猫耳近江屋珍騒動 1

■シリーズシナリオ


担当:

対応レベル:7〜11lv

難易度:やや難

成功報酬:3 G 45 C

参加人数:10人

サポート参加人数:9人

冒険期間:03月11日〜03月16日

リプレイ公開日:2006年03月19日

●オープニング

●猫耳近江屋珍騒動 1
 平安京。京都左京区の東に存在する地区。外京。
 新撰組三番隊が何故か、左京区区外地域などと呼んでいる場所である。

 そんな場所に一軒のチョット大きくて不思議な店があった。
 1階はお食事処とお風呂やさん。
 2階は連れ込み宿と旅籠に成っている宿屋さん
 ご飯を食べてお風呂に入って寝る‥‥っと言う複合施設にもにたお店である。
 今で言う所の健康ランドや遊技場に近いお店。
 そのお店の名は『近江屋』。

 近江の特産品等を売るのが目的として作られた半官半民のお店である
 そして何故か、猫耳巫女が雇われ店長をしていたりする。

 現在2階座敷には新撰組三番隊の団体様がお泊まり中。
 なんでも組長様が深手を負って、しばらく安静なのだそうな。

 実はこのお店、新撰組の隠れ宿だったり、京都の情報を近江に持ち帰る『目』の役目を果たしていたりと、とても重要なお店だったりするのだが、何故か店長はノー天気な雇われ店長の猫耳巫女である。

「春だにゃ〜」
 3月3日の桃の節句も過ぎて、暦の上では春爛漫ですが、まだまだ寒い日が続き、雪も残っている今日この頃。
 それでも少しは春らしく、元気に行こうという願いを込めて。

「春らしいお料理と衣装を考えて貰いましょ。春らしく心躍るような」

 そんな訳で猫耳巫女様の新シリーズ最初の依頼である。
 近江やで出す料理と衣装を考えてきて欲しいとの事である。
 春らしく、近江の食材を使っていればなお結構。

 がんばって料理と衣装を考えてきてくださいませ。

●今回の参加者

 ea1765 猛省 鬼姫(31歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea5322 尾花 満(37歳・♂・ナイト・人間・ジャパン)
 ea6557 フレイア・ヴォルフ(34歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 eb0711 長寿院 文淳(32歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)
 eb1645 将門 雅(34歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 eb1647 狭霧 氷冥(30歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 eb2257 パラーリア・ゲラー(29歳・♀・レンジャー・パラ・フランク王国)
 eb3360 アルヴィーゼ・ヴァザーリ(28歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・イスパニア王国)
 eb3393 将門 司(39歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb3503 ネフィリム・フィルス(35歳・♀・神聖騎士・ジャイアント・イギリス王国)

●サポート参加者

カイ・ミスト(ea1911)/ 八幡 伊佐治(ea2614)/ 井伊 貴政(ea8384)/ 央 露蝶(ea9451)/ レイラス・シスタス(eb0974)/ フォーレ・ネーヴ(eb2093)/ ルゥ・ラ・ヤーマ(eb2400)/ ナノック・リバーシブル(eb3979)/ レオーネ・オレアリス(eb4668

●リプレイ本文

●猫耳近江屋珍騒動 1
 暖かく成ってきました。暖かく成ってきました。
 まだ芯に寒さは残るけど暖かく成ってきました。

 明け方の寒空には熱いうどんやそばが欠かせない季節ですが、それでも春はソコまで来ています。
 もちろん北近江の春はもっと遅いけど。
 南近江は田植えの準備とかで忙しい季節に成っています。
 治水なんかも元気にがんばっているそうです。

 そんななか猫耳巫女さまが雇われている近江屋でも春に向けての準備です。

 定休日を作って板前さんと料理人さんと、ウェイトレス兼雇われ店長の猫耳巫女様がお出迎え、ちなみに一緒に居る猫はミーコちゃんと言うらしい。

「神様の御神託〜。今日はゆっくりしてくださいな〜。何かお料理が食べたい人は用意させますですよん」
 今日も巫女様はご機嫌なご様子。

「思う所がある。調理場をお借りしてもよろしいか?」
 尾花満(ea5322)がそう言って小包を持って猫耳巫女に深々と挨拶をする。
「はい、粗末な所ではございますが、お使い下さいませニャ」
 猫耳巫女様も深々と頭を下げて挨拶をする。
 彼は厨房に入ると、なにやら料理の下準備を始めた。
 あく抜きに余念が無い。
「なぁ〜満、イギリス風に、ミートパイ、やらプディングなんてのはどうだろう?」
こっちの食材、魚や鳥なんかの肉でつくってね」
 満の奥さんフレイア・ヴォルフ(ea6557)はアクを抜く満にそっと囁く。
 だが満はそれを良しとはしなかった。

 今まで住んでいた所で作っていた料理を作ってしまっては、発想の進歩がない。
 独創性を失ってしまう。創作は環境が産む。今まで住んでいた場所と空気が違う、土が違う、気候が違う。同じ野菜でも味が変わる。だからこそ、その地方のベストな料理を受け入れ、そこから自分なりのアレンジを入れていくのである。
 それが創作料理と言う物だ。
 ‥‥大抵失敗することが多いのだが。

 タケノコのアクを抜きつつ、目に止まったのは近江の新鮮な海産物。
 琵琶湖は淡水の湖だが、あさりが取れたり貝類、魚類、蟹・海老などの甲殻類、新鮮な漁場があり、竹林、米、水もすばらしい物がそろっている。
 特に鮎の塩焼きやあさりのおみそ汁。尾張から受け継いでいる八丁味噌(赤みそ)などを使った料理なども考え得る許容範囲である。

 生魚の臭い‥‥ではなく、旬な魚は刺身でもほのかな若草のような薫りが花をくすぐる。
 料理人の心をときめかす旬の食材の宝庫である。

 猫耳巫女様が厨房覗きながら耳をピクピクさせている。

「近江の特産物に関しては予習済みです。他にも近江牛や鮒寿司などが有名ですね。しかし今回は春をモチーフ、サクラ型の何かを作るというのも良いでしょう」

 長寿院文淳(eb0711)がそう言って尾花満にアドバイスを送る。
「あっ、そうだ。言い忘れてた」

 猫耳巫女様がそう言ってメモ用紙を取り出す。
 ちなみに紙がもの凄く高価なのはふまえておこう。安易に使ってるのは猫耳巫女様の財布の金では無いからだ。

「牛のお肉は余りお勧め出来ませんにゃ。京都の人には馴染みが薄い様なのでアンケートを取ってみました。冒険者と他の国から来た人を除く殆どの人が『4本足の獣を食べると地獄に堕ちるから食べない』のだそうです。京都の人は信心深いよね〜」

 信心深いかどうかはともかくとして、猫耳巫女も立派な巫女なのでお前がソレを言うのか!! っとその場の全員が突っ込みたい心境にかられてくる。

 ちなみに余談だが、京都の冒険者の酒場の鮒寿司は近江の鮒である。
 京都でも鮒寿司は‥‥独特の臭いがあるが受け入れられている様だ。


「ん〜まずは春らしい衣装かー。やっぱり色はピンクだよねっ。‥‥梅とか桜の小花柄がかわいいかも。生地はやっぱりひらひら・ゆらゆらの薄手がいいよねぇ。若い子はおしゃれのためなら、寒さなんて感じないからナマアシでオッケーだよね。どうせなら近江の特産の織物や染物でね。そしたら、『これは近江特産の織物なんですよー』とか、話も弾むかも。」
 食べ物ではなく、衣装の方の意見を猫耳巫女にだすアルヴィーゼ・ヴァザーリ(eb3360)。
 こんな事もあろうかと‥‥既にいくつかの反物が用意されている。
 猫耳巫女が麻布を手渡す。
「高宮布なんてどうかな? 近江上布と言えば、貴族の間でも評判なんだけど‥‥あとは近江真綿かな。近江では蚕の養殖も盛んで‥‥いや、質は良いけど、メチャメチャお値段は高いらしいけどね」
 そう言いながら乱雑に投げる猫耳巫女様。
 近江上布とは近江特産のすばらしい麻布の事である。
 近江真綿とは絹織物であり、シルク製品である。

 どちらも貴族が高値で取引する布生地であり、欲しくて金を積んでもなかなか手に入らない物である。
 だが、それがここには用意されている。
 どんな入手経路なのかは分からないが、恐るべし、近江商人。
「料理を乗せる焼き物も近江産って有りますか?」
 彼の言葉に少し頭を抱える猫耳巫女。
「日常雑器類‥‥お皿とか丼とか‥‥一応近江の窯元で焼いて貰った物だけど‥‥表面がざらざらしてて、余り良い物では無い‥‥かも。一応宣伝になる‥‥かな?」
 そう言って土気色をした皿や丼を見せる。確かに華やかさは無いが、素朴で良い味を出している。
「これ、なんて焼き物なんですか?」
 何かが彼の胸をついたのだろう。彼は猫耳娘に質問した。
「えーと、信楽焼(しがらきやき)とか言ってたと思うよ」
 猫耳巫女は気が付いてないが、ソレは有名な焼き物である。

 近江は不思議と世界に名高い特産品が多い。
 この時点ではまだ名が通っていない物も多々あるが。


「まいど〜。万屋「将門屋」店主の将門 雅(しょうもん みやび)や。ご贔屓に」
 将門雅(eb1645)が猫耳巫女に対抗して、巫女装束+千早+神楽鈴+獣耳ヘアバンドという格好で登場。猫耳2人そろって猫猫踊りを踊っている。

「近江屋さんにハッピーをお届けだよぉ♪」
 そんな踊りの中、春風に乗ってやってくるようにして、パラーリア・ゲラー(eb2257)
がなにやらもごもごと料理のメニューを見ている。

 どうやら何か食べたい様だ。
「何か食べる? 材料はあるし、上のお座敷にでも用意するけど」
 巫女の言葉を待っていたかの様にパラーリア・ゲラーがメニューを指さす。

「近江牛の1ポンドステーキと近江牛のスキヤキ!」
 ‥‥肉まっさかりである。

 2階へ上がると見覚えのある羽織‥‥新撰組である。
 普段は隠し部屋に身を潜めている斉藤だが、今日は客間でゆるりと構えていた。
「ん? コレは可愛い訪問客だな」
 そう言って斉藤がパラーリア・ゲラーにむき直す。
 一見すると無造作にしているようだが、達人が見れば隙が無いのが分かる自然体。
 彼の傍らには鬼神丸‥‥っと言う彼の愛刀が立てかけられていた。
「初めまして〜。新撰組の人〜。少し質問しても良いかな〜?」
 詰めよるパラーリア・ゲラー。
 鳩が豆鉄砲喰らったような顔で答える斉藤。
「守秘義務違反に成らない程度ならな」
 そう言って彼女の肩をぽんっと叩く。

「お触り大好きって本当ですかぁ?」
 その質問に答えるように彼女のお尻を優しく撫でる斉藤一。
「あぁ、俺はスーパーウルトラセクシーヒーローだからな」
 そう言って微笑む斉藤。
「必殺技が使えるって本当ですか? 牙なんとか〜?」
 その質問に少し考える斉藤。
「まぁ余り戦闘での手の内を晒すのは良くないからな、少しだけ。俺には3つの武器がある。一つは剣の腕、2つ目は洞察力、そして3つ目は人を騙す事さ。そんな俺の必殺技は今の所3つだ。先の先を取る抜刀術の一撃、後の先を取るカウンターの一撃、そして新撰組特有の平突き。俺は左利きなんで、左片手平突きだが‥‥」
 そう言って刀を抜いてそれらしく構える斉藤一。

「元気そうだな‥‥心配したんだぞ?」
 猛省鬼姫(ea1765)が出来たばかりのタケノコご飯を持って上がってくる。
 斉藤の昼飯らしい。
「そう言えばこの尻も久しぶりだな」
 そう言って猛省鬼姫のお尻に手を伸ばす斉藤一。
 いつもならここで反撃の一つも見せる彼女であるが、ケガを負わせたことの負い目か、おとなしく尻を撫でられている。

「いや‥‥まあ‥‥この間は迷惑かけたからよ。ところで、子供のことなんだけど‥‥実際、お前どうおもってるわけ?」
 そう言って自らの腹を投げる猛省鬼姫。
「お前の腹に俺の子がいる‥‥っと言う事か? ソレが本当なら、うれしさ半分。辛さ半分だな」
 そう言って少し曇った顔をする斉藤。
 そんな斉藤の表情を見て取る猛省鬼姫。
「俺の子を宿してくれるのは嬉しい‥‥っが、見ての通り俺は常に沢山の敵を作り、同時に沢山の人間に命を狙われている。俺の女‥‥子供と分かれば当然命を狙われる事も有るだろう。‥‥それ以前に、俺は今日死ぬかも知れないし、明日死ぬかも知れない命だ。別に死ぬことは怖くないが、未練が残るのが辛い」

 そう言って彼は一つ息を吸って、いつも通りの言葉をはき出す。

「優しい誰かを守るために‥‥悪・即・斬と言う、おのれの正義を貫くために、俺は刀を取る。新撰組の、誠の御旗の元に刀を取る。もし、新撰組が悪に染まると言うのなら、俺のこの手で切って捨てるつもりだ。‥‥まぁ俺はいずれ斬られて死ぬ身だが、もし生き残れるなら、沢山の愛人と子供に囲まれて、平和な余生も悪くないな」
 そう言って彼は微笑を浮かべた。

「やほ〜♪ 相変わらず熱いセリフだねぇ」
 狭霧氷冥(eb1647)がそう言って斉藤に挨拶をする。
 っと同時に斉藤の手が彼女のお尻へと伸びる。
 今の舌の根が乾かぬうちに‥‥っと言う感じである。

 試作されたばかりの、薄手な桜の刺繍の入った淡い桃色の中着で登場する彼女。
 絹を使っているため、薄地で透けて、身体のラインがくっきりと見える。
「上着は今縫って貰ってるから」
 そう言って笑う狭霧氷冥
「最近京はめざましく色々な事件が起こってます。京を騒がす人斬り‥‥繋がれなかった月道‥‥沖田さんの離反‥‥虎長の暗殺、いうわけで‥‥斉藤さんにいつまでも隠居生活しててもらう訳にもいかなさそうなんですよ。まあ、怪我されたまま歩き回られるもの困りますけどね」
 そう言って斉藤にメシを勧める狭霧氷冥。

 その傍らではパラーリア・ゲラーが450gのステーキと激しく格闘している。

「沖田君は‥‥惜しいことをしたな。俺と同等の使い手だったというのに」
 そう言ってぽつりとつぶやく斉藤。その言葉が本心なのかどうかは分からない。


「斉藤組長の耳に届いているかも知れんが、平手組長が伊集院伍長に斬られた。そして、薩摩藩邸に勝麟太郎と清水の次郎長の子分、小政と森の石松が訪問した。そして、華山院忠朝の後任として、近衛忠広を新しい大納言に推すようやわ」
 将門司(eb3393)がそう言って斉藤一の顔を窺う。どうやら斉藤の反応が知りたい様だ。

「言いたい事は分かる。3番隊は暗躍が多い隊だ。独自の情報網もある。だが、情報は正確にな。なんの証拠も成しに『平手組長が伊集院伍長に斬られた』っと言うのは行き過ぎだ。何も証拠はない。それに彼女が疑わしいなら、観察方が調べる筈だ。彼女はまだ十一番隊に居るんだろう?」
 そう言って今度は斉藤一が将門司の顔色を窺った。

「ちょうど良い。あたしの質問にも答えておくれよ」
 ネフィリム・フィルス(eb3503)がそう言って斉藤に質問する。
「今日は新顔の質問漬けだな。あぁ、答えられる事ならな」
 そう言って斉藤が彼女の胸に目線を送る。

 胸の大きな娘も嫌いでは無いらしい。
「江戸が大変で源徳公は京都まで手が廻らない気がするんだけれども、今、京都で乱があったら新撰組の味方になる勢力は京都の傍にいるのかい?」
 その質問に斉藤は答えられない。守秘義務があるからだ。
「新撰組は京都でも随一の戦力を誇っている。そうそうに破れる事は無いと思うがな」
 そう言って斉藤は小さく微笑みながら、彼女の胸に手を伸ばした。


 くれる夕日の中で、彼らは静かに佇む。
 明日の夕日が見られるか‥‥それはダレにも分からない。