【五行龍復活】陰陽寮と五行龍
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■シリーズシナリオ
担当:西川一純
対応レベル:6〜10lv
難易度:難しい
成功報酬:3 G 72 C
参加人数:8人
サポート参加人数:6人
冒険期間:02月05日〜02月12日
リプレイ公開日:2006年02月12日
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●オープニング
世に星の数ほど人がいて、それぞれに人生がある。
冒険者ギルドでは、今日も今日とて人々が交錯する―――
「お邪魔する。西山一海君は‥‥」
「ドッゴラァァァァァァッ!」
「がふっ!? なっ、いきなり何をするんだ君は!?」
「藁木屋さんのせいですよ! 藁木屋さんが全部悪いんですよぉぉぉっ!」
京都の便利屋、藁木屋錬術が冒険者ギルドの暖簾を掻き分けて入ってきたかと思うと、突然怒号と共にシャイニングウィザードの直撃を貰った。
屈強な戦士でもある藁木屋に蹴りをかましたのは、冒険者ギルド職員、西山一海。
友人である二人だが、一海も命知らずというかなんと言うか。
「というか、何故私に当てられる。回避には自信があるのだが」
「ふっふっふ‥‥私の発生させる『ギャグー空間内に入ったノリのいい知人』は、戦闘力が十分の一にダウンし、私は十倍にアップするのです!」
「‥‥今テキトーに考えただろう?」
「当・然」
ドドドドドドドド!←空気の張りが増した音
「挨拶はこれくらいにしてだ‥‥何が私のせいなのだね? 今日は依頼を出しに来たわけではないぞ」
「先日、火爪龍・熱破って龍が確認された依頼がありましたよね。藁木屋さんが出したやつ」
「あったな。五行龍‥‥だったか? まさか本物の龍が出るとは私も思わなかったが」
「その件について、陰陽寮の方から『正式に調査するから報告担当になれ』って辞令が来たんですよ! 京都冒険者ギルドは陰陽寮と関係が深いからって、なんで私が‥‥(泣)」
「いや‥‥まぁ、それはご愁傷様だな」
「それだけですか!? 本当にそれだけですか!? どこかの大穴に捨てますよ!?」
「何をだ。仕方ないだろう‥‥放置して死人が出てからでは遅い。私はただ、早期に白黒はっきりさせて、無関係の人々が近づかないよう呼びかけなければと思っただけだ」
「うぐぐ‥‥正論なんですが‥‥正論なんですがっ‥‥!」
「つまり、今度は私からではなく陰陽寮から依頼が出るということか。また火爪龍のところへ行くのかね?」
「いえ、冒険者の方々に任せるそうです。龍と思わしき生物が目撃されている地点は5箇所‥‥丹波の北、東北東、南東、南西、西北西。このうち、東北東は火爪龍が出たところですね」
「再び熱破のところへ行くもよし、まだ見ぬ五行龍に会いに行くもよし‥‥か。選択肢が広いな」
「一応、京都から近場の南東がお勧めらしいですけど‥‥命令じゃないらしいんで、無理に行く必要も無いでしょう」
「ふむ‥‥そういうことなら喜んで依頼補助をしよう。調査にも身が入ろうというものだ」
「お願いします。でも‥‥私は陰陽寮に提出する報告書も作らなくちゃいけないんですよねぇ‥‥(悩)」
「それは知らん。まぁ、お互い頑張ろう」
結局、藁木屋はこの後10分ほど一海と話をし、帰っていった。
五行龍というからには、5匹の龍がいるのだろうが‥‥さて、熱破以外の龍達は、どのような対応をしてくるのだろうか―――
●リプレイ本文
●空から
「辺り一面の銀世界か。見通しはいいんだけどなぁ」
大凧に乗って上空から五行龍を探す日比岐鼓太郎(eb1277)。
防寒対策をしていても、現在の天候が曇りでも、上空の風は地上に居るときより肌に突き刺さるように感じた。
と、その横をやたら大きな鷹が通り過ぎる。
香辰沙(ea6967)がミミクリーの魔法で変身した姿で、彼女はデティクトライフフォースの魔法を併用してまで上空からの捜索を行っていたが‥‥。
「おーい、何か成果はあったかー?」
日比岐が問いかけてみるが、鷹(香)は少し速度を落とし、首を横に振るだけ。
地上を見れば色とりどりの色布が見え、仲間の場所や帰り道などを示している。
「仕方ないか。おーい、一旦降りるぞー。寒さにやられちまう」
鷹(香)が頷いたのを確認して、日比岐も大凧の姿勢制御を始めた―――
●地上から
「これでよし‥‥と。上のお二人は何か発見されたでしょうか‥‥」
「どうでござろう。何か見つけたのであれば、大声なりで知らせてきそうなものでござるが」
木の枝に鮮やかな色布を結びつけ、御神楽澄華(ea6526)は空を見上げた。
葉の散りきった木々は、上を見るのに何の障害にもなりはしない。
同じく、上空の香たちを見上げて言うのは、七枷伏姫(eb0487)。
近隣の村から、雪対策として滑らないように対策を施した履物を借りてきたりと、細かいところに気がつく人物である。
「へぇ‥‥前回行った社にあった模様は、古代魔法語で『木』って意味なんですか。勉強になります」
「そうらしいですね‥‥御神楽さんのお友達に感謝です。しかし、こうなるといよいよもって結界と龍との関連性が強くなってきましたが‥‥はてさて」
ガイアス・タンベル(ea7780)が感心しながら見ているのは、古代魔法語だという模様と、それを現代語に直した表。
とは言っても、木、火、土、金、水、地、風、空の8文字分しか書いていない簡素なものだが。
達人級の精霊知識を持つ拍手阿義流(eb1795)も、古代魔法語はお手上げだったので、大助かりだったとか。
「五行竜、聖別された竜なのでしょうか。全ての方と親しくなりたいですね」
「でもその前に、まずは会わなくっちゃー♪ 前回は迷っちゃったから、今回は迷わない様にしっかりしないとねー♪」
付近の村の住人から聞いた道筋を先導しているのは、ミラ・ダイモス(eb2064)。
見返りなど渡さなくても、ここの村の人間も驚くほど協力的であった。
やはり、龍などが出現して一番困っているのは近場の人里‥‥ということだろうか。
風月明日菜(ea8212)はいつもどおり、元気に捜索中。
ただし、今回は道を探すよりも周囲の警戒や異変が起こっていないかを見るのに重点を置いているらしく、その笑顔から想像できないくらい色々な事を考えているらしい。
やがて降りてきた日比岐と香も地上班に合流し、一行は更に奥を目指す―――
●土の龍
寒さに耐え、雪を踏みしめ、慣れない道をひたすら進んだ先。
小ぢんまりとした社が一行の前に姿を現した。
「これは見つかりませんわぁ。こない木の陰になるところに建てられたら、上からでは無理どす‥‥」
「愚痴はいいですから、中を見て見ましょう。折角対応表があるんですから」
香のため息を拍手がさらりと流し、注意しながら社を開ける。
そこには、透き通った茶色い石と、例の古代魔法語らしき模様の描かれた木の板。
「この表によると‥‥この文字は今で言う『火』となりますね。拍手様の仰った『五大』ではなく、やはり『五行』ということになるのでしょうか‥‥」
「ということは、この石の方はその地に居る五行竜を表している可能性がありますね」
御神楽とミラが茶色い石を手にとって観察する。
流石になんという種類の石かは分からないが、どことなく神聖な雰囲気の漂うそれは、まるで宝石のようである。
まぁ、かなり埃を被っているのが何だが。
「しかし、この辺りには洞窟なんてありませんよ? 僕らの目がよほど節穴で無い限り、龍みたいな大きい生物を見落としたりはしないと思うんですけど‥‥」
「上からも見えなかったな。例えば、前回でたって言う炎の龍くらいの大きさがあれば、絶対上から見えるぞ?」
「すでに他の場所に移動した‥‥なんてことはあらへんどっしゃろか」
「それはないでしょう。元々精霊はあまりチョロチョロ移動しない者が多い種族ですし‥‥何より、龍があちこちに出没したらそれこそもっと目撃情報が出ておかしくありません」
ガイアス、日比岐、香、拍手。
各々疑問や思うところを口にしてみるが、やはり明確な答えにはたどり着けない。
と、そんな時。
「ねーねー、あれって何かなー」
常に周りを気にしていた風月が、とある方向を指差す。
一同が目を向けたその先には‥‥。
「‥‥何の穴でござろうか(汗)」
「虎の穴かな?」
「絶対に違うと思いますが‥‥(滝汗)」
日比岐のボケにツッコミを入れた御神楽は置いておいて、慎重に穴へ近づいていく一行。
大人でもあっさり嵌ってしまうであろう口径。
底の見えない暗闇の先には、いったい何があるというのだろう。
「ねぇー、誰かいませんかー?」
風月が穴の中へ叫んでみる。
軽くエコーが聞こえてくるあたり、相当に深いことは分かったが。
「流石にこんなところでは遭難者もいないでしょう。もし人が落ちていたら、とても助かるとは―――」
そう、ミラが言い終わる前に。
『居ますが‥‥どなたでしょうか?』
直接的な声ではない。
頭に送られてくる、テレパシーのような声‥‥それは、火爪龍・熱破の時とよく似ている‥‥!
「言ってみるものでござるな。お伺いしたいが、貴殿は五行龍のお一人でござろうかー!?」
『おや珍しい、小生たちのことをご存知か。しばしお待ちを‥‥そちらに参りましょう』
一行は一応固まって陣形を組んでおく。
やがてずるずるという音がしたかと思うと、穴から全身に岩を張り付かせた異形の姿が‥‥!
「大蛇(スモールヒドラ)!? いや、それにしては少し大きい‥‥!」
額に鋭く雄々しい角が生えた大蛇など聞いたことが無い。
だが身体的特徴的に、それ以外は大蛇のそれだ。
『初めまして。小生は『土角龍・芭陸(どかくりゅう・ばりく)』。歓迎はしないが毛嫌いもしますまい。まぁ、お話くらいは聞こうじゃありませんか』
見た目とは裏腹に、意外と和やかな声と雰囲気。
10メートルはある身体が完全に穴から出ると、流石に壮観だ。
「どうやらお話を伺えるようですね。争わずに済んで何よりです。熱破様にはずいぶん嫌われてしまったようですし‥‥」
『あぁ‥‥なるほど。熱破に会ったから五行龍という単語を知っていたと。彼はヒト嫌いですから、苦労したでしょう』
「案外優しかったけどねー♪ でも、炎の龍だからって、いっつも不機嫌って訳じゃないよねー?」
『いや、彼は大概機嫌が悪いですよ。小生たちと会話するときでさえイライラしたような感じでしたから』
「ってことは、元々あぁいう性格ってことか。地脈の乱れ云々が関係してると思ったんだけどな」
『まぁ、元々ヒト嫌いのところに結界の触媒にされて封印なんてされれば、ヒト嫌いは悪化しますわな』
御神楽、風月、日比岐の言葉にもしっかり返答をくれる。
まぁやる気のなさそう+かったるそうなトーンなのが多少引っかかるが。
「地面の下深いところにいらっしゃたんはなんでどっしゃろか? おかげで魔法での捜索に引っかかりませんでしたえ」
『いや、外は寒いですし。それに、ヒトに簡単に見つかるとまた五月蝿いですからなぁ』
「あの、よければほかの五行龍さんのことを教えてくれませんか? 勿論ただでとは言いません。芭陸さんはお酒は好きでしょうか? 日本酒とワインとベルモットと発泡酒を持ってきたんで、これで‥‥」
『悪いけど遠慮します。熱破程でないとはいえ、小生もヒトが好きではなくてね。ヒトの手が入った食べ物は御免被る。それに‥‥会ってからのお楽しみでいいんじゃないでしょうか。小生も他の五行龍に『仲間を売った』などと思われたくないし』
「確かに‥‥。では、結界のことは? 他の龍と会話というのはいったい‥‥?」
『さぁ‥‥ヒトが編み出した術だからねぇ。なんでも五行の力を持つ精霊5匹を触媒にして、大規模・広範囲にわたって災厄が起きるのを抑制するとか何とか‥‥。『五行鎮禍陣(ごぎょうちんかじん)』だったかな‥‥。申し訳ないが、小生はあまり頭がよく無くてね。うろ覚えですわ』
香、ガイアス、拍手の質問。
芭陸はとぐろを巻いて鎌首をもたげるのに疲れたのか、首を地面にべったりつけて、益々かったる気だ。
「では、会話というのは? 五行竜というのは、移動せずに遠距離で話せるのですか?」
『んー‥‥封印されてた間は意識を共有してたみたいで‥‥五行龍の間でだけ、会話は自由に出来ましたよ。結界の根本的なところで繋がってるから云々って聞いたような気がする』
「何故封印が解けたのかは分からんのでござるか? 誰かが結界を壊したとか‥‥」
『さぁ。何せ何百年も前のものだし‥‥小生たちは封印されてただけだし』
ミラ、七枷の問い。
有益な情報ではあるが、やはり真相には遠そうである。
『というわけで、そろそろいいでしょう。先も言いましたが、小生もヒトは好きじゃありません。折角現世に戻ってこれたのだから、誰にも干渉されず、また干渉せずにのんびり暮らしていたいだけ。出来ればあまり来ないでいただきたいですね』
そして芭陸は巣穴に戻っていった。
その日は、その後いくら呼びかけても姿を現そうとしなかったという―――