【平良坂の野望】謎の投げ文
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■シリーズシナリオ
担当:西川一純
対応レベル:8〜14lv
難易度:やや難
成功報酬:4 G 15 C
参加人数:8人
サポート参加人数:2人
冒険期間:04月06日〜04月11日
リプレイ公開日:2006年04月14日
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●オープニング
世に星の数ほど人がいて、それぞれに人生がある。
冒険者ギルドでは、今日も今日とて人々が交錯する―――
‥‥いや、今日はギルドが舞台じゃありませんが。
「ロン! タンピンドラ1、5200!」
「うぐ。ま、また私か‥‥」
「弱いですねぇ、藁木屋さん。もうすぐトんじゃうじゃないですか」
ここは京都の便利屋、藁木屋錬術の家。
今日は彼の家で、何故か知り合い4人での麻雀大会が行われていた。
「面白いとは思うがね‥‥どうにも上手くならない。考えすぎなのかも知れないな」
「うむッ! 麻雀は知略もさることながら、野生の勘がモノを言う遊戯ッ! 頭だけでは勝てぬぞッ!」
「‥‥‥‥」←黙って手配を崩すアルト
京都冒険者ギルドの職員、西山一海と大牙城。
そして藁木屋の相棒、アルトノワール・ブランシュタッドの4人で卓を囲っているわけだ。
ちなみに、現在のトップは西山。
以下、大牙城、アルトノワール、藁木屋という順になる。
「さぁ、いよいよ南四局。このまま一位を維持しますよ♪」
「なんのッ! この親で連荘し、見事逆転してくれようぞッ!」
「ところで、以前入手していただいた未解読の古代魔法語の内容はわかったのかね? 結果は陰陽寮を通じて君から聞けと言われたのだが‥‥」←イーピン切り
「あぁ、それなら一応。確か‥‥」←サンソウ切り
「『天地八聖珠は、守護者に守られる物なり。故は、その力が争いをもたらすため、容易に集結せぬようにするためなり。我ら、これらを無法則に安置し、封印するものなり』といったところであったはずッ!」←中切り
「‥‥‥‥」←アルト、西切り
「守護者? 例の海長虫や、大量の妖怪たちのことか‥‥?」←南切り
「どうでしょうね。今まで天地八聖珠があった場所がすでに元あった場所じゃないのかもしれません。誰かに盗まれたり献上されたりして、そのままお墓に‥‥とか」←チーワン切り
「元々、どこにあった代物かわからぬからなッ‥‥!」←パーピン切り
「そうですねぇ‥‥リーチ。(よし‥‥張りました。メンタンピンリーチサンショク。ハネ満確定。これで‥‥)」←スーワン切り
「‥‥ロン」
「‥‥へ?」
「‥‥チンイツイッツーピンフドラ2。三倍満で24000」
「だっ‥‥ダマテンで三倍満!? 逆転!? 今まで一度もアガってなかったのに!?」
「‥‥最終的に勝てばいいんでしょ。まったく、面倒なゲームね‥‥」
「うぐぐ‥‥! と、ところで、そちらには何か情報ないんですか? 天地八聖珠について」
「あるにはあるが‥‥『貴殿の探し物の一つを知っている。北の山岳地帯の遺跡を調べよ。鹿島を持つ者より』という投げ込み文くらいのものだ。しかしここは、すでに平良坂冷凍が調べた後だしな‥‥」
「ここは藁にでもすがる思いで行ってみてはいかがかッ!? 罠なら罠で、それを蹴散らすまでッ!」
「‥‥ま、好きにして。‥‥じゃあ私は夕飯の買い物に行ってくるから」
結局、北の遺跡へ向かう旨の依頼が冒険者ギルドに並んだ。
そう‥‥いつもとちょっと違った趣きを添えて―――
●リプレイ本文
●道すがら
京都北部、山岳地帯のとある場所。
人知れず存在する遺跡はこの国にまだまだあるが、とりあえずそのうちの一つが最近ここで発見された。
丹波の商人、平良坂冷凍の部下たちよってある程度の調査が行われ‥‥彼が探している天地八聖珠なるものは結局見つからなかったと言う話であったが、人の噂に完全に蓋など出来ないものだ。
「‥‥そうか、嵐馬は無事だったんだね‥‥捕まる可能性もあったのに、わざわざ知らせてくれた情報‥‥無駄にはしないよ」
「『鹿島』‥‥我が刀。これを持つは互いに刀を交換した嵐馬殿以外に他ならず。彼の御仁からの情報であれば間違いないだろう。しかし、嵐馬殿は何故この遺跡を示したのか‥‥」
道すがら、蒼眞龍之介(ea7029)は謎の投げ文をどうして信用したのか一同に説明した。
それにより、ヘルヴォール・ルディア(ea0828)をはじめ、一行の誰一人として投げ文の真偽を疑わなくなったと言うのだから不思議なものである。
「それにしても、嵐馬さんは今どこでどうしてるのかしらね。できれば協力し合いたいところだけれど‥‥(溜息)」
「‥‥難しいとは‥‥思うけど‥‥。‥‥でも、本当に‥‥元・堕天狗党の人達‥‥今はどうしてるのかな‥‥」
「まぁ心配すんなって、あいつらがそう簡単にくたばるかよ。俺たちだって散々苦労した相手だぜ?」
「それはそうじゃが‥‥どんな猛者も、病気や事故には勝てんのじゃ。それに、以前のように数で押されるのも厳しい。最近のわらわたちは十分それを知ったはずじゃろう?」
昏倒勇花(ea9275)、幽桜哀音(ea2246)、バーク・ダンロック(ea7871)、三月天音(ea2144)。
生き残った堕天狗党員は、最終決戦時に行方不明のだった者を合わせて4人。
そしてもう一人、幸せな家庭を築いたであろう女性もいるが、これは除外する。
いずれも音信不通‥‥どこにいるかすら、生きているかすら定かではない。
「でも、天地八聖珠を守る守護者とは一体どんなモノの事を言っているのだろう‥‥。まさか埴輪や死人憑きの集団っていうわけじゃないと思うんだ。あの程度なら、そこそこの力量を持っていれば突破できてしまう。本来は‥‥もっとこう、驚愕に値する何かが守っているんだと思うんだけどな‥‥」
「俺もそう思う。今言っても詮無い事だが、これからの天地八聖珠は易々と入手させてもらえないのではないか?」
蛟静吾(ea6269)の疑問に、葉隠紫辰(ea2438)も同意する。
先ほど三月も言っていたが、大量の妖怪がうろつく遺跡は非常に厳しい戦場だ。
とはいえ、それはあくまで彼らにとっては雑魚の集まり。
幽霊系の妖怪はそこそこ苦戦するが、他は一匹一匹なら準備運動にも等しかろう。
一匹一匹なら‥‥だが。
「‥‥次の目的も‥‥わかってないし‥‥。今は、とりあえず‥‥この先に‥‥向かうしかない‥‥」
「だな。中の妖怪も相当減ってるって話だし、今回は楽できそうか?」
「‥‥さてね。私にはあの平良坂が何の手も打って来ないとは思えないけど‥‥」
「ふむ。冷凍の雇った者共とは、以来見えていないが‥‥そろそろ動きがあってもおかしくはないな‥‥」
そして、一行はいよいよ遺跡に到着する。
山での土地勘がある人間が多いため、藁木屋とアルトノワールが仕入れてきた大雑把な位置情報だけでも十分着けたのである。
しかし‥‥そこで一行を待っていたのは、遺跡の入り口だけではなかった―――
●私有地?
「へへへ‥‥何の用だお前ら。ここは丹波の大商人、平良坂冷凍様の私有地だぜ?」
「早々にお引取り願おうか。嫌だと言うのであれば力ずくで排除するのみ」
遺跡の入り口の前に立ちはだかるように、4人の男がそこにいた。
小太りの男、長身で美形の男、ツンツン頭の男、口ヒゲを蓄えた男の4人。
それぞれ果樹王(かじゅおう)、蛇盆(だぼん)、辺時板(あたとき ばん)、弓囲(きゅうい)という名前である。
「蛟君、あれがビーフ特選隊か?」
「いえ‥‥違います。僕も見たことがない連中です。恐らく、以前こちらの方に派遣された4人でしょう」
「チッ! なんで俺様がこんな連中の相手しなきゃならないんだ。冷凍のヤロー‥‥こき使いやがって。今に見ていやがれ!」
「なんだ、辺時ちゃんは御立腹かァ? あんまり冷凍様を悪く言ってると、色んな意味で首が飛ぶぜ?」
明らかな待ち伏せ。
こちらの情報が漏れていたということか?
「‥‥おかしいのう。わらわたちがここへ向こうという情報は特定の人物しか知らないはずじゃが」
「そうね‥‥ギルドの依頼書には、『遺跡の調査』としか書かれていなかったもの。どこの遺跡を調べるかは、あたしたちですら依頼を受けた後で知らされたのよ?」
「内通者が居ると言うのか‥‥それとも、例の投げ文の主が‥‥?」
「葉隠君、それはない。あの御仁に限ってそのようなことは、絶対に」
「何をゴチャゴチャ言ってやがる! 帰るのか帰らないのか、ハッキリしやがれ!」
辺時の叫びに、一行はしばし考える。
もしこの辺りが本当に平良坂の私有地だったとしたら、勝手に押し入るのは勿論よろしくない。
が、こちらは冒険者ギルドの依頼で来ている身‥‥それを拒めば、冷凍に私有地内でよからぬことをしているのではないかという疑いがかかるかもしれない。
第一、遺跡と言うものは世界の共通財産。
私有地内にあるからと言って、私物化してよいものではないはずである。
「‥‥やましいことがないなら‥‥ちょっと、調査‥‥させてほしい‥‥」
「ケチケチすんなって。ハゲるぞ」
「いや、バーク殿‥‥それは説得力がないと思いますよ(汗)」
「どうしてもやるってのか。馬鹿な連中だぜ、冷凍様に逆らうなんてよ」
果樹王が構えを取ると同時に、他の面々もそれぞれ得物を出す。
弓囲だけ鉄弓のようだが、あとの三人は刀系の武器である。
「それは調査拒否と言うことでよいのじゃな? あとでどうなっても知らんぞ」
「フフフ‥‥まだわかっていないようだな。冷凍様の‥‥金と言うものの力を!」
思わぬところで発生した戦闘。
何故先回りされたとか、何故通したがらないのかとか、そういうことは後で考えよう。
どちらにせよ、今は戦うしかないのだから―――
●意外な強敵
「ぐぅっ!? み、皆、固まるな! 鉄弓のダブルシューティングEXで一網打尽にされる!」
「弓術特化の中条流だなんて‥‥予想だにしなかった相手ね‥‥(冷汗)」
「くそっ、オーラボディ使ってる暇がねぇし! 流石にダメージが通っちまうぜ!」
さて、いざ戦闘が始まってみると、当初考えていた状況とはかなり違ったものになっていた。
確かに、果樹王、蛇盆、辺時は強い。
が、段位的に見ても実力的に見ても、そこまで一行と極端な開きはないはず。
問題は鉄弓を使う弓囲‥‥彼の後方支援が恐ろしく痛い。
「ふん、遺跡内の化物どものようにシルバーアローを使わなくて済むから楽でいいぜ」
「‥‥固まるなって言われてもね‥‥やつらが壁を背にしてるこの状況じゃ、取り囲むのは難しいよ。三月のファイヤーボムも、バークのオーラアルファーも確実に味方を巻き込む」
「それに引き換え、向こうは矢の続く限りこちらを射続けられる‥‥か。一撃一撃が重い上、あれではな‥‥」
ヘルヴォールの言葉に葉隠がちらりと目線をやると、弓囲の足下には矢が大量に詰め込まれた特性バッグ(?)が。
戦闘中は降ろし、護衛は他の面々に任せて矢を射る事にのみ集中するらしい。
「‥‥私でも‥‥油断すると‥‥当たる‥‥。COなしだと‥‥さらに、きつい‥‥」
回避の得意な幽桜でさえこう言うのだから、ミサイルパーリングや盾を持っていない面々は苦戦必死。
なんとなーく一番組しやすいかと思われていた弓囲が、実は一番厄介だったのだ。
「龍牙!」
「馬ぁ鹿がぁ! そんなもの通すか!」
蒼眞がソニックブームを放つも、横幅のある果樹王が弓囲の前に立ちはだかり、それを受け流してしまう。
どうやら防具で身を固め、刀と腕力で敵を粉砕していくタイプのようだ。
一方、蛇盆と戦っている幽桜やヘルヴォールも苦戦中。
幽桜と同じく回避の方が得意なテクニカルタイプらしく、派手な一撃はないがちまちまとダメージを与えてくる。
「はっはっはっは! この超精鋭の辺時板様に遊んでもらえるんだ‥‥光栄に思えよ!」
「‥‥やる! 攻撃が鋭い‥‥!」
「しかも御丁寧に十手まで持ってるものね‥‥防御面も厳しいわ(溜息)」
葉隠と昏倒は辺時相手。
霞刀と十手で武装した辺時は、その腕も相まって易々と突破させてくれない。
いや、本来なら一対二ならこちらの圧勝なはずなのだが‥‥向こうに弓囲がいるため、各々目の前の相手だけに集中とはいかないのが悩ましい。
「どうするよ蛟。このままじゃ埒が明かねぇぞ」
「と、言われましても‥‥彼らを必要以上に傷つけると、それはそれで新たな問題になりますし‥‥」
「すまん。わらわがもう少し丈夫なら、バーク殿に庇って貰う事もなかったのじゃが‥‥」
と、そんな時である。
「おやおや‥‥何事ですかこれは。辺時さんたちもみなさんも、刀を収めてください」
平良坂冷凍‥‥本人の御登場である。
「困りますね‥‥指示もなしにこんなことされては。蒼眞さんたちも、以前言いましたようにここには天地八聖珠はなかったのです。今更何故ここへ?」
「確かな筋からの情報があった‥‥と言えば御満足か?」
「ほう‥‥それはそれは。ですが、ここは引いていただけませんか? これ以上切った張ったをしても得はないでしょう」
終始いつものようにニヤニヤていた冷凍。
タイミングのよさにも大いに疑問を残しつつ‥‥結局、遺跡の内部は探索できずじまいだったという―――