【神話の黄泉女神】風雲平良坂城

■シリーズシナリオ


担当:西川一純

対応レベル:11〜lv

難易度:難しい

成功報酬:9 G 4 C

参加人数:10人

サポート参加人数:2人

冒険期間:08月27日〜09月01日

リプレイ公開日:2008年08月31日

●オープニング

 神話に名を残す、日本の神々や大地をも生み出したと伝えられる女神‥‥イザナミ。
 混沌とした情勢にある現代のジャパンに再臨した彼女は、人類に害を撒き散らす黄泉の軍団を率いていた。
 復活の地、出雲はすでに壊滅状態。藩丸ごとがイザナミとその軍団に支配されたといっても過言ではなった。
 やがて、イザナミは京都へ向かって進軍を開始する。
 そこで迎撃に出た丹波藩と交戦、歴戦の冒険者たちの協力さえも飲み込み、丹波を壊滅させた‥‥かに見えた。
 しかし、丹波の食客の悪魔カミーユ・ギンサの力により、北部と南部にその軍勢を分断。
 これに対し、丹波藩は苦しいながらも二面作戦を展開。
 冒険者の活躍や藩士、特殊戦力の奮闘もあって、どちらもイザナミ軍を押しとどめることに成功。
 特に北部は、型にはまったというか、幹部の一人を含むかなりの戦力を打ち倒したのだった。
 しかしそこに、不可侵条約を結んでいた平良坂冷凍一派が介入。
 初めは真面目にイザナミ軍と戦っていたのだが、時が過ぎ、丹波軍が限界に達した辺りでその企みを現した。
 冷凍一派には、常時冷凍に化けている黄泉人と、その部下の十七夜という元陰陽師の黄泉人がいる。
 十七夜は独自の怪しげな術を使うことで一部のものには知られていたが、この戦場で新たな術を披露。
 なんと、黄泉人の生贄と大量の不死者を材料に城を構築するという、これまた正気を疑う術であった。
 さて、この報を受けたイザナミは当然面白いはずがない。
 軍勢が大打撃を受けたこともそうだが、何より黄泉の女神たる自分に黄泉人が刃向かっているのが我慢ならないようだ。
 南部の軍勢を幹部に任せ、単身北部の軍勢と合流したという。
 イザナミの力により多少数を戻した北部の軍勢は、冷凍の不死城攻略戦を画策しているようである。
 これに対し、丹波藩は不本意ながら『はいそうですか』とスルーするわけにもいかない。
 平良坂冷凍を助ける義理は無いが、不死城が抜かれてはそのまま京都に被害が行きかねないのだ。
 これまでの戦いで疲弊している丹波軍ではあるが、三度イザナミ軍と相対する。
 不可侵条約を逆手に取った冷凍。そして、迫りくるイザナミ軍。
 運命の輪は回る。
 その先にあるのは、勝利の美酒か‥‥それとも―――

●今回の参加者

 ea1442 琥龍 蒼羅(28歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea2445 鷲尾 天斗(36歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea5564 セイロム・デイバック(33歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea6526 御神楽 澄華(29歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea8545 ウィルマ・ハートマン(31歳・♀・ナイト・人間・ロシア王国)
 eb2483 南雲 紫(39歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 eb3824 備前 響耶(38歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb3936 鷹村 裕美(36歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 eb4667 アンリ・フィルス(39歳・♂・ナイト・ジャイアント・イギリス王国)
 eb5868 ヴェニー・ブリッド(33歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・フランク王国)

●サポート参加者

鳳 令明(eb3759)/ アンドリー・フィルス(ec0129

●リプレイ本文

●ジリ貧の中で
「皆の者、聞け! 我が丹波の兵力は疲弊し、すでに限界に近い! しかし、おぬし達がここに立っている現実どおり、まだ終わったわけではないのだ! ならば抗わねばならぬ! 手を尽くさねばならぬ! それがひいては、京都の‥‥そして丹波のためとなる! 無理は避け、危ないと思えば生き残ることを優先せよ! よいな!」
 丹波藩北部、平良坂城近辺。
 冒険者の鷲尾天斗(ea2445)に要請された藩主、山名豪斬は、戦場に赴いて陣頭指揮を執っていた。
 当然のことながら、丹波藩は毎回用意できる人員の数が減らざるを得ない状況に陥っている。これは死人や負傷者を出している以上当たり前のことであるが、それを少しでも何とかすべくとの配慮からであろう。
 事実、藩主自らがやってきて鼓舞することは少なからず兵の士気を高めていた。
「さっすが豪斬さん。頼んだらちゃんと来てくれるなんざ、並みの藩主じゃできないぞ(笑)」
「しかし、よくまだ兵を捻出できたものだ。だが本人もそろそろ限界と言っている事だし、瀬戸際だな。まったく、これでは戦力の逐次投入もいいところではないか」
「次があるとは限らない、ということですね。気を引き締めませんと‥‥」
「まっすぐ京へ来られるよりはよかったのかもしれんが‥‥どこまで増やせるのだ、あの死人共は。無尽蔵ではないはず。それなら初めから量で圧されている。普通に考えれば増やせば増やした分、イザナミに疲労なりなんなりが行くはずだが‥‥」
「平良坂冷凍も随分と面白いことをしてくれるわね。これでヤツの思惑通り私達はヤツの城を守る為に戦わざるをえなくなったんだし。もっとも、この場合、どっちが利用している立場なんでしょうね?」
 鷲尾の言葉は褒めているのか微妙である。頼まれたらホイホイ出向くようでは、藩主としての威厳が疑われる。
 しかしそんなことを気にしない外国人冒険者であるウィルマ・ハートマン(ea8545)やセイロム・デイバック(ea5564)は、藩主の威厳云々より今後の用兵の問題を気にしている様子。
 まぁ、日本人の備前響耶(eb3824)や南雲紫(eb2483)も、政治情勢は気になりつつも今は戦場に意識を向けているのだが。
「ほらほら、そろそろ時間でしょ? 所定の部隊わけしないとね。っと、ここでカミーユさんにインタビュゥ。アレ(風雲平良坂城)ってどうなのかしら?」
「部隊わけはどうした。まぁいい、確かにお前の話も聞いておきたいところだ」
 ヴェニー・ブリッド(eb5868)は、時間が迫っているというのにカミーユに質問をぶつけてみる。
 琥龍蒼羅(ea1442)は軽いツッコミを入れたが、中断させるつもりはないらしい。
「どうって‥‥つまらないにも程がありますわ。壊れきってしまった粗大ゴミの寄せ集めなんて趣味が悪すぎますの☆」
「そだ‥‥!? っておい、元は人間だったんだぞ、あれは。そういう言い方は無いだろう? いくら悪魔だって言ったって‥‥」
「はぁ‥‥無駄だと思います。カミーユ嬢は『壊れかけ』がお好きだそうですから」
「‥‥正直、この時間が一番無駄だと思うのだがな。拙者はもう行くぞ」
 監視されているためこの場に居あわせていたカミーユ・ギンサは、さらっと酷い事を言ってのけた。
 鷹村裕美(eb3936)はカミーユとの付き合いが短いので、悪魔だとわかっていつつも言いたくなる。
 付き合いが多少長い御神楽澄華(ea6526)でさえ、カミーユの嗜好にはとてもついていけないのだから、アンリ・フィルス(eb4667)がため息をついて配置についてしまったのもいたし方の無いところだろう。
 ちなみに、カミーユはウィルマが見張っていることになったらしい。
 そして。
「伝令! イザナミ軍は風雲平良坂城に接近しつつあり! 鶴翼の陣形で包囲するつもりのようです!」
 一人の兵士が陣に駆け込んできたことにより、場の緊張感は一気に高まる。
 減ったとはいえ敵の数は多く、イザナミの存在があり、尚且つ平良坂の城のこともある。
 今回もまた、激しい戦場になりそうだが‥‥この方から一言。
「藩士にも風雲平良坂城で通ってるんかい!(アイコン略)」
 アンリのちょっとお茶目な表情が垣間見えた瞬間であった―――

●対鶴翼
 戦場において、あらかじめ想定していた戦法が使えなくなることなどざらにある。
 敵がこちらの思ったように動いてくれるとは限らないのは当たり前だが、不死者相手ならそうではなかったはずだった。
 事実、前回も前々回も、イザナミ軍はただ数で突っ込んでくるという行動を取っていたのだから、今回もそうであろうと考えてしまっても無理は無い。
 しかし、イザナミが本気のせいなのかわからないが、不死者たちは戦術隊形を駆使して行軍。
 平良坂の城を包み込むようにして襲い掛かるつもりらしい。
 これに対し、丹波軍には『魚鱗の陣形を以って中央突破を』との意見も出たが、豪斬はこれを棄却。
 突破に失敗し、包囲されれば全滅は必至。ならば『逆八(さかはち)の陣』がよかろう、とのこと。
 逆八とは、八の字を逆順に書くような攻め方で、二部隊に分かれて斜めに行軍する作戦のこと。
 鶴翼の陣を相手にする場合、一番数の少ないであろう両翼の先端から敵を削ることになる。
「押し通る! 拙者は今一度、太母様にお会いしなければならぬ!」
「向かい合う敵の数が少ない! これならば! 駆けろ、シルフツォーン!」
「豪斬さんが指揮してくれたから、俺も戦えるぞっと。しかし‥‥冷凍の目的と十七夜の術の目的は他にあるのでは‥‥」
「考えるのは後にして頂戴ね。上を迎撃するのだって結構苦労するんだから!」
 アンリ、セイロム、鷲尾、ヴェニーは壱班所属となっている。
 元々二部隊に分かれる予定であったため、多少の人員変更ですんなりと逆八の陣を形成できたのは僥倖である。
 八卦衆の炎夜、宵姫の砲撃を叩き込んだ後、冒険者や丹波兵、五行龍の森忌が斬り込んで行く。
 それを補助する形でヴェニーや八輝将の牙黄、八卦衆の旋風と岩鉄が魔法を放つ‥‥といった具合だ。
 これは弐班も同様で、小型がしゃ髑髏(以下小がしゃ)や骨車などのデカブツが居ない分、スムーズに不死者を撃破できる。
「真紅様たちには劣るとはいえ‥‥砲撃手の任、果たして見せましょう!」
「転ばない転ばない、奴らを城に近づけさせない、転ばない転ばない‥‥!」
「‥‥転ばないのほうが重点的に聞こえるのだが?」
「気にしないであげて(一瞬普段モードで苦笑い)。そんなことより、進めば進むほど敵の数は増える。砲撃手と補助係にまかせっきりにするな! 勝っているからといって突出するような間抜けをするなよ!」
「いざとなれば俺たちが吹き飛ばしてでも退かせてやるさ。まぁ、そうならないに越したことは無いがな」
 こちらでは八輝将の真紅と御神楽が魔法で砲撃後、鷹村、備前、南雲や丹波兵が斬り込み、それを琥龍と八輝将の緑葉と金兵衛が援護するという形。
 ちなみに、カミーユとウィルマもこちらに所属なのだが‥‥。
「我が友よ、先日のアレはらしくなかったな。ん、つまりあれか。覆したい力の差に打ちひしがれて嫉妬でもしたか?」
「御冗談。たまにはしがらみを忘れて、思いっきり暴れて‥‥いえいえ、踊ってみたかっただけですわ♪」
「フムン。いっそ愛と慈悲からという言葉でも返ってきた方が面白いのだが」
「愛はともかく、慈悲なんて怖気が走ります。これでもわたくし、悪魔でしてよ?」
「さもありなん。しかし、何故愛はOKなんだ?」
「愛欲、愛憎、愛玩、愛撫‥‥」
「ハ、これは失礼。俺が無粋だった。なら御神楽を気に入ったというのも分からんでもない。愛は神の元に平等だ、応援するぞ」
「悪魔の愛に神を持ち出されても。イタいのイタいの飛んでけー、ですわ♪」
『‥‥あんたらも働いてくれん?(汗)』
 この戦場にあって、ウィルマとカミーユだけは世間話をするかのようにゆったりしているのが信じられない。
 悪魔のカミーユはともかく、ウィルマもずいぶん太い神経をしている。
 五行龍の刃鋼がツッコミを入れてしまうくらい、場に似つかわしくない行動だったのだ。
 が。
「別に遊んでいるわけではない。遊び半分だ」
『駄目やん!?』
「冗談だ。‥‥ん、帰ってきたか」
 ウィルマが待っていたのは、彼のペットである二体の埴輪。
 どうやら片方が手紙を持っているようだが‥‥?
「あら、冷凍さんにお手紙でも出しましたの?」
「まさにそのとおりだ。さて、何が書いてあるか‥‥」
 と、ウィルマが手紙を開き‥‥すぐにビリビリに破り捨てた。
「‥‥たどり着けずに諦めて帰ってきたらしい」
「くすくす‥‥それはまぁ、埴輪如きがあっさり冷凍さんの場所までたどり着けるなら誰も苦労しませんわね☆」
「チ‥‥憂さ晴らしに怨霊とやらでも射抜くか」
 と、そんな時だ。
「まずいぞ。敵が両翼を捨てて中央部だけで城に突っ込む気だ! 主戦力が集中している!」
 金兵衛が叫び、同様の旨を壱班にもテレパシーで伝える。
 こちらの被害は驚くほど軽微なので、やろうと思えば今すぐにでも中央部と戦いに行くこともできよう。
 しかし、それは今戦っている両翼が背後から襲い掛かってくる可能性を生むわけで。
 指揮を執る山名豪斬の決断は―――

●不死城の闇
 風雲平良坂城は、外見上は本丸だけがさらけ出されている非常に無防備なものである。
 目に付く守りと言えば、城の周りで待機している骸甲巨兵だけ。
 そこに、イザナミが居るであろう、鶴翼の陣の中央部が迫る‥‥!
「やっべぇ! 豪斬様、あの術の本当の目的は、さらに黄泉人を取り込んで新たな異形を作り出す事かも知れないんだ! イザナミをあの城に近づけるのはまずい!」
「それはわかるが、余は被害を拡大させるわけには行かぬ。今から中央部を叩きに行ったのでは元の木阿弥だ」
「正しい物の見方ではあるが‥‥無念! こうなれば何も起こらぬことを祈るのみだが‥‥!」
「いっそ、悪口か何かでイザナミを挑発してこちらに意識を向かせるとか‥‥」
「へー。例えばどんなかしら?」
「え? えっと‥‥その、『お前なんか嫌いだー』とか、『お前の母ちゃんでべそー』とか‥‥」
「うん、とりあえずセイロムさんが悪口を言いなれてないことだけは分かったわ。無理しないの」
「うわーい(汗)」
「冒険者諸氏、今は少しでも数を減らしつつ離脱しよう。弐班にもそう伝えた」
「くそっ! ここで突撃するようなのは不死者だ! 陣形組んだりするのはよく訓練された不死者だ! いい不死者は成仏した不死者だけだ! ホント、戦場は地獄だぜーフゥハハハァーハァー!」
「鷲尾殿が壊れた‥‥(アイコン略)。そんなことより、森忌殿! 例の作戦を‥‥!」
『言ったじゃろぉが! ワシゃあおんどれの頼みを聞く義理なんぞないわぁっ!』
「くっ、そんな場合では‥‥!」
 こうしている間にも戦闘は継続し、イザナミは城に近づいている。
 丹波的に言えば、死人無しで戦闘を終えられそうな今回の作戦は大成功なのだが‥‥。
 そして、イザナミ軍が不死城までもう一息というところまで接近した瞬間‥‥それを目撃したものは我が目を疑った。
 何の変哲も無い石垣と思われていた城の土台部分。
 そこから、18mある骸甲巨兵さえ一握りに出来てしまえそうな巨大な白骨の右手が出現!
 イザナミ軍中央部へと伸び、十数体の不死者を掴んで、何事も無かったかのように城に戻った。
「吸収だと!? いや、先に手に驚くべきか!? 相変わらず非常識な‥‥!」
「相変わらずって‥‥あんな術がポンポン出てくるのか、平良坂の勢力は(汗)」
「話には聞いていたが、実際に見ると驚く前に呆れるな‥‥」
「イザナミには影響なさそうか。‥‥だが、あれが十七夜の術ならこんなものでは終わらん。絶対にな」
 南雲、鷹村、備前たちの呟きをよそに、琥龍が呟く。
 それを肯定するように、今度は石垣から無数の白骨の足が生え(!)、城が虫であるかのようにゆっくり動き出す!
「おや? この国には動かざること城の如し‥‥といったことわざがあったんじゃなかったか?」
「十七夜‥‥! 信用してなどしておりませんでしたが‥‥イザナミだけでも厄介というのに‥‥!」
「‥‥本当に悪趣味ですわね。えぇ、もう腹立たしいくらいに‥‥」
 イザナミ軍は小がしゃなどを前面に押し出し、食い止めている間に後退した。
 不死城もイザナミ軍が離れたのを確認すると足を引っ込め、さっきまでそうであったように普通の城を装う。
 イザナミにしてみれば二度目の屈辱。今回は面と向かって反抗されたのだからその怒りは一入だろう。
 混乱を極める丹波での黄泉女神との激闘。
 平良坂冷凍の介入により、京都への進行は食い止めているものの‥‥その様相は、さらに混乱していっている。
 人知れず瞳に真紅の輝きを点したカミーユの動向と合わせ、運命の輪は回り続ける―――