己を売った勇者の血──魔を滅す礎となろう

■シリーズシナリオ


担当:成瀬丈二

対応レベル:8〜14lv

難易度:難しい

成功報酬:4

参加人数:15人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月25日〜08月01日

リプレイ公開日:2005年08月01日

●オープニング

 ナイト、神聖騎士、浪人は正団員。それ以外は如何なる生業であろうとも見習い団員として取り立てる──。
 という内容のカン伯爵領からの入団希望者斡旋依頼の使者がパリのギルドに届いたのは7月を半ばも過ぎての事であった。
「はあ、城下で悪魔崇拝者が跳梁跋扈して、衛士だけでは手が足りそうにないから、騎士団員の増強という事ですか」
 ギルド受付に返すは『シュー・ドゥモッサー』と名乗る、頭からフードを被った黒いローブを着込んだ黒クレリックであった。
 智恵を買われて抜擢されたという。当人の弁であるが──。
「ええ、衛士からの情報によると、実際にインプなどの下級な悪魔を召喚する輩もいるそうで、普通の武器しか持っていない彼らでは力不足。その点、冒険者は魔法の武器を所持していたり、武具に魔力を付与して戦う術を効率よく覚えている筈ですから、この度の緊急の団員募集にはうってつけかと」
「緊急という事は正式な団員ではないと?」
 確認すべく受付は、シューに問う。
「いえ、そんな事はないですよ。ナイトや神聖騎士、それに浪人の方々には入団の段階で、歴とした騎士団の看板を背負って貰いますから。他の方々のそれからの地位は働き次第で」
「仮にも騎士団試験ですから、それ相応の試験はあるのでしょうね」
 受付の問いに、シュー答えて曰く。
「ええ、3つの試験を準備しております。不肖わたくしが担当ですが。最初の試験は仁・智・勇の内、自分の仁をアピールしてみて下さいというものです。後の試験は試験が進むに連れて公開していく予定です。ともあれ、最初の試験は募集段階で、公開しないとフェアではありませんから以上、腕自慢を期待していますよ」
「もちろん、それは」
「後、それと期日までにカンに来る、移動手段を持っているかどうかも試験の内ですから。魔法の品だろうと、愛馬であろうと手段は問いません。試験期日までにカンの城に到着して下さい」
 シューの説明によると、カンまではパリから約150キロ。
 整備状況は芳しくないものの街道はある。
 また、船を出し、中型船なら3日の行程で行くのも手である。
 ただし、カンまでの定期便はない。船を貸し切る事が必要となるであろう。

 ともあれ、何名が無事にカンに到着して、騎士団の入団試験を受けられるか、勝負はパリから始まっていた。

●今回の参加者

 ea1241 ムーンリーズ・ノインレーヴェ(29歳・♂・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea1587 風 烈(31歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea1603 ヒール・アンドン(26歳・♂・神聖騎士・エルフ・ノルマン王国)
 ea1643 セシリア・カータ(30歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 ea1681 マリウス・ドゥースウィント(31歳・♂・ナイト・人間・ノルマン王国)
 ea1872 ヒスイ・レイヤード(28歳・♂・クレリック・エルフ・ロシア王国)
 ea1911 カイ・ミスト(31歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea2350 シクル・ザーン(23歳・♂・神聖騎士・ジャイアント・イギリス王国)
 ea2389 ロックハート・トキワ(27歳・♂・レンジャー・人間・フランク王国)
 ea2449 オルステッド・ブライオン(23歳・♂・ファイター・エルフ・フランク王国)
 ea3073 アルアルア・マイセン(33歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea4167 リュリュ・アルビレオ(16歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea4266 我羅 斑鮫(32歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea4470 アルル・ベルティーノ(28歳・♀・ウィザード・人間・ノルマン王国)
 ea8553 九紋竜 桃化(41歳・♀・侍・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

(オルステッド・ブライオン(ea2449)は怪人である。彼を改造したのは結社『グランドクロス』である。彼は信仰による世界制服のため、日夜戦っているのである!)
 ‥‥とはいえ、気ままで不安定なその日暮らしも、これでおさらば‥‥恋人や兄弟のためにも、騎士団に職を得るんだ! マロニエに誓う。
 等とオルステッドがやっている傍らで、ロックハート・トキワ(ea2389)は──。
 自分がどれだけの強さ、判断力を持っているかを、入団試験で確かめたい──。
 ‥‥もし、入団試験に合格しても、入るかどうかは待遇次第だな‥‥。
 と口にのぼせながらも──。
(う〜ん‥‥チームプレイには賛成なんだが‥‥別に無理して一塊になる必要はない気が‥‥船賃もあまり出せないから、なんか悪い気がするんだよな‥‥何より酔う──)
──とか思いつつ‥‥口には出さんぞ? と彼は決意を固めていた。
 慌ただしく、船を押さえるギルドと、船主とのやり合いの中、セシリア・カータ(ea1643)はパリの港で、ヒール・アンドン(ea1603)と合間を縫って薬草茶を啜る。
「今回は大変そうですね」
 カーターが一息入れると、それに赤面してヒールは
「‥‥出来れば皆で向こうまでいけるのが一番ですしね‥‥」
「ええ、船を借りられるといいのですが。全員の予算でどれぐらいなるのかな」
「金貨百枚くらいが堅実な船長を雇う相場だと聞きました。食費込みで。自分達も下働きをして、尚かつ護衛も引き受けて、と。
 キャプテン・ファーブルはパリのギルドで冒険者から質問があったら、困るからと、コメート号の貸し出しを断られてしまいましたよ。
 あの御仁は古ワイン友の会の会長だと自称しているのに‥‥会員に何もしてくれない‥‥拗ねたい、でもセシリアさんに甘える訳にはいかないですからね」
「拗ねるなら恋人ですか? 駄目ですねぇ。それにしても、うまく、目的地に向かう船があるといいのですが」
 セシリアはそう言って恋人欠乏症のヒールをあやすのであった。

『運良く』パリから船を仕立てる事に成功し、カンについた一同は、ムーンリーズ・ノインレーヴェ(ea1241)の、海に放った『白波の指輪』の為か、恙なく城の前に立っていた。
 若干1名、口から言葉を出さなかったが、別のものを出しかかった者はいたが、指輪のご加護か未遂で済んだ。
 ロックハート16才の甘酸っぱい夏のメモリーである。
 黄昏時の目の前の城の旗には、濃い青い盾型の地には盾に一本白い線が引かれ、黄金の林檎が落日に煌めいている。
 その残光を見やるジャイアントの少年神聖騎士シクル・ザーン(ea2350)。
(悪魔崇拝者が跳梁跋扈する都市カン、ですか。
 以前、悪魔を取り逃がしてしまった私としては、見過ごすわけにはゆきませんね。
 これも『大いなる父』の与え給う試練の一つ。
 かの地の悪魔を討ち滅ぼすまで、我が剣、カン伯にお預けいたしましょう。
 もちろん、その前に試験に合格せねばなりませんが)。
 彼の抜きんでた体格からの視線に見やるのは、少年伯爵、フィーシル・カンであった。
 そして、一応、礼装の積もりなのだろうが、黒地に銀糸で古代魔法語の縁取りをしたローブ姿の年齢、性別、種族ともに不詳のシュー氏。そして、一同は初見のエルフのナイト。
 その種族にしては通常の人間並みの体格と緑色の目。そして、波打つ金髪を靡かせ、日本刀を腰に落とし差しにした20代前半の男性に目が行った。
「皆さんには、初のお目見えとなる。カン伯爵領騎士団団長、メルトラン・カンだ。皆さんが正式に騎士団に加入すれば上司となる。この度の入団試験への参加をありがたく思う」
 押し出しも爽やかに一同へ、テノールの声でメルトランは告げる。
「一応、伯爵閣下の摂政役も努めている──この任も時間が経てば、自ずと解消されだろう──ともあれ、今後は私とシューが窓口となる。左様心得頂きたい」
 メルトランの言葉に、武闘着に身を包んだ風烈(ea1587)は一歩進み出て口を開く。
「失礼。『仁』について語らせてくれ。まず、儒教の自分を偽らない誠実さである『忠』と 他人への思いやりを意味する『恕 』からなる『忠恕』 と、まずは身近な人間関係の中での親への愛情『孝』と年長者への敬意『悌 』という形の実践から、社会一般へと広げていく事で思いやりのある人間に近づこうとする『孝悌』のふたつから『仁』は表せれると考える。
 形として示すならば、道中での仁の実践の内容と共にきた仲間が、道中共に助け合い、ひとりも欠ける事なく、万全の状態で試験に挑めたと言う事実を他人を思いやる心こそ『仁』の証明」
(仁を示せか、さて俺に示せる仁か──)
 その烈の言葉は、はたして、己に如何に示せる仁があるか、戦々恐々していた、我羅斑鮫(ea4266)には願ってもない、天の声であった。
(有り難い、これで手間が省ける)
 一方、人を見る目に肥えた、ヒールやマリウス・ドゥースウィント(ea1681)、九紋竜桃化(ea8553)の目には『孝』『悌』の説明が発せられる度に、メルトランが見えない何かで心を掻きむしられるかのように、一瞬表情を曇らせるのが感じられる。
 それはさておき、『侍』である桃化は侍、志士は騎士団参加を遠慮して欲しいと、ギルドの募集段階段階で伯爵から達しが在ったにも関わらず、騎士団入団試験に参加してしまい、ここまで来た自分の不適切な参加を深く詫びつつ、同盟国に対して尽くしたいと話し、傭兵としての雇用をメルトランに願い出る。
「此度は、士道に背く事を致しましたが、祖国を愛し、共に友誼を結ぶこの国の民を護りたい気持ちは、本心からですわ。私の技は、民を愛し民の為に振ってこその物と考え、秩序を破壊する者を、なぎ払う為に、この剣を捧げる一存ですわ」
 だが、言葉を返したのはフィーシルであった。
「士道に背いた時点で困るのですけれど‥‥。
 臣下としての武人の本分を全うできない者が騎士団に編入される事で、騎士団として悪い空気を作って、回り回ってデビルの陰謀に巻き込まれるかも知れません。
 まず、こちらの騎士団に入団したいというなら、主君に侍としての身分を返上して自由の身になってから、というのが、あなたの問題だと思います。
 こちらと契約を結びたいというのは、その君臣間の主従問題以降の話となり、今の話が異なってくると思うのですけれど──。
 それに、一時の傭兵を雇ってすむのなら、正式な騎士団員募集などをかけません。
 ごめんなさい──きつい事を言っているのは判ります。でも、ジャパンの主君とのやり取りにも時間と金がかかるのは理解していただけますよね。
 必要なのは即座にかつ、自由に動かせる戦力なのです」
 そのフィーシルの言葉にメルトランは同意し、遠い目で桃化に退場を促した。──。
「11年前、神聖ローマとの戦いの時、侍は良き戦友だったが、二君に仕えぬのならば仕方がないだろう。この場は──というより九紋竜殿には試験から身を退いて頂きたい」
 その言葉に、河に浮かぶ中型船へときびすを返す影ひとつ。
 後ろ姿を見やりつつ、シューが男性にしては高すぎ、女性にしては低すぎる声で一同に語りかける。
「さて? 誰ひとり欠ける事のない、という烈殿の、全員で仁の試験を達成した根拠は崩れ去りましたが、他に全員が言い抜けられる完璧な理論をお持ちの方はいらっしゃいますか?」
(参ったな。誰か都合の良い理屈を出してくれないか?)
 斑鮫は内心舌打ちする。
 それに対し、リュリュ・アルビレオ(ea4167)は全員が船に『乗れる様に』交渉した事、を『個人的』な達成目標として、打ち出した。
「成る程、確かに個人的な事としては及第点ですね。団長閣下。よろしいですか?」
 メルトランは重々しく頷く。
「それでは、そろそろ暗くなってきた事ですし、残った方々は城の広間で『仁』を示して頂きましょうか?」
 シューは、冒険者ギルドの一員として、身元の確かな一同を、城中に引き連れていった。
 門が重々しく開く。
 長い廊下を歩いて、松明の点る広間に通されたリュリュはその西欧屈指の喧噪物の荘厳さに感動し。アルアルア・マイセン(ea3073)は内心舌を巻きながらも──。
「イギリスにはこの程度の城、幾らでもあります」
 ──と愛国心から虚栄を張るのであった。
 そこへ広間から、ストレートの金髪に、紅眼のエルフの少女が現れる。年齢は人ならば15ばかりであろうか、レースとフリルに埋もれた中にもレイピアを腰に差し、武人である事を自己主張していた。
「ミュレット、城内は無事だったか?」
 と、双眸を甘く潤ませながらメルトラン。
「無事です。閣下とお父様方が、城門で入団希望者をお待ちの間には、騎士団が動くべき事は何も在りませんでしたわ」
「え? お父様って──団長閣下?」
 アルル・ベルティーノ(ea4470)が驚きの色を隠せない風情で、ミュレットと呼ばれた少女と、メルトランを見比べる。
(随分と手が早かったんだな)
 その顔を見てシューがアルルに、
「あなた、今、団長閣下を早熟だったと思ったでしょう?」
「──そんな失礼な事は思っていません」
 アルルは小声で囁く。
 ミュレットとメルトランが会話を繰り広げている後ろで、シューがくすりと笑みをこぼして。
「メルトラン様は若作りでいらして──あれでも100才を超してますわ」
 人間ならば30代半ばという事だろう。
「あー、冒険者にも居ますよね、そういう童顔の人。ヒールさんとか。納得しました」
 アルルが掌をぽんと打つ。
「引き合いに出して欲しくないな──」
 ヒールが赤面しながら呟く。
 しばしの会話の後、メルトランは一同に向き直り──
「失礼した、娘といきあわせたので。一応、紹介しておこう。騎士の見習いを努めているミュレット・カンだ。私の子で、45才になる」
 と告げた。
 ミュレットと呼ばれた娘が返事をし、一同に対し優雅に騎士の礼を取る。
「ミュレット・カンです。騎士団の新しい力を期待します‥‥それでは失礼させていただきます。任務がありますので。ご武運を聖なる母にお祈りいたします」
 些か素っ気ない態度で、ミュレットは告げる。
 手を払い、メルトランはミュレットを下がらせる。一同に挑戦的な視線を投げかけ、ミュレットは立ち去った。
 その中、シクルは早速、仁に関して胸の内に思う事を打ち出す。
「厳しさの中に優しさを持って、これが私にとっての仁の表し方です。
 幼い時分、ジャイアントにしては体の丈夫でなかった私を鍛えてくれた父が、そして聖書を通じて巡り会った『大いなる父』が、示してくれた厳しい愛情がなければ、今の私はありませんでした。
 今度はそんな厳しい愛を、私が伝える番です。
 まだ未熟な私ですが、まずは自分を鍛えてその資格を身につける所存です。
 何よりも自分に厳しい者でなければ、厳しい愛情を伝える事はできませんから」
「耳に美しく響く言葉ですわね。完全、向上、服従。大いなる父の3つの美徳に適っています。その若さでそれだけの事を体得されたのですから、よほどの冒険を為されたのでしょうね」
 応じるシューの言葉に、シクルは実直に返す。
「いえ、私はまだ未熟者に過ぎません」
「そこが可愛いの。若いわね──」
 と艶やかに再びシューが返す。その言葉に対し、ヒスイ・レイヤード(ea1872)は──。
「可愛いのは良いことじゃない。へえ〜、それにしても、騎士団人手不足のため、募集とは珍しい‥‥さて、それじゃ、がんばりましょうか?」
「で、どう頑張ります? 同宗派の方?」
 シューの言葉には手の甲に顎を乗せながら答える。
「あら、わかっちゃう? まあ、いいわ。テストだけど──じゃあ、仁‥‥なさけ、思いやりの意味だったから、助け合って向かえという事だと思うんだけど‥‥違うかしら? さっきの坊やの返事と比べると聞き劣りがするけれどね──」
 ヒスイがシューに対し、形勢やや不利かと思われた時に、カイ・ミスト(ea1911)は助け船を出す──。
「仁とは『相手の目で考えること』」
 ──と。更にカイは畳み掛けるように。
「仁とは相手に対する思いやりの心。自分の立場からものを見るより、他人の立場に立ってものを考えることの出来る能力と考えますので」
 その言葉にシューは呟くように。
「なら、あなたは悪魔崇拝者の身になって物事を考える事が出来るのかしら、理解の果てに行き着く先は──」
 カイの言葉が割って入る。
「それは自分の『仁』が足りないから。悪魔崇拝者とて、堕落する前に、その切っ掛けがある筈」
「カイ、良い事言うわね。確かに相手の視点からものを見られるのって大事よね」
 笑顔でヒスイは、カイのフォローに礼を言うが、確固として、シューの言葉にカイは動かない。
 かたや、マリウスは騎士団入団は今のところ重要視していない。
 それよりもそこで果たすべき任務である『悪魔退治』に関心を持っている。
 憤っていた。いつの間に、これほどまでノルマンは悪魔の手が迫るようになっていたのか!
 マリウスは獅子の如く吠える。
「悪魔から人々を守るのは騎士の務め。その為に馳せ参じるのに躊躇いはない!!」
 合いの手を入れるシュー。
「騎士らしい素晴らしいお言葉ですこと──でも、お忘れ無く。悪魔は高貴な魂をこそ望む者」
 マリウスは力強く返す。
「悪魔からの堕落の声に耐えてこそ騎士!」
 そう、カンは欲望の渦巻く地方都市と化していたのであった。
 それに立ち向かえるか否か? 次は志望者たちの『智』が試される事となる。
 シューはメルトランに代わって仁の試験のアピール終了を告げる。
「お疲れ様です。今回は皆さん、時間的にギリギリセーフでしたからね。
 日が沈んだら、その時点で入団試験を中止しようと考えていました。
 騎士団に入れば有事に即応が期待されますから、その辺りも考えて下さい。
 確認の為に申し上げますと、次の試験も報酬はありませんから。
 無償奉仕は確かに有り難いですが、皆さんにも限界はお有りでしょうしね。
 合格の可否に関しては、3つの試験で、総合的に見ますので、今回はまだ明確に入団決定した方はいないという事でよろしくお願いします」
(首の皮一枚か?)
 斑鮫は不安を拭えなかった。
 こうして何かが曖昧なまま、仁の試験は終了を迎え、彼らはパリへと帰還の海路を取った。
 次回以降、確実にカンに行く船便があるとは限らない。
 これがカン伯爵領騎士団入団試験、最初の顛末である。