【京都救援】『オークを従えし魔物』京都へ
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■シリーズシナリオ
担当:凪
対応レベル:2〜6lv
難易度:難しい
成功報酬:2 G 24 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:06月16日〜06月22日
リプレイ公開日:2005年06月21日
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●オープニング
●一撃必殺!! 粉砕剣!!
江戸から少し離れたとある山間の森林地帯。
深く静かな森の中。一人の人間(?)と一匹の鬼が戦っていた。
全身をヘビーシールドとヘビーヘルムで覆ったそれは西洋の戦士の様に見える。
だが、馬には乗っていない。クレイモアを握りしめている。
かたや、もう一匹の鬼は首から上が牛、そして巨大な斧を両手で握りしめている。
牛頭鬼、西洋ではミノタウロスと呼ばれる鬼である。
「ヴモゥ!!」
地を蹴り、猛烈な速度で突進してくるミノタウロス。その斧の渾身の一撃が放たれる。
チャージング。勢いを付け、相手にたたきつける攻撃は、多大は破壊力を有する。
鎧戦士はそれを受けるでもなく、避けるでもなく、その一撃を鎧越しに食らう。
「ぬぐぅ!! 一撃必殺!! 粉砕剣!!」
その攻撃をくらいながらも、その場に踏みとどまったそれは、信じがたい超渾身の一撃をミノタウロスめがけて振り下ろした。
とどろく爆音。全身の骨が軋む音。
なんの事はない、EXスマッシュをカウンターアタックで放っただけの一撃だが、人知の及ばぬ壮絶なダメージがミノタウロスに放たれた。
ミノタウロスは決して弱くないモンスターである。
強さだけならオークロードに匹敵するか、それ以上である。
生命力とて並の鬼より数段上である。
だが、ミノタウロスの一撃によって『即死』ダメージを受け、そのまま絶命する。
先ほどまで鬼と呼ばれていたそれは、今はただの肉塊として、地面に横たわっていた。
「ふぅ、まだ完璧とは言えないが、この一撃なら、オークロードを倒せるかも知れない」
彼女の名はアリサ。オークを従えし魔物として有名な荒くれ者である。
彼女は盾を捨て、攻撃に専念することで、一つの極みに到達した。
「おうねぇちゃん。こんな所にいたのか? そろそろ出発するらしいぞ?」
武芸者風の男達数人が彼女に声をかける。
「分かった直ぐに行く」
フェイスガードを開き顔を見せながら彼女は男達に付いていくことにした。
●回想 月道の使用許可
数日前のある日のこと。
「よく来たな。まあ、楽にするがいい」
場所は江戸城の一室。そこに現れ声をかけたのは、威風堂々とした偉丈夫であった。
その人物の名は源徳信康。摂政・源徳家康の嫡男にして江戸の留守を預かる侍である。
「ギルドから話を聞いているかもしれんが‥‥冒険者の手を借りたい。噂にあるとおり、今、京の都は大変なことになっている」
声を潜める信康が曰く、都の南より死人の群れが押し寄せており、朝廷も畿内の藩主たちも大わらわ、ということであった。
「親父殿も立場上、早くケリをつけたくてな。そこで、見つけた都への月道、それを使おうという腹づもりよ」
ここまで話して信康はにやりと笑みを浮かべると、改めて一同を見回した。
京の都と東国の江戸。早馬であれば3日の距離であっても、その速さでは何も運ぶことはできない。多くのものを運ぼうと望むのであれば船だが、さすればどんなに早くても数日。此度の動乱を考えるのならば、猶予はあまり、ない。
「月道は開いたばかりでどのような危険があるか分からぬ。安全のため、他のものは立ち入らせぬよう‥‥そういう名目で、他のものには使わせん。都の親父殿のためにも、な」
そうして信康は鼻を鳴らすと、次に鋭く、一言言い放つ。
「それと、このことは他言無用だ。越に甲府、それに奥州‥‥どこに鼠が潜んでいるとも限らんからな」
●そして京都へ
江戸で集められた猛者達は月道を使って京都に向かうことになった。
本来なら京都におもむき、死人の群れをばったばったと倒すために大和に遠征するのが目的なのだが、彼らの思惑は違っていた。
「常に状況ってのは変化してる。その変化に乗り遅れるのは良くないことだ」
冒険者の一人が言った。
「京のこわもてを集めて、江戸からもこわもてをあつめてを集めて、大和へ遠征する。っとなると京都の警備が手薄になる。流石の新撰組や検非違使達もそうそう京都全てを守れる訳じゃない。そこで俺達は京都に行ったら、京都の見まわりのお手伝いをするって寸法だ。別に敵は死人の群れだけじゃねぇ。これを気に、便乗で火事場泥棒だって出てもおかしくない。市中見まわりから金持ち商人の店の警護、ひょっとしたら関所の護衛の仕事だって回ってくるかも知れない。下手に適地に赴くよりは、こっちの方が金になるしな」
冒険者達はそう言ってにたにた笑った。
「だが、ちょいと人数が足りないな。取り分は増えるが危険が増すのはナンセンスだ。もう7〜8人募集した方が良いんじゃないな?」
そんな訳で冒険者ギルドに依頼が発生した。
『京都の治安を守るために手を貸して下さい。交通費、食費、酒代全額支給。現地解散』である。
●リプレイ本文
●【京都救援】『オークを従えし魔物』京都へ
月道と言うのは便利な物で、満月が出ている間の6分間しか開かぬが、一瞬で目的場所に着いてしまう便利な魔法である。(少々違うが)
巨大な大八車をグルグル押して運ぶ運ぶ。いちにのさんで大量の物資が江戸から京都に運び込まれた。
普段なら一般人の使用は殆ど出来ないだけに、チョット嬉しい初体験である。
「ここが俺達の泊まる宿だ。大部屋雑魚寝だが、まぁ気にすることはないやな」
京都南部、朱雀門外にある安宿。
安宿と言ってもネズミが出るほどではない。そこそこの冒険者が利用するような木賃宿である。
「食事は2回、朝と晩が出る。たいしたおかずは期待出来ないが、飯はお代わり自由なんでどんぶり10杯だって喰って良いぞ。風呂は無いが近くに湯屋(銭湯)もある。まぁ良いところ蒸し風呂か戸棚風呂だと思うが、汗を流すには良いと思うぞ。こいつは夕方から夜半まで営業しているらしい」
そう言って男はポンポンっと斉藤志津香(ea4758)の肩を叩いた。
その手をひょいとなじりあげられて嬉しそうな悲鳴を上げる。
「あんたらもウチらとご同業‥‥冒険者ってのは規則や決まりが守れないでおなじみだ。何処へ行くだの何をするだの詮索はしないさ。決められた6日間の間、京都の町をぶらぶらしつつも警護に当たってくれりゃそれで良い。お偉いサンの話だと、この後の大和との遠征の為の招集らしい。金が欲しくて腕に覚えがあるなら、大和まで化け物退治に行くといいぜ。まぁウチらは手薄に成った京都の護衛を買って出るけどな」
リーダー格の男はそう言ってにんまり笑った。
「私は少々寄るところがある。夕刻までには戻る」
がちゃりがちゃりとヘビーアーマーにヘビーヘルム。クレイモア片手にアリサが外に出て行く。ちなみに月道潜って1刻少々。現在丑三つ時な時刻である。
「何処へ行くんだ? アリサ?」
風間悠姫(ea0437)がアリサに質問する。
「ん? あぁ、オークロードの情報を収集に‥‥な」
そう言ってアリサは宿屋の外へと歩いていく。
風間悠姫も取りあえずそれについてゆくことにした。
●月明かりの中で
月明かりの中で彼女アリサは河原に座り込んで動かない。
全身を鋼のボディに包み、クレイモアを背負った彼女は、何となく月明かりの中無機質で神秘的な存在にうつる。
風間悠姫はそんな彼女の隣でジッと座っているだけだった。
半時ほど立っただろうか、一人の少女がそんなアリサに近づいてくる。年の頃は13〜15才程度、身長は130〜140程度。黒髪が光の加減で紫に輝いたりもするツインテールお下げ髪の少女である。身なりはそれなりに良い物を着ている。京染めの着物だろうか。
「まったか?」
少女は言った。
「いや、半時ほどだ」
アリサは応えた。
「っで、どうする? 我々に合流するのか? 私はおぬしが傘下に入れば心強いが」
少女は言った。風間悠姫が話の流れが分からず見守る。
「おぬしが‥‥この一撃を‥‥止めることが出来たら‥‥な」
アリサは不意を打った。
いきなり立ち上がると、座っている少女めがけてクレイモアを振り下ろした。
両手で握りしめたクレイモアのEXスマッシュの一撃である。
少女は立ち上がると、両手でアリサの手首と手を押さえつけ、振り下ろされるクレイモアの攻撃を押しとどめた。
風間悠姫は目をぱちくりさせながらその光景を見つめていた。
「アリサ‥‥その人は?」
風間悠姫がアリサに質問する。
「西近江領主‥‥鋼鉄山猫隊隊長の神楽坂紫苑さんだ」
言ってアリサが刀を引いた。
「ならば今度は私に一撃与えてみよ。この鎧を貫いて、私に有効打を与えたらうぬを主君と認めよう」
その言葉に紫苑は微笑を浮かべると静かに印を結ぶ。
本当ならオーラは印など必要無いが、それでも彼女は精神集中の為に印を結ぶ。
彼女の右手の中にオーラで出来た剣が生まれる。
「必殺!! 神風ボンバー!!」
オーラソードで発せられるソードボンバー。彼女はそれを神風ボンバーと名付けていた。
アリサが盾を構えそれを受け止めようとするが、その疾風はシールドを貫通し、鎧を素通りし、直接肉体にダメージをたたき込むとんでも無い技である。しかも武器では受けられない。魔法の剣でもオーラを付与した剣でも受けられないのである。反則くさい。
「確かに文字通り鎧を貫いて私に有効打を与えたことを認めよう‥‥。貴君の傘下に入る事を約束する‥‥。‥‥風間はどうする?」
不意に話を振られて目をぱちくりさせる風間悠姫。
「少し‥‥考えさせてくれ」
彼女はそれしか言い残す事が出来なかった。
●夜の怪しい店
「魔法の剣が欲しいって? それならこの銀のナイフなんてどうだい? これだって十分怨霊が切れるぜ?」
行商人にそう言って勧められたのは銀のナイフ確かにこれなら怨霊が切れるだろう。
「アリサ。風間。何してるんだ?」
真夜中に提灯片手に歩いているのは礼月匡十郎(ea1352)。どうやら市中の見まわりらしい。彼は昼間ではなく、夜を狙って見まわりをしている。しかし、アリサと言い、彼と言い、存在自体が結構怪しかったりするのは大丈夫なんだろうかと心配になる。
「おーい、こっち回ってみようぜ?」
物見遊山は気分で礼月を誘うのは三菱扶桑(ea3874)京都の町を一つ一つ見物しながら回っている。もっとも夜なので有名所は素通りであるが。
「自分は暫く京見物したら江戸に戻る予定だから、今の内に見物しておくのさ」
三菱扶桑がそう言って笑顔を振りまく。
「私はしばらく京都で働くことに成った。鐵とか言う奴を、一度生で見てみたいしな」
そう言ってアリサがにんまりと笑みをこぼす。
「しかし、アレだな。巡回と言っても何も無いと暇だな。活躍の場も無いし」
礼月匡十郎の言葉に三菱扶桑が笑いながら応える。
「はっはっはっ、何言ってるんだ。見まわりってのは犯罪抑止だろ? じゃぁ俺達が活躍しないって事は、事件が何も起こらないってことで、俺達の行いは大成功大活躍って事じゃないのか?」
言われてみればごもっとも。犯罪者を捕まえるのが仕事じゃない。犯罪が起きないように見回るのが仕事なのだから。
●酒場にて
「冷や酒を一杯。それに自慢の鮒寿司をもらおうか?」
斉藤志津香(ea4758)が酒場にて升酒に鮒寿司で一杯引っかけながら情報収集を行っている。
巡回する前に情報を仕入れるのは必須。
そう考えて色々と彼女は情報を仕入れている。
目に見える物だけにとらわれていると痛い目に遭うことを知っているからである。
情報を考慮し、ソースで分け、それを管理する能力。それが情報戦では必要なのである。
「取りあえずは、現状では京都は新撰組、その他の巡回組みが治安維持に貢献している‥‥。京都は度重なる不死属の怪物の攻撃に寄って治安が悪化している‥‥。っと」
斉藤志津香は情報を仕入れつつ巡回をすることにした。
「志津香、置いていかないでくれ」
同様に情報を仕入れていた鷹碕渉(eb2364)が彼女の後を追って、酒場を後にする。
2人は昼間の京都を巡回することにした。
それが最も効率的であると判断したからである。
「何も起こらないねぇ。もっとも大事が起こったら2人じゃ対処出来ないけどね」
斉藤志津香がそう言って笑みを浮かべる。
酒場での酒の酔いを覚ましながら、道では無く河原に沿って移動している。
何も起こらなかったことは幸いと言えるだろう。
●昼間の巡回
「何分、京は初めてですから。私たちがトラブルの元に成らないように十分注意しなければ成りませんねぇ」
島津影虎(ea3210)が茶屋で麦飯片手にぽつりとつぶやく。
時刻は正午を回った当たりであろう。にぎりめしや麦飯で腹を埋める。昼飯代は金子でもらっている。無論安く上げればその分手数料が増える。
「時に‥‥近江の豚鬼に付いての情報ですが‥‥それをよく知っていると言う人物に会うことが出来るそうです‥‥。もうすぐここに来てくれると思いますよ」
島津影虎の言葉に黒畑丈治(eb0160)がにっこり微笑む。
「そうか、それは良い。私は強くなりたい。オークロードよりも。コアギュレイトもある。ホーリーもある」
そう言ってから黒畑丈治が麦飯にお茶をかけざくざくとかき込む。
「‥‥甘いの。コアギュレイトの弱点をおぬしは知っておるか?」
不意に彼は声をかけられた。相手は13〜15才程度の少女。身長は130〜140程度。黒髪が光の加減で紫に輝いたりもするツインテールお下げ髪の少女である。
「弱点‥‥とは?」
麦飯を飲み込むと黒畑丈治が少女に質問した。
「コアギュレイトは白魔法じゃが、射程距離はとても短い。一瞬で手が届くほどの格闘距離に近づき、10秒間の無防備な詠唱を行う事で発動する。無論途中で攻撃を受け詠唱に失敗すれば術は発動せん。かといって敵と距離を取れば術は届かん。目の前の敵を押さえつけてくれるような仲間が居なければ使えない‥‥っということじゃよ」
そう言って少女は微笑した。どこか大人びた笑顔である。
「おまえさん何者だ? その博識、その身のこなし、タダの少女とは思えん。見た目と中身は別物‥‥っと言う奴か?」
風鳴鏡印(eb2555)が少女に問いただす。その質問の問いに少女は笑顔で答える。
「女性の年を聞くのは野暮というものじゃよ少年」
彼女の言葉に島津影虎が付け足す。
「彼女は近江の豚鬼退治の頭目‥‥いえ隊長をしておられる神楽坂紫苑さまです」
島津影虎の言葉に風鳴鏡印が目をぱちくりさせる。
若い若すぎる。武家か公家かは分からぬが、あまりにも年不相応である。
「まぁまぁ焦るな若者達よ。ぬしらが近江の豚鬼にそれほど執着しておるのかは知らぬ‥‥が、わらわも鬼ではない。茶を一杯飲む間くらいになら話につきあってやろうではないか」
彼女はそう言って、3人に笑みを浮かべ静かに口を開くのであった。