【国友村】鋼の板金術士1【小鉄】
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■シリーズシナリオ
担当:凪
対応レベル:3〜7lv
難易度:難しい
成功報酬:2 G 25 C
参加人数:10人
サポート参加人数:1人
冒険期間:08月16日〜08月22日
リプレイ公開日:2005年08月24日
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●オープニング
●【国友村】鋼の板金術士1【小鉄】
近江の中央のとある田舎に、国友村と言う、鍛冶の名工達が住む村が有ります。
中央に有るので、田舎と言うのは少々的はずれかも知れませんが、鍛冶技術の発達した鍛冶屋さんが沢山住んでいる村があると思ってください。
この村は鍛冶技術がとても進んでおり、良い砂鉄から良い鉄を作り、良い玉鋼を作り上げる名工達がそろっていました。
特に刀鍛冶達は腕利きがそろっており、近江の武士はもとより、京都の侍達にも親しまれていたのです。
そんな小さな村に、まだ若いながら、飛び切り腕の良い仕事をする女鍛冶屋が居ました。
彼女の名は小鉄(こてつ)。虎の様に鍛えられた刀を作ることから、虎鉄と呼ぶ者も居るほどです。
彼女は亡き祖父の意志を継ぎ、刀鍛冶屋となり、若くして沢山の弟子達に囲まれ、日々『魔物を討つ武器』の研究に余念がありませんでした。
彼女が祖父から受け継いだ技術はすばらしく、近江の御家老浅井長政様にも刀を献上する程でした。
「お前のおじぃさんは良い薙刀鍛冶師だった。お前はどんな武器を作りたいんだ?」
一人の男が小鉄に話しかけました。
「私は立派な忍者刀の鍛冶屋に成りたい。後世に名を残すような‥‥オリジナルの忍者刀を作ってみたい‥‥それが私の挑戦だし‥‥ジライヤ様からも忍者刀を作ってくれと依頼が有ったし」
彼女はスミスハンマー片手にそう言って忍者刀の研究に没頭しました。
ジライヤとは甲賀の里の筆頭で、闇の忍者軍団2000を束ねる甲賀の里で一番偉い人です。
忍者だけ有って、それ以外のプロフィールは一切不明ですが、その存在感はとても大きい。
小鉄はそのジライヤに、直々に『銘刀と呼べる忍者刀を作って欲しい』っと、依頼されているのです。
「鉄が足りない‥‥高純度で、固く、鋭く良い刀を作るには、もっと鉄が必要だ」
だが、高純度の鉄を採取する河には、最近魔物が出没するという話を耳にしていました。
巨大な漆黒の蟹が現れ、人を食うのだと言うのです。
「仕方がない冒険者を雇いましょう。一日でも早く、刀を完成させなくては」
そう願う彼女の願いが、冒険者ギルドに届いたのは、つい先ほどの事でした。
『川で砂鉄を採取する間、魔物から作業員を守ってください』
それが依頼の内容だそうです。
●リプレイ本文
●【国友村】鋼の板金術士1【小鉄】
近江の北西に有るとある山林。その山林を緩やかに流れる河があった。
人里離れたその河は人間の手が殆ど入らぬ未開の土地であった。
その河の中流の河原にテントを張り、キャンプの準備をする面々。
我らが冒険者と小鉄ちゃん。それに数人のジャイアントとドワーフの鍛冶屋見習い集団である。
ちなみにドワーフはジャパン人ではなく、異国から学びに来た者達である。
「お頭ぁゲルが出来ました」
何故か巨大なゲルを組み立てているドワーフ達。
「彼らは一体何者なの?」
空漸司影華(ea4183)が質問する。小鉄は少し考えてから応える。
「よく分からないけど彼らも鍛冶屋だよ。文化は違うけど、すばらしい武器を作るという探求心は変わらない見たい。だから一年くらい前に弟子にとったの」
そう言って小鉄は微笑する。
「でも、砂鉄から刀を作るなんて初めて知ったなぁ」
影華がそう言って準備をする小鉄を見つめる。
「踏鞴製鉄って言って、砂鉄を集めて鉄を作るの。根気がいるけど、良い鉄を作るには必要な作業だよ。そのために良い鉄を良い分量配分で作らなければ行けないの。不純物が多いと柔らかい鉄が、少ないと固いけど折れやすい鉄が出来るの。だからその分量や鉄の配分を見極めて作るのが‥‥僕たち鋼の板金術士‥‥鍛造使いの見せ処なんだ」
鋳造とか型に鉄を流し込んで作る物であり、鍛造とか鉄を叩いて鍛える物である。
どちらも鍛冶屋として十分な腕前が必要なのである。
ゲルの建設が終わると彼らは河に入って砂鉄の採取を始めた。
普通なら山から土を切り出して水洗いして鉄を取り出すのだが、今回の鉄は川砂鉄である。川底に溜まっている土を水洗いして、その中に含まれている砂鉄を採取する。
小鉄と4人のドワーフ。4人のジャイアント達はそれぞれざるを持って河に入り、各々離れた場所に陣取り、砂をかいては砂鉄の採取を始めました。
中腰での根気と集中力のいる作業であり、まだ日の浅いドワーフ達は直ぐに根を上げ、小休止に入ります。
そんな河の中腹に陣取り、雪守明(ea8428)は警戒を張ります。
四方が最も見やすく警戒し易いのが河の中だからと言う理由からです。
河の流れはとても緩やかでのんびりした物であり、浅く深いところで膝までの深さしかない。案外水浴びには丁度良い環境である。
「照りつける夏の太陽とそれを反射する河で暑さと湿度倍増だね」
ネイルアーマーの首元をパタつかせながら暑さを逃がそうとがんばる朱蘭華(ea8806)。
水に入っている砂鉄採取組も汗だくだが、岸辺で見張りをする冒険者も汗だくである。
「あの‥‥」
一服してお茶を飲む小鉄に語りかける朱蘭華。
「ジャパンの鍛冶屋の中に、華国の武器を作れる者はいないものかしら?」
その言葉に首をかしげる小鉄。
「物に寄るんじゃないかな? 私はそう言うの勉強したこと無いから無理だけど、どんなのが欲しいの?」
小鉄の言葉にそっと注文を口にする朱蘭華。
「‥‥武道家に合う、防御も兼ねた武器は‥‥ここでも創ってないものかしら‥‥」
朱蘭華の言葉に少し悩む小鉄。
「十手とか‥‥棍とかどうなんだろう?」
刃物の研究をする小鉄だが、武闘家がどのような者なのか今ひとつ理解していない。
故にそれの使う武器というのがなかなか想像の域に達しない。
ちゃぽりと何かが水音立てる。もう一人の武闘家、シフールの龍海皇(ea9364)が疲れに耐えきれず、河の中に身を落とす。シフールは長時間の飛行には向かないのだ。
だが、空からの監視と言うのはナイスアイデアである。
羽を休めまた飛ぶまで少々時間がかかるのが難点ではあるが。
少々困ったことに成ったのはアゴニー・ソレンス(eb0958)である。彼は出発前に全身が水で濡れることで豹変することを皆につげた。
ハーフエルフを知らない小鉄には理解出来なかったが、全身が濡れることをいやがっているのだと言うことは分かった。
「じゃぁ水に入らなければ良いんだね?」
実際にはその通りなのであるが‥‥この暑さで一番に貧血で倒れたのが彼らのである。
「スイマセン‥‥貧血で倒れやすいのをうっかり忘れてました」
そう言って濡れた手ぬぐいをおでこに乗せ、木陰で横になるアゴニー・ソレンス。
「大丈夫だから、ゆっくり休んでね」
小鉄はそんな彼に優しい声をかけた。
「自分は‥‥遠くイスパニアの地より、刀鍛冶を学ぶために来たのです。辛いと思うこともありますけど、この槍を見てると『いつか僕もこれに負けない物を作るんだ』っていう
気持ちが湧いてくるんですよ」
そう言って槍を見せるアゴニー・ソレンス。
「業物だねぇ‥‥コレを作った人は良い腕してる‥‥。私のおじぃちゃんも薙刀作りの名人でね。私もおじいちゃんの薙刀をやっと作れるように成ったんだ。もっともおじいちゃんの弟子達と、秘伝書‥‥それにおじいちゃんから教わった口伝が有ればこそなんだけど‥‥。だから今度は、私なりの完成品として‥‥忍者刀を作ってみたいと思ってるんだ」
小鉄がガッツポーズを取る。
アゴニーもガッツポーズを取る。
そんな彼らを尻目に、密かに‥‥そう密やかに巨大なそれは近付いてきた。
その姿はカニ‥‥そうカニである。オマールエビの様に漆黒で艶やかな身体。
腹の部分はそれに反して純白で‥‥白と黒のツートンカラーのイルカの様なカラーリング。
だがしかしそれは紛れもなくカニである。
それは、河の下流の方から、ゆっくりと上流へと真っ直ぐに昇ってくる。
通常のカニは横にせかせかと走る物だが、彼はゆっくりと微速前進して河を昇っている。
まだまだ距離が有るのにその姿が見えるは、そのカニがとてつもなく大きいからである。
身体だけでも直系は2m、爪などは片方でも1mは有ろうかという大きさである。
本多風漣(eb1164)が印を結び、術を唱える。
「出でよ、雷光!!」
ライトニングソードを右手に、小太刀を左手に構え、ざばざばと河を上流から下流へと下って行く。
鷹見沢桐(eb1484)が大斧を持って河原を走る。
速度の違う2人であったが、水場で足を取られる本多風漣に対して、鷹見沢桐は河原を走っている為多少速度差は縮まった。
「本多殿! 奴を川からおびき出すべきだ!」
「どうやって!」
短い会話が終わり、本多風漣が一気にカニを斬りつける。
フェイントアタックのその一撃を、カニはひらりと後方に飛んで回避した。
「食らえ!」
大斧を持って水の中へと飛び込んだ鷹見沢桐が水平に斧で薙ぐ。
カニはよいしょとばかりに足をあげ、その渾身の一撃を避けた。
南雲紫(eb2483)が戦闘の音に気が付き、川へと飛び込む。
もはや岸へと誘導する手段が見られない。
カニの攻撃を喰らいながらも、カウンターの一撃でやっつけるのが狙いだ。
カニの巨大な爪の一撃が彼女を襲う。
「今‥‥だ!?」
爪の一撃を食らった拍子に、川底のコケに足を滑らせる南雲紫。それでも姿勢を崩しながらも攻撃の手を止めることはない。カニに対して有効だの一撃を与える。
っがそのまま水しぶきを上げて胸まで川に浸かる。
倒れた彼女にカニが追撃の一撃の準備をする。
だが、カニを後方から蹴り飛ばして注意を惹きつけている物が居る。
ルゥナ・アギト(eb2613)である。
所が、カニは横に動くスピードが前に歩く速度よりも異様に早かった。
瞬発的に移動し、ルゥナ・アギトの攻撃を避ける。
結果、ルゥナ・アギトは南雲紫に覆い被さる様にして倒れ込む。
アマラ・ロスト(eb2815)がカニの動きを止めるために弓を使う。
だが、その弓矢ですらカニは横方向の動きで回避する。
「うわ、予想以上にカニ強いわ」
ロングソードに持ち替え、川に飛び込むアマラ・ロスト。
「食らえ!! ダブルアタック」
本多風漣がダブルアタックを使って攻撃を仕掛ける。
だがカニはそれを難なく避ける。
「みんな戦い始めるの早いよ〜」
空漸司影華がやっとこさ川を下って戦闘場所にたどり着く。
既に川の真ん中でカニを囲むようにしての戦闘になっている。
「オーラをかけていたら遅くなった」
雪守明がやっとこさたどり着いて剣を振るう。
カニがそれを避ける‥‥が、避けきれず甲羅にダメージを与えることが出来た。
川の中での不利な条件を相殺して、かなりの熟練者の剣で無ければ当たらない様だ。
オーラで強化された刀が3発たたき込まれる。
「あなたはこちらに、危ないですからね?」
小鉄を安全の物陰に誘導する朱蘭華。なぜならそれは『カニが一匹ではないかも知れない』っと言う判断があるからである。
そのために全ての人員がカニに向かっていくことは極力避けるのである。
それを分かっているのか居ないのか、龍海皇も上空から警戒している。
あくまでも彼らの仕事は『小鉄達を外敵から守ること』であり、決して蟹退治ではない。
「攻撃は最大の防御っていうけどね」
アゴニー・ソレンスが槍を構えて状況を窺う。
蟹がこちらに襲いかかる可能性だってある。2匹目が居る可能性だってあるのだ。
‥‥1分‥‥2分‥‥蟹の猛烈か動きに攻撃が当たらず、右往左往しながら時間だけが過ぎて行く。小さなダメージもコツコツと‥‥やっと蟹の動きが鈍り始めたとたん‥‥蟹は一目散に逃げようと走り始めた。
そして‥‥足にロープが絡まって、身動きが鈍くなる。
「あっ、そこ私が罠かけておいたんだ」
アマラ・ロストがつぶやく。
まるでザリガニでも捕まえるかのように鬱蒼と作ったロープ。足に絡まって動きが鈍る。
蟹が一生懸命ハサミでそれを切り、逃げようとするが、なかなかそうはうまくいかない。
動きが鈍くなればこっちの物。一気にたたみかけるようにして一掃攻撃を喰らう蟹にもはやなすすべは無かった。
日がとっぷりと暮れたあとで、小鉄の板金した巨大な丸鍋にぶつ切りにした蟹が投げ込まれる。
鍋の直系が1mであるからその大きさが伺える。
ぶつ切りにした大根と人参。ゴボウと一緒に蟹鍋が。
そして蟹の足の部分は塩焼きにして美味しく頂くことになった。
一番大きなハサミの部分を嬉しそうに頬張るアマラ・ロストとルゥナ・アギト。
タラバガニと伊勢エビを足した様な不思議な味を楽しみながら、鉄狩りキャンプは続くのでありました。
どっとはらい