【因縁との決着を・終】未来へ繋がる今

■シリーズシナリオ


担当:西川一純

対応レベル:11〜lv

難易度:難しい

成功報酬:9 G 4 C

参加人数:10人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月08日〜12月13日

リプレイ公開日:2009年12月16日

●オープニング

 振りかざされた鋭い爪。異形と化した平良坂冷凍の圧倒的な戦闘力により、対冷凍班の冒険者たちは全員ズタボロだ。
 その絶望的な力の差の前には、有効打である六道武器も当てることが出来ない。
「ほっほっほ‥‥六道武器もろとも始末させてもらいますよ」
 頭上から聞こえてくる声に、一人の冒険者が死を覚悟した‥‥その時!
「うおっ!?」
 突如、全長五メートルはある冷凍の身体がはじき飛ばされる。まるで地面から何かが飛び出したかのようだが、そこには何の痕跡も無く、冒険者たちは何が起こったのか理解できなかったが‥‥
『どうも。小生もお手伝いに来ましたよ』
「この声‥‥芭陸様ですか!? しかし、お姿が‥‥」
「あたしたちがインビジブルをかけてるからだよ♪」
「待たせたのだわ。準備は完了、いつでも術の発動は可能なのだわ」
 姿は見えないが、この場に五行龍の一匹、土角龍・芭陸が駆けつけてくれたようなのだ。
 そして冒険者が予め要請していた八卦・八輝の陰陽師、月の宵姫と紫晶の水銀鏡の準備もようやく終わったらしい。彼女らも姿を消し、陰陽寮が開発したという新術の準備で駆け回っていたのだ。
「お、遅いですよぅ! 間に合わないかと冷や冷やしましたのです!」
「ごめーん。術の理解に手間取ったし、皆が戦ってる最中に陣を構築するのって大変だったのー!」
「それに出来次第発動というわけにも行かなかったのだわ。あなたたちを巻き込んでは意味がないのだわ」
 ふと見ると、先ほどまで立つこともままならなかった冒険者たちがある程度回復し武器を構えていた。どうやら姿を消した二人が回復薬を飲ませて回ったらしい。
「な、何故死に掛けていた奴らが!? まぁいいでしょう‥‥ならば今度こそ殺して差し上げますよ!」
 冷凍が足元に合った石を拾い上げ、誰を狙うか辺りを見回す。
 どうも冷凍は気配察知ができないようで、攻撃を仕掛けてきた芭陸はともかく、宵姫と水銀鏡の存在に気付いていない。芭陸についても居場所までは分かっていないようだが。
 それを敏感に察知した芭陸は、姿を消したまま跳躍し(!)、自慢の角から冷凍に突っ込む!
 スモールヒドラ、日本では大蛇と呼ぶ彼らの一族は、意外と跳ねるのも上手いらしかった。
「ま、また妙な衝撃が! いちいち癇に障るヤローどもだっ!」
『今です、お二人とも』
 冷凍を数メートル弾き飛ばした芭陸は、そのままアースダイブで地面に潜ったらしい。
 下からの思念波に応え、陰陽師二人が印を組んで術を発動する。
 絡まった因縁の鎖の一つが、他の因縁を断ち切る力となる。これもまた皮肉な話だ。
 半径十メートルほどの光の紋様が地面に奔り、冷凍の時間の進み具合を半減させる。
 だが冷凍はそれに気付けない。彼の中ではあくまで今までどおりの時間が流れているから。
 更に水銀鏡がシャドウフィールドを展開、冷凍の視界を闇で包んだ。
「しかしどうします? あの陣の中に入れば、僕たちの時間も遅くなって結局同じことになりますよ」
「今から魔法使い組みを呼ぶわけにも行かんしな。彼らも戦闘中だ」
「えっへん! その辺りは任せといて!」
 姿を消したまま宵姫たちが冒険者に配ったのは一枚の護符。
 取り立てて珍しそうには見えないが‥‥?
「あたしたちなりに術の解釈をして作った時間を早める護符だよ。多分普通の倍くらいになるかな」
「念じて発動すればあの陣の中でも普段と同じ速度で動けるのだわ。ただしあの陣の中でしか効果はないのだわ」
「結んだ絆が力となる‥‥。お二人とも、ありがとうございます!」
「あとは往くだけですねー。長年お預けになっていた材料を、今度こそ料理させていただきましょうかー!」
 冒険者が陣に差し掛かる直前に、ニュートラルマジックのスクロールでSFを解く宵姫。
 闇の中から突然白日の下に晒され、冷凍は思わず怯んだ。
 あるいは自分自身、知らない間に驕っていたのかもしれない。今の自分に勝てる者などいないと。
「まったく‥‥人を苛々させるのが上手い奴ら‥‥だ?」
 冷凍は一瞬目を疑った。完全に回復していないはずの彼らが、先ほどよりよほど俊敏に動き、自分に向かってきたからだ。
 紫電光と呼ばれる女性の速さがより増し‥‥冷凍の爪を華麗に回避し、すれ違いざまに冷凍の左腕を切り裂いた。
「一人では戦いにならなかっただろう。しかし、私たちには絆がある」
「あなたは支配を望み、共に生きる道を否定した! そんなあなたに負けるわけには行かないのです!」
「待ってくれている人。笑い合える人。そういう大事なものを持っていないあなたは、ある意味哀れだ!」
 新撰組の誇り。そして愛を内に秘める華。
 二人が同時に足を攻撃し、冷凍をよろめかせる。
「な、なんだ!? なんなのだ、この速さは!?」
「でかければそれだけ的も大きいということ!」
 悪魔と契約してまで平和を掴もうとする女志士は、その身を火の鳥に変え六道武器の槍で抉りこむ。
 四連続攻撃で片方の羽がもがれ、右腕にも風穴が開いた冷凍。
 空中で術が解けた女志士は、身体を捻って槍を仲間に投げ渡す!
「その想い、今度は僕が受け取りましょー!」
「ち、ちくしょう‥‥お前たちはこの私に‥‥殺されるべきなんだーーー!」
「修羅包丁が名づけます。料理名は『因縁の串焼き修羅仕立て』!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
 豪腕と六道武器の両方の要素を以って完膚なきまでに心臓を貫かれ‥‥冷凍は自らの死を悟った。
 しかし冷凍は最後の力を振り絞り、槍を掴んで放さない。
「わ、私だけでは死なんぞ‥‥! 貴様らも道連れにしてくれる‥‥!」
『え‥‥?』
 突如、冷凍から眩い閃光が放たれ‥‥地面を抉り爆風を巻き起こし、辺り一面を焦土と化した。
 最後の最後まで悪足掻きを続けた因縁、平良坂冷凍。
 兎にも角にも、その鎖はようやく断ち切られたのであった―――

●体面
「というわけで、事前に冒険者の皆さんが要請していた術が間に合い、撃破に成功‥‥というわけです」
「最終的に道連れの自爆をされたために皆瀕死だったというわけか。よく助かったものだね‥‥」
「いや、京都到着時には実際に死亡していた人も多かったんですけどね。ジャパンの医療技術は世界一ィィィッ! ってことで」
「それで? 冷凍一派はこれで完全壊滅だが、お上は何の依頼を出すつもりなのかね」
「それがですねぇ‥‥言いにくいんですが、芭陸さんたちのお目こぼしを嘆願しに来いだそうです」
「‥‥何を言っているんだ? 馬鹿なのか? 死ぬのか?」
「藁木屋さん、キャラ変わってます。実は、死に掛けた冒険者さんたちを京都に運んでくれたのは芭陸さんと宵姫さん、水銀鏡さんなんです。流石に瀕死のままイザナミ勢力のド真ん中に放置するわけにも行かないでしょう?」
「ほう。それをひっ捕らえたと? 丹波はまだ許されていないからと? 恩知らずにも程がある!」
「ご尤もで。今回の協力を鑑み、『冒険者が陳情したから寛大な心で許してやる』というのを演出したいんでしょう」
「一海君‥‥私は時々情けなくなるよ。この国はどこに向かいたいのだ? 義や絆を否定しているという点では冷凍とさほど変わりが無いような気がするぞ」
「それを言っちゃあお仕舞いですよ―――」

●今回の参加者

 ea0020 月詠 葵(21歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea1442 琥龍 蒼羅(28歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea6526 御神楽 澄華(29歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea8384 井伊 貴政(30歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea9527 雨宮 零(27歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb2483 南雲 紫(39歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 eb3225 ジークリンデ・ケリン(23歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・フランク王国)
 eb5451 メグレズ・ファウンテン(36歳・♀・神聖騎士・ジャイアント・イギリス王国)
 eb5868 ヴェニー・ブリッド(33歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・フランク王国)
 ec3981 琉 瑞香(31歳・♀・僧兵・ハーフエルフ・華仙教大国)

●リプレイ本文

●通知
『と、そんなところ。これはあくまで筋書きのある道化芝居よ。だから心配しないで』
『そうだったの!? よ、よかったぁ。あたし、本当に殺されちゃうかと思ってたよ‥‥』
 師走に入り、日に日に寒さを増して行く京都。
 その京都のとある河川敷にて、件のお裁きという名の出来レースは行われていた。
 一般大衆というギャラリーに見せつけるため、わざわざこんな場所に御座やら椅子やらを持ち出して晒し者にしながら白洲は進む。罪人として拘束されている宵姫と水銀鏡は、御座があっても非常に足が痛い。
 そんな中、一般ギャラリーに混じって遠巻きに白洲の様子を眺めていた南雲紫(eb2483)たち冒険者は、まずテレパシーリングにて宵姫と交信、出来レースのことを説明した。
 反応からして宵姫たちはこのことを知らされておらず、もし自棄になって京都のお偉方を罵倒しようものならその場で死刑が確定しかねなかった。この配慮は非常に有効だったであろう。
 そのおかげか、先程まで蒼白だった宵姫の表情は幾分か血色を取り戻し、水銀鏡も宵姫の様子でなんとなく状況を理解する。
「さて‥‥京が遣わした冒険者達が危機に陥っていた所を助けたるは真に祝着至極。丹波藩に組し神皇様に弓を引き続けたそなたらにも少しは忠義の心が残っていたと見える。しかしながらそなたらはあくまで逆賊。良いことをしたからといっておいそれと許される罪ではない。盗人が行き倒れた旅人を助けようが盗人に変わりはない‥‥それと同じよ」
『‥‥すいません皆さん。小生にはあれが何を言っているのかよくわからないのですが説明していただけますか?』
『すまないが口で説明するのは難しいな。正論だが道徳的にはどうかという所だ』
 口ひげを蓄えたお偉いさんと思われる男が、朗々と二人と一匹がどれだけ許されないか語っていく。
 冒険者達の存在に気づいて思念会話を始めた土角龍・芭陸に対し、琥龍蒼羅(ea1442)は頭が痛そうに返した。
 芭陸は魔法を封じられた状態で縄で縛られており、河川敷には彼を魔法で運搬したと思われる志士や陰陽師たちの姿がある。
 予め段取りを説明されていた冒険者達は、判決が言い渡されるのをしばし待たなければならない。
「では裁きを申し渡す。五行龍芭陸は丹波へ強制送還。月の宵姫、紫晶の水銀鏡の両名は―――」
「しばらく! あいやしばらくですよー!」
 河川敷に井伊貴政(ea8384)の大声が響き渡り、白洲を止めた。
 何事かとどよめく民衆をかき分け、井伊たちは宵姫たちの前に躍り出る。
「何事か! 裁きの場であるぞ!」
「よい。平良坂一派を討ち滅ぼした立役者の登場とあれば無下にすることもあるまい」
 お偉方が警備の者を止め、わざとらしくギャラリーにも聞こえるように言い放つ。
 あれが‥‥とどよめく民衆の反応は、まさにシナリオ通りというわけだ。
「へへー。まずはこの場に乱入したことをお詫びしますねー。しかしですね、どうか温情をいただきたくてー」
「なるほどなるほど、貴公らはこの者たちに助けられたのであったな。故に手心を加えてやりたいと‥‥そういうわけか」
「御明察の通りです。彼女らの助けが無ければ、僕たちはイザナミ軍の一部にされていたことは想像に難くありません。それを未然に防ぎ、捕まる危険を冒してまで勇気ある行動を選んでくれた人たちを見殺しにはできなくて‥‥」
「華の乱より、人の世の義は廃れ、利と暴力ばかりが罷り通るようになるのを目の当たりにし、私はただただ人の世の義を求めて参りました。そしてここに紛う方無き義が在ったことを嬉しく思い、それを大事にしたいのでございます」
 雨宮零(ea9527)とジークリンデ・ケリン(eb3225)は本心からの言葉を紡ぐ。
 水銀鏡とは敵対したこともあったが、それは昔の話。彼女らとは幾度となく共に戦い、困難を乗り越えてきたのだ。それを助けたいという気持ちは、別に嘆願に来いと言われなくても最初から変わらない。
 だがあくまでパフォーマンスを貫きたいお偉方は、少し芝居がかった調子で答えた。
「貴公らの心情、分からぬではない。しかしこやつらは逆賊なのだ。それを安易に許してしまっては秩序が保てぬ」
「うっわ、反吐が出そう」
「何か申したか?」
「いーえー、何もー。そんなことより、彼女たちは優秀な陰陽師。折角の逸材を安易に処断してしまうのは勿体無いんじゃないかしら。それに、芭陸さんも味方にできればイザナミへのいい対抗手段になるんじゃないかしら」
 取り繕った笑顔で語るのはヴェニー・ブリッド(eb5868)。彼女も助けることに関しては異議などないが、醜悪とも言えるこの出来レースに利用されるのは面白いはずがない。
「お初にお目にかかります。私は僧兵の琉瑞香(ec3981)と申します。私からも彼女らの助命をお願いいたします。イザナミ軍の動きが再び活発化しようとしている昨今、優秀な人材は一人でも多い方がよろしいかと」
 今更ではあるが、今回乱入した冒険者達は顔を見れば誰でも知っているというレベルの有名人ぞろいだ。
 音に聞こえた冒険者達が揃って助けを求めにくるほどの人物なのかと、民衆が宵姫たちを見る目も変わっていく。
 そうなれば当然勿体無いという声が出始める。自分たちを守ってくれる力となるかも知れないのだから。
「ふむ‥‥確かに一考の余地はある。しかしこやつらは頑として丹波を捨てると申さぬ。本来あるべき神皇様への忠義が足りておらんと言わざるを得ない」
「‥‥それは、確かに仰られる通りかと存じます。これまで芭陸様方は丹波藩に協力し、イザナミ軍と戦ってまいりました。それは己の藩を守る為でもあったとはいえ、丹波藩を避けて進む軍とも戦うなど京都を守ることにも繋がっていたはず。どうかその功績を考慮していただきたいのです」
「むぅ‥‥結果論といえばそれまでだが、確かに堤程度の役割は果たしていたか。むむむ‥‥」
 御神楽澄華(ea6526)は、頭痛を堪えて必死に言葉を選ぶ。
 悩んでいる素振りのお偉方のなんと醜悪なことか。これに自分たちが守るほどの価値があるのだろうか?
 最近頭痛が酷い。それは、心の拠り所もなく何が正しいのか自分でも分からなくなってきたからか。
「無論、お裁きを行う皆様方にも守るべき矜持がございますことは百も承知でございます。ですが、僭越を承知の上で申し上げますが、ここはどうか私どもに免じて、御寛恕のお慈悲を賜りたく、何卒お願い申し上げます」
 メグレズ・ファウンテン(eb5451)の言葉と共に、冒険者達は膝をついて平伏する。
 あの面子に頭を下げさせるとはと民衆は更にどよめく。
 ここでこれ以上引っ張りすぎるのは逆効果だ。なぜ許さないのかとお偉方が非難を浴び、宵姫たちに同情が集まってしまう。
 そういう駆け引きを熟知しているらしく、髭のお偉いさんはまた大仰に手を振り上げ、宣言した。
「ええい、仕方があるまい! 冒険者諸氏の功績とその真摯な心意気に免じ、今回のことは不問とする!」
 わぁっ、とギャラリーから歓声が上がる。その様子からは、よく許したものだと感心しているのが見て取れる。
 歓声に手を上げて応えていたお偉いさんは、冒険者達にだけ聞こえる小声でこう言った。
「うむ、目論見通りで何より。そなたらも中々の芝居であったぞ」
「っ‥‥! ボクたちの気持ちは芝居なんかじゃありませんのです! 芝居だとすれば‥‥もがもが」
「はいはい、皆まで言わないの。‥‥台無しにしたくないでしょ?」
 今まで必死に我慢してきた月詠葵(ea0020)だったが、お偉方の本音につい本音が出そうになる。
 芝居だとすれば、あんたたちを敬ってる態度の方だ。そう言えたならどれだけ楽か。
 しかし南雲が言うとおり、それを言ったらすべてが水の泡になってしまう。
「澄華お姉ちゃん‥‥こんなのでいいのでしょうか? 神皇様のお側にいるのがこんな人達で本当にいいのでしょうか? ボク、この人達がいなかったらもっと平和になるんじゃないかって‥‥そう思っちゃいますです‥‥!」
「‥‥‥‥私には、答える言葉が見つかりません。ですが‥‥この行為が恥知らずであることは、確かでしょう‥‥」
 小声で会話する月詠と御神楽。そんなことはつゆ知らず、お偉いさんは席に戻って場をまとめに入った。
「それでは改めて沙汰を言い渡す。三名とも丹波へ強制送還とし、逆賊の罪は問わないものとする!」
「お聞き入れいただきありがとうございます。この慈悲を耳にすれば、必ずや他の八卦衆や八輝将も心打たれ、対イザナミのために京都の力となることでございましょう」
「五行龍のみなさんも恩返ししてくれるかもしれませんしねー。よっ、名裁きー!」
「茶化すでないわ」
 琉と井伊がお偉いさんを持ち上げつつ、御神楽とアイコンタクトを取る。
 満更でもなさそうな表情の男の心の隙。言い方は悪いが付け入るなら今だ。
「それではいかがでしょう。これを機に丹波で抵抗活動を続ける方々に触れを出し、神皇様の名のもとに戦うべしと号令をかけてみては。彼らも京に戻れば処断されてしまうと思い、統制の取れぬまま戦っております」
「丹波藩で起こった一連の逆賊騒動を許し、断じないという言葉を貰えれば、強力な戦力が一気に充実することになるだろうな。彼らが全員集まったなら、それは一軍にも匹敵する」
「そうそう。そしてその戦力増強の立役者はあなたっていうことになって、勝利の暁には‥‥♪」
「む、むぅ‥‥確かに。今は国の大事であるからな‥‥。だがすぐに答えを出すわけにも行かぬ。ゆくゆくは神皇様にもお言葉をいただかなくてはならぬ故、しばし時間をとらせてもらうぞ」
 御神楽、琥龍、ヴェニーの言葉は、なし崩しに丹波全てを不問にするものである。だが男は舞い上がっていたところに利益をぶら下げられ、それに気づかない。
「‥‥気づいていたとしても同じでしょうか。彼は結局、自分の利益が最優先なのでしょうね」
 ジークリンデの静かな一言は、深く鋭く真実を抉っている。
「みんな‥‥本当にありがとう! 本気で殺されちゃうかと思ってたよー!」
「ふふ‥‥あの男、利用するつもりで自分が利用されたなんて一生気付かないのだわ」
『さて‥‥小生たちは元々糾弾される道理はなかったのですが、これで少しでも丹波の立場がよくなればよいのですがね』
「なりますですよ! それが欲から来るというのが残念ですけど‥‥この際言いっこなしなのです!」
 月詠を筆頭に無事の再開を喜び合う一同の中で、雨宮は御神楽に視線をやった。
 その表情は暗く沈み、今にも壊れてしまいそうな危うさを感じさせる。
 だから‥‥
「わかってる‥‥世は急に穏やかには変われない。でも‥‥どんなことでも、少しずつ変わっていけば‥‥いつかはきっと」
「‥‥しかし‥‥それで間に合うのでしょうか? ‥‥いえ、間に合うようにしなければ。私たちが‥‥」
 雨宮の気遣いは御神楽に届かない。届いていても壊れた心を癒すまでに至らない。
 本当に彼女の支えになれる人。それが今、必要なのかも知れない。

 そして後日、丹波藩にかけられた逆賊の汚名を撤回し、生き残った藩士たちは神皇様の名の下に戦うべしとの下知が下された。
 長きにわたって許されなかった丹波藩が、このような状況だからこそ許されたのは皮肉なことである。
 イザナミの子のことで京都上層部も混乱している。願わくば、八卦衆や八輝将、五行龍が活躍するような状況にはならないことを祈りたいものである―――