飛竜小隊訓練学科 〇七
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■シリーズシナリオ
担当:なちか。
対応レベル:フリーlv
難易度:やや難
成功報酬:4
参加人数:7人
サポート参加人数:-人
冒険期間:07月25日〜08月01日
リプレイ公開日:2008年07月30日
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●オープニング
●ペア技、再び!
さて、前回の注意事項は覚えているかな。前回は個人技のレベルを上げていった。そこでは確かに個人個人の飛行技術について高い技術が要求された。
しかしその本質は、一人で飛んでいる訳ではない、という事だった。
これらの飛行機動は常に芸術的な展示飛行の課目として訓練を行っていたが実戦も想定している。ドッグファイトの機動そのものなんだ。
それを前回のミーティングや反省会で再確認出来ただろうか?
今回は個人技からペア技に課題を移していく。前回はかろうじて及第点のぎりぎりでクリアした訓練生もいたが、個人技とペア技とではまるで飛んでいる世界が違って見えてくるだろう。
自由に飛べていたはずの空は低く、狭く感じ、そして僚騎との距離感覚が常にプレッシャーとなって君たちを襲い続けるだろう。
今度のペア技は非常に難易度が高い。例えば、ペア技としてエシュロン編隊飛行を行ったが、ウィングマンはリーダー騎の位置を常に確認する事が出来、その分高度や速度を合わせるのは容易だった。
リーダーの腕が良ければ良いほど、ウィングマンは負担が軽減されていた。しかし今回はどちらも同等のレベルの技術を要求される。
そう――これまではリーダーだけが高い技術を持っていればある程度は乗り切れていた。
けれど、今回はそうはいかない。
どういう事かは、実際に飛んでみれば嫌でも理解出来ると思う。
●ペア技追加メニュー
今回は特にペア同士の練習を強化する。こちらも前回同様高難易度である事もあってクリア目標は一つ以上。
ペアはエシュロンと同じ組み合わせでいけるならそのままで。別のメンバーとやりたい場合は相談して決めておいて欲しい。
選択課題は以下の通り。
・ラインアブレスト
アブレストは横一線に並ぶ編隊飛行であり、今までの高度をずらしていたエシュロンとは視点が違う事に注意して欲しい。平行で飛ぶ事から、リーダー、ウィングマンという図式がない。前回とは桁違いに両者の呼吸が必要となる。
・タッククロス(ハーフ)
実はこの飛行は長いプログラムなのだが後半部分が危険度が高いため、アブレスト編隊からのハーフロール、クロスという形(前半部分のみ)で今回は様子見する。この課題を選択し、尚且つフルパターン行いたい班は申請の事。最高難易度。
・オポジングナイフエッジパス
正面から交差する技のひとつでオポジングナイフエッジパスは互いにナイフエッジパスしながら正面交差する飛行の事。
度胸だけではクリアできそうもない超高難易度の演目。前回ナイフエッジパスをクリアしたメンバー同士で組めればベストだと思う。
タッククロスと同じ、最高難易度。
・名称未定
そして、今回は高度と速度を維持するという面において神経質になって欲しいのが元々低高度で飛ぶソロのローパスの更に下を後方からソロのハイスピードローパスで突き抜ける(追い抜き)という技。
実はこの飛行はあまり多く飛ばれておらず、名前がわからない。マスターしたい者がいたら、ぜひこちらにはオリジナルの名前を考えてみてもらいたい。
元々低いローパスを高速で追い抜くというのは迫力があり、かつ、高度管理が出来ていないと危険なものだ。しっかり練習するように。
今回のペア技の中では比較的難易度は抑えられている方だ。ローパス、ハイスピードローパスの速度、高度管理が出来ている者同士が組めばクリアは可能かも知れない。
いずれも、機体を限界近くまで寄せる技が多くなっている。今まではおっかなびっくりで距離を保っていたのを今度は積極的に接近させるという意識を持たなくてはならない為、集中力も要求される。
選択課題は最大四つという前回までよりは少ないが難易度は前回までの比ではない。今回ばかりは下手をすると大事故にも繋がりかねない。技量もそうだが、練習量をこなして体を慣れさせる事が必要となる。
振り落とされたり、バランスを崩したりしないようにして欲しい。特に今回の訓練での接触事故は危険なレベルである。
充分に注意し――そして、互いを信じて――飛んで欲しい。
(ゴーレムグライダーにはまだまだ可能性が秘められているよ‥‥ただ訓練をこなすだけでない、『答え』を見つけ出すんだ‥‥)
●リプレイ本文
●二人の呼吸
今回は奇数参加という事で、ペアは選択課題によって入れ替えなどをする事で技術習得の平均化を目指す事となった。
固定ペアはスレイン・イルーザ(eb7880)と布津香哉(eb8378)で選択課題はラインアブレスト。
音無響(eb4482)とベアトリーセ・メーベルト(ec1201)は課題が今回最大の難易度を誇るタッククロス。
「また組んでもらえて嬉しいです、展示飛行訓練はこれで最後、悔い残らないよう頑張って、格好よく決めましょう!」
「グライダーの依頼でも何度もご一緒させて頂いている響さんとなら、きっと上手くいくと思います。頑張りましょ!」
そして入れ替えのトリオが伊藤登志樹(eb4077)、龍堂光太(eb4257)、そしてエリオス・クレイド(eb7875)の三人だ。
ゲオルグ先生はその三人に三騎アブレスト編隊を提案したが、三人は先ずはペアでの感覚を掴んでから、という事で練習を開始する事となった。
「まあ、いずれペアどころかデルタ(三騎以上編隊・三角形)やダイヤモンド(四騎編隊・菱形)、ファイブカード(五騎編隊・トランプの5の位置)などなど続々編隊技を組み込んでいくからいい機会だと思うのだが、君達が感覚を掴みたいというのなら、それでもいい。だけど、三人で入れ替えをし続けていけば相性も互いが理解できるだろうから、訓練を続けていけば三騎編隊も慣れるだろう」
「徐々に空中機動にも慣れてきているから、基本を忘れずにペアでの訓練の合間に個人技も覚えていく事にしようと思っている」
龍堂はまず伊藤とエリオスのペアで飛んでもらっている間に個人技でグライダーの激しくも繊細さが求められる技術習得をめざしていく。
「こないだ、実戦で、飛行技をやったが‥‥ハラハラもんだったが、どうにか切り抜けれたぜ」
伊藤は先日とある偵察任務においてグライダーを飛ばす機会があり、ある程度のリスクと戦いながら個人技の実戦投入にもチャレンジしていた。その時の――待ったなしのリアルタイムな実戦の勘を忘れないように今回の訓練でも緊張感を保ちながら挑む事となった。
一方ペア相手となるエリオスだが、今回の訓練生の平均から見ると実はかなり低い方のレベル帯である。しかし訓練においては『失敗はつきもの』であり、同時にそこから得られるものの方が大きい事もあり、その点において実戦とは明らかに別の緊張感を要求されている。
その為、レベルが低い事が直接ペア相手の足を引っ張るという意味では無いのがこの訓練科でのやや特殊な風景だった。
また、今回エリオスは前回までの意識改革が目覚ましかった。
「技術として魅せる事に重点を置いてしまっていた前回と方針を改めて実戦で使うことを念頭に少々不恰好でもどう軌道を取るかを考えながら行動します」
その意識改革はつまり、今までの『殻』を突き破るという意味だ。
――そう、イメージ力がゴーレムを操縦する際に最も必要である事も踏まえて、改めて意識を改めるというのはそれだけ進歩する可能性を秘めているという訳だ。
そして遂に伊藤とエリオスのラインアブレストが始まった‥‥!
●水平飛行というシビアなタイトさ。
単純に二騎が高度、速度を保ちつつ真横に並ぶというだけに思われているラインアブレスト。しかしこれは編隊飛行の中では実は視点を定めにくいのとこの上記の条件を保ち続ける事が難しい部類に入る。
流れる風を切りながら飛んでいるグライダーは時に上下左右前後といういたる位置から不意の風が舞い込んでくる。いや正確には高速で飛ぶ事で流れる風を断ち切る事になり、見えない壁を切り裂く事で自らが『巻き込んでいる』のである。
「今日は特に風が強いですね‥‥ッ」
「やたら翼がぶれると思ったら――雲を引いてる!」
夢中で飛んでいたエリオスは気付かなかったが、ふと隣の伊藤がエリオスの様子を伺うと、彼は翼から糸のようなものを引いていたのが確認できた。いわば、雲を引いている状態だ。
「飛行機雲!」
別の場所で訓練を行っていた龍堂は見ていなかったが、これにいち早く反応したのは空への憧れが原動力となる音無だった。そして同じく見上げた布津も驚いていた。
「そこまで高い位置なのか? 高度が低くても出るものなのか‥‥」
飛行機雲が発生する原因は様々だが、必ずしも高度によるものではない事が確認されている。高高度であればあるほど翼の上面と下面の気圧差が大きくなればなるほど大気中の水蒸気が凝縮する。それはつまり、『翼が雲を生み出している』状態だ。
普通は水平飛行ではこういう現象は見られない事の方が多いのだが、それはあくまでも天界での話。
アトランティスの空は言ってみれば風の精霊の舞台(ステージ)だ。天界では通常見られない条件下でもこの世界では条件を満たしているのである。
しかしなかなか速度を合わせる事が出来ずに、揃っての飛行の難しさを知る二人。
次いで訓練を行うのはスレイン、布津ペア。
「さて、だいぶ難しくなってきたな」
「まただいぶ差が開いちまったな。前回依頼にこれなかったのが悔やまれる。だが、遅れたぶんはしっかりと取り戻してやるさ」
「いままでに行ってきて、新たな可能性方向性が見えてきた気がするが。一つ一つきちんとこなし、新しい動きを目指せるといいんだがな」
二人の息を合わせようという意識はかなり強い。スレインはいつもは寡黙だが、今回ばかりは布津との呼吸を一体化する為の努力を惜しまなかった。布津もスレインの足を引っ張らないようにとプレッシャーとの戦いにもなってしまったが、それでもスレインのリードで丁寧な、そしてかっちりとした性格の面倒見のいい彼らしいペアの真髄でもある『合わせる能力』が垣間見れた。
この相手に合わせていくという感覚は非常にセンスの必要な能力だ。風を読むという自然に対しての『読み』だけでなく、共に飛んでいるペア相手の状況を読むという人間に対しての『読み』が必要となる。
スレインはそういう部分で布津をごく自然に引っ張りあげていく事を飛びながら覚えていた。
これも一つのペアでのリーダーシップの素質と言えるだろう。
「上手く引っ張っているな、相手に合わせつつ無意識に上限を引き上げてやっている。彼のように言葉だけでなく、全体を見据えて揃えていくのは大変な事だが、それぞれがもっと意識を高める事で互いに引き上げる事も出来る。度々一人では出来なかった事が腕のいい人間が面倒を見る事で気付かないうちに意識がワンランク上の目線に引き上げれられている事がある。ちょうど今のペアがそんな感じだ」
ゲオルグ先生も両手を組みながら満足げな表情で見上げていた。
ウィングウォークとナイフエッジパスを自分のものにしつつあった龍堂が今度は同じ天界人である伊藤とのペアで飛ぶ事となった。
同じ天界人同士という事もあり、また伊藤の方も練習量の多さもありこちらは実にペアとして相性が良かった。
息を合わせるという部分ではコミュニケーション能力になるが、この辺りは同じ天界人であり冒険者という立場もあり、意気投合という意味もありかなりぶっつけ本番でも綺麗にまとまっていた。個人レベルでも水平飛行を安定させるのはだいぶ自分の中で整理がついたのか、今度は速度もほとんどぶれる事なく飛ぶ事が出来た。
シャッフル飛行はその後龍堂とエリオスのペアとなったが、伊藤とのペア時の反省を活かした慎重な操作が龍堂の合わせる能力と相まって、いよいよエリオスも龍堂とのペアでラインアブレスト成功という成果をあげる。
だがこれは伊藤が拙かったという訳ではない。エリオスが執念をみせた事の努力の結果だ。今後のエリオスの課題は自主的な練習量を増やす事位だろう。必死に着いて行こうという精神は大切だ。
そしてその後、龍堂は更に上記の個人技に加え360°旋回を習得し、伊藤とエリオスのペアは名称未定の技を習得すべく猛練習を開始する。
「さっきは俺もちょっととっちらかってた。今度こそペアの呼吸を合わせねぇとな」
エリオスもその言葉で伊藤とのラインアブレストと同ペアでの名称未定の技をみっちりと練習に割く事となった。
「名称を決めて欲しいという事だが」
「そうだなぁ‥‥」
二人はそして、しばらく考えていたが既に答えが決まっていた――。
これを自分達のものにした時に考えよう、と。
●最終日、空を交差する剣たち!
タッククロスは長い技だという事を事前に知らされていた音無とベアトリーセの二人は、なんとかそれでも一つの完成品としてのタッククロスを習得したいと考えた。
せっかくだから、アレンジを加えて完成させたいというのはベアトリーセのアイディアだったが、その提案はゲオルグ先生にも認められ、音無もその提案に興味を示して快諾する。
「わぁ、それ凄く格好いいですね、絶対完成させましょう!」
アブレスト編隊で進入。ハーフロールで反転後、再びロールを打ち互いに至近距離を交差するように旋回する。
ぎりぎりの距離をゴーレムグライダーの飛行速度ですり抜けるのである。ここまでは今の二人がぴったりあっているから何とか抜けられる。
さて、ここからがタッククロスの真骨頂――。二人は凄まじい空中サーカスを演じる事になる。
そのまま訓練場をそれぞれ反対方向に水平飛行、数秒後両騎がほぼ同時に機首を上げバーティカルクライムロールで上昇する。
『バーティカルクライムロール』とは正面で急激な引き起こしを行い、ロールを行いながら垂直上昇する技だ。
ワインオープナーのような垂直ロールからのスプリットSで目眩を起こしそうになる二人だが、これまでの練習の積み重ねは絶対に嘘は吐かない事を知っていた。
「いっけぇええ!!」
「てぇやぁぁぁッ!」
このバーティカルクライムロールの直後にスプリットSのような機動で高度を落とし加速しつつ今度は滑走路上を互いに正対する形で水平飛行する。つまり真正面から両騎が突っ込んでくる事になる訳だ。しかも加速を維持したまま。
正対位置から両騎はハーフロールし通常はここを背面飛行(インバーテッド、インバートとも言う)のまま至近距離を交差し、離脱する。
この時ラストをインバートで抜けるのではなく、ナイフエッジで交差――つまりオポジングナイフエッジパスで演技を終了するというのが今回二人でアレンジを加える部分となる。
ちなみにナイフエッジパスは通常演目を行う際、会場側に騎体上面を90°に傾けるものだが、逆に騎体の腹、つまり下面をみせるのが『デディケイションパス』となる。
曇天決行時のいわゆるローショー(曇天では低空での展示飛行演目となる)での技の一つだ。
肝心のタイミングを音無のテレパシー主導で行う事で、その距離感や速度調整のいわゆるリーダー騎としてのアンテナがあった事と対するベアトリーセとのコンビ相性もぴったりという事もあり、またベアトリーセ自身もとても柔軟な思考と反射神経を持ち合わせていた事が幸いし、目まぐるしく空と地上が入れ替わるド派手な空中機動が、地上からみあげる面々の、感嘆の声がわきあがっていた。
もちろん全てのペアが必ずここまで綺麗に決められるという保証はない。例えばこの機動を実戦で決められるかというとまたそうもいかないが、この一騎が繰り出す機動そのものはドッグファイト時において、他の追随を許さない高度な機動である事は地上から見ても、グライダー乗りであれば瞬時に見抜けるだろう。
いや、グライダー乗りであればあるほど、その機動が実戦に耐えうる上級機動である事が痛いほどに理解出来る筈だ。
だから、この感嘆の声は、いわば『嫉妬』の現われでもあった。だが、その嫉妬はプライド高き鎧騎士として正しい反骨精神だ。
今見上げる二人の軌跡は、まさしく地上で待機している鎧騎士の特殊空中機動の最先端であり、最大級の難易度であり、それを体現している二人は文字通り『訓練生同士の見本』に映っているのだから。
そして飛び終えた二人には、自身でもよくわからない感覚――しかし確実に違う空の領域に踏み込んだ事を感覚のようなものを覚えていた。体の奥底からぞくぞくと沸いてくる、毛穴が開く感覚というのだろうか。鳥肌が立つというのだろうか。
「ふむ、二人ともよく合わせて飛んでいる。ロールや交差するタイミングだけでなく距離も近ければ近いほど危険度が増すし、正面交差は当然恐怖感との戦いだ。それでもよくやれている。君達が今見ているのはひとつの目標だ。今回の課題で一旦展示飛行の課程は修了するが、これから二機だけでなく大編隊を組んでの演目も覚えてもらう事になるだろう」
その時は個人の技術だけでなく仲間を信じる信頼関係も同時に養わなくてはならなくなるだろう。これは技術だけの事を指しているのではなく、例えば訓練科の訓練だけでなく、実戦で共に戦う機会があれば相性を深めるように息を合わせる訓練を兼ねてコンビネーションアタックを講じたり、二騎での撹乱機動にチャレンジしたりするのも一考だ。
撹乱機動は一種の回避機動であるから、ダブルアタックを決めるより今の訓練生諸君なら容易だろう。
なお、展示飛行にはいわゆる区分とよばれるものがある。天候状況によって展示飛行の演目内容が変化するのだ。
先に曇天の場合はローショーという低空での演目となると言ったが、縦方向への上昇系はキャンセルされる。また風が強い場合は危険度の高い技は控える事となる。
これらは展示飛行の飛行隊のリーダーが最終的に決定する。近く行われる予定の展示飛行実演においても責任がかせられる事になるだろう。
そのリーダー選定も兼ねた実力試験中である事を常に意識するようにしてもらいたいとゲオルグ先生は締めくくった。
最後に布津はグライダーに搭載する為の武装としてスプリングを使った射出兵器のアイディアを出してみる。
「バネ‥‥か」
ゲオルグ先生もアトランティスの技術事情を汲んでいるのか、少々眉をひそめるようにして。
その事に対しては、技術者に相談してみよう、とだけ答えた。
こうして、更に高度化した技術課程を徐々に習得しつつある訓練生の面々。
次なる目標は文字通り――『針の穴に糸を通す』――技術の習得だ。
訓練生達はこの課題をどう乗り切るのか。果たして。