飛竜小隊訓練学科 〇八

■シリーズシナリオ


担当:なちか。

対応レベル:フリーlv

難易度:やや難

成功報酬:4

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月09日〜10月16日

リプレイ公開日:2008年10月14日

●オープニング

●二つの爆撃
 さあ、今回からは飛行訓練の中でも非常に戦闘色の強い訓練を行う事になる。これまでのものは飛ぶ事を主眼にし、集中的に取り組んできたが今回は自分だけでなく、『地形』や『対象物』に対しての広い視野が求められる。
 更に作戦内容によってはとてもリスキーな条件になったり、精密な投擲が必要とされる場面もあるだろう。
 そういう意味では単に飛ぶ事以上にやる事が多く、それぞれに必要な技術やそれこそ並外れた集中力が求められる。
 今回はそんな高い高度からの爆撃――空爆の訓練を行う。

 爆撃、主に空から飛翔物を落下させ、対象物にダメージを与え、破壊する作戦行動のひとつだ。
 空爆と言っても作戦の内容によって大きくふたつの種類がある。
 ひとつはキャンプ、砦、城などの拠点、『建造物』等にダメージを与えたり、敵側の補給路を断つ等を行うのが戦略爆撃。
 もうひとつは『移動する対象物』に対する戦術爆撃――これは例えば地上を移動する輸送隊や水上の船、陸・海のゴーレム兵器等実際に運用される戦術兵器に対して空から飛翔物を投擲して破壊する事を言うんだ。
 この『戦略爆撃』と『戦術爆撃』を、作戦に応じ、大きく分けてふたつの爆撃の指導をするのでしっかりついて来てもらいたい。

 これまでの厳しい飛行訓練で苦しい思いをした皆ならば、今回の訓練も必ず将来のメイの国の為の力となる――。
 きっと、やり遂げる事だろう。

●集中課目、戦略爆撃をマスターせよ!
 爆撃訓練の初回となる今回は、目標が比較的大きく、狙う範囲が大きい分精密さよりも投擲数や一つ一つの落下物の重さを調節する事で破壊力を高める事が出来る。
 そんな建造物への爆撃訓練、戦略爆撃を行う。
 メリットは上記の通りだが、デメリットもある。
 通常のゴーレムグライダーの積載量の限界と目標物である建造物からの反撃である。
 ゴーレムグライダーの積載量は各個人のフル装備等の兼ね合いで変化するもので、最大積載量はそれぞれに違う。搭載する飛翔物、つまり投擲する物体の重量や数を計算して搭載しなければならないのだ。
 また、戦術爆撃の場合よりも厳しい、建造物への爆撃の場合相手に気付かれた場合の反撃は充分に注意しなければならない。
 弓兵やバリスタ。投石器に精霊砲――いくらでも反撃の手口がある。
 本来はそういった反撃する攻撃兵器を先に破壊し、反撃をさせない或いは反撃する武装を無くした上で第二波や地上軍などの進攻を行う事がほとんどだ。
 つまり先陣を切って爆撃を行う第一陣は非常にリスキーな部隊だと言える。

 しかしこの第一陣が成功すれば次からの攻撃は非常に高いリターンとして、作戦の成功率はぐっと高まる重要な位置付けでもある。
 それに建造物は文字通り動かない、大きな的。脆い場所や投下箇所を絞り集中して爆撃する事で圧倒する事も充分可能だ。
 一対一の騎士道精神を重んじるウィルではなかなかやれない軍事的な行動だが、メイは個人の功績だけでなく戦いの勝利を重んじる。
 そういう意味では、一般的な意味での騎士道精神が通用しないカオスニアンや恐獣に対して我々が出来得る重要な作戦のひとつだと考えているよ。

●いざ、爆撃訓練へ。
 今回は四人一組で訓練を行う。
 訓練生たちは相談の上、チーム編成を申請して欲しい。
 そして目標の対象物は特別に仮設した木造の『やぐら』だ。物見の高台を潰す事で、敵影発見の報告を遅らせるという重要な戦略のひとつであり、作戦行動となる。
 やぐらは東西南北全部で四つ。それぞれ待機している特別に訓練された報告員が二人いる。
 投下物とその数によって破壊するのにかかる時間やダメージ度合いが違うので今回は君達がどんな投下物をどれ位積載するか、考えてそれぞれ申請してもらうよ。
 小石程度のものから河原などにある中型の石や荒野の岩石、加工済みのレンガなどの石類。鉄球や針などを使った金属製の落下物。槍や弓矢などの攻撃兵器を狙い投下するなど考えられる行動はいくつもある。
 武器を投下する場合は投擲技術だけでなく、正確さと進入角度を計算しての急降下爆撃などの特殊な機動が求められる事もあるから注意して欲しい。

●今回の参加者

 eb4077 伊藤 登志樹(32歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4257 龍堂 光太(28歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4532 フラガ・ラック(38歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb8174 シルビア・オルテーンシア(23歳・♀・鎧騎士・エルフ・メイの国)
 eb8378 布津 香哉(30歳・♂・ゴーレムニスト・人間・天界(地球))

●リプレイ本文

●空からの攻撃!
 相手の手の届かない位置から、一方的に攻める。言い方を変えればやや『えげつない』戦い方だが、これまでのメイにはそういう戦いをしようとする者はほとんどいなかった。
 だが、これまでにいなかっただけで、これからはそういう戦いが生まれる可能性は充分にあったし、メイのゴーレム兵器の運用や作戦においても既に類似した内容の攻撃があった。
 ただ、本来の意味における爆撃――絨毯爆撃のような、繰り返し往復の戦法は取られてこなかった。理由はいくつかあるが、その中のひとつにゴーレム兵器とその搭乗者の休息の必要性がある。
 特に一人乗りであるゴーレムグライダーにはこれがどうしても必要であり、何度も何度も往復しての爆撃というのはあまり現実的ではなかった。
 これを克服するフロートシップの方がこのような作戦の場合の運用においても用途においてもより適切であるのは明白だ。積載量、一度に投下できる量も桁違いだ。
 しかし肝心のフロートシップの絶対数がその作戦に必要足り得るかというと、必ずしも足りるとは言いがたい。
 一作戦に使用されるフロートシップの運用数とグライダーの数を考えると、やはりそれも一長一短という事になる。
 実は、それだけではなかった――。

「今回の訓練は爆撃か‥‥機体に搭載された物を実際に手で持って投下するとか、そのあたり本当に最初期の爆撃みたいだな。それはさておき、敵の防御を飛び越えて敵の施設や部隊を攻撃できるようになれば、戦術の幅が広がる。何としてもものにしたいな」
 龍堂光太(eb4257)はそういい、やぐらの位置を確認しながら、あまり数の用意できない鉄球を揃えて見せる。
「今回の訓練は非常に頭を使いますね。先ず、その高度。そして投下方法、グライダーに搭載する投下用の武装‥‥」
「いわゆる『爆装(爆撃用装備)』ってやつだな」
「はい。色々考えながらどのパターンが一番いいのかを検討しながら、最大の効率を叩き出せる戦法を考えなくてはなりません」
 今回訓練生の中でも優秀な成績を残しているフラガ・ラック(eb4532)が大きな問題点をいくつかある事を指摘する。
「先ずはその高度です。高度が高ければ地上からの攻撃を受けにくく、操縦に特別な技術も必要ない上、投下物も充分な加速が着き威力も大きいという利点があるものの、命中率に大きな問題があります」
 彼はそして、この方法は、物量戦や大きな目標を狙った戦略爆撃に向いているのだと語る。
 そう。高い場所から的確に狙うというよりはとにかく投下物を一度に大量に雨の様に降らす事で広範囲に一度にダメージを与える事が出来るのがこの方法だ。
 よって、この場合できるだけ密集し、出来るだけ大編隊で臨むべきなのである。
「逆に高度を低く保った場合についてですが、こちらは地上からの攻撃を受ける可能性が高く、低空を高速で駆け抜ける技術も必要とされます。その代わり命中率は高いので特定目標を狙うのに適しています」
 低く、素早く、そして一撃を加えて高速で離脱する。
 いわば『ヒット・アンド・ウェイ』を信条とする冒険者の場合はこういう戦いは意外と慣れているものも多いかも知れない。軽量で素早い動きの取れるゴーレムグライダーの場合、こちらを選んでもそれなりに効果を期待できそうだ。
 ただし、この方法の場合、相手の反撃も考慮しなければならない。その場合の事をいかに克服するかが問題である。
 ちなみにこの方法、つまり低高度で精密な爆撃というのはそれほど大きくない目標を狙う場合、また後述する移動する目標――つまり戦術爆撃においても必要とされる技術となる。
「そして最後に――これは非常に難しいとは思うのですが‥‥」
 そう前置きしながら、整理しながら話すフラガ。
「急降下中の爆撃という最も高度な技術が必要とされます。が、急降下中は、投下物と自分の進路がほぼ一致するため、狙いを付けやすいという利点があり、また威力も充分です。しかし引き起こしに失敗すると地面に激突という高いリスクも持ちます」
 ハイリスク・ハイリターンとも言うべき戦法ではあるが、非常に爆撃側のメリットが大きくこれの成功による相手への決定的なダメージを考えるまでもなく、実際に初期の爆撃の戦法として『有効』とされていたのである。
 その辺りについては天界人である伊藤登志樹(eb4077)や布津香哉(eb8378)、そして敢えてその急降下爆撃を選択した龍堂も『当時の戦争観』や天界、つまり地球での歴史を紐解くとこの作戦がかつて猛威を振るっていたものである事を、複雑な気持ちで思い起こしていたのである。

 今回はフラガが積極的に発言していた事もあり、ゲヲルグ先生は感心しながらも柔らかな笑顔で訓練生たちを見守っていた。
「彼らもいよいよ自身の考えで行動を取り始めたようだね‥‥そう、君達はそうやってしっかりと『未来』を自分達で作り上げていくのだろう。この訓練科を立ち上げた意義は充分にある、この調子なら、或いは――」

●これぞ、タクティクス!
 今回挑戦する中で最も成功率が高く、しかし技術が必要とされながらも選択した者が多かったのがこのハイリスク・ハイリターンの急降下爆撃だった。
 恐らく、天界人にとって一番『イメージしやすい』戦法であったからなのではないかと思われるが、言うは易し、かなりの度胸が要求されるものであるのは間違い無いものであった。
 しかし、ある意味において最もイメージしやすい、攻め手のアドバンテージの取れるこの急降下爆撃は今回のような小隊編成の爆撃では非常に効果が望める事も勝算のうちに入っているのだろう。
 目的がはっきりしていて、目標もはっきりとしている中での、こうした明確な手法を自覚しながら行動するのは非常に得策と言えた。
「ゲヲルグ先生、ひとつ許可を頂きたいんだが」
「ん? なんだい」
「今回の爆撃で、ファイヤーボムを試してみたいんだが」
「ふむ。それは構わないが‥‥魔法を使う状況を作り上げてから、行かないと思わぬ反撃に回避する事が出来なくなるかも知れないという注意も必要だ」
「なるほど。集中している間に対空兵器で反撃されないような状況つくり、か」
「そう、爆撃を成功させる事が第一である以上、リスクを最小限にするのは戦いにおいては必要不可欠。ダメ押しの一発にというのなら充分に可能だろう」
「リスクマネージメントってやつだな。わかりました。ありがとう」

 こうして各々の持て得る最大限の『爆装』を工夫し、搭載して飛翔したリトルワイバーンたち。
 伊藤とフラガは硬い荒野の岩石を積載し、龍堂と布津が鉄球を。シルビア・オルテーンシア(eb8174)は折りたたみの弓を装備した。
 岩石はほぼ無尽蔵に拾って投げる事が出来る反面、強度や投下時の空気抵抗によって目標にそれやすいという特徴がある。なりふり構わない物量作戦の場合はこういうものも充分に『武器』になった。これは投石器などのカタパルトで射出する岩石などよりも小型で軽量ではあるが高度を計算して標的にヒットさせる事が出来ればダメージは期待できるものだ。
 龍堂と布津が用意した鉄球は、数こそ揃えるのに時間も原料も加工技術も必要ながらこういった歴史的にみて原始的な爆撃のスタイルでは高い破壊力が見込めた。
 岩石で貫けない城壁などでも鉄球ではどうだ。その質量と衝突の衝撃はまさしく相手に深刻なダメージを与える事だろう。
 弓での攻撃は通常の攻めでも防戦においても使えるオールマイティではあるが鉄球や岩石の直撃のような範囲にダメージを与える事は難しい。しかしより精密な攻撃も可能で、弓手の技術が高ければ高いほど、適切な標的の、更に重要な箇所に存在する人員に直接ダメージを与える事によって拠点の連携を麻痺させる能力を保有している。
 この他、槍投げなどの容量で、投擲武器を狙い撃つように投下する事も理論上では可能であり、また今後は、布津の言うとおり爆撃用に一から考えた専用機を開発するというのも可能性としては充分にあり得る。
 今回の作戦の運用が有効であると証明する事が出来れば、メイのゴーレム開発の一端にいい影響を与える事もあるのだ。
 実際に、実験運用を任されている『辺境遊撃隊』ことホワイトホース隊でも多くの特異な作戦や運用を成功させている。
 実績をあげれば、上にも通せる説得力になるのである。

●急降下の、恐怖!
 天界人である三人にとっては一度は体験した事のあるだろう『ジェットコースター』特有の落下感覚――メイの多くの冒険者にこの表現は伝わりにくいかも知れないが言葉に変えると、それこそ想像がつきにくいかも知れないが――この感覚はまさしく『飛びながら落ちている』感覚であった。
 ゴーレムグライダーが墜落しているのではなく、敢えて高高度から急角度で落ちるように目標に向かっていくその光景は経験が無ければ自殺行為に等しかった。
 そういう意味で、今回のメンバーの中で最も恐怖感を覚えたのは――誰よりもシルビアだった。
「――しかし引き起こしに失敗すると地面に激突という――」
 シルビアはこの場面になって、ようやくその本当の意味を知る。最も早く目的に達する高速の弓という武装を選択し、そしてその一番手として特攻を仕掛ける彼女にとって、飛びながらも落ちているに等しいこの角度と加速は生まれて初めての感覚に近いものだった。
 唯一救いなのは、あくまでも自分で操舵しているという事。もしこれが自分でコントロールしていなければいくら彼女でもその恐怖に気をやってしまっていたかも知れない。
 逆に自ら解説役に回り、相当のイメージを頭に叩き込んでいたであろうフラガや天界人は彼女ほどの恐怖で体を震わせたりはしなかった。
 だが、それでも、いざ降下してみると思った以上に凄まじい勢いで、どんどんと地上が迫ってくるのが理解出来る。
 自由落下ではなく、加速しながらの降下は文字通り急降下であった。しかも失敗すればそのまま地面に突き刺さり、とてもではないが無事で済まされるとは思えない。
 遊びではなく、本格的な戦闘訓練なのだ。
 全身から、緊張からくるぬるついた嫌な汗が滲み出るのが理解出来た。
 平然としていられるメンバーは誰一人、いなかったのである。
 だが、それはある種、シルビアにとって恐怖が反転する瞬間を迎える事にもなった。

 手に汗握る恐怖と戦いながらも、やぐらに二人の人影が見えるまで接近する爆撃班。実は、四人一組ではなく、五人一組で爆撃を行うようにゲヲルグ先生からのアドバイスをもらい、より確実に爆撃を成功する為に必要な物量を確保していた。
 狙撃のように、単騎で或いはツーマンセルといった少人数での作戦と、出来るだけ密集させて一気に叩く今作戦のようなものをしっかりと区別していきたい。
「引き起こしに気を取られていては弓を引く集中力を欠き、弓ばかりに気を取られるとそのまま地面に吸い寄せられる‥‥怖がっていては急降下爆撃はその正確性を失ってしまう。その事を今回はしっかりと学ぶべきなのかも知れないな――」
 先生は彼らの自主性に期待を寄せながらも、動かない標的であり反撃もほとんどない初歩的な戦略爆撃をレクチャーしていたが、今回ばかりは『失敗』の可能性も考慮していた。

 シルビアの緊張は遂に頂点を迎え、それと引き換えに弓を握る指に伝わる確かな感触も彼女にめくるめくスピーディな降下中の凄まじい情報量を与えていた。
「見えた‥‥ッ!」
 彼女の視力は静的なものを見る時でも、動的なものを見るときでもかなり訓練されたもので確実に相手よりも先に先制(イニシアチヴ)をとる事が出来た。更に高高度からのかなりの角度を保っての急降下だ。
 いくら訓練とはいえ、今までほとんどそんな攻撃を受けた事の無いメイの兵士は『急降下爆撃』がどんな作戦であるのかをあまり実感できない。それが爆撃班に初撃を許してしまうという結果を生んだ。
 物見台にいた二名のうち、一名はシルビアの弓が着弾する――特殊な訓練の賜物とシルビアの矢に細工がしてあった事で命中しても命を奪うまでは至らないようにしてあった。
 しかし、それで見張りの男は一人、『死亡』と(実際には死んでいないが判定として)認められた。そこからは怒涛の集中砲火ならぬ激しい質量の雨が降り注いだ!

●成功と失敗、そして課題――。
 北から攻めたというのは立地的な意味で、また戦略的な意味合いにおいても面白い効果を生んだ。もちろん、毎回同じ方向から狙える訳ではないし、作戦によっては急降下爆撃だけではない様々な方法が求められる事になるだろう。
 北の『やぐら』は先制のシルビアの一撃と追従した爆撃班の岩石と鉄球の雨によって木造の柱は致命的なダメージを受けメキメキと音を立てて崩れ落ちていった。
「やった!」
「次、行きましょう!」
 その成功に浮かれた訓練生たちはやぐらの構造的な弱点も把握し、そこに集中させる事で倒壊させるという理解をしたがその成功の裏には何も情報のない相手の意表を突いた、裏をかいた奇襲にすぎない事を忘れ甘く見ていた節があった。
 つまり、攻め手である訓練生たちも初めてで手探りだが、作戦はリアルタイムで進行しているのだ。二名のうち、一名を叩いたものの、やぐらから崩れ落ちていったもう一人の生存は確認する事を怠ったのも響いた。
 また、シルビアの弓の腕はともかく爆撃初心者である訓練生たちのこの一撃がまぐれだった可能性も多分にある。

 実際によっつのやぐらを破壊するまでに、伊藤とフラガが二度も大きく投下地点を誤り外してしまったのである。これは岩石の不安定さを如実にあらわしたものでもあり、経験の浅さと投下用の装備として容易に確保出来る反面、命中率を欠く武装である事を彼らに伝えるに充分だった。
 また、鉄球は精密性を確保していたが鉄球を製造する技術、量産体制などを考慮すると一度に大量に用意する事は難しい。
 懸念していた事態が実際に起こってしまったのである。
 結局、後半二つのやぐらからは反撃があり、その反撃の早さにどうしても遠距離から投下しなければならなくなり更に命中率を落としてしまうという結果を生んだ。
 昼間だったからという事もある。発見を遅らせる策は今後いくらでも考案できるだろうし、夜襲をかけるというのは爆撃作戦では定石ともいえる。そういった次回への課題などを受け、極度の緊張の中、成功と失敗を学び帰還した訓練生たち。

 さすがに今回ばかりは飛行訓練と違う疲れがあったのか、熟練の冒険者である彼らも深い眠りについたという。
「操縦しながら投擲ってのはさすがに難しいものがある。やはり手元で射出を操作できる装置が欲しいな」
 布津は前回の事もあり、投下装置も考慮する事となったようである。