【新撰組三番隊 番外編1−4】

■シリーズシナリオ


担当:

対応レベル:7〜11lv

難易度:難しい

成功報酬:4 G 55 C

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月23日〜11月29日

リプレイ公開日:2005年12月01日

●オープニング

●剣林弾雨の嵐の中で。
 月明かりの中で、真っ赤な血しぶきが空に舞う。
 閃光一閃の刹那の刃。どす黒い血が地に流れる。
 闇に舞うそれは漆黒の忍者刀。
 返り血で真っ赤に染まった着物‥‥。月明かりで銀色に輝く黒髪。
 人切り‥‥河上彦斎は‥‥今日も人を斬っていた。
 同時に3人‥‥いや‥‥4人‥‥か。
 先ほどまで人と呼ばれていたそれは、今では無惨な肉塊となり、夜の闇に溶け込んで行く。

 11月の京都。寒さが肌に突き刺さる。こんな日は早く帰って、温かい酒を煽るに限る。
「おにぃさん。一杯私とつきあいませんか?」
 闇の中から静かに声が聞こえる。
「お前が今度の依頼主か?」
 河上彦斎、臆する事無く闇の中に言葉を交わす。
「志士の増長‥‥はなはだ許し難し‥‥憂国の私情‥‥抑えがたく‥‥っとでも言っておきましょうか?」
 闇の中のそれは人の形を取って姿を表した。
 それは人に有らざるほどの絶世の美女である。
「ご冗談を‥‥。っで、俺に何か様か?」
 彦斎はそう言って苦笑を浮かべる。
 女はそんな彼に『キリモチ』を4つほど投げて渡す。
「今回の仕事量‥‥っと次の依頼料の半金です」
 そう言って彼女は笑みを浮かべた。
「これだけの大金‥‥次は一体ダレを殺せと?」
 河上彦斎がそう言って女に目線を送る。
「相手の名は斉藤一‥‥。新撰組三番隊を率いている男です‥‥。貴方に殺れますか?」
 そう言って彼女は笑みを浮かべた。
「殺れと言われれば殺るさ。相手が斉藤だろうと沖田だろうと‥‥な」
 そう言って彼は冷たい笑みを浮かべた。
「なら‥‥お話しましょうか? 私もお手伝いしますから」
 彦斎と女は静かに闇の中へと消えていった。

●斉藤一苦悩する。
 斉藤一は屯所の一室で悩んでいた。
 最近起こる謎の辻斬り、それも1人や2人では無いらしい。
 新撰組一番隊も大きく被害を受けて人員が足りない。
 三番隊からも補充人員を送ってやりたいのは山々だが、斉藤一の命を狙う物、妖怪変化の類、ちまたで起こる辻斬り騒ぎ、どれをとっても人が足りない。

 さらに先の戦いで2人の局長の間に挟まれるような形になっている斉藤。
 土方副長から静かに『度を過ぎるなよ?』っと半分笑いながら言われながらも、彼の立場は、他の組員から見れば、近藤局長と芹沢局長の中でどっち着かずの状態に写る。
 新撰組の中での立場‥‥事件が妙に交差しているのである。

 ドッドッドッドッ!
 勢い良く廊下を走る音が聞こえる。
がらっとふすまを勢い良く開けて、三番隊組長補佐の小春が勢いよく部屋に入ってくる。
「斉藤さん! 温泉宿に遊びに行きましょう!」
 唐突にあまりの唐突さに、お茶を吹きながら、あぐらをかいたまま倒れる斉藤。

「今それどころじゃないだろう!」
 流石の一撃に目眩さえ感じる斉藤。
「何言ってるんですか! 今だからコソですよ! 琵琶湖に船浮かべて、雪見酒が美味しいですよ!」
 流石に言葉に詰まる斉藤。
「いや、俺の今の置かれている状況分かってるか?」
 斉藤くんがそう言いながら小春に詰め寄る。
「副長さまに冷たくあしらわれて、命狙われてるんでしょう? ッというわけでワザと油断してる所を見せて、暗殺者をおびき出すんですよ。敵を倒して副長に良いところを見せられて一石二鳥でしょう? 暗殺者が辻斬りの犯人なら一石三石くらいに成りますよ?」

 納得出来ないが、なんか上手く丸め込まれているご様子。
「だが、それでは三番隊から人を選抜出来ないぞ? 警戒が厳重なら敵も打ってでないだろう?」
 斉藤の言葉に小春が微笑む。
「大丈夫。そこは冒険者を雇って『お客の振りをさせて斉藤さんの警備』をして貰えば良いんですよ。っと言うわけで私と斉藤さんの2人旅決定!」

 っと言うわけで、半ば強引に温泉宿で湯治を楽しむことに成った。
 しかも謎の温泉教団の温泉宿ご指名である。

 そんなこんなで斉藤さんの護衛募集の依頼が内密に冒険者ギルドに依頼された。
 深く静かに隠密せよ‥‥である。

●今回の参加者

 ea0020 月詠 葵(21歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea1765 猛省 鬼姫(31歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea3207 ウェントス・ヴェルサージュ(36歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea8616 百目鬼 女華姫(30歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 eb2064 ミラ・ダイモス(30歳・♀・ナイト・ジャイアント・ビザンチン帝国)

●リプレイ本文

●【新撰組三番隊 番外編1−4】
「温泉温泉楽しいな〜♪ あっ、違いますよ。敵をおびき出す作戦ですよ! 作戦〜♪ 決して斉藤さんをダシにして温泉に来たかった訳じゃないですよ〜。あっ、甘鯛のお代わりお願いしま〜す」

 謎の温泉教団の温泉宿にて、食事を楽しむ小春。
 真っ昼間からお銚子三本。鮎のお刺身に甘鯛の塩焼。蟹雑炊などが並んでいる。
「‥‥本当か? 小春」
 斉藤の言葉に返事はない。
 甘鯛の塩焼きを蟹雑炊の中に居て、生卵落として醤油をかけ、それをガツガツと食っている。
 小春はもりもりと食事を取っている。

 ウェントス・ヴェルサージュ(ea3207)が斉藤達の隣の部屋を取る。
 向かい部屋は無い。廊下と窓に挟まれているからだ。
 廊下の向こうが露天風呂である。
「綺麗なおねぇさんが入ってますねぇ。女将さん。酒と‥‥料理を頼む」
 ウェントスに言われて女将が料理を運ぶ。
 外は2mの雪が積もっている。
 高台作りに成っているが、それでも窓の外は雪だらけである。
 もし襲撃するなら雪をかき分ける事になる。
‥‥っとなると、温泉側からの襲撃‥‥っが好ましい。
 彼は温泉を楽しんでいるわけではない。廊下の向こうの湯気のさらに向こう。
襲撃する物の気配を探していたのである。
「あっ、料理持ってきました」
 ミラ・ダイモス(eb2064)がそう言って鍋を持ってくる。
 中に入っているのは大根‥‥熱々のおでんの様だ。
 2人は斉藤の隣の部屋で回りの様子を窺う係りの様である。



「さて、私お風呂行きますから‥‥斉藤さんも準備してくださいな」
 腹一杯に飯を食い、ご機嫌な小春がそう言って着替えとタオルを準備する。
 斉藤はそんな小春の顔を不思議そうに覗き込む。
「一緒に入るんですよ! 混浴ですし! 狙われてるんですから一緒の方が良いでしょう?」
 小春に言われて渋々と用意をする斉藤。
 腰から刀が離れる風呂は‥‥彼にとって最も危険な場所になりえる。

 遊女に化けた猛省鬼姫(ea1765)とかぶろだちに化けた月詠葵(ea0020)が風呂にやってくる。
 着物を脱ぎ、風呂に入る猛省鬼姫と、脱衣場で待つ月詠葵。
 しばらくして斉藤と小春が脱衣場に到着する。
 ぺこりと頭を下げる月詠葵に斉藤と小春が頭を下げる。
 普通は人目が有れば抵抗が有る物なのだが、そそくさと服を脱ぐ小春。
 月詠葵や斉藤の前でも、恥じらう心は無いらしい。

 温泉の湯気が立ちこめる露天風呂。気温−2度。髪の毛についたお湯が髪の毛ごと氷る寒さ。
 温泉教団の習わしで湯の中には身一つ。手ぬぐい一つ持って入ることは許されない。
斉藤が躊躇するなかで、小春はそそくさと、湯に飛び込んだ。
「温めだけど良い湯加減ですよ〜。斉藤さんも早く〜」
 小春の声が良く響く。その声に合わせて、猛省鬼姫がゆっくりと近付いてくる。
 斉藤も湯に入る。目の前の猛省鬼姫を舐めるように見つめる斉藤。
「女は化ける‥‥っと言うけど本当だな‥‥」
 意味深な発言をする斉藤。
「‥‥馬鹿、今は遊女なんだ‥‥変なこと言うな‥‥ばれるだろ」
 猛省鬼姫がそう言って斉藤をキッと見つめる。
「はいはい、それじゃ娘さん‥‥お酌をしてくれないか?」
 そう言ってお銚子と杯を見せる斉藤。
 遊女として酒の相手をするのは当然のお仕事である。
 そして、斉藤が彼女のお尻に手を回す。
「こういうとき‥‥俺が女に手を出さないのは‥‥不自然‥‥だろう?」
 そう言って彼女のお尻をお湯の中で撫でる斉藤。
「あら‥‥行けませんわ‥‥、お戯れが‥‥過ぎます‥‥」
 必死に堪える猛省鬼姫。
 斉藤は何喰わぬ顔で彼女の胸にも手を伸ばす。
「こんばんどうだい? 娘さん」
 聞こえるような声で彼女を誘う斉藤。
「いえ、‥‥夜は別な‥‥もっとべっぴんさんを用意してや‥‥います」
 しどろもどろに成りながら打ち合わせ通りに事を進ませる猛省鬼姫。
 しばらくして斉藤と小春は湯からあがってゆく。

 百目鬼女華姫(ea8616)が遊女に化けて斉藤の部屋を訪ねている。
 ひそひそと声を出す百目鬼女華姫。ふすま越しに声が漏れ出す。

「あら、ずい分立派なモノをお持ちなのね?あたしに見せていただけない?」
「あぁ、俺の自慢の一品だ。ずいぶん使い込んでいるが、それでもまだまだ現役だ」
「まあ、すごく立派だわ。硬くてそれでいてしなやかで。そり具合なんかはさすがね」
「そう褒めたって何もでないぞ?」
「新撰組の殿方達って皆さんこんなに立派なものをお持ちなの?」
「さぁなぁ‥‥沖田の物は見せて貰った事はあるが‥‥俺のよりずっと立派だったよ」
「こんなモノで突かれたらたまらないわね」
「‥‥」

 なにやら怪しい雰囲気である。

「もし‥‥こちらは斉藤一殿のお部屋か?」
 夜分遅く‥‥ふすまの向こうで斉藤を訪ねる声がする。
「いかにもそうだが‥‥お手前は?」
 返事をするとふすまを開けて一人の男が入ってきた。
「河上彦斎‥‥っと申します。本日は斉藤一殿‥‥貴殿のお命を頂戴に参りました」
 三つ指ついて深々と頭を下げる河上彦斎。
 斉藤はそんな彼に会わせて一礼をする。

「この世に無用の悪を‥‥絶つ!」
 腰から刀を抜く斉藤一。
 正義の力が彼の身体から吹き上がる。
「悪に上下の区別無し!」
 疾風の如く間合いを詰める斉藤一。

 決戦開始の鐘が鳴る。

 猛省鬼姫が真っ先に飛び込む。
「俺の行く手を阻めば‥‥命は無いぜ?」
 腰の刀を抜く河上彦斎。
 2人の距離はほぼ0に近い。並の刀では間合いが近すぎて相手に有効ではない。
だが、しかし、鬼姫の武器は龍叱爪だ。至近距離でも威力は衰えない。
 トリッピングを利かせて攻撃を仕掛ける鬼姫。
「不知火抜刀術! 難攻不落の円の型!」
 刀を叩き付けるのではなく、身体を回転させ、至近距離から刃で擦るようにして相手を斬る。
 切り上げの一撃を食らって鬼姫の血しぶきが上がる。
 さらに反転して追撃の一撃を放つ。
 2発目の彼の攻撃に直接のダメージは無かったが、鬼姫の浴衣が粉々に砕け散った。
「暗器は‥‥無し‥‥か」
 河上彦斎が一瞬身体を流す。斉藤が平突きの一撃を放ったからである。
後方に3尺流れる彼を追うのは月詠葵。日本刀を構えて抜刀術の一撃を放つ。
 だが、それさえも転がるように避けて間合いを取る河上彦斎。
「お前はなんの為に剣を取る。金か? 名誉か? 正義の為か? この増長した志士の世を作ることが正義か? ならば、私の敵は‥‥正義そのものだ!!」
 言うが早いか刀を振り下ろす河上彦斎。斉藤が月詠葵との間に割って入って刀を受け流す。

 外に飛び出す河上彦斎。
 追いかけるように飛び出して行く斉藤一。

 一つ間をおいて、庭で大きな水しぶきが上がる。
 お互いの必殺技が激突したのであろう。

 温泉の海に浮かぶ斉藤。袈裟懸けにざっくりと斬られている。
 温泉が真っ赤に染まっている。
「大丈夫ですか! 斉藤さん」
 小春が温泉に浮かぶ斉藤を引き上げる。
「大丈夫‥‥ではないが、生きている。相手にも同様の深手を負わせたから‥‥しばらくは懲りて出てこないだろうよ‥‥」
 そう言って斉藤が苦笑いを浮かべる。
「斉藤しっかりしろ! お前が死んだら‥‥俺の腹の中に居るお前の子は‥‥」
 猛省鬼姫がそう言って抱きかかえる。
 斉藤はそんな鬼姫にも笑みを浮かべた。