【勾玉攻防戦】山中遺跡での結末
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■シリーズシナリオ
担当:西川一純
対応レベル:7〜13lv
難易度:難しい
成功報酬:3 G 80 C
参加人数:8人
サポート参加人数:3人
冒険期間:07月27日〜08月01日
リプレイ公開日:2006年08月04日
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●オープニング
世に星の数ほど人がいて、それぞれに人生がある。
冒険者ギルドでは、今日も今日とて人々が交錯する―――
「で、結局どうなったんです?」
「なんとかこちらが捜査の主導権を握ることができた。‥‥まぁ、半分アルトの力づくだったがね」
「‥‥いいでしょ。あれが一番手っ取り早かったんだもの」
「ま、まぁ深くは聞きませんけど‥‥(汗)」
某月某日、雨。
冒険者ギルド職員、西山一海が担当する一角は、雨の所為か、さほど賑やかではなかった。
話の内容が重いと言うこともあるが‥‥藁木屋錬術、アルトノワール・ブランシュタッドの二人は元来五月蝿い性格ではない。
「話し合いの結果、今回は冷凍殿たちは遺跡には行かないとの言質を取った。これはアルトに監視してもらうから確認は容易い。ついでに、冷凍殿たちから不死者化した八足岩大蛇の情報も聞いている」
「‥‥いくら払わされました?」
「‥‥まぁ、それなりに‥‥とだけ」
苦笑いする藁木屋を見て、大分払わされたなと思う一海であった。
「‥‥ズゥンビ化した岩大蛇は、生前潰された目が再生してないから視線での石化は無いそうよ。まぁ、ブレスはどうか知らないけど。‥‥あぁ、そもそもこの情報も当てにはならないかも知れないわね」
「いや、金を取った以上、冷凍殿は嘘はつくまい。商人も情報屋も信用は大事だ」
「つまり、今回の依頼は『不死者化した八足岩大蛇を撃破、その後に冷凍さんたちが発見した隠し部屋で天地八聖珠の確保』ですか。勾玉は‥‥まぁ、本物でしょうね。ここまで手の込んだ隠し方をするなら」
「‥‥問題は、なんで冷凍がお金程度で調査権を譲ったかってことね。あれだけ執着してたのに」
「そういえば変ですねぇ。まさか興味が無くなったってわけじゃないですよね?」
「それならそれでも構わないがね‥‥」
暗に『そんなことは無い』と言う藁木屋。
今回の勾玉が本物なら、確認された勾玉は4つ目‥‥冷凍が隠し持っているのではとされる物を含めれば5つ目だ。
ここまで来て興味がなくなるなど、彼の性格上ありえまい。
四神に対応した色を持つ天地八聖珠‥‥その集結は、近いのだろうか―――?
●リプレイ本文
●手馴れた遺跡
「勾玉が奉られているという村を訪れてから三月、か‥‥長き闘争の、一つの終着点としてこの因縁に決着をつけよう。最後に立つのは、化生か、人か」
闇が続く、山中遺跡の内部。
すでに未踏査区域の調査も完了し、地図も作成されたため、迷うことなどない。
一路、最奥を目指す中、葉隠紫辰(ea2438)が呟いた一言は、まさに真理であった。
「‥‥冷凍が物分かり良過ぎるのが薄気味悪いけど‥‥そうも言ってられない状況だしね。確実に回収しないと」
「まだ何か‥‥裏、ありそうだけど‥‥とりあえずは‥‥目の前の敵‥‥何とかするのが、先決‥‥かな‥‥」
ヘルヴォール・ルディア(ea0828)、幽桜哀音(ea2246)の二人に限らず、腑に落ちないという思いをしている者が多数。
それはそうだろう、今まであの手この手で勾玉を手に入れようと画策してきた平良坂冷凍が、何故今回に限ってあっさりと身を引いたのか‥‥。不思議以前に不気味なのだ。
「じゃが、隠し通路のことも聞けば素直に答えたしのう‥‥。ここで冷凍が諦めることで発生する利点が果たしてあるのかのう?」
「そりゃ、なんかしら得するから譲ったんだろうよ。もしくは、ここにあるのが偽物で、俺たちを厄介払いしようとしてるとかな。あー、取り戻す自信ありって線もあるか?」
「ふむ‥‥本物であれば5つの勾玉の存在は確認できたという事になる。だがこれだけの強さの守護者がいる事からも、ここにあるのが本物である事を示しているのではないかと思う。恐らく数の多い勾玉の在処に引き寄せられるのではないか。普通に考え魔力を帯びた物が集中すればより強い魔力となる。力の象徴・黄龍の具現? 然しそれを御しえるだけの術を持つ者などいるのだろうか‥‥」
三月天音(ea2144)、バーク・ダンロック(ea7871)、蒼眞龍之介(ea7029)。
冷凍とは馴染み深くなっているこの三人も、当然冷凍の反応を疑問に思っている。
だが、あれこれ考えても結論は出ない。
結局は冷凍のアクション待ちということになってしまうのだろうか‥‥。
「しかし、バシリスク? がズゥンビ化ですか‥‥。倒したはずの相手と再び戦うってよくある事なんですか?」
「滅多にない‥‥と思うんですけどね(汗)しかし‥‥ズゥンビで始まり、ズゥンビで終わりそうですね、今回の調査は」
ベアータ・レジーネス(eb1422)の問いに答えたセイロム・デイバック(ea5564)の言葉。
それもまた、真理というか真実であった―――
●岩大蛇、再び
「‥‥いる。相変わらずこの空間にいるみたいだね」
最下層に降り、ヘルヴォールは何度か惑いのしゃれこうべを使って岩大蛇の位置を特定した。
カタカタと歯を鳴らすしゃれこうべ‥‥これが反応すると言うことは、やはり岩大蛇は不死者化しているということだ。
「お、ホントだ。いるぜ。目は‥‥‥‥暗くてよく見えねぇが」
「よっ。‥‥うむ、潰れたままのようじゃな。やはり冷凍の言葉に嘘はないようじゃの」
バークの言葉を受け、三月が空間内にたいまつを投げ入れて確認を取る。
もし目が再生されていたら、三月は石にされていた可能性もあるが‥‥そこはそれ、そういうところだけは冷凍は信用がある。
「死した後も勾玉を守るという使命は忘れていないのか? ある意味、賞賛にも値する」
「だが、その相手をする我々には迷惑なことだ。セイロム君、話のとおりオーラパワーを頼む」
「了解です。決着を付けましょう!」
葉隠、蒼眞の言葉を受けて、セイロムが前衛の面々にオーラパワーを付与して回る。
例えズゥンビ化して耐久力が増していても、これなら保つまい。
「要するに、あの八足岩大蛇のブレスさえ何とかすればいいわけですね。それは私にお任せを」
「‥‥視線さえ‥‥なければ‥‥全力で、いける‥‥」
「準備はいいな? では‥‥推して参ろう‥‥!」
空間の中央辺りでうろうろしている岩大蛇。
まず、ベアータがストームの魔法で空間の奥へと岩大蛇を吹き飛ばす。
それで敵の接近に気づいたのか、岩大蛇は咆哮を上げて体勢を戻した。
「仕掛ける! 龍牙!」
蒼眞のソニックブームが岩大蛇に直撃する。だが‥‥!
「げ。蒼眞の一撃でほとんど傷になってねぇぞ!?」
「オーラパワーを付与してもらわなければかすり傷というところかのう‥‥」
「‥‥ダメージは小さくても効いてるんだ。連続でいくよ!」
「‥‥この命、貴様程度にくれてやるわけにはいかぬ。黄泉の参列に送り返してくれる‥‥!」
ヘルヴォール、葉隠も岩大蛇に急接近し、一撃を叩き込む。
これもオーラパワーがなければかすり傷だったろうが、セイロムのおかげで苦戦はなさそうだ。
「セイロム殿、今回は大活躍じゃのう」
「いつもは活躍してないみたいに言わないでください‥‥(汗)」
「いいんだよ! 男ってのはここぞと言う時に活躍すりゃあなぁ!」
ファイヤートラップで足止めをする三月、ライトハルバードで突くセイロム、重斧で叩き潰すバーク。
生前は視線のこともあり、かなりの強敵であったが‥‥。
「‥‥くっ‥‥意外と‥‥硬い‥‥」
ポイントアタックEX+シュライクで岩大蛇の足を攻撃した幽桜であったが、残念ながらオーラパワーの付与があってもそれを斬り飛ばすまでには至らなかった。
岩大蛇の動きは不死者化したしたことで鈍くなっており、避けられるなどと言うことはなかったが‥‥中傷止まりなのは残念だ。
「お!? ベアータ、準備頼む! なんか吐きそうだぜ!」
「はい。風のことならなんでもござれ‥‥それが私です」
ダメージで動きの鈍くなってきた岩大蛇は、石化のブレスを吐こうと準備する。
射程内に近づきたいのか、のそのそと歩を進める‥‥!
「‥‥詠唱完了。バキュームフィールド!」
バークを盾にして岩大蛇を待ち構えたベアータは、真空の空間で岩大蛇を包み込む。
死んで呼吸をしていない岩大蛇には、窒息効果はないが‥‥それが返って幸いした。
「なんだこいつ? バキュームフィールドの中でブレス吐いてんぞ?」
「空気がないということを認識してないからでしょうね。射程に入ったから問題なく使えると思ったんでしょう」
「知能ってのぁ大事だなおい」
真空のダメージも効いてはいないが、石化のブレスの心配がなくなったのは大きい。
後は、バキュームフィールドの範囲外から突くなり斬るなりすれば、どんどん傷は肥大していく。
「これで止めです! この世に執着する死者を穿てッ、我がハルバード!」
通路も利用して、チャージング+スマッシュEX+オーラパワーの一撃を見舞うセイロム。
その強烈な一撃で、ズゥンビ岩大蛇は動かなくなった。
「‥‥ほう。隙は大きいが凄まじい一撃だ。例のあだ名に恥じぬ力だな‥‥」
「面目躍如、ですかね。さ、後は勾玉の確認を!」
葉隠の賛辞に照れ笑いで返しながら、セイロムは歩を進める。
勾玉があるという、隠し部屋へと―――
●勾玉
「間違いない、本物だな。藁木屋君が預かってくれているものと酷似している」
「‥‥透明度のある黒い勾玉に、『地』の文字か‥‥。上の社の偽物は、やっぱりこれを模造したみたいだね」
隠し部屋の祭壇には、話どおり勾玉が奉られていた。
それは、他の勾玉を見たことがある者なら一目で本物と思える物である。
「‥‥にしても‥‥これ‥‥なんだろう‥‥?」
幽桜が見つけたのは、古代魔法語が書かれた木簡。
これはあとで調査にまわすことになるだろう。
「書いてあることはさっぱりじゃが‥‥まぁ、きっとろくでもないことだと思うがの」
「‥‥根拠はなんだ? 何か有用な情報が書かれているかも知れんぞ」
「『重要』ではあるかも知れんが、『有用』ではないじゃろう。以前壁に古代魔法語で他の勾玉の在処が書かれていた場所があったが、ここには壁には魔法語がない。その代わりにこの木簡じゃ‥‥少なくとも在処を示すとは思えんしのう」
「祭壇にも特に変わったところは無しですか‥‥。ベアータさんのほうはどうですか?」
「‥‥駄目ですね。クレバスセンサーにも反応はありません。これ以上の隠し部屋はないと思います」
「ま、いいじゃねぇか。目的の勾玉は無事確保、誰一人怪我なく岩大蛇も撃破。万々歳にしておこうぜ」
この後、冷凍がどう動くかは不明。また、他の勾玉の在処も不明。
現状5つ目とされる勾玉‥‥とりあえず、今回はバークの言うとおり、万々歳としておくといいのかも知れない―――
●余談
「‥‥錬術。一応調べてきたけど‥‥これ、当てになるの?」
「‥‥わからん。だが、度々投げ込まれる投げ文‥‥蒼眞殿たちは心当たりがあるようだ」
「‥‥元堕天狗党の生き残り‥‥ね‥‥。ま、どうでもいいけど」
「次は京都内になるのか‥‥。このいざこざ‥‥いつまで続く‥‥?」
京都の便利屋、藁木屋錬術宅に投げ込まれた投げ文。
その中には、次なる勾玉の情報が書き記してあったという―――