【多田銅銀山・終】火急の措置で一旦中止
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■シリーズシナリオ
担当:西川一純
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:9 G 4 C
参加人数:5人
サポート参加人数:3人
冒険期間:07月24日〜07月29日
リプレイ公開日:2008年07月31日
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●オープニング
世に星の数ほど人がいて、それぞれに人生がある。
冒険者ギルドでは、今日も今日とて人々が交錯する―――
多田銅銀山。
丹波藩南部に位置し、その財政を大きく支えるその鉱山は、大量の埴輪が徘徊する遺跡と繋がったり、麻痺性の毒霧が発生したりと散々な状況となっていた。
冒険者の活躍で、遺跡の一番奥と思わしき場所にたどり着き、謎の紫色の液体に浸かる埴輪大魔神らしき姿を発見したまではよかったが、青銅製の大量の雑魚埴輪と、赤銅で作られた埴輪、そして白銀で作られた埴輪に行く手を阻まれてしまう。
そして、その起源を調査し、ヒヒイロカネやら何やら重要そうな情報の断片を入手したまではよかったが‥‥。
「わーらーきーやーさーんっ! 例の埴輪遺跡の方はどうなってるんですか!? 最近音沙汰ないんですけど!」
「私に怒鳴らないでくれたまえ。丹波藩から依頼が来なかったのだから仕方があるまいよ」
「時間をかけたら埴輪大魔神の修復が終わって、また京都に迫ってくるかも知れないのに‥‥なんででしょうか」
「黄泉の女神の軍勢やら、関白殿の邸宅建設などの話を振られてそれどころではなかったと思われる。埴輪大魔神も確かに懸念事項だが、先の二つの方が優先されるだろうしな」
京都冒険者ギルドの職員、西山一海と、京都の情報屋、藁木屋錬術。
今日も今日とて冒険者ギルドにて、茶など啜りつつ様々な事件の話を交わしていたのだが、ふと多田銅銀山の話になったのだ。
「‥‥相変わらずね。錬術、丹波から手紙が来てたわよ」
「おや、アルトさん。藁木屋さんの相棒で、面倒くさがりなナイトのアルトノワールさんじゃないですか」
「‥‥なんでそんな説明的なのよ」
「お気になさらず。で、何が書いてあるんですか?」
藁木屋はタイミングよくギルドに現れた相棒、アルトノワールから手紙を受け取り、読み進める。
それは例の多田銅銀山に関する依頼であり、埴輪大魔神の復活が近そうとの内容であった。
「言わんこっちゃない!?」
「八卦衆・風の旋風殿と八輝将・翡翠の緑葉の二人(両方忍者)が遺跡に潜入して調べたら、すでに埴輪大魔神が少しずつながらも身体を動かし始めていたらしい。そこで、火急の措置ではあるが、冒険者の方々に埴輪大魔神が通るであろう穴を塞いでもらいたい‥‥と書いてあるな」
埴輪大魔神は、京都に現れたときとそこから撤退して遺跡に戻るとき、同じ穴を通っている。
多田銅銀山がある山の中腹にあるとのことだが、その穴をなんとかして塞いでしまおうというのだ。
だが、相手は歴戦の冒険者たちと対等以上にわたりあい、飛行能力まで有するバケモノ埴輪。
それが通れなくなるほどしっかりした施工となると、今から工事を始めていたのでは間に合わない。
そこで、冒険者たちの力や知恵でなんとかならないか‥‥とのことである。
「‥‥八卦衆や八輝将にやらせればいいのに」
「いや、彼らは今、イザナミ軍と戦うために出払っている。もし仮に、埴輪大魔神が再起動して再び京都に現れたり、丹波内で暴れたりすれば黄泉の軍団と戦うのにも支障が出るかもしれない。ここはなんとしてもやり遂げてもらいたいところだが‥‥」
様々な問題を抱える丹波藩。折角進んでいた埴輪大魔神関連を後回しにしてしまった結果がこれである。
誰を責めればいいのかは分からないが、とりあえず今は穴を塞ぎにいくしかあるまい。
兎に角、埴輪遺跡の調査は、一旦中止にせねばならない情勢のようである―――
●リプレイ本文
●お暑い中
ミーンミンミンミンミンミン〜〜〜‥‥。
遠くの木々から蝉の大合唱が聞こえる、とある鉱山。
道すがらは慣れたものだったが、生憎今回は鉱山及びその奥の遺跡には用がない。
トンテンカンカンと小気味よく響く金槌や鋸の音からも分かるように、ギラつく太陽光の下、野外での作業である。
「切った板はこっちに集めてー。釘射ち係が引き継ぐからー」
「角材の加工は難しいでござるなぁ‥‥。はめ込みで釘要らずとは言え、素人にはしんどいでござるよ(泣)」
「‥‥埴輪を相手にしなくて済んだだけマシと思ってください。何ならこちらの縄網の作業と代わりますか?」
今回は、多田銅銀山で普段働いている人足たちが協力してくれたため、非常に大所帯。
丹波藩から予算を貰い、木材や縄、藁といった材料を大量に運び込んだため、冒険者五人だけでは到底手が足りないからである。人足たちも快く協力してくれているので助かっていた。
鳳蓮華(ec0154)は釘射ち班を統括し、久方歳三(ea6381)は角材班を、山王牙(ea1774)は縄網班を指揮していた。
塞ぐ予定の大穴から埴輪が出てくるわけでなし、近くを埴輪がうろついているでもなし、作業自体は順調。
問題は直射日光による暑さと、穴から噴出してくる例の麻痺性の毒霧だ。
解毒剤を染み込ませた防毒マスクを付けてもすぐに乾いてしまうので、いちいち濡らしなおすのが非常に面倒。
かといって疎かにし続けると身体が痺れて作業に支障をきたすので、非常に厄介なのだ。
まぁ、屋外なので大分拡散し、遺跡や鉱山の中で吸い込むよりよほどマシではあるのだが。
「どうです? 埴輪大魔神さんは見えますか?」
「見えます。どうやら本気で直下式の穴らしく、ここからでも埴輪大魔神が手を動かしているのがはっきりとわかります」
「報告どおりとはいえ‥‥復活は近そうですね。作業を急いだ方がよろしいかと」
「同感です。しかし、この穴‥‥場所が上手すぎます。まさかとは思いますが、埴輪大魔神が自力で開けたのでは‥‥」
女性陣二人は、日傘を差して優雅に涼んで‥‥はいなかった。
一応防毒マスクを、と全員に勧めたフィーネ・オレアリス(eb3529)は、ペットを使っての資材の搬入を終えた後は、休憩時の水分提供や防毒マスクの再配布などの雑事に勤めていた。
ジークリンデ・ケリン(eb3225)はというと、テレスコープのスクロールとインフラビジョンのコンボで、真っ暗な穴の中を望遠で目視。埴輪大魔神の様子を監視している。
身じろぎしたり、腕を動かしたり、復活は本気で近そうだ―――
●発破
「それでは行きます。威力は抑え目にしておきますね」
「レジストマジックは必要ありませんか?」
「‥‥いえ、火力自体を防いでしまいそうなので止めた方がいいでしょう」
「巷じゃ、グレートウォールとかが壊れたーとかで騒ぎになってるのに、こっちは壁を塞ごうってんだからねー。何ともはやだよー。あーあ、せっかく埴輪大魔神まであと一息だったのに中断かー」
「事情があるとは云え、途中で中止とは‥‥無念でござる(男泣き)」
ごうんっ、と爆音がして、穴の中でジークリンデのファイヤーボムが炸裂する。
退避していた面々が穴をのぞくと、穴付近が軽くクレーターのように窪んでいた。
そこから足場を構築し、先ほどの作業で作った木製の蓋やらなにやらで塞いでいくわけだ。
木の蓋にストーンをかけたもの、その上に木の蓋、その上に茅や藁を敷き詰め、その上に木の蓋にアイスコフィンをかけたもの、その上に茅や藁を敷き詰め、その上に木の蓋、その上にストーン(以下繰り返し)を何層か積み重ねし、強固な蓋にする。
こうすることで氷室の様な効果も得られ、アイスコフィンの氷が溶け出すようなことも避けられるというわけだ。
まさにNice idea。
「それはなんとなく死亡フラグではござらんか‥‥?(滝汗)」
「誰に向かって言ってるのー?」
「いや、独り言でござる。ストーンやアイスコフィンでの重量増加もあって、そう簡単には持ち上がらない重さでござるなぁ」
「‥‥飛行能力を持っているのが不安ですが、流石にこれはひょいひょい持ち上げられないでしょう」
久方、レン、山王は、積み上げられ魔法で補助されていく蓋の層を眺め、休憩中。
この暑い中での大工仕事は、慣れない人間の体力を容赦なく奪っていた。
体力が資本の人足たちはまだまだ元気なようではあるが。
蓋をしていくことで毒霧の噴出も止まり、作業はさらに順調なものに。
冒険者たちのアイデアが功を奏し、普通に工事をするより頑丈かつスピーディーなものになったに違いない。
そして最後の蓋が設置され、周辺の土を固め、『埴輪大魔神封印中』と書かれた立て札を立てて任務完了!
全員から歓声と拍手が起こり、工事は無事に終了したのだった―――が。
●恐怖の音
工事が終わり、喜んだのも束の間。
歓声の中に、レンは妙な物音を聞いた気がした。
「みんなちょっと待ってー! 静かにー!」
レンの真剣な声を聞いて、一同はピタッと静まり返る。
すると、どこからか『ずぅーん‥‥ずぅーん‥‥』という地響きのようなものが全員の耳に届いた。
いや‥‥どこからか、などと誤魔化す必要もあるまい。その場にいた誰もが、つい先ほど完成したばかりの蓋の層に目をやり、そして立て札が小刻みに揺れていることに恐怖した。
「そんな!? このタイミングで復活だなんて‥‥もし工事が少しでも遅れていたら‥‥!」
「‥‥素早く施工できる工程で良かったですね。普通にやっていたら、工事の最中に飛び出してきたでしょう」
「お、おおお、落ち着いてる場合でござるか!? 大丈夫だとは思うのでござるが、何かこう、打てる手はないのでござろうか‥‥! 完璧に塞いでしまったのが、逆に不安感を煽るでござる(汗)」
「あの数々の層を突破するには、いくら埴輪大魔神とて困難なはずです。私のファイヤーボムを耐えるのとはまた違った強さが必要なわけですし、仮に破れても相当な時間がかかるはずですよ」
ジークリンデはそう言うが、確かに不安と言えば不安である。
地面ごと一気に蓋を持ち上げると言うような芸当が出来ないっぽいのは僥倖だが、蓋が破壊されていかないとも断言できないし、何よりこの断続的な地響きが精神安定上よろしくない。
とはいえ、もうこれ以上はここから出来ることはない。
五十層(!)にもわたる特殊装甲板(と言うと大袈裟だが)を破ることなど出来ないと信じるしかあるまい。
「うぅー、仕方ないよねー。引き続きの調査とかは丹波藩の人にお願いするとしてー、レンたちは帰るしかないかー」
「そうでござるな‥‥。レン殿が仰っていた、遺跡内部の通路確保くらいしか出来ることはないでござる」
「申し訳ありません。今までの作業のための防毒マスク作りで、解毒剤が底をついていまして‥‥」
「‥‥それでは内部に入ることもままなりませんか。まぁ、痺れても普通の埴輪くらいならなんとかなりますが‥‥」
「無理は禁物です。今回は人数も少ないのですから、こうやって穴が塞げただけでもよしとしましょう」
「りょうかーい。それじゃあみんなー、今日はレンたちのために集まってくれてありがとー!」
「‥‥歌でも歌うおつもりですか?」
不安は隠せないが、今のところ突破される気配も無い。
冒険者も人足たちも、今日のところは帰路についた。
この細工がいつまで保ち、埴輪大魔神を押し留められるかは‥‥神のみぞ知る―――