●リプレイ本文
スニア・ロランド(ea5929)はファーブル島に到着すると、早速、一同のノリを高めるため、キャピー籤を始めた。
ルールはシンプル。金をかけた人は、キャピーが変態した姿の予想を以下の5つの中から1つを選択。
1.蝶
2.蛾
3.蜂
4.寄生虫が湧いて出る
5.その他
キャピーの蛹化結果が判明した段階で、掛け金を正解者で山分け。
12Gを越える配当が出た場合は、越えた分の金額を宴会資金行き。
ルカ・レッドロウ(ea0127)はスニアのルールを聞くと、口笛を吹き、金貨を一枚、彼女に渡す。。
「もちろん参加するよ。そんな面白そうな話、乗らないワケがねェ。
俺の予想は‥‥蝶、かな。美しく空を羽ばたいて欲しいっていう想いも込めて、これに賭けるぜっ」
豪快に笑いつつ、ルカは──。
「さて、今回はいよいよキャピーが蛹になりそうだってェいうから、無事に羽化するまでどんなコトがあっても護りきらないとな‥‥。
キャピーを狙う輩がいるかもしれねェ。もしそんな野郎がきたら、遠慮しないで撃退しちまおうぜェ、みんな。
最初はちと不気味だったけど、今となっちゃキャピーが可愛くて仕方がねェからなァ」
──と宣う。
「まったく、キャピーは思春期か‥‥恋の悩みなら、俺が相談に乗ろうかい、なんてな」
「あのその前に無事キャピーが成虫にならないと」
と、幸もとい影薄げな、ドクトル・ウィッグルズワースが、割って入る。
「いや、だったら余計に蝶の方がいいな──‥‥今までずっと檻の中に閉じ込められてたんだからな。せめて、羽化後は自由に空を飛んで欲しい。‥‥空を舞うキャピー‥‥何か、想像しただけで感無量だぜ‥‥」
ルカは言っていて、思わず涙を拭う。
「‥‥私は、というより私も蝶に一票です、美しい物には棘が有るとは有名な言葉ですからね」
言いながら、ムーンリーズ・ノインレーヴェ(ea1241)は華麗にコイントスを決める。
「キャプテン‥‥また宜しくお願いしますね、いや忘れた訳ではなく、只他の依頼が忙しくて。ですので、‥‥今回来れない、クレアの分まで頑張りますよ」
「やるじゃないか?」
ルカが熱くなってコイントスしようとするのをマリウス・ゲイル(ea1553)が笑って止める。
「ひとり、一口までですよ」
ルカは軽く食い下がった所で踏ん切りがついたので、トスを止める。
マリウスは腰を折って──。
「ご無沙汰してすみません、皆さん。キャプテンもドクトルも元気そうで何よりです」
夏は脱皮の季節と言いますが、キャピーもいよいよ脱皮ですね」
──と軽い挨拶から始める。
「キャプテン、先日はキャピーにマンドラゴラをやる場に立ち会えなくて、残念でしたが、キャピーもついに蛹になるのですね。これからどうなるか楽しみです。
私も賭には参加します。
『巨大な蛾になる』に一票を‥‥。
願わくば、毒の無い状態で綺麗な蝶になるといいですが‥‥現実は辛いものです。
巨大な毒蛾になるのを警戒して、警護は厳重にしましょう」
「ああ、成る程、巨大な毒蛾か‥‥それは傍迷惑だな──標本にする位しかないったらありゃしない。流石にカン伯爵にも許可は取れないだろう」
「え、許可を取っていたのですか?」
カン伯爵領騎士団の一員として驚くムーンリーズ。
「いやなに、暗黙の了解という奴だよ。代わりに自分に取って無駄な知識であるデビルだの何だので、相談に乗っているのだから。最近は魔王崇拝だの何だので、忙しいったらありゃしない」
「魔王崇拝──悪魔崇拝じゃなくてですか?」
「おそらくね。上級、中級、下級に分類されるデビルの内で、魔王とも自称出来る様な上級に分類される様な、デビルが暗躍しているのだろう。まあ、デビルの能力と謀略能力は別の問題だがね。デビルそれぞれの個体の気性というものもある。ま、ともあれ、マリウス君のいいたい所は悪人からキャピーを護る為に護衛するという意味であって、キャピーを毒蛾にしない為に護衛するというわけではない所でファイナルアンサー?」
「そうです。キャプテンも人が悪いですよ」
マリウスが笑って頭を掻くのに、卓袱台の上に、怪しげな藁人形やら蝋燭を置いたロヴァニオン・ティリス(ea1563)が檻の向こうのキャピーに向かって──。
「蛾だ、蛾だ、お前は蛾になるのだ!」
と、脱皮前から怪しげな呪いをかけている。キャピーもその気になるかもしれない、と。
「キャプテン、それは非論理的です」
ウィッグルズワースも思わずキャプテン・ファーブルに漏らす。
「浪漫の欠片もない──」
「浪漫より受けを取る。それがノルマン・クォリティ」
キャプテン・ファーブルの言葉にロヴァニオンが断言する。
「大体、繭を作ったらバードのシフールの双子。当然、美人だ。がメロディーを奏でつつ、手近なジプシーがサンレーザーを撃ち込む物と相場が決まっている」
そんな相場はない。どこから聞き込んできたものか。
「とりあえず、スニア。蛾だ、巨大な蛾に一口」
ロヴァニオンがコインを手渡す。
「戦いが終わった後はこれで決まりだ──それまでは禁酒、禁酒、断酒だ」
船に積み込んできたベルモットの山を指して呻くロヴァニオン。酒樽と一緒に生まれてきた様な身故、勝利の宴会までとはいえ、酒を断つのは相当に辛いのだろう。
名残惜しいのはミレーヌ・ルミナール(ea1646)も一緒、但し方向性が違うが。
「私はキャピーと会ってからたった1ヶ月くらいだけど、いよいよ成虫になると思うと何だか名残惜しいって言うか‥‥」
最初は大きすぎて不気味だと思っていたが、この目で羽化する瞬間が見られるかと内心どきどきしている彼女であった。
「いや、ミレーヌくん、まだ蛹になるだけで、羽化はそれなりに先になるだろうよ。少々早とちり過ぎ」
「すみません。キャプテンの様な境地にはなれなくて、まだ羽化もしていないのに標本だの何だのって先走っているから」
「何。良き研究者足る物、将来設計とかそう言う物は大事だから、多分そういう事になっている」
「ともあれ、スニアさんお願いします。予想は蝶。
これで毒蛾や寄生虫が湧いて終わり、だったら全然ロマンチックじゃないですよ!
絶対綺麗な蝶になります、蝶にっ!それ以外有り得ない!」
単なる夢見がちな性格が暴走し、肝心のファーブルさえ根拠を持って言えない事なのに浪漫だけで、やたら力説を始める。
「それではもっと、夢のある返答をすると致しましょう。5のその他で」
と、スニアに金貨を渡すのはジィ・ジ(ea3484)。
「キャピーももう成体へ変態する頃合いとなりましたか‥‥。
なにやら感慨がございますなぁ」
と姿勢正しき居住まいから涙を流す。皆、涙腺が脆くなっている様だ。
「ちなみに何が生まれるかと?」
ジィに尋ねるウィッグルズワース。
「蝶の羽根の竜などが生まれたら面白いですな♪」
「素敵ですね。しかし、その場合、モンスターとしては、何に分類すべきなのか?」
と、ウィッグルズワースは感慨に耽るが。
「いや、それは美しくない。インセクトであってこそ捕まえた甲斐やら、設備投資した甲斐があった訳で」
ダダを捏ねるキャプテン・ファーブルに対し、涙を拭ったジィは落ち着き払った態度で。
「しかし、何に成長しようとも、世の混乱を望む者には好機なのやも。警戒を怠るわけには行きませんな」
ジィの言葉に対して、キャプテン・ファーブルは落ち着きを取り戻し。
「そうだな。悪魔の使う魔法で、蠅より大きければ、術の対象より小さいものに変化させるものがあると聞く。それをかけられて、島から連れ出されたら、対処方法が判らない分、もっと厄介な事態になりかねない」
「そうお考えいただき、感謝の極みでございます」
「いよいよ幼虫の時期は終わりですか‥‥。成虫になったらどんな風になるんでしょうね‥‥。少し恐くもありますが、やはり実際に見てみたいです」
そこで、ゼルス・ウィンディ(ea1661)が落ち着きを取り戻したキャプテン・ファーブルに問いかけていた。
その言葉に鼻歌を止めるロックフェラー・シュターゼン(ea3120)。
「しかし、モンスターならば被害が出るかもしれない。俺みたいに肉親をモンスターに殺害された子供が出るのは御免だな‥‥凶悪なモンスターだと判ったらキャプテン、どうするつもりだい? 未知が既知に変わった時には遅いんだ」
シルバー・ストーム(ea3651)もキャプテン・ファーブルに決意を問い質す。
「キャピーが成虫になって暴れだし、無傷で抑える事が出来ない時は倒さねばならないでしょう。人々を脅威に晒す訳にはいきませんから、その事は考えておいて下さい」
コトセット・メヌーマ(ea4473)も決断を迫る。
「とうとう、いよいよその刻が近づいているのだろうか?
普通の虫と同じように蛹になって変態するのか?
結局、蛹にならず、そのまま脱皮を繰り返して大きさを増すだけかもしれない。
もし変態するならば、蝶か蛾だろう。大きな羽を広げるならば、鉄檻は邪魔になる。
キャプテン・ファーブルはその辺りどう考えているのだろうか。予想体長の蝶が自由に飛び跳ねられる鉄檻となったら、お城ぐらいの大きさになる。
成虫になったらファーブル島に解放するのが良いだろう。このあたり、確認しておきたい」
「そうですね、どんなモノになるのか全く判らない訳ですから。
でも、毒蛾になるような気がします。そうなったら、大変な事になるのではないでしょうか?
もちろんそうじゃなければ一番ですが。
寄生虫というのも嫌ですね。どれぐらいの大きさか。人ぐらいの大きさでも不思議じゃないじゃないですか」
マリー・アマリリス(ea4526)も尋ね、ラックス・キール(ea4944)も会話に割って入る。
「いや、俺はキャピーは蝶になるんじゃないかと思ってる。
ファーブル島を飛び回る姿をみてみたいから蝶になる方に金貨1枚賭けよう」
片や決断を迫られるキャプテン・ファーブルはしばし黙った後。
「人を害する様な蝶や蛾なら、羽根を傷つけずに討伐。これだけの手練れでも、負傷するなら、羽根の無事を問わず討伐」
その言葉にマリーは頷くと、以前調べた地図に基づいて、島の食材確保に向かう。
「パーティーの食材として島にいる獣か野鳥を狩って提供しよう。
楽しいパーティーになるといいな」
ラックスはマリーのサポートに入るべく食材収集に走り出す。
無言で頷き、弓の手入れに戻るシルバー。
ロックフェラーは金貨を取り出しつつ。
「そうか、なら、俺は蝶に賭ける。
それが一番問題無く進みそうだし‥‥平和に進めたいという俺の願望も込めて」
「いや、パピヨンでも毒は持っているからね、油断は禁物。普段は堅物なんちゃって?」
「しかし、寄生虫の可能性を示唆するのは驚いた。ここまできて寄生虫コンニチハは見たくない。
キャピーに卵を産もうとするのは巨大ハチの類。そのようなモノが現れたら追い払う様にしょう──。<星の探求派>の名に於いて」
「うーん、キャピー君はどーゆー姿になるんでしょーねー、楽しみー」
そんなこんなで数日が過ぎる。その間、井伊貴政(ea8384)は、朝晩の寒暖の差から、体調も崩し易い時期という事で、肉、魚、卵の何れかを、一食に最低一品含めた献立を作り。野菜も茹でて量を食べ易くし、朝晩は暖かいものを付け、更に夜勤の人達に夜食を作るなど、島のまかないさんとして大奮闘していた。
そんな彼が昼下がり、昼食作りに使った包丁を研ぎ直していると、ゼルスが声をあげる。
「キャピーが!」
スニアがその声に振り向くと、青い大芋虫キャピーが檻の頂上で、糸を周囲に吐き出し始めているのだ。
ミレーヌはその場に崩れ落ちる。
「え、繭を作っているの? そんなぁ、それじゃ、蛾か蜂じゃないの? 希望通りにはいかないのね‥‥」
残念そうにミレーヌは落ち込み出す。
一方で、ラックスがキャプテン・ファーブルを呼びに走り出す。
「キャピーに動きあり! 急いで!!」
その声に跳ね起きる九紋竜桃化(ea8553)。
「何事? とりあえず写生しなければ、これも貴重な研究記録故。キャプテンにもお認め頂いた故、肝心の場面を逃す訳には行きません。折角の機会、キャピー様のお姿、絵に取らせて頂きますわ」
「どうなされました九紋竜様」
ジィを筆頭とした一同も走り寄ってくる。
「皆様、キャピー様の様子が変わりましたわ、いよいよですわ」
言いながら桃化の筆が冴えに冴え渡る。
繭の中で踊る様に、はね回るキャピーの影はやがて見えなくなった。
先日、キャプテン・ファーブルがパリで引き当てたライトのスクロールを、コトセットに使ってもらい、強力な光源で、半ば繭を貫通させ、同じくコトセット保有の、エックスレイビジョンのスクロールで内部を監視。
「どうかね? 内部で蛹の肢や羽根が分離していれば蜂で、一体化していれば蛾なのだが?」
ゼルスはインフラビジョンのスクロールで内部を監視しているが、内部の変化は判らない。
賭けた者にとって、スリルに溢れた瞬間が来た。
「一体化‥‥間違いない、蛾だ」
スニアは厳かに告げた。
「賭けの勝者はロヴァニオンとマリウス!」
一方で、マリーとラックス、そしてマリウスが集めた食材を、ゼルスが作り置きしておいた、アイスコフィンで冷やされたロヴァニオン持ち込みの無数のベルモットが迎撃する。
「キャプテン、断酒限界のシグナルが俺から来ています!」
言いながらロヴァニオンがベルモットに手を伸ばそうとする。
「よし、飲酒承認」
キャプテン・ファーブルの断が降った。
「断酒限界突破! 俺は今、夜の蝶となる!」
ロヴァニオンがアイスコフィンで頭をぶつけながらも、酒を掻き込み始めた。
「よし飲むか」
ルカもベルモットに向かう。ロックフェラーも程ほどに楽しみ出す。
宴会になれば貴政がマリーの手助けで、ガっつりいける肉・魚の丸焼き系。取り分けて食べられるパスタやらの惣菜系。口直しの出来るサラダやデザート系。酒に負けない濃い目の味付けのツマミ系などを準備のあった通り、調理して、皆に並べた。
「さあ、堪能して下さい」
ロヴァニオンがベルモットの最後の一杯を飲み終わり、酒の肴を食べ終わると、合掌する。
「おかわり」
ミレーヌは島を去る時、キャプテン・ファーブルに貴重な物を見たり体験できたとお礼を言う。
「ファーブルさんのように危険だけど難しい研究をする人って、私は素晴らしいと思いますよ。
またインセクト関連の依頼で会えるといいですね」
「大丈夫。今度はカンでラージアントの女王を捕まえようと思っているから──」