備は整った。槍も新たに手に入れた。今年こそ、貴様を倒してやろう」
 オーガ戦士の彼の後ろには8匹のオーガの姿が見て取れる。
「お前同様に、冒険者どもにも恨みがある、すこし時をやろう。その間に冒険者を呼ぶが良い」
 そー言って、オーガ戦士メガノスとオーガ達8匹は姿を消した、おそらくゴブリンも多数ひそんでいるのである。こうしてまた闘いの幕が切って落とされた。

「大丈夫か? リキロス」
 返り血を浴び、立ちつくすリキロスに一人の女性が近づく。
 シフールを肩に乗せた女性のジャイアント。彼女も西洋甲冑に身を包みクレイモアを携えている。身長は兜も含めて2.1mほど、バストサイズは130cmの大柄の巨人である。 その名をアリサと言った。
 肩に乗ったシフールのララディの通訳に寄って二人は会話を行う。
「この山で我らが平和に生きて行くためには、また多くの血を流さなければ成らないな‥‥しかも同族の‥‥」
 リキロスはそう言って切なさを隠した。
 バグベア(熊鬼)もオーガ(山鬼)もオーガの一族である。同族と言っても良い。
「じゃまな者は蹴散らすしか有るまい。それが我らの生きる道なのだから」
 そう言ってアリサは静かに微笑した。

 そんなわけで冒険者ギルドに密やかに依頼は送られた。
 無論前回同様オークに関する部分はふせられているが。

『縄張りの拡大を図る山鬼とゴブリン達を撃破殲滅してください‥‥』

注:敵の戦力:ゴブリン+ホブゴブリン 多数 オーガ8 オーガ戦士1
こちらの戦力:リキロス1 アリサ1 オーク6(鉄弓装備) ララディ(通訳)

ララディはアリサとワンセット、オークやリキロスは人間の言葉が話せません。

●今回の参加者

 ea0020 月詠 葵(21歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0264 田崎 蘭(44歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea0437 風間 悠姫(32歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea1352 礼月 匡十郎(42歳・♂・浪人・ジャイアント・ジャパン)
 ea3210 島津 影虎(32歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea3365 久世 慎之介(33歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3813 黒城 鴉丸(33歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea3874 三菱 扶桑(50歳・♂・浪人・ジャイアント・ジャパン)
 ea6749 天津 蒼穹(35歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea9527 雨宮 零(27歳・♂・浪人・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●穴を穿つ闘い

 雪深い山間の片隅で彼らは静かに作戦を練っていた。
オーガ戦士(山鬼戦士)を倒すために、いかに心理戦を、いかに陣形を展開するかを練っていた。
「やはり、山鬼戦士はアリサ殿とリキロス殿で倒してもらった方が良いと思う。そうなれば敵の士気もも落ちよう。そのために我々は山鬼達を倒す。雑魚を始末したら私達も助太刀に周るつもりだが‥‥2人ならその前に奴を倒してるかもしれんな」
 風間悠姫(ea0437)の言葉にアリサが静かに微笑する。鉄兜越しとはいえ彼女の表情はよく見ていると豊かである。
「いいのかい? 一番の見せ場を我々に譲ってしまって」
 彼女の言葉に風間は静かに応える。
「問題は無い。それよりコレを渡しておこう」
 そう言って彼女は二人にリカバーポーションを一本ずつ差し出した。
「もしもの時の為の用心だ使って欲しい」
 それを受け取ったアリサとリキロスがお返しにと、血のりがべったり付いた大鎧と烏帽子兜を差し出した。
「そう言えば、前回腹に大穴を開けながらも敵を食い止めてくれた英雄が居たが‥‥」
 今回の参加者に目を配るアリサ。だが彼の姿は見あたらない。
「今回は参加していませんよ」
 月詠葵(ea0020)がそう言って風間の近くに歩み寄る。
「そうか、もし会ったら、私が感謝していたと伝えて欲しい。彼のおかげで一ヶ月以上も平和にこの山で暮らすことが出来たのだと」
 アリサの言葉にしんみりと言葉が染みる。
「ガウガウガ〜」
 リキロスが月詠葵を抱き寄せ、頭を軽く撫でる。彼に取っては軽くなのだろうが、少々力強い。
「『俺の弟に成るんだからたくましく育てよ』‥‥だって」
 ララディの通訳を通して話を聞く月詠葵、だがその言葉に一番驚いたのは他ならぬ風間であった。

「どうして貴方はバグベアと行動を共にしているのです? あなたの家来ですか? 仮にもモンスター、人間を襲わない保証は何処にも無いでしょう。」
 黒城鴉丸(ea3813)がアリサに質問する。アリサはすこし考えて応えた。
「成り行き‥‥とでも言おうか、元々私はオーク達と山賊家業に手を染めていた。沢山の鬼達を斬ると同時に、沢山の人間や私たちを狩りに来た冒険者も返り討ちにしてきた。リキロスも同じだ。お互いにオークを従え、この山をねぐらにし、そして冒険者という共通の敵が有った。だから共闘した。今はこの山という縄張りを守るために共闘している。ただそれだけの関係さ」
 アリサはそう言って微笑を浮かべた。

●前夜祭
 パチパチと燃えるたき火、コトコトと巨大な鉄鍋が火にかけられている。
 オーク特製の豚汁がコトコトと作られ冒険者達に振る舞われる。
 野生の豚の肉を使った豚汁。中にはにんじん、だいこん、ごぼう、山芋、それに片栗粉と味噌が入っている。寒い雪の夜に身体を温めてくれる一品である。
「オグオグ」
 オーク語訛りのオーガ語で、一匹のオークが田崎蘭(ea0264)にお椀を差し出す。
 とろみのかかった豚汁は彼女の身体をじんわりと温めてくれた。
「ありが‥‥とう」
 慣れない状況に目をぱちくりさせながら、田崎はお椀を受け取った。
「それにしてもあの野郎、どっから新しい槍なんか調達して来やがったんだか」
 礼月匡十郎(ea1352)がお椀を受け取りながらつぶやく。アリサはそんな彼にぽつりと応えた。
「おそらく又冒険者を殺して‥‥もしくは武家の家を襲って手に入れたのだろう」
 冷静に応えるアリサ。人間が殺されたと言っても繭一つ動かさないのは性格だからだろうか。
「島津さんは良かったらオークたんの盾に‥‥肉壁に成ってくれるかな?」
 ララディの言葉に島津影虎(ea3210)は豚汁を啜りながら応える。もとより現地で相方を捜す予定だった彼である。まぁ頼まれればイヤとは言えない。
「いさい承知した。私にお任せ有れ」
 オーク達は弓を使う。有る程度敵との距離が離れていた方がやりやすい。特に誰かが正面で敵を引き寄せてくれていれば言うこと無しである。これは大役である。
「俺もオーガを倒したら直ぐに小鬼の方に回るからな安心してくれ」
 久世慎之介(ea3365)がそう言ってオークの肩を叩く、ゴブリンが30匹居るのか40匹居るのかは分からないが、やるだけの事をやるだけである。

 三菱扶桑(ea3874)がどぶろくの瓶をリキロスに渡す。リキロスはそれを一気に飲み干してふぅと息を吐いた。そして、自分の持っていた酒を持ってへんばいする。
 三菱はなみなみと継がれた杯の酒を一気に飲み干すとにやりと笑った。しかし、その瞬間に視界がゆがむ。
「なっ、なんだこのメチャメチャ強い酒は‥‥」
 継がれた酒の瓶を覗き込む。
「あぁそれ、私が福袋で取ってきた『うわばみ殺し』だ」
 ララディの声に顔色を変える三菱扶桑。
「こんな物を一気に飲んだら死ぬわ!!」
 ララディの首をグイグイ絞める三菱扶桑。死ぬ、死んでしまいます。

「縄張り争い、か。‥‥だが、どの様なものであれ『秩序』は必要だ。‥その為には、誰かが統率を取るより他ない。‥‥リキロス、お前さんの様な奴が山の主(ぬし)となってくれるなら、この森も、この近隣に住む者達も安泰だろう。」
 天津蒼穹(ea6749)の言葉をララディが酔っぱらいながら通訳する。そしてリキロスの言葉を返す。
「『我々も人を襲わない訳じゃない。だが、こちらから無抵抗の者を襲うのは止めている。殺す覚悟でかかってくる者は殺される覚悟も出来ているだろう。だからそれに対して手を抜くのは失礼に当たるからだ‥‥』だってさ」
 ララディを通したリキロスの言葉に天津蒼穹は引きつった笑みを浮かべた。

 雨宮零(ea9527)とアリサが班分けの話を行っている。
田崎蘭と風間悠姫、島津影虎と久世慎之介、黒城鴉丸と三菱扶桑、雨宮零と礼月匡十郎、月詠葵と天津蒼穹の5チームに別れてオーガ狩りをするらしい。オーガ8匹いるけど。
「それなら1チームで2〜3匹を相手にするチームを作り、1チームで1匹を相手にするチームが相手を倒したら、コレを遊撃隊として2〜3匹相手にしてるチームと前後で敵を挟んで倒すと言うのはどうだろう?」
「うむ、戦闘とは常に相手より大きい数で敵を削りる物。そのために前準備が戦略。そのための現場判断が戦術である。そのほうほうで問題はないだろう」
 戦闘でと言うより、戦術や戦略に重きを置く二人。緻密な話し合いが繰り返され行く。

●そして。
 ページの都合で戦闘シーンをまたしても大きくはしょるが、闘いは辛くも勝利した。
 勝因は全員にオーラパワーをかけて回った天津蒼穹や各個撃破の陣頭指揮をとった風間悠姫。それに各員のがんばりのおかげである。特に鴉丸のアースダイブでの移動は、雪で埋もれた山の中でかなり優位に話を運ぶことが出来た。
 真っ白な雪が深紅にそまり、闘いは辛くも勝利することに成功した。
 オーガ戦士にも深手を負わせ、オーガ達も全滅に追いやった。これでこの山に平和(?)がまた戻ってきたのである。
 冒険者達は口止め料としてまた少々多めの小判を懐にしまい、ぬくい状態で山を下りることになる。
「この闘いの勝利と、新年会を兼ねて、近いうちに宴会を開きたいと思う。もし良かったらまた来て欲しい」
 そう言ってアリサは静かに微笑を浮かべながら冒険者達を見送るのであった。

どっとはらい。