【近江の豚鬼退治 別働隊1−3】
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■シリーズシナリオ
担当:凪
対応レベル:10〜16lv
難易度:難しい
成功報酬:6 G 30 C
参加人数:10人
サポート参加人数:2人
冒険期間:07月14日〜07月22日
リプレイ公開日:2006年07月22日
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●オープニング
●近江の豚鬼退治 別働隊1−3
それは近江・西部のお話
蓬莱山には豚鬼の王が住み、豚鬼の王国を築き上げている。
その豚鬼の数は数百。配下となる人間の数は万に匹敵するという。
そんな蓬莱山の裏側、阿修羅山の北側から、豚鬼の王国を探索してみよう。
ひょっとしたら良いこと発見出来るかも‥‥っと言うお話である。
琵琶湖を船で移動し、雪で埋もれている阿修羅山の北側からコッソリ潜入するのだ。
今回は阿修羅山に居る豚鬼王『白銀』からお花見への招待状が来ている。
もちろん上層部では確実に罠では無いかという見方を強めている。
故に今回の参加には出来るだけ腕に自慢の有る物を選び様に心がけている。
阿修羅山からは、『今回はお酒の持ち込みはok』っと言うおふれが出ているとか
●一方そのころ阿修羅山では
近江の夏はやや遅い。阿修羅山は標高が高いため、さらにやや遅い。
今阿修羅さんの紫陽花園では山紫陽花が見頃を迎えている。
そして、豚鬼達はその紫陽花を見物するべき、酒宴の準備を行っていた。
「人間との酒宴など馬鹿げている。人間は取って喰うべきだ」
一人の豚鬼がそうわめきちらした。
「いや、人間は畑を作りウシを育て、魚を捕る。人間は良い生産者だ」
一人の熊鬼がそう言って豚鬼をなだめた。
「しかし、外からの来訪者がこんな最深部に現れると言うのか?」
一人の兵士がそう言って首をかしげた。
そう、酒宴の場所は阿修羅山。並の人間が入り込むことの出来ない場所である。
「来る‥‥っと言うなら迎えてやれば良い。来ない‥‥のなら諦めれば良い。ここは我らが領土内。人間もうかつな事は出来まい?」
酒宴の主催者『白銀』は静かに宴の準備を進めさせていた。
そんな訳で豚鬼達と酒宴に参加して情報を収集してきてくれる猛者を募集中。
なんでも豚鬼達は紫陽花をお茶の代わりにして飲むとか飲まないとか
●リプレイ本文
●【近江の豚鬼退治 別働隊1−3】
唄‥‥唄が聞こえる。
野山に響いて、風となる‥‥唄。
狼の高鳴り‥‥獣の微笑み‥‥そんな唄が聞こえる。
場所は阿修羅山の一角。
紫陽花農園。
戦闘が有るんじゃないか‥‥っと言う前置きのおかげで全面的に戦う姿勢でやってきたが、途中で合流したツバメの格好をした2人の同行者のおかげで比較的楽に酒宴場へと足を運んでいた。
「初めましての方も居られるようなので、改めて始めまして、烏丸千剣と申します」
ツバメの中から出てきた巨乳の巫女様は改めてそう言って皆に挨拶をした。
「え〜と、私も改めて始めまして、比良山次郎坊(ひらさん じろうぼう)と申します」
そう言ってもう一人のツバメもそれを脱ぎ姿を現す。
中からは同じくして童顔巨乳の巫女服の可愛い女の子が姿を現す。
比良山とは蓬莱山と阿修羅山の間の琵琶湖の西の山々を比良山系と呼ぶ。
伝説では武芸者の天狗が住む山として知られている。
霊山で有るために人が殆ど足を踏み入れない場所である。
豚鬼達が足を踏み入れているかどうかは定かではないが。
黒い翼をパタパタさせながら、2人が冒険者いっこうに加わった。
それ以来は遠巻きに見ていた豚鬼達でさえ、姿を見せなくなった。
「普段は滅多に人前に姿を現さないようにしているのですがね。今回は例外中の例外として、向こうも礼を持って対応してくださると言うので特別に顔を出すことにしました」
比良山次郎坊がそう言って冒険者一行に静かに頭を下げる。
ちなみに比良山次郎坊は薙刀を背中に腰に差し、烏丸千剣ちゃんは朱槍を右手に握っている。
「羽の生えた人間が居るんだね〜ジャパンの神秘だぁ〜」
ミネア・ウェルロッド(ea4591)がチーターのコロネを連れてそんな2人を不思議そうに見つめる。
「いや‥‥我々は天狗族なので厳密には人では無いのですが‥‥」
千剣はそう言って笑みを浮かべる。
「あっ、どこかで見た顔が結構居る〜」
酒宴場の端の方から、料理と酒を持って一人の女性がにょろにょろと近づいてくる。
上半身は美しい女性。しかし下半身は巨大な蛇‥‥蛇女郎と言う奴である。
「あっ、ミケ、タマ、お久しぶり〜」
ベェリー・ルルー(ea3610)が飛びつく。っと同時に巨大な虎がそれにのしかかる。
必殺のモフモフ攻撃でふかふかの毛皮の中に埋まるベェリー・ルルー。
虎の方がタマ、ラーミアの方がミケと呼ばれている。
チーターのコロネが虎のタマにじゃれついてバタバタと遊んでいる。
「オグ! オグオグ!!」
豚鬼達の太鼓を叩く音が聞こえる。
主賓のオークロード鐵、オークロード白銀様の会場入場である。
テーブルと言う物が用意されていない。
野外に畳が何枚か用意されており、来賓の方々はソコに座らされている。
豚鬼達は地面にじかに座っている。
「オグ! オグオグオグオグ!」
オークロード鐵が何かしらを話す。
それをベェリー・ルルーがテレパシーの魔法で通訳する。
「今日は遠路はるばる来賓の方々は良く来た。人も魔も獣も天狗も、今日だけは一日ゆっくりして行きなさい」
彼の言葉は分からないが、言ってる内容はそんなところである。
来賓の冒険者に大量の生肉が振る舞われる。
豚鬼達はそれを生で食している。
来賓の方々には一人一つ七輪が渡されている。焼いて喰えと言うことらしい。
「豚鬼は焼いた肉より生肉を好む。だが、酒は別だ、今日は大量にどぶろくを用意させて貰いました」
一人の美しい女性がそう言ってそう言って皆に挨拶する。
「まぁ取りあえず酒だ酒が飲めればモンクはいわねぇ」
バーク・ダンロック(ea7871)がそう言って杯を出すと美しい女性‥‥九月鬼はそれに酒を注ぐ。
「しかし‥‥こんな奥地まで人間が来るなんて珍しい。本当にあなた達の行動力には脱帽しますわねぇ〜」
九月鬼はそう言って冒険者達に呆れている。
本来なら冒険者にちょっかいを出そう彼女だが、今回は次郎坊が目を光らせているのでうかつな事は出来ない。
それにバーク・ダンロックの重装備と熟練されたオーラの前には、彼女の力も及ばないだろう。
「私はお料理のお手伝いとかしたいのですが‥‥」
井伊貴政(ea8384)がそう言って白銀の前に出ると、白銀の脇を構えていた一人の男性が彼に話しかける。
「熊が人間の料理の味を覚えると、それが忘れられなくて人里を襲うようになると言う。豚鬼も一緒でね、人間の作った酒や料理が忘れられない時がある。基本的には生肉を好む彼らだが、味噌煮込みは大好きだ。そっちの手伝いをして貰えるかね?」
いわゆる味噌シチュー系は好物っと言うことなのだろう。
井伊貴政が豚鬼達の料理場に案内される。
ソコは比較的に整った料理場である。
生きたままの豚や鶏、牛が居たり、米や麦などがそのまま置かれている事を除けば。
「そうだ、白銀様に質問があるの、通訳して貰えるかしら?」
百目鬼女華姫(ea8616)がルルーに通訳を頼むと白銀の前に歩み寄った。
「阿修羅山とその周辺の鬼族は幾つほどの集まりがあり、交流はあるの?」
その言葉に応えたのは鐵だ。
「よくわからないが、基本的に蓬莱山と阿修羅山周辺の鬼族は、我の参加に入っていない物は殆ど無い。西に犬鬼の集落があり、小競り合いも有ったが、取るに足らぬ存在だ」
そう言って彼は生肉を口に運んだ。
「鬼族の女性を未だに見たことが無いのだけど。人間と同じく母親から生まれてくるの?」
その質問に白銀は豚鬼の何匹かを指さした。
「我々は生殖行為以外に男女の区別はしない。豚鬼の兵隊の中には女性もちゃんと混ざっている。妊娠中の豚鬼は前線に出ないが、人間に比べて沢山の子供を産む」
そう言って白銀が静かに微笑した。
「人間と共存を始めたようだが、そうしてみようと思ったきっかけは?」
最後の質問には鐵も白銀も首をかしげた。
「分からない、先代‥‥先々代から人間は支配下に置いていた。彼らは良い生産者だ」
そう言って2人は共通の意見に満足げな笑みを浮かべた。
「白銀殿のように、人を食わない豚鬼ばかりなら、共存できるのですが‥‥」
黒畑丈治(eb0160)がそう言って静かにつぶやく。
彼の目標は鐵を倒せる力を身につけること。
その最終目標の鐵を目の前にして、血が沸き、肉が踊らないと言えば嘘になる。
「それは、難しいこと。今回の停戦も、一時的な事。人間は我々豚鬼を恐れ、倒そうとする。我々は人間と戦い、それを良しとする」
ソコまで言うと、一生懸命に言葉を紡ごうとする。
「豚鬼は‥‥欲望に忠実だ。鐵様は強いもののふ、ますらおと戦われるのがお好き。豚鬼は戦闘種族だ‥‥戦うのが好きなのは当然。だが、私は戦闘欲より、支配欲より、美味しい物を食べたいという食欲が優先してる。もし、美味しい物が食べられなく成ったら、私は人間を襲うだろう」
そう言って白銀は黒畑の頭を優しく撫でた。
一方酒盛りは盛り上がっている。
盛り上がってる中で長寿院文淳(eb0711)が道すがら阿修羅山を見て回ったのを書きまとめていた。
蓬莱山とは異なり、軍事拠点らしき物が見あたらない。
物見のやぐらはいくつか有ったが、それは偵察用の物である。
「阿修羅さんには軍事拠点は無いのですねぇ」
彼がそうつぶやくと、一人の侍(豚鬼側の人間)が詰め寄ってくる。
「必要無いんだよ。陸路でここまで入り込める様な奴は居ないし、居たとしてもそれは軍じゃない。各個撃破出来る極少数の人間だ。逆に船で乗り込んで長期戦となれば、兵糧も琵琶湖から運ばなきゃならねぇ。そんなことはほぼ不可能だ。船を沈められたら帰れないし、背水の陣で望まなきゃならねぇ。人間が5人や10人紛れ込んだって、豚鬼王様や熊鬼様が出張れば殆ど人間に勝ち目は無いからな」
彼は高坂と言った。
豚鬼達の軍事顧問らしい。
豚鬼達は知性が低く、人間の文化を猿まねすることしかできない。
そんな豚鬼達に陣形や戦術などを教えているのが彼だ。
酒を振る舞う山本佳澄(eb1528)に、杯を差し出す高坂。
酒が入ってるのか人間と会話するのが久しぶりなのか、舌がなめらかだ。
「俺はこう見えても腕には全く自信がない。頭でっかちでね。雑魚の豚鬼と戦っても負ける気満々さ。そんな俺が今ではその豚鬼達より偉い立場に居る。6人の四天王の次に偉いんだぜ? 笑えるだろう?」
そう言って彼は嬉しそうに酒を呑んだ。
「‥‥女っ気だけは全くないのがこの国の難点だがな‥‥」
たっぷり本音を交えながら。
ミラ・ダイモス(eb2064)は与えられた肉を食い、与えられた酒を呑んでいた。
特にクスリが入っている様子もないし、伏兵が隠れている様子もない。
豚鬼や熊鬼に達に取っては、人間は良い餌だが、鐵や白銀、次郎坊や九月鬼を出し抜いて手を出そうとまでは思わない。
彼らの目の届くところに居れば比較的安全と言った感じである。
「強い‥‥ツヨイですねぇ。身体からあふれる剣気が違う。一度刃を交えてみたい物です」
次郎坊がミラ・ダイモスの身体を見つめながらそう言って微笑んだ。
「お師匠様、今日は刃傷沙汰は厳禁ですよ?」
千剣ちゃんに釘を刺される次郎坊。
「しかし‥‥何で紫陽花なんて栽培してるんだい?」
ネフィリム・フィルス(eb3503)の言葉にミケが応える。
「甘茶を作るんですよ〜。甘くて美味しいですよ〜」
ミケは杯で血を飲み干している。
人間の血なのか、牛の血なのか分からないが、とても嬉しそうに飲んでいる。
「そうだ。近江牛を分けて貰いたかったんだ」
彼女の言葉に不思議そうな顔をするミケ。
「近江牛は闇商人さんに定期的に販売してますよ〜。お船に乗る前に解体してお肉の部分だけ〜。内臓とか血は美味しく頂いてます」
どうやら琵琶湖を牛耳っている闇商人とか海賊とかが居るらしい。
人参、ゴボウ、里芋、魚のつみれ、近江牛の肉団子などがふんだんに入った味噌煮込むが用意された。
井伊貴政改心の作である。
平和だ。
この停戦が長く続けば良い‥‥っと思うけどそれは不可能だ。
豚鬼は人間と戦う事で戦闘経験値を高めていく。
人間と停戦するには、共通の敵が必要だ。
出来れば美味しくいただけるような敵が。
「今日は有意義だった。私は人間と豚鬼の戦いに関しては、どちらに力を貸すことも無いだろう。森や山を破壊しない限りは‥‥ね」
比良山次郎坊はそう言って冒険者と豚鬼達に笑みを浮かべた。
この停戦は、次の満月まで続くことと成った。
(人間が貢ぎ物を沢山くれれば延長しても良いという話にはなっている)