【五行龍復活】炎の龍を追え!
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■シリーズシナリオ
担当:西川一純
対応レベル:7〜11lv
難易度:難しい
成功報酬:2 G 76 C
参加人数:8人
サポート参加人数:3人
冒険期間:01月23日〜01月28日
リプレイ公開日:2006年01月29日
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●オープニング
世に星の数ほど人がいて、それぞれに人生がある。
冒険者ギルドでは、今日も今日とて人々が交錯する―――
「今更だがあけましておめでとう、一海君。今年もよろしくお願いする」
「はい、今更ですがあけましておめでとうございます。藁木屋さん、今年も依頼補助よろしく♪」
「‥‥‥‥」←真顔の藁木屋
「‥‥‥‥」←笑顔の一海
ごごごごごごごご!(空気の重みが増した音)
「‥‥年が変わっても相変わらずね。まぁらしいといえばらしいけど」
京都冒険者ギルドの一角では、新年の挨拶で何故か緊迫した空気を出す面々がいた。
京都の便利屋、藁木屋錬術VS当ギルド職員、西山一海。
無論本気で喧嘩しているわけではなく、ちょっと過激なスキンシップのようなものだが。
それを呆れ顔で‥‥というか面倒くさそうに見ているのが、藁木屋の相方、アルトノワール・ブランシュタッド。
彼女の台詞ではないが、良くも悪くも、新年になったからといってヒトはころっとは変わらないものである。
「まぁまぁ、冗談はともかく‥‥今日は何の御用です? 堕天狗党との決着もついて、藁木屋さんは暇人になったものとばかり思ってましたけど」
「やはり君とは一度しっかりとケリをつけておく必要がありそうだな」
「いいですよ。勝負の方法は? 将棋ですか、チンチロですか、麻雀ですか?」
「‥‥‥‥」←黙って茶を飲むアルト
「‥‥ツッコんでくださいよぅ、アルトさん‥‥(泣)」
「‥‥面倒だから嫌」
藁木屋までテンション高く一海の冗談に付き合っているのは、やはり新年だからだろうか。
ちょっとワクワク、それが新年。(何)
「本題に入るとだね‥‥最近、丹波藩のあちこちで妙な事件が起きているという噂があるのだよ」
「例の商人組織ですか?」
「それとはまた別件だ。こちらは自然の‥‥というか、人智を超えた力が絡んでいるらしい」
「はぁ。具体的には?」
「‥‥あまり大きな声では言えないが‥‥目撃者は決まってこう言うらしい。『龍を見た』とね」
「あっはっはっは、寝言は寝て言ってください」
「‥‥アルト」
ひゅんっ、どすっ!
「真面目に聞く気になったかね?」
「‥‥はひ」
こめかみに怒りマークを浮かべた藁木屋がアルトを呼ぶと、それを待っていたかのような絶妙のタイミングでアルトの縄金票が飛んでいく。
耳の横ギリギリに刺さった縄金票に、流石の一海も素直になる。
「‥‥とりあえず一番目撃談が多いのは丹波の東北東。炎の龍を見たってやつが多いわ」
「何か謂れのある地域なので?」
「調べたがわからず終いだった。こういうことは陰陽師のほうが詳しそうだがね‥‥」
「で? 結局何をしろと言うんですか、冒険者の方々に」
「とりあえず、目撃談の多い地域に行き、事の真偽を確かめてもらいたい。もし噂の地点全部に本当に龍がいたら、京都も大混乱だろう? まだ噂の域を出ないうちに白黒はっきりさせておいたほうがいい」
「なんで藁木屋さんがそんな依頼出すんですか? 八卦衆の方々に任せておけばいいのでは‥‥(汗)」
「‥‥私もそう思ったんだけどね‥‥京都に住んでるんだから京都周辺の心配するのは当然なんだって」
呆れるアルトの表情が、なんとなく事実を物語っていた。
兎に角、もし本当に炎の龍などがいるなら、もっと騒ぎになっていてもいいはず。
だがデマカセにしては目撃談の数が多く、地域がバラバラなのも気になるところだ。
果たして‥‥炎の龍の正体とは―――
●リプレイ本文
●寒さに耐えながら
一月末のある日、一行は件の村(及びその近くの岩山)へと到着した。
ここのところの異常な寒波のせいか、京都周辺地域でもかなりの雪が積もっている。
今でこそ雪は降っていないが、いつ振り出してもおかしくなさそうな灰色の空が不安感を募らせてしまう。
「さて‥‥思ったよりも迅速に着けたのはよかったのですが、一行に龍らしき影は見えませんね」
「そうっすね〜。自分も朝からあちこち探してるっすけど、手がかりすら見つからないっす」
先に村を訪れていた一行は、村人から想いもよらないほどの歓迎を受けた。
村人の中に目撃者もいたし、旅人や行商人寄り付かないようになっては困るからであろうか?
兎に角、御神楽澄華(ea6526)が今着ている防寒服や、太丹(eb0334)が頬張っている保存食などは、村人が好意でくれたものである。
防寒服は返却してくれ、と言われていたようではあるが。
「しかし寒いですね。こうまで雪ばかりでは、龍の足跡どころか僕たちの足の踏み場も危ないですよ」
「なに、怪我したらあたいがリカバーかけてやるよ。安心して落っこちな」
「そ、それもどうでござろうか。嬉しいような、決して嬉しくないような‥‥(汗)」
まるごとオオカミさんなる防寒服を着込んだガイアス・タンベル(ea7780)も、長時間の調査で寒さがしんどく感じられてきたらしい。
足跡や火の痕跡などを見つけるつもりだったようだが、雪がその邪魔をする。
地質や鉱物の類を調べていたクーリア・デルファ(eb2244)も、悴む手を擦り合わせながら怖いことを言う。
まぁすでに先ほど足を滑らせて岩に左腕を強打した七枷伏姫(eb0487)を回復している以上、あながち脅しではないというのが余計に怖い。
「うーん‥‥村で聞いた『お社様の祟り』というのが気にかかりますが、肝心の社も見当たりませんね?」
「方向はこっちでいいはずだよー。炎の龍が見られるかもしれないんだから、ちょっと楽しみかもー♪」
「華国のもんは‥‥陰陽の理が生活に基くものやさかい、ちぃとは雑学として心得が‥‥。その見地から言わせて貰うと‥‥お遊び気分やと危のうおすえ」
見回しても枯れ木や雪ばかり。
ミラ・ダイモス(eb2064)が村で仕入れた社の情報も、現地にたどり着けなければ価値は半減。
位置関係を把握しながら辺りを見回し、遠物見の風月明日菜(ea8212)が元気よく一行を先導しているが‥‥香辰沙(ea6967)の言うように、甘い認識でいると大怪我をする可能性もある。
「そういえば、七枷さんは陰陽寮で調べ物してたらしいっすけど、何か成果あったっすか?」
「ううむ‥‥フトシ殿のお知り合いの陰陽師殿にも協力してもらったのでござるが、殆ど‥‥」
「殆ど、ということは何かしらの成果はあったということではないのですか?」
「『五行の力を以って厄災を封じる結界』という資料は見つけたでござるが、それがどこで使われたものなのかわからなかったのでござる。そもそもその術は未完成であり、想定していた効果は得られなかったとしか書かれていなかったでござるよ」
フトシたん(太丹)や御神楽の質問に、送れて合流した七枷はバツの悪そうな顔をする。
その資料が今回の龍騒動に関係しているかも分からないし、時間をかけた割には‥‥といった感じか。
「とにかく、社に行ってみようよー。そこに行けば何か手がかりがあるんじゃないかなー?」
「だといいんですけどねぇ。でも途中で暖を取りながら行きましょうね。僕たちの体力が保ちません」
「あたいもあんまり体力があるほうじゃないから、雪道を歩きどおしは少し辛いな」
「何を言っているんです。明日菜さんが頑張っているというのに」
「若さってえぇどすなぁ。ミラさんも体力自慢で羨ましいわぁ‥‥(ほろほろ)」
「あの‥‥香様も充分お若いと思うのですけれど‥‥(汗)」
御神楽のツッコミが空しく響く中‥‥一行の捜索は、まだまだ続く―――。
●灯り
「‥‥迷っちゃいましたかね?」
「迷ぅたかも知れまへんなぁ」
「迷っただろ、完全に」
「わーん!? 僕だけの所為じゃないんじゃないかなー!? かなー!?」
「殺人が起きそうなので語尾を繰り返すのは止めてください(滝汗)」
ガイアス、香、クーリアの生暖かい視線に耐えかねて、風月がちょっと錯乱する。
一方、このメンバーだとどんどん技術が上がるのか、御神楽は立派なツッコミ役として機能していた(何)
「責めるわけではないのですが、やはり目だけでは目的地へ到達できないようですね。もうすっかり日が暮れてしまいましたし‥‥」
「とっぷりと夜の帳が降りたでござる。辺りは真っ暗‥‥これはここらで野宿でござろうか‥‥」
ミラや七枷の言うとおり、迷った上で夜になった以上、野宿が妥当かもしれない。
ただでさえ歩きにくい岩山に雪が積もり、足場は最悪。
夜で視界も悪く、寒さは深まる一方のため、本気で遭難しないうちに野営の準備をした方がいいだろうか。
防寒具は足りていないが、幸いにも簡易テントは全員が入れそうではある。
‥‥と、そんな時だ。
「あれ? 明日菜ちゃん、あそこに見えるの‥‥灯りじゃないっすか?」
「え? あ、ホントだー! 灯りだよー!」
フトシたんが遠くに光りを見つけたのだ。
もしかしたら、民家とは言わないまでも山小屋でもあるのかも知れない。
「行ってみましょう。この場で野宿せずともよくなるかも知れませんし」
御神楽の台詞に皆が頷き、揚々とその方向へと向かった―――
●登場
『あんだテメェら。怪我したくなかったらとっとと失せな』
「うわわわわわ、ホントに龍っす〜!?」
「龍‥‥というよりは、炎に包まれたトカゲでござるか‥‥!?」
木々を抜けて開けた場所に出た一同が目撃したのは、古い社と、全身に炎を纏った炎龍‥‥サラマンダーであった。
普通の炎龍より一回り二回り大きいその姿は、寒さに震えていた身体を一瞬のうちに暖め、逆に焼き尽くしてしまうかのような迫力がある‥‥!
『何回も言わすなよ? 俺ぁヒトなんぞと関わりたくねぇんだ。さっさと帰れ』
「あ、あのー‥‥お伺いしてもよろしゅおすか?」
『ンだようっせーな』
香がおずおずと挙手をして問うと、一応会話はしてくれるらしい。
「あんたはんのお名前とか聞いても‥‥ええどっしゃろか?」
『名前だぁ? 仕方ねぇな‥‥火爪龍・熱破(かそうりゅう・ねっぱ)だ。テメェらヒトは勝手に『五行龍』とか呼んでたけどな。もういいだろ、とっとと‥‥』
「待ちなよ。あたいたちも聞きたいことが山ほどあるんだ」
『知るか。さっきも言っただろ、俺ぁヒトと関わり合いになんぞなりたくねぇんだ。これ以上グダグダぬかすなら、本気で痛い目見てもらうぜ‥‥!』
ごう、と炎が一層吹き上がり、辺りを照らす。
見れば社のそばに洞窟があるようで、熱破は普段そこに潜んでいるのかもしれない。
「けどそれでも、僕たちは『はいそうですか』と帰るわけには行かないんです!」
「そうだねー。僕たちにも事情があるんだよー」
『ほぉ‥‥じゃあ仕方ねぇな。力ずくでも‥‥!』
「ちょ、ちょっと待ってください! 私たちは戦うために来たのではありません! ですが、今は帰れないのです!」
『あぁ!? なに都合のいいこと言ってやがる!』
「その‥‥道に迷ってしまい、帰り道が分からないのです‥‥」
沈黙。
ミラと御神楽の言葉に、流石の熱破も言葉を失う。
テレパシーのように頭に直接響く声がぱったり止んだ。
『‥‥そ、それこそ知ったことかよっ! 勝手に森でも山でも彷徨えってんだ! ‥‥って、捨てられた子犬みてぇな目で俺を見んな! 焼くぞコラぁ!?』
「今日だけここに野営させてくれたらそれでいいっすよ〜。朝になったらすぐ帰るっす」
「そうどすなぁ。今日はもうこれ以上何も聞きまへんから‥‥よろしゅうお頼みします」
『‥‥朝までだからな。俺は巣穴に戻って寝る。入って来やがったらその時は‥‥!』
「わかってまーす♪ ゆっくり寝てねー♪」
『‥‥くそっ!』
吐き捨てて、熱破は洞窟内へ引っ込んでしまう。
戦うという選択肢も充分ありえたのに、熱破はそれをしなかった。
気になるといえば気になるが‥‥?
一同は開けたこの場所に簡易テントを張り、社を調べることも忘れずに夜を過ごす。
社には何やら不可思議な文様が描かれた木札が納められており、御神体として透き通った赤い石も安置されていた。
「この文様‥‥確か例の資料に載っていたような気がするでござる」
「あたいにはミミズがのたくった跡のようにしか見えないがな」
「僕だってそうですよ。でも、これで手がかり入手ですね」
「手がかりも何も、本物の龍と会えたではありませんか。炎の竜‥‥何となく憧れてしまいますね」
「五行龍‥‥結界‥‥。丹波で何が起きとるんどっしゃろか‥‥」
そうして、今回の任務は達成された。
様々な疑問と、炎の龍への想いを抱えたまま―――
●ちなみに
「場所を使わせてもらったお礼に、保存食食べるっすか?」
『いらねぇよ! 二度と来んなっ!』
「えっと‥‥巫女服に免じてご容赦願えませんでしょうか」
『ぃやっかましぃっ! 許すとか許さねぇとかどうでもいいから、とっとと帰れぇぇぇっ!』
火爪龍・熱破は終始ご機嫌斜めで、一行の覚えも相当悪かったという―――