【外法の村・終】決着の余波

■シリーズシナリオ


担当:西川一純

対応レベル:11〜lv

難易度:難しい

成功報酬:9 G 4 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月14日〜10月19日

リプレイ公開日:2009年10月24日

●オープニング

世に星の数ほど人がいて、それぞれに人生がある。
冒険者ギルドでは、今日も今日とて人々が交錯する―――

「十七夜は時間の彼方(?)とやらに消え、ついに因縁の一つに決着がついたようですね」
「あぁ。陣が失われたのは惜しかったが、そのおかげで村人の術も解除され、時間が等しく流れるようになった」
 ある日の冒険者ギルド。
 職員の西山一海と、その友人である京都の何でも屋、藁木屋錬術は、とある村での事件について話していた。
 延々と七月八日を繰り返した村。その枷から救い出したと思ったら、今度は時間を極端に遅くするという奇妙な術に囚われてしまった不幸な村。
 その村を脅かしていた古の陰陽師、十七夜。長きに渡って人々を苦しめてきたその男は、冒険者に追い詰められ差し違え目的で『時間を崩壊される』という旨の術を発動した。
 しかし冒険者の中に十七夜の術に絶対的な抵抗力を持つ武器の一つを所持しているものがおり、仲間の使うホーリーフィールドのおかげもあって冒険者は無傷で生還した。
 虚空に消えた十七夜と、彼が作り出した時間を操る陣。惜しむ声もあるが、犠牲者が出なかっただけ儲けものだ。
「でも、ここで新たな問題が出てきちゃったんですよねぇ‥‥」
「そうだな。京都に保護されていた村人たちが村に帰ろうとしたが、村に偽五行龍が住み着いてしまっていた。これでは京都から調査隊を送るのも難儀する」
 偽五行龍。これまた十七夜の術で作り出された擬似生命体なのだが、実力は本物の精霊龍と遜色ない。
 しかも偽物を攻撃すると、どんなに離れていようが本物も傷つくというのがタチが悪い。
 本物は人類と融和し、共に歩んでいこうとしている以上、京都としてもわざわざ傷つけたくはない。
 唯一、先も話題に出た十七夜の術に抵抗力を持つ武器があれば気兼ねなく攻撃が出来るのだが。
「前の依頼で偽蛟は撃破されましたので、村を占拠しているのは炎龍、風精龍、月精龍、大蛇の四体。知能は本物に大分劣りますので、交渉や会話は無理でしょう。村を勝手にねぐらにしてる獣みたいなもんです」
「難しい話だが、本物を傷つけなくて済む方法がないのであればなるべく傷つけないようにしてもらいたいものだ。だが、追い払うだけではまたどこか別の村が襲われる可能性もある‥‥」
「村人の皆さんが自宅に戻れるよう、頑張っていただきたいですね」
 十七夜という飼い主を失った四体の偽精霊龍は、ただの獣と化して世に放たれた。
 一つの決着に別の問題が生じる。これも、十七夜が振りまいた悪意と術の余韻―――

●今回の参加者

 ea2445 鷲尾 天斗(36歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea2756 李 雷龍(30歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea6228 雪切 刀也(27歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb0655 ラザフォード・サークレット(27歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb2099 ステラ・デュナミス(29歳・♀・志士・エルフ・イギリス王国)
 ec0154 鳳 蓮華(36歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)

●リプレイ本文

●ジレンマを抱えて
 京都東部に位置するとある村。
 冒険者の活躍により、邪悪なる術からは解放されたものの、その術者が操っていた偽精霊龍が野放しとなり、その村に住み着いてしまったのである。
 京都に非難させてもらっていた村人たちは村に戻ることも出来ず、途方に暮れていた。
 そこで、事件の後始末をすべく、またしても冒険者が立ち上がってくれたわけだ。
 が、そこには大きな壁と言うか問題があった。倒すべき四体の偽精霊龍は、攻撃すると本物の精霊龍とリンクし、そのダメージを本物にも与えてしまう。
 一応、偽物だけを倒せる武器がこの世に五つほど存在するのだが‥‥。
「人道・解を貸し出して、期間までに返してもらえなかったんですよー」
「なぁにぃ!? やっちまったなぁ!!」
「男は黙って」
「素手!!」
「男は黙って」
「素手!!」
「ノってくれてありがとさん。いやしかし、目算が甘かったのは事実だ。正直すまんかった」
 そのうちの一つを所持していた鷲尾天斗(ea2445)だったが、友人が参加していた依頼にどうしても人道・解という日本刀が必要とあり、貸し出してしまったのだ。
 お聞きの通り、こちらの依頼の出発に返却が間に合わず有効手段無しで偽精霊龍と戦わねばならないのである。
 ボケを見事に受け止めてくれたラザフォード・サークレット(eb0655)は、ため息を吐きつつ真面目な話に戻った。
「やれやれ、倒す術は無し、か‥‥。はっはっは、それ位難易度が高い方が燃えると言うものだよ」
「しかし、元凶はすでに断ったのですよ? なんとまぁ、最後まで厄介な‥‥」
「十七夜っていうのはそういうやつだったからねー。でもさ、前回一匹封じれたんでしょー? だったら今回もそれくらいはやれると思うよー。で、鷲尾さんの武器が戻ってきたらざっくりってねー」
 李雷龍(ea2756)は今回、ムーンドラゴンとペガサスを連れている。
 体躯の大きい偽精霊龍を押さえつけるには、それ相応のペットでも無ければきつい。人間だけで解決は難しいだろう。
 ともあれ、鳳蓮華(ec0154)の台詞にあるように、本物を傷つけず偽精霊龍だけを拘束し、後に撃破したという前例は前回参加した冒険者たちがすでに作っている。
 楽観的と言えなくも無いが、無理に悲観することもないだろう。
「‥‥ところで、八卦衆の凍真さんは来られるのだろうか。予定的な意味より、安全的な意味で」
 ふと、雪切刀也(ea6228)が晴れ渡った秋空を見上げて呟く。
 その言葉に誰も返答せず、露骨に話を逸らそうとしている。
 雪切も含め、全員が薄々分かっているのだ。『満足な状態で来られるわけがない』と‥‥。
 その時、遠くから一匹のホルスがこちらに近づいてくるのが見て取れた。
 かなりのスピードで飛行するその両足には、二人の人間が鷲づかみにされている。
 やがて、優雅に着地したホルスから、飼い主であり凍真を迎えに行ったステラ・デュナミス(eb2099)が元気に離れた。
 炎の指輪を装備していた彼女はまるで問題無しのようだが、もう一人の人物は毛布に包まったまま地面に転がっている。
「‥‥それ、死んでませんか?」
「大丈夫‥‥だと思うんだけど(汗)。凍真さん? 凍真さーん?」
 雪切の台詞に、ステラが毛布に声をかける。
 すると、もぞもぞとだが動き出したので死んではいないようだが、その動きはひどく緩慢だった。
「だから私も一緒に包まってあげるって言ったのに。ちょっといい思いも出来たかもしれないわよ?」
「お、漢たるもの‥‥無闇に女性とくっつくわけには‥‥いかねーぜ‥‥。さ、寒さなんぞ、己の熱き魂で跳ね返す‥‥! それが、大河家の家訓だ‥‥!」
 ガチガチと歯を鳴らしながらも必死で強がるのは、丹波が誇る魔法戦士部隊、八卦衆の一人『水の凍真』である。
 アイスコフィンを使えるからということで、丹波北西から急遽応援として呼ばれたのだ。
 遠く、時間も無いのでホルスでの全速力運送という、かなりの強行軍であったわけだが。
「少し温まっていただいて、それから行動に移りましょう」
「はっはっは。というか、そうしないと役に立たなそうだしな」
 李の心配も、ラザフォードの冗談も、今の凍真には遠く聞こえて仕方なかったと言う―――

●捕縛作戦
 準備を整え終わった冒険者たちは、細心の注意を払いながら村を進む。
 獣同然の知性とはいえ、相手は強力な精霊龍の模写。迂闊な行動は避けたい。
 そして、一行が発見したのは風精龍と大蛇。同時に、向こうにも勘付かれた!
 自らの縄張りに進入した敵を排除すべく、二体の偽精霊龍が攻撃を仕掛けてくる‥‥!
「くぉら! この野良龍共! 大人しく言う事聞きやがれ!!」
「とんだおまけが付いちゃったけど、今回でケリをつけないとねー」
 手綱を握っていた者がいなくなり、好き勝手に行動する偽精霊龍。
 その攻撃を捌きながら、一行は徐々に後退し、村の外へ誘導していく。
 途中、ラザフォードのアグラベイションで手数を減らしたことで格段に楽になる。
 本物の五行龍と同じで、偽大蛇も自分の属性の魔法への抵抗力がなくなっているので、充分通用したのである。
 やがて近くの林へと誘導した冒険者たちは、風精龍が枝が邪魔で近づけないのを利用し、一気に大蛇を処理しにかかる。
「リトス、頼むよ。私も手伝おう」
 ペットの木霊にプラントコントロールを使用させ、蔓などで大蛇の動きを阻害していくラザフォード。
 更に自らも超越級のサイコキネシスを放ち、身動き一つ取らせない様にする!
「サァァイキックウェェェイブッ! さぁ、サイキック斬で止めを!」
「しちゃ駄目でしょ! 凍真さん、出番よ!」
「心得たぜッ! しかし‥‥完璧じゃあないッ!」
 なんと、大蛇の身体がずぶずぶと地面に沈んでいく。拘束されつつもアースダイブを使用したらしい。
 が、それを予見していた雪切が、銛を手に尻尾を近くの木に縫い止めた。
「少し怪我をさせてしまうが、我慢してくれ。俺はこれ以上迷惑をかけるわけにはいかないんだ‥‥!」
 進退窮まった大蛇は、凍真のアイスコフィンによって凍結され‥‥しばらくの間無効化された。
 しかし一行の上空には風精龍が飛びまわっており、まだ未確認の者も二体居る。
 すぐに次の行動に移ろうとする雪切を、鷲尾が呼び止めた。
「おいおい、焦りなさんなって。前回のあれはお前のせいじゃないって」
「だが、俺が煽らなければもっと違った結果があったかもしれないんだ」
「まぁ確かに。だがその違った結果が『十七夜に逃げおおせられました』って結果じゃないとは限らない。お前も見てただろ? あの時、十七夜のすぐ後ろには外に続くと思われる通路があった。お前が奴を煽らなかったら、案外あっさり逃げられてた可能性もある」
「結果論だろう、それは‥‥」
「現状だって結果論だよー。一人一人の行動があってこそ、最良の未来を掴んだのかもしれないしねー。でも、それはきっとレンたちにはわからない。『もっといい結果があったのかもしれない』って欲張っちゃうからさー」
「反省は必要。でも後悔はいらないわ。ね、刀也くん」
 鳳とステラにも諭され、雪切は黙るしかなかった。
 一人の行動が仲間を死に追いやることがあるならば、その逆もあるということだ。
 ただ、自分の行動の良し悪しを断定するには‥‥雪切はまだ若すぎた。
「そろそろよろしいでしょうか。月雷、出番ですよ!」
 李がオーラテレパスで連絡を取り、かなりの上空で待機していたムーンドラゴンを急降下させる。
 林の上を旋回していた風精龍は、察知が遅れて上から突然降ってきた巨体を避けきれず、共に地面に叩きつけられる。
 数多くの枝を叩き降りつつ強制墜落させられたのを怒り、毒のある尻尾でムーンドラゴンを攻撃し、暴れだす!
「大人しく‥‥してー!」
「月雷は、やらせません!」
 武道家二人による連続回し蹴り。
 当てる気がないとは言え、鼻先を掠める猛スピードの攻撃に風精龍は思わず怯む!
「はい、一名様水浴びに御招待」
 ステラが呼び出した巨大な水塊に飲み込まれ、動きを封じられる風精龍。
 普段水の中になど入らないため、どうしていいか分からずパニックを起こしているようだった。
 そうなっては最早アイスコフィンからは逃げられない。凍真により、二体目も凍結された。
 後二匹。一行が息を吐いた、その時だ。
 ざくざく、ざくざく、と枯葉を踏みつける音と共に何かが近づいてくる。
 この音は人間大のものではない。加えて言うなら音の間隔が短すぎるので二足歩行でもない。
 嫌な予感と共に、一行が音の方を凝視していると‥‥!
「サラマンダーか! これはまずいぞ!」
 騒ぎを聞きつけたのか、臭いを辿ってきたのか。どちらにせよ、炎龍がゆっくり近づいて来ていたのだ。
 一行が一番戦いたくない相手。それがこの炎龍。
 近くのものを発火させるその能力故に、プラントコントロールも通用しないしロープも燃やされてしまう。
 ラザフォードが何より危険だと思い至った理由は‥‥。
「‥‥枯葉!? それに、乾いた空気と木! 場所が悪すぎます!」
「刺激しないように林を抜けるしかないよー!?」
 が、それも適わない。氷付けにされた大蛇と風精龍を認めた炎龍は、激昂して発火能力を撒き散らした。
 枯葉の絨毯は一気に燃え広がり、細い木から順に炎を吹き出していく。
 このままでは大火事になるのは必至だ。
「くっ! ステラさん、凍真さん、消火を! その間に俺たちが林から奴を遠ざけます!」
「了解!」
 しかし、獣の直感でこの場所で戦うことが有利なのだと理解した炎龍は、誘導に引っかかってくれない。
 このまま火が燃え続ければ、折角氷付けにした二体の偽精霊龍たちの拘束も解かれてしまう!
 火傷を覚悟で攻撃し、さっさと倒せればいいが‥‥六道武器がない以上、それも出来ない。
 打つ手無しか。誰もがそう思った時。
「ここで退く訳には‥‥いかねーぜ。ステラさん、消火は任せる! そのために呼ばれたんだからなァーッ!」
 アイスコフィンは、使い手の力量と共に射程距離を増す。
 発火能力の届かない場所から、凍真はアイスコフィンを連打する。
 それに何度も抵抗し、そうはさせじと炎龍が突進してくる!
「させるかよぉっ!」
「俺たちが喰い止める!」
「ステラさん、水を! まとめて水をかけてください!」
「これで逃げるくらいなら、最初から戦おうなんて思わないよー!」
「みんな‥‥! お願い、持ちこたえて!」
 大量の水を発生させたステラは、炎龍とその周辺にいる仲間全部を巻き込んで水をぶっ掛ける。
 発火を抑えつつ足止めするその隙に、凍真はさらにアイスコフィンを撃ち続ける。
 中々凍ってくれないことに焦りながらも、ただただ熱く。
「凍れ、凍れ、凍れよォーーーッ!」
 そして‥‥炎龍が凍りつくと同時に、凍真の魔力も底をついたのだった―――

●逃
 林の火を消しとめ、凍りついた偽精霊龍たちに処置を施して村に戻った一行は、月精龍の姿が見えないことに気がついた。
 どうやら炎龍と逆で、騒ぎを聞きつけて逃げることを選択したようだ。
 一行にはそれを追う気力も手段も無く、六道武器で偽物を撃破出来るようになるまで氷付けにしておくべく、京都に輸送することにした。
 逃げ出した偽月精龍が丹波のあちこちで騒動を起こすのだが‥‥それはまた、別の話である。
 かくして、長きに渡って蝕まれた村に、ようやく真の平穏が訪れた。
 村に帰った村人たちの笑顔。それは、丹波がイザナミに占拠されていることを忘れてしまうほど穏やかだったという―――