【国友村】鋼の板金術士2【小鉄】
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■シリーズシナリオ
担当:凪
対応レベル:4〜8lv
難易度:難しい
成功報酬:2 G 40 C
参加人数:5人
サポート参加人数:-人
冒険期間:11月20日〜11月25日
リプレイ公開日:2005年11月28日
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●オープニング
●鋼の板金術士2
近江の中央のとある田舎に、国友村と言う、鍛冶の名工達が住む村が有ります。
中央に有るので、田舎と言うのは少々的外れかも知れませんが、鍛冶技術の発達した鍛冶屋さんが沢山住んでいる村があると思ってください。
この村は鍛冶技術がとても進んでおり、良い砂鉄から良い鉄を作り、良い玉鋼を作り上げる名工達がそろっていました。
特に刀鍛冶達は腕利きがそろっており、近江の武士はもとより、京都の侍達にも親しまれていたのです。
そんな小さな村に、まだ若いながら、飛び切り腕の良い仕事をする女鍛冶屋が居ました。
彼女の名は小鉄(こてつ)。虎の様に鍛えられた刀を作ることから、虎鉄と呼ぶ者も居るほどです。
彼女は亡き祖父の意志を継ぎ、刀鍛冶屋となり、若くして沢山の弟子達に囲まれ、日々『魔物を討つ武器』の研究に余念がありませんでした。
彼女が祖父から受け継いだ技術はすばらしく、近江の御家老浅井長政様にも刀を献上する程でした。
時に彼女は一つの課題に取り組んでいました。
それは業物の忍者刀を沢山作ることでした。
ですが、そのためには大量の良質な砂鉄が必要なのです。
「ダメだ‥‥、ジライヤ様に何本も業物の忍者刀を作れと頼まれているが‥‥一朝一夕に出来る物ではないな‥‥」
彼女は雪の降り積もる近江で、ねじりはちまきで汗だくに成りながらひとしきり鉄と炉と向かい合っていました。
前回のお話で、巨大蟹を倒して鉄を手に入れた小鉄でしたが、なんと最近では巨大クラゲが現れ、砂鉄の採取を邪魔するのだそうです。
「二代目‥‥、冒険者の方々に頼んで、退治して貰おうというのはどうでしょう? 彼らならきっと、巨大クラゲを退治してくれます!」
彼女に従う弟子達の言葉もあり、彼女はまた、冒険者に依頼をすることにしました。
『川で砂鉄を採取する間、魔物から作業員を守ってください』
それが依頼の内容だそうです。
●リプレイ本文
●命の火を灯せ
先の砂鉄採取から月日は流れ、第二回砂鉄採取の時が来た。
敵は前回とは異なり、蟹ではなく、くらげ。
そもそも淡水の琵琶湖に何故巨大くらげが現れたのか、目下の所謎であるが、蟹よりは戦闘力は弱そうである。
ただ一つ、彼ら冒険者に襲いかかる不幸。
それは、北近江の積雪が既に1.5mを超えていた事である。
「それじゃ皆さん依頼の『ついでに』雪かきもお願いします。」
小鉄の弟子一号にそう言って渡されたのは鍬だった。
5人の冒険者達は各員鍬(すき)が手渡される。
船のオールの様なそれは、土を耕したりするスコップの様な道具である。
取りあえず川に向かって道を作る所が始まりである。
空漸司影華(ea4183)と雪守明(ea8428)が鍬を持って雪をかく。
全ての雪をかき分けるんじゃない、踏み固めて進めるようにするのである。
「川まで行ったら、石で囲いを作ってたき火をしましょう。この雪では川に入ったら凍死しちゃいますよね」
空漸司影華が雪を左右にかき分けて、地面を踏み固める。
同様に雪守明もそれを手伝う。
「川に行ったら杭を刺して、柵のようにしよう。荷物も用意出来たしな」
そう言って彼女が指さす先には巨大な木槌と白木の杭が大量に用意されていた。
どうやっても人間2〜3人では持って行けないような量の杭である。
「それを運ぶ手段はこちらで用意させてもらった。ぶしつけで申し訳ない」
汗する2人に熱いお茶を用意する小鉄。
小鉄が用意したのは大きな荷ソリと、それを引く荷馬であった。
「火を焚く為の薪も用意してきたから、コレも一緒に積んでくれる?」
朱蘭華(ea8806)がそう言って大量の薪を指さす。
「えーとじゃ、手綱引いて貰えます?」
そんなわけで朱蘭華が荷ゾリを操作することになった。
「お久しぶりですね、小鉄さん。アゴニーです。蟹の次はクラゲですか‥‥難儀といえば難儀ですが、生き物が住みやすいということはそれだけ環境がよい、ということなのか
もしれませんね。‥‥所でクラゲってどれくらいの大きさなんですか?」
アゴニー・ソレンス(eb0958)が小鉄の手を握り手をぶんぶんと振る。
お互い毛皮の手袋をしているが。
「2mくらいですね。居れば直ぐ分かりますよ」
‥‥でかい。蟹の時もそうだがでかすぎる。チョット想像以上である。
南雲紫(eb2483)が静かに小鉄の脇につく。
小鉄とその弟子6人を道中で守るのが彼女の仕事らしい。
前回よりも遙かに凌ぐ時間を費やして河原に到着。
河原の雪を少しづつ川に捨てる面々。ビバークの為の避難場所を確保すると、朱蘭華がスコップで雪をどかしながら、火の番をするようである。
空漸司影華と雪守明が木の杭を持って川に入る。
‥‥冷たい‥‥なんて物じゃない、‥‥痛い!! 刺すような痛さである。
10分ほど作業をして杭を刺すと川から上がり、たき火で足や手を温める。
先ほど雪かきをした場所に2人用テントが設置されており、中で毛布にくるまってぬくぬくの朱蘭華が顔を出す。
「警戒は交代でするから、番が来たら呼んでね」
すっかり冬眠の熊の様な状態である。
っというか激しく羨ましい暖かそう。
アゴニー・ソレンスがそんなたき火の回りに石を積み、一生懸命風よけをつくったりしてる。
現在彼が見張り番。取りあえずクラゲがでないように見張りである。
10分水に入ったら火に当たり、さらに10分水に入ったら火に当たり。
そんなこんなで何とか下流に杭で壁を気づき上げる2人。
小鉄達は30分以上も交代で砂鉄を掘ってる。ど根性である。
交代っということでテントの中と外が入れ替わる。
空漸司影華と雪守明がテントの中でぬくぬくと頭って居る間は、朱蘭華が火の番をする。
ついでに巨大な鉄鍋ですいとん作ったりしてるが。
「‥‥!?」
川を警戒中の南雲紫が川を見つめ何かを発見する。クラゲである。
1m感覚で打ち付けられた杭に阻まれて、そこから上流に上れないクラゲが3匹。
川の中州でウロウロしている‥‥っというか浅瀬なので打ち上げられているに近い。
倒すにはこの刺すような水の中をジャバジャバ歩いていって、水の中でクラゲと格闘戦
をしなければならない。
しかし、クラゲの直系2m。
格闘戦やったらマズ全身水浸しになる。
心臓‥‥止まるんじゃ無かろうか?
「あ‥‥あの杭を超えたら、攻撃することにしようかしら」
そう言って彼女はクラゲを『見張る』ことにした。
‥‥どれくらい見張って居ただろう。
3匹のクラゲの他にもう一匹‥‥クラゲの様な物が近付いてきた。
それは水で作った船の様な物であった。
船の長さは2mほど、一人の美しい女性が櫂(かい)を漕いでゆっくり、そう、凄くゆっくりと船をクラゲの方へと近づけていった。
「これ、坊や達‥‥お家に戻りなさい。余り人目についてはダメよ?」
女性の言葉を聞いてか聞かずか、クラゲたちは琵琶湖の西へと流れて行く。
船に乗った娘は、船を岸へと近づけてきた。
南雲紫の目の前までである。
‥‥妙だ。
船は既に岸の上に居るが、地面に乗り上げていない。
まるで雪の上を水の上であるかのように船を浮かべている。
「こんにちは、人間の娘さん」
女は南雲紫にそう言って話しかけた。
「あぁ、こんにちは」
霊刀「オロチ」エレメントスレイヤーを構える南雲紫。
「今日は寒いですねぇ。こんな日は‥‥おそばの食い逃げがしたくなる位‥‥」
そう言って女はクスクスと微笑んで見せた。
「今は‥‥九月鬼‥‥っと名乗っています。‥‥私に攻撃を仕掛けるなら‥‥お仲間を呼んだ方が良いのでは有りませんか?」
南雲紫に敵意があると見る彼女はそう言ってたき火の方を指さした。
「警戒しているだけだ。別にお前に危害を加える気はない。お前にその気が無いのならな」
南雲紫はそう言って合図を送った。
合図を見て、アゴニー・ソレンスが長槍「山城国金房」+1を持って静かに近付く。
雪守明が何事かの気配を察して近付いてくる。
「そこの貴方!! 『彼を』『攻撃して』」
九月鬼がそう言うと、南雲紫はアゴニー・ソレンスに襲いかかった。
‥‥っが、南雲紫は自らの足に刃を突き立て、その攻撃の手を止めた。
自らに痛みを与え、呪縛と戦う南雲紫。
「あら、流石京都に知れ渡る名声の武芸者。簡単にはいかないわね」
九月鬼はそう言って彼女を見つめた。
「何をした?」
雪守明が近づき刃を抜いて九月鬼に問いただす。
「いえ、なんだか私‥‥襲われそうだったんで、先手を打たせて頂いただけですよ。‥‥言葉に魔力を込めて、相手に命令することが出来るんです。例えば‥‥」
そう言って今度は雪守明に詠唱し、印を持って言葉を放った。
「服を‥‥脱げ」
強制的にそうせずには居られぬように、意志の力で抵抗しても、身体がそれを拒むように、雪守明は服を脱ぎだした。
「大丈夫ですよ。5〜6分で効果は切れます。私も別にあなた達を攻撃しようとは思っていません。向こうの娘さんも取り押さえてしばらくすれば大丈夫。私はその間に‥‥この場を去るだけですから‥‥」
そう言って彼女の船は『雪の上を滑るように走って行く』
後には、全裸に成りながら雪守明が南雲紫を押さえつける一幕が見られるだけだった。
‥‥そして‥‥。
「ありがとうございます。予定していた鉄を集めることが出来ました。これで忍者刀を量産出来ます。」
そういって小鉄は皆に礼を良い、一降りの薙刀を手渡した。
「コレ‥‥使ってください。お礼です。」
小鉄はそう言って皆に笑みを浮かべた。
「忍者刀は‥‥貰えないかしら?」
南雲紫が鋭い突っ込みを入れる。
「作ってみて‥‥売れ残ったら‥‥良いですけど」
裏表の無い小鉄。また順風満帆な笑みを浮かべるのであった。