【唄って踊れる猫耳巫女 1】

■シリーズシナリオ


担当:

対応レベル:3〜7lv

難易度:やや難

成功報酬:3 G 19 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月03日〜07月11日

リプレイ公開日:2005年07月11日

●オープニング

 京都左京区区外地域‥‥っと新撰組が呼んでいる京都の東。
 そんな場所に一軒のチョット大きなお店がありました。
 1階はお食事処とお風呂やさん。
 2階は連れ込み宿と旅籠に成っている宿屋さん
 ご飯を食べてお風呂に入って寝る‥‥っと言う複合施設にもにたお店である。
 そのお店の名は『近江屋』。
 近江の特産品等を売るのが目的として作られた半官半民おお店である。

「はてさて、最近売り上げが少ないご様子ですねぇ」
 雇われ店長の猫耳巫女さまは帳簿片手に少々困ったご様子。
 お食事処の売り上げが少ないらしい。
 お食事処の看板料理は近江で取れたそば粉を使った近江そば。
 そして近江牛の美味しい赤身の部分を堪能する近江牛のスキヤキである。
 所が、京都ではそばよりうどんの方が人気である。
 しかも、連日の暑さによりスキヤキの売り上げは激減。もとより京都の人は獣の肉を食べる習慣が無いので全然売れてない。

「こんな時こそ御神託‥‥猫耳の神様の言うとおり‥‥」
 猫のミーコちゃんとなにやら相談しつつ御神託を待つ猫耳巫女様。

「きましたー。夏物の衣装で夏らしいメニューを出せば良いのです♪」
 しばらく考えた後に冒険者ギルドに依頼がやってきた。

『夏っぽい衣装に猫耳付けてお客さんの呼び込みやお店の手伝いをやってください。
 ついでに夏っぽいメニューも一緒に考えてきて下さい。(一人一個)』

●今回の参加者

 ea1966 物部 義護(35歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea5517 佐々宮 鈴奈(35歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)
 ea7662 焚 雅(24歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 eb0494 高町 恭華(30歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 eb1795 拍手 阿義流(28歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb1798 拍手 阿邪流(28歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●唄って踊れる猫耳巫女 1
「いらっしゃいませ〜♪ 近江屋へようこそ〜♪」
 店を訪れた冒険者ご一行に元気よく声をかけたのは、他でもない、猫耳巫女であった。
「いや、依頼を受けてきた冒険者なのだが‥‥」
 物部義護(ea1966)が冒険者ギルドで依頼を受けてきたことを説明する。
「はい、存じ上げております、6名様ですね? 奥の席へどうぞ」
 お昼時だと言うのに、室内はがらんとしている。
 一番奥のお座敷部屋で6人は大きな卓を囲んで、座布団引いてのんびり座った。
「え〜と、それでは、今回の依頼のおさらいとして、何故ウチのメニューが売れないのか、試しに食べてもらいましょう」
 猫耳巫女様がそう言って6人全員の前に熱々のきつね蕎麦を出す。
「ちょっとまて!! ざるそばじゃないのかな?」
 佐々宮鈴奈(ea5517)が意表を突かれて思わず声をあげる。
「はい、当店のおそばは熱々のきつねそばに成っております♪」
 ‥‥何か最初からぶっちぎりで間違ってる。
「つまりあれじゃな? 暑いときに熱い物を食べて汗を引かれると言う訳じゃな?」
 焚雅(ea7662)が何となく納得したように蕎麦を啜る。
 しかし額が汗だらけに成っている。
 ずるずるを蕎麦を啜り、キツネのお揚げを頂く。
 最後に一気につゆを啜りこみ、いっきにぷはっと息を吐いて、満足げに丼を置く。
「はい、つぎ〜♪」
 猫耳巫女は熱々の鉄鍋をどかっと持ってくる。中にはグツグツ煮えた近江牛、焼き豆腐、長ネギ、そして白滝の詰まった具だくさんのスキヤキの登場である。ちなみに鍋の直系は30cm。特盛りである。
「おま‥‥いま‥‥蕎麦食べたばかりで、こんな大盛り具だくさんの肉鍋を食えと!!」
 高町恭華(eb0494)が目の前の鉄鍋と猫耳巫女を交互に見ながら悲鳴をあげる。
「は〜い。本当はテーブルでお料理して上げたいんですが、換気が悪いんで、ここで七輪使うと灼熱に成るかなと思いまして、調理済みの鍋をご用意致しました♪」
 そう言う事じゃない。
 熱いとかじゃなくて、量の問題なのだ。
「はい、新鮮な生卵もあるんで、これに付けて食べてくださいねぇ」
 地鶏の卵は現代の鶏の卵より小振りであるが、味は濃厚である。
 土色の卵を割り、小皿に肉を取ってつけ、ガツガツとそれを食べる。
 近江牛の赤身の部分を使ったスキヤキ(肉鍋)はダシがしみこんでいて美味い。
 しかし、醤油と味醂に、砂糖や蜂蜜を使ったりしてつゆを作るので案外割高である。
 高級料理の部類にはいるのだ。(豆腐が既に高級料理の部類に足を半分入れて居るのだが)

「よし‥‥完食‥‥」
 6人が一斉に息を吐く。着物の下、全身汗だくに成りながらの完食である。
「それでは、本日最後の一品。近江牛の1ポンドステーキです。ニンニク醤油で味付けしてありますが、お好みで大根おろし醤油をかけて堪能下さい」
 ジャパンではなじみの薄いサーロインステーキに、西洋食器のナイフとフォークが添えられている。
「‥‥!?」
 拍手阿義流(eb1795)が口をパクパクしながら皿を指さす。
「あっ、お気づきに成られましたか? 実はステーキが乗ってるお皿は、近江の国友村の国友鍛冶に作って頂いた。鉄皿なんですよぉ。近江アピールになるでしょう?」
 アピールと言うか悪夢である。
 こんな大食い耐久レースになるだろうと、ダレが予想したであろうか?
「兄貴が言いたいことはそう言う事じゃないと思うんだが‥‥」
 拍手阿邪流(eb1798)がツッコミを入れるが、猫耳巫女は意に介していない。
「‥‥前金をもらっておるのじゃ‥‥さぁ食べるのじゃ」
 焚雅が慣れない手つきでナイフとフォークを使い、肉の塊を口に放り込む。
 佐々宮鈴奈がおろし醤油を肉にかけ、ジューッと言う音と香ばしい薫りを漂わせる。
水蒸気に顔が隠れているが、ガツガツと食べているのだろう。金属音が聞こえる。

‥‥そして‥‥地獄のアイアン胃袋耐久レースが終了する。

「もう‥‥動けん」
 物部義護が腹をさすりながら、悲鳴をあげる。
「それでは、お二階の方に、お座敷をしてございますので、ごゆるりとおくつろぎ下さい」
 猫耳巫女がそう言って2階部分の旅籠に案内する。
 午前中に店を訪れたのにもう午後である。
 一同はパンパンにふくれた腹をさすりながら、気怠い午後の中でうとうとと眠りについた。

 ‥‥日もとっぷりと暮れた午後8時。店を訪ねてから約10時間。
手ぬぐいと桶、それに浴衣を人数分持った猫耳巫女が部屋のふすまを開ける。
「お風呂の方が開きましたんでどうぞ。一応温泉引き込みにしてますから、温いですけどお楽しみ下さい」
 猫耳巫女がそう言って6つの桶を指す出す。
「ささ、ご案内致します。混浴ですが、かまいませんですよね?」
 そう言って蝋燭の明かりを持って1階奥の温泉へと案内する。
 宿から降りても、中庭を回っても、一応番台には当たるようである。
 まぁ入り口で金を払ったり、置き引きの見張り役なだけなのだが。
「お前ら‥‥こっち見るなよ?」
 高町恭華率いる女性3名が屏風の向こう側で着替えている。
 屏風の高さは1m、幅は3m程であろう。特別あつらえで用意されている。
 手ぬぐいで前をかくして女性陣が風呂の方へと入って行く。
 男性陣も少し間をおいてから風呂の方へと入って行く。
 蝋燭の薄明かりといえども、男女混浴である。多少は見ることも出来るのだろう‥‥。っと言う考えは甘かった。風呂の中は完全に湯気がで前が見えない状況である。
 確かに湯の中に人が入ってるのはわかるが、男性なのか女性なのか、かなり近づかなければ分からないのである。
「いやぁスイマセンねぇ。構造上天井を低くしたら、湯気が逃げなくて‥‥。でも一応お風呂は総檜作りでお金かけたらしいですよ?」
 猫耳巫女さまが窓(格子戸だが)をずらして湯気を逃がしているが、窓が小さい為なかなかモヤが晴れない。
「あっ、お気遣い無用なのじゃ」
 焚雅がそう言ってパタパタと手で仰ぐ。まぁ男性から見られずにお湯も楽しめるのだから丁度良いのだろう。
「腹一杯飯喰って‥‥温泉に入って‥‥金もらって‥‥良い仕事だねぇ〜」
 高町恭華がそう言って満足そうに笑みを浮かべる。
 何か温泉依頼受けてるみたいだ。

「さて、それでは、皆さんの感想を聞きましょうか?」
 お風呂上がりに食堂の方に通され、蝋燭の明かりの中での打ち合わせ、時刻はとっぷり真夜中である。

「取りあえずスタミナ料理なのは分かります。夏の暑さを吹き飛ばせってのもわかります。。でも冷たい料理を出した方が良いんじゃないでしょうか?」
 拍手阿義流の意見に全員が全員首を縦に振る。
「では、全員考えてきた料理を板さんに作ってもらいましょう」
 っと言うことで、取りあえず夜中の試食会である。

「まずはエントリーナンバー1番。物部義護さんの作品です」
 彼が用意したのは蕎麦の団子である。それを串に刺し、アンコに付けて食べるものである。
 一同がモクモクとそれを食す。
「甘い物ってのは盲点でしたねぇ。これは私もびっくりです」
 猫耳巫女様と猫のみーこちゃんもご満悦である。

「つづいてエントリーナンバー2番。佐々宮鈴奈さんと拍手阿邪流の発案です」
 彼らが用意したのは水桶の中に入った蕎麦である。
 流し蕎麦‥‥っと言うのは設備的に出来なかったが、水の中の蕎麦を取り出し、つゆにつけて食べるというやり方である。
「確かに美味しい‥‥けど、これ、おそばが水っぽいです」
 まぁそりゃそうなのだが。

「次はあたいの作品なのじゃな。さぁ食べてみるのじゃ」
 焚雅が用意したのは塩ゆでにした枝豆である。枝豆は大豆で近江でも豊富に取れる物である。
「あっさりしていて、食欲をそそるかも‥‥」
 猫耳巫女様もご満悦である。

「私は良く冷えた瓜を用意させて頂きました」
 拍手阿義流が用意したのは、井戸水で良く冷やした瓜である。
「やっぱり夏は瓜だよねぇ〜。でもこれだと、ご家庭でお楽しみ下さいって感じで商品には成らないかも〜」
 しゃくしゃくと瓜をかじりながら、ぽつりつぶやく猫耳巫女さま。

「最後は私だ。冷しゃぶだ。ポン酢や梅肉、大根おろしでさっぱりと食べてもらおう」
 スキヤキ用の近江牛の霜降りの部分をお湯で煮た後冷水で冷やした物である。
 今日は何か肉消費量がもの凄いのであるが、気にしては成らない。
「うん。これなら商品に出来るね採用。それと私が考えた物も良いかな?」
 猫耳巫女様がなにやらごそごそと湯飲みを持ってくる。
 なにやら飲み物の様である。
「冷やしたホットミルクだよぉ(謎)」
 彼女が用意したのはよく冷えた牛の乳である。皆おそるおそる口にする。
「何で一回煮ちゃうのかな?」
 拍手阿義流が猫耳巫女様に質問する。
「牛の乳は生の魚と一緒で日持ちしないだよ〜。だから一度火を通して長持ちするようにしてから、改めて冷凍魔法地域で冷やしてもらってきたんだよぉ」
 そう言ってにこやかに微笑む。
 何でも精霊魔法使いをタダで住まわせてやる代わりに、水の魔法で冷やしてもらって居るんだそうな。

 そんなこんなの話し合いが続き、取りあえず夜中だし、宿で眠らせてもらうことにした。
そして次の日の朝の事である。
「昨日の牛乳(うしちち)に改良を加えました〜♪ みんなの案を取り入れて、より甘く、より冷たくしてみました〜♪」
 昨日とは異なり、今回は茶碗で出されたそれは、トロトロの粘っこい白い液体の中に、かち割った氷が浮かんだ物である。
「なんだこれは?」
 高町恭華がマジマジとそれを見つめる。
「えーと牛の乳を弱火でトロトロ煮込んで、水分を有る程度飛ばしながら、蜂蜜で甘みをつけて、氷を浮かべて見ました」
 現代風に言えば、練乳にかち割り氷が浮かんでいる物である。
 氷ガリガリ食べながら、練乳を呑むと言う感じになるのだろう。

「では、これと私の発案の冷シャブが採用と言うことだな?」
 高町恭華が念を押す。
「それと、枝豆も出すことにしました。大至急取り寄せてます〜♪」
 猫耳巫女さまがそう言って葛籠を用意する。
「衣装の方は間に合いませんでしたが、一応皆さんの意見もふまえて、肩から袖なし、たすきがけ、膝上15cmの超ミニ、ゆったりタイプの薄絹衣装(女性用)と近江上布(麻の織物)でやっぱり袖無し、たすきがけ、袴付き(男性用)の夏制服をご用意させて頂きました。では着替えて、猫耳付けて、客引きおねがいしま〜す♪」


 もの凄くこっぱずかしい格好で
 毎日肉を食わされる8日間の依頼がこうして幕を開けたのである。

‥‥つづく。