『謎の温泉教団の温泉宿6』
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■シリーズシナリオ
担当:凪
対応レベル:フリーlv
難易度:やや難
成功報酬:0 G 71 C
参加人数:10人
サポート参加人数:-人
冒険期間:11月28日〜12月04日
リプレイ公開日:2004年12月07日
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●オープニング
冬がやってきた。雪がチラホラ降り始めた初冬の中で温泉教団の温泉宿も客を集めている。
相変わらずの説明で申し訳ないが、謎の温泉教団は、八百万の神を信仰する宗教団体で、温泉には神が住んでおり、温泉に入ることが教義と成っている団体である。
温泉に入るための礼儀作法には厳しいがそれ以外はおおむねざっくばらんである。
彼らは温泉寺に住み、檀家の者達も温泉へといざなう。
温泉寺の裏はもちろん温泉である。温泉に入り身体を癒し、心を癒し、平和に生きていこうと言うのが彼らの考え方である。
石灯籠の明かりの中でのんびりと温泉に入るのが彼ら流のやり方だ。
温泉脇には屋台が数軒並んでいる。甘酒や蜜柑酒、季節の栗や梨、苺などが売られている。
秋の味覚松茸も、裏山のでたんまりと取れ、甘酒を片手に土瓶蒸しを楽しむ人達、山の清流で取れた虹鱒を使った鱒寿司に甘美の声を上げる者達、鯨肉のステーキ丼を笑顔で頬張る人達。野生の黒豚の肉で作った焼き豚(串焼きの様な物)を頬張り満面の笑みをあげる物達、謎の温泉教団の温泉宿は温泉を楽しみながら紅葉と食欲の秋を満喫する人達でいっぱいであった。
無論温泉と女体を楽しむ者達も多い。
うら若き乙女によるマッサージのサービスを堪能することも出来るサービスや、真夜中に女性従業員の入浴を覗くことが出来る覗き部屋なども好評で連日連夜客足の絶えない状況が続いている。
竹林の温泉の中では竹のニオイ香しく温泉を満喫することが出来る。温泉宿としては大繁盛を納めていた。連日連夜の満員御礼に嬉しい悲鳴は鳴りやまなかった。
そして順風満帆。遂に温泉宿の専用の宿屋(別館)が建築され、お客の入りも前とは比べ物にならないほどの入りに成っていた。
所が、ここに来て、宿の女将彩花が過労で倒れてしまった。
布団の中から指示を出すが、それでも宿の方は人手が足りずにてんてこ舞いの状況である。
これから温泉宿をフル稼働してお客さんを捌かなければ行けないというのに人手が足りない。
そこで女将さんは布団の中で有る手段を思いついた。
冒険者に旅館の運営を手伝ってもらおうというのである。
こうして冒険者ギルドに新たな依頼が舞い込んできた。
『倒れた女将さんの代わりに温泉宿を切り盛りして下さい』である。
●リプレイ本文
●謎の温泉教団の温泉宿6
「いらっしゃいませー。温泉教団の温泉宿へようこそ〜」
如月あおい(ea0697)がパリっとした着物でお出迎え、パッと見若女将なのではないかという錯覚さえも憶えてしまう。ココは山奥温泉教団の温泉宿である。宿の名前はない。
派手な宣伝もしていない。信者や檀家の口コミと地元の人達の憩いの場として発展している温泉宿である。ちなみに現在名物は考案中。温泉の売りは昼間入れる岩風呂。一日中入れる竹林風呂。そして夜中にコッソリ岩風呂を覗く事が出来る高台の覗き小屋(昼間は閉まっている)。それに美味しい料理の数々である。
最近は本格的な温泉宿も増築されて順風満帆に営業していたが、その帆のど真ん中に穴が開くようにして、教団幹部の彩花が過労で倒れてしまった。
それを冒険者と信者達が切り盛りしている。
●眠る彩花
宿屋の奥まった少し大きめのい草薫る和室にて、温泉教団幹部彩花は眠りについてた。熱が有る。っと言う風では無いが、身体がもの凄くだるく動けないのだという。
部屋には仄かに香を焚き、身体を落ち着かせる様にはしてあるが、気ばかり焦る彩花は、布団の中でそわそわしていた。
「今は大事を取って身体を休めてください。彩花さんにしか判断の付かない事は沢山有ります。私たちが手足に成りますから、どうか今は身体を休めて、私たちに指示を出してくださいな」
鳳刹那(ea0299)がそう言って彩花にお粥を差し出す。彩花はお粥を少し啜りながら、ふと鳳を見つめる。
「ありがとう。私がこんな風に成らなければ‥‥」
そう思い詰めて小さなため息をつく彩花。そんな彼女の背中を鳳を優しく撫でてあげる。
「そうだ、宴会を。私が居ない間は宴会を開いて場を盛り上げていてくださいな」
彩花が言うとチョット気まずそうに鳳が目線をそらす。
「それが‥‥今回は‥‥宴会芸を仕込んでる人が‥‥殆ど居なくて‥‥」
その言葉に彩花の表情が曇る。
「あぁでも名物はみんな考えて来てくださってますよ。温泉饅頭とか温泉卵とか‥‥あとはサウナとか茶室とか‥‥」
そう言って彩花を慰める鳳。
「サウナや茶室は一朝一夕に作れる物じゃないから、直ぐにと言う訳にはいかなかったけど、一応温泉饅頭と温泉卵は職人に言って作らせては見たんだけど‥‥」
そう言って手をパンパンっと叩くと温泉教団の下女が二人入ってくる。
一人は手に土鍋をもう一人はお膳をもって居る。
土鍋を空けると中には温泉卵‥‥では無くゆで卵が入っていた。
かつお節でダシを取り、大根と卵とが一緒に煮込まれている。
「卵は‥‥ウチで飼ってる矮鶏の卵を使ったんだけど‥‥やっぱり量産が効かないんで、大根とはんぺんと一緒に煮込んで見たんだけど‥‥それと『おんたま』だけだと寂しいから『くんたま』も作って見たんだけど‥‥」
確かに卵の色の違う物が中に入っているが、大根とはんぺんと一緒に煮たら煮付けというか、おでんである。コレは間違いなくおでんである。
「それと‥‥温泉饅頭も作ってみたんだけど、もの凄くコストパフォーマンスが悪いのよ」
そう言って差し出されたのはお膳に乗った砂糖をたっぷり使ったあんこで作られた温泉饅頭である。木箱に入った6個入りでそれはそれは甘くて美味しそうである。しかもお饅頭一つ一つに『温泉教団』っと烙印が押されている。
「へぇ、コレは1箱いくらかかったんですか?」
そう言って一つをひょいとつまんで味見をする鳳。
「箱も入れると‥‥2両‥‥」
その言葉に思わず吹き出す鳳。どう考えてもコストパフォーマンスがおかしい。
「だって砂糖が1kg1両するし、良い砂糖と職人使ってるし‥‥箱も桐の良い物を使ってるし‥‥」
言い訳が続くが全然売り物に成らない。作るのに2両かかってたら売るとき何両で売ればいいのだろう? もの凄い疑問である。
●温泉にて
今日も順風満帆に営業している温泉教団の温泉宿。その客層は老若男女取り混ぜて様々。一応に山奥なので年寄りは少ないかと思いきや、湯治なので年を取ったお客さんも多い。
昔は山道にオーク(豚鬼)やゴブリン(小鬼)が出回っていて山賊さえも寄りつかない古びた山寺だったのだが、冒険者のおかげ(?)で今ではずいぶん治安も良くなっている。
「いらっしゃいませー。お背中お流し致しまーす」
巽弥生(ea0028)が岩風呂にて、女性客の接待を行っている。基本的には男女混浴のお風呂である。男性客女性客入り乱れている。では男性客のお相手はと言うと‥‥
「はーい、お背中お流ししますねぇ」
野村小鳥(ea0547)が担当している。二人とも褌にタンキニ風の湯浴み着を着込んでの湯女姿である。ちなみに、布は極薄なので肌が透ける大サービスである。
そんな脇をすり抜ける様にして不破恭華(ea2233)が風呂桶や片手に風呂場の掃除をしている。彼女も同じ服装なのだが、胸の大きさが圧倒的に違う。溢れんばかりの巨乳をは
巽や小鳥に取ってはとても魅力的な胸なのであるが、等の本人は可憐さに欠けるじゃまな胸としか思っていない様子。それでも男性客の目線を釘付けにしているのだが、本人は全くそれに気づいていない。せっせかと雑用に回っている。
「仕事が終わったら夜温泉に入れるっていうし、たっぷり働くか‥‥」
そう言って彼女はモクモクと雑用をこなしていた。
●美味しい料理が食べたいな
温泉宿の売りは1に温泉2に美味しい料理である。
いつもなら彩花が陣頭指揮を執っているのであるが、今回はそれがない。それを補う為に神山明人(ea5209)が力仕事を買って出た。実の所今まで全然紹介されていないが、謎の温泉教団は結構な人数がココに詰めている。一日に何十人ものお客さんを捌いているのであるから台所にも沢山の男達が仕事をしている。神山明人はそんなメンツに混じり、薪割りや水くみの目立たぬ仕事をこなしていた。
「はい。団体客さま。ご案内致します。こちらへどうぞ〜」
お客の接待と各所への案内を担当しているのは奉丈遮那(ea0758)。接客から力仕事まで各所転々と移動している。それだけ彩花が抜けると穴だらけなのである。
「それ終わったら、大広間に料理運んでもらえるかな?」
奉丈が神山に指示を出す。神山はokサインを送って厨房へと潜っていった。
「あっ料理運びなら私がやりますよ」
金髪で青い瞳のエルフ娘、橘命(ea8674)が荷物運びを買って出る。普通ならエルフの娘が着物を着て料理を運ぶ等と言うことは希である。とても珍しい光景である。お客さんの中には喜んでくれる方も結構おられる‥‥だが、温泉教団の面々はそれを平然として受け止めている‥‥なぜならば、ココほど多種多様にいろんな人種、いろんなモンスターが訪れる温泉も珍しい。時にはバグベアやオークが温泉に入りに来ることもある。ここで珍しいと言うレベルはおそらく、河童やマーメイド以上のレア人種を指すのだろう。
故にハーフエルフもそれほど珍しがられない。
「言葉が通じるなら問題ないね」
っとあっさり受け入れられている。
そんなわけで、シルマリア・ギーン(ea8786)はおおらかなのか無頓着なのかよく分からない温泉教団の面々に受け入れられている。本人の希望で接客業から離れ、厨房で雑用の仕事をしているが、周りからの視線は全然痛くないのである。
●湯治
激務の様な温泉の仕事が終わり、夜もとっぷりと暮れた頃。石灯籠に蝋燭の明かりが灯る。
鳳刹那に肩を仮り、彩花が岩風呂の温泉へと足を運ぶ。この時間の岩風呂は教団員と従業員の為に解放されている。彩花が湯治としてお湯に浸かるのは、コレが始めてかも知れない。
「ふぅ、たまにはお客さんの立場に成って温泉に入るのも良いですねぇ」
溢れんばかりの胸をお湯に浮かべながら彩花が湯に浸かる。そんな彼女をいたわるようにして鳳刹那が一緒に湯に入る。ほぅっとため息をついて温泉を嗜んでいると。彩花の胸に勝るとも劣らない不破恭華がざぱんとお湯に飛び込んできた。それを見て微笑を浮かべる面々。
「いやぁ疲れた。今回は慣れない肉体労働で筋肉がパンパンだよ」
そう言って胸や腕をぶんぶん振り回しながら不破恭華は温泉を嗜む。
「不破さん。温泉に入るには礼儀作法と言う物が有ってデスねぇ。マズお湯を浴びて‥‥」
巽弥生が色々説明しようとしている所を彩花が制した。
「弥生さん。今日の所は見逃して上げましょう。後でゆっくり教えてあげてくださいな」
そう言って笑みを浮かべる彩花。巽弥生もその笑みを見て、やれやれと腰に手を当て大きくため息をついた。
そんな彼女の脇にぴったりくっついているのは小鳥。実はこの時間は上の覗き小屋からこの温泉を覗くことが出来る。故に女性陣が皆温泉に入っているのが、小鳥は巽弥生が覗き小屋から覗かれないようにしっかり自分の身体を盾にしてガードしているのである。
ちなみに、電気の無いこの世界であるからして、温泉の湯気とモヤの中、月明かりと石灯籠の明かりに照らされた、うっすらとした影を遠く離れた覗き小屋の覗き穴から覗くので、殆ど見ることは出来ないのだが、覗きをしているというシチュエーションがたまらないらしい。昼間混浴なのだから覗く必要など無いのではないかという、野暮な質問は言いっこなしである。
「ごめんなさいねぇ。私が元気だったら、マッサージの一つもしてあげるんだけど」
彩花が不破を見つめ申し訳なさそうな顔をする
「良いですよ。元気な時にまたお願いしますから」
そう言ってにっこりほほえみ返をする不破恭華。
「そう言えば橘命さんって温泉教団って初めてなんですよね? どうですか? 感想は」
如月あおいの質問ににっこり微笑む橘命。
「えぇ入信することに決めました」
唐突に入信を希望する彼女に笑顔が固まる如月あおい。
そんなみんなのやりとりを見てすっかり狂化で女性化しているシルマリア・ギーン。普段男っぽい彼女であるが、水(お湯)を全身に浴びると口調も仕草も女性化してしまう。
「ハーフエルフってのは半分は人間の血が入ってるんですか? ほなウチと一緒ですなぁ。ウチも半分は関西の‥‥なにわ商人(あきんど)の血が流れてるんですよ」
彩花のよく分からない受け入れで一同も彼女と和んだ感覚に陥っている。
「しかし、彩花さんの胸も大きいけど、不破さんのも大きいですねぇ」
鳳刹那が二人の胸を見比べる。それに釣られて女性陣が二人の胸を食い入るように見つめている。特に小鳥や弥生などはその大きさに圧倒されている。
「今日は特別だから触っても良いわよ? ねぇ不破さん?」
彩花が不破に同意を求める。
「あぁ女性同士だし‥‥私は問題ないが‥‥」
そう言うと堰を切った様に二人の胸を触りまくる女性陣。
「そう言えば不破さんも温泉は初めてなんですってね。これからもごひいきによろしゅう」
そう言った彩花の声は女性陣のわいわいとした騒ぎの中にかき消されていた。
どっとはらい。